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第十八話:雪女の隣で

第十八話

 豪雪は試験を突破した為、先に月子のところに帰って行った。氷柱さんだけ何故か別枠での試験だそうで午後から呼び出されたのだ。

「じゃあ陽太、行って来る」

「うん、がんばってね」

「任せておいてくれ」

 氷柱さんが筆記試験を受けている間、僕は待合室ではなく実技の部屋で待たされることになった。

 それにしては何やら用事があったらしく、試験官と思しき優しそうな雪女さんが僕の前に座っている。

「初めまして陽太さん」

「…初めまして」

「わたしは試験官の白雪です」

「はぁ、白雪…さんですか」

「ええ、此処に来ていただいたのは氷柱さんについて話をする為なんですよ」

「え」

 本人不在の中でそう言った話をするのはあまりいい話じゃない時だ。

「氷柱さんの…出生についての話です」

「……」

 やっぱりだった。僕が聞いていい話ではない気がする。

「あの、僕が聞いていいんですか」

「構いませんよ。あなたは氷柱さんの友人、もしくはそれ以上の方でしょうから」

「いや、それは…」

 意地悪く相手は笑って一枚の紙を僕に渡してくる。

「これは?」

「氷柱さんの個人的情報です。この役場で一応そういったものを管理しているんですよ」

 雪野氷柱……って、氷柱さんの苗字って雪野だったんだ。おっと、そこは重要なところじゃないな。

「あ、この地域の雪女の苗字は雪野っていうことにしています。他のところだと結構『』いい名前だったりするんですよ?」

「そうなんですか」

「はい、まぁ、結婚してしまえば苗字を夫側にするって言う子も多いんですけどね」

 どうでもいい話である。いや、最近は好きな方を名乗ったりするらしいけどさ。

「……あの、親の欄に白雪って書かれてますけど?」

「はい、わたしが親なんですよ」

「…」

 まさかこんな近くに居るとは思いもしなかっただろうな。

「といっても、本当の親ではないんですけどね。わたしは氷柱さんを見つけて保護者になっていると言うところです」

「見つけた?」

「はい、見つけましたよ~…あれは滅多に降るような雪じゃありませんでした。元より、たまに…本当にたまにそういった酷い雪があるんですけどそんな日の次の朝は雪女の赤子が見つかるんです。里の誰もが知らないと言ってじゃあこの子はどこの子供なのだろうと首をかしげます。純正の雪女…とでもいいましょうか。彼女は人の血を一切含まないであろう雪女です」

「…人の血を含まないってどういうことですか」

「雪女一人だけでは例外を除き子供は生まれません……やはり、人間の男性との交わりで子を成すものです。人を夢見て姿を成した雪…それがわたしたちの祖先なのかもしれませんからね。だから、雪女と人間の男性との間に生まれた女の子はこの村に戻ってくる事が出来るのでしょう」

「え?そうなんですか?」

「ええ、そうです。ちなみに男の子の場合は雪女が一緒でないと駄目ですし、そもそも普通の人間ですからね。どうやら陽太さんの家系には雪女が入っていたようで豪雪さん、氷柱さんの力を抑える事が出来たのでしょう」

 入っていなかったら今頃かちこちになっていた…と笑顔で言われた。

「氷柱さんは他の雪女よりも日に弱く、お話の雪女みたいに長い間日に当たっていたりしたら溶けてしまいます」

「……」

「そしてこの話を氷柱さんにするかは貴方にお任せします。彼女は自分の母親に会うためだけに生きてきたようなものですから」

「あ、あのー…そんな重たい役目を僕にさせるつもりなんですか」

「ええ、そうです」

 それは責任逃れだと言いそうになった。

「どのように話すのか、いつ話すのかはすべて陽太さんにお任せします」

「……」

 そういって白雪さんはたちあがる。どうみても何処かに行こうとしていたので止めることにした。

「待ってくださいよ。まだこっちは聞きたい事があります」

「何でしょう?」

「どうして嘘でも親だと名乗らないんですか?」

 僕の質問に白雪さんは一枚の写真を見せてくれた。少し古ぼけた感じのする写真だ。

「元夫と子供よ。見つけたとはいえ、当時は子供がいたし二人目の余裕はなかったから」

「…すみませんでした」

「だからお願いね」

「………はい」

 自分より不幸な物を見せられると人はひるむ。そして、其処をつかれれば基本的に終わってしまうものだ。

 さて、どうやって氷柱さんに話せばいいのだろうか……そもそも、話す必要のある事なんだろうか。



――――――



「無事合格だ」

「……」

「陽太?」

「え、あ、すみません…考え事をしてしました」

 氷柱さんは危なげなく試験を合格。他の時間帯にしていたのも『久しぶりに試験に人間の男の子が来てくれていた為』というものだった。

「さて、家に帰るか」

「はい」

 その家が豪雪の家ではなく、僕の家だと言うのは何となくわかった。今度は気絶させられることなく、普通に里の入り口から出ていくことになるのだが、気付けばいつもの商店街通りに辿り着いていた。

「……これは一体…」

「おかしな話もある物だ。出るときはこんな風になる。だが、里に入るときは正規のではないと里には入れない。陽太、ちょっと寄りたいところがあるから着いてきてくれ」

「わかりました」

 氷柱さんの呼びかけに応じ、そのまま着いて歩く。何かを話す事もなく、目的の場所へと僕たち二人やってきた。

「ここって確か…」

「私と陽太が初めて会った場所、だ。もっとも、私は陽太の事を覚えてはいなかったけどな」

 自分の白い着物をすっと撫でてしみじみとした口調で氷柱さんは言うのだった。

「…私が母親について執着するようになったのは子供の頃の出来事だと思う。やれ私の母親はどれほど凄い雪女だーとか昔話に出てくる雪女の末裔だとかそう言ったばかげたものだった。私の母不明だ。それが原因だったのだろう」

「そうですか」

 切り出すなら今しかないのだろう。とりあえず氷柱さんの話を聞くことにした。

「……夢にまで出てくるくらいだ。でも、気配はするだけで一度も姿は見た事がない」

「……」

「雪女と言う名前を手に入れられれば里の出入りは完全自由、役場に入りこみ書類も見る事が簡単に出来る。これでようやく母親の顔を拝める日が来る…そう思っていたよ」

「思っていた?」

 氷柱さんの口調は重たいものではなくいたって明るいものだった。

「ああ、そうだ。最後の試験、てっきり母親について聞かれる事だろうとずっと思っていたんだ。雪女になろうとなれまいと、成り行きで受けることになったとはいえ関係性のある話をされるのが最終試験だ。だから、何かしらの情報は得られるとばかり思っていたんだ」

 どうやらこの口調からすると母親の話でも何でもなかったようだった。

「…最後、何を聞かれたんですか」

「陽太の事を信用できるか、否か…だったよ」

 そんなことを聞かれたんですか、そう聞こうとしたけど口では違う事を聞いていた。

「どう、答えました?」

「もちろん、出来ると即答してやった」

「……どうなりました?」

「どうもこうも、あとは陽太に聞けば知りたいことは全て教えてくれると言われたぞ」

「……」

 まさかここまでおぜん立てされているとは思いもしなかった。

「…聞きますか?」

 氷柱さんが望むならありのまま答えよう、そう決めた僕の決心を早速氷柱さんはへし折ってくれた。

「いや、いい」

「は?」

「母親の事なんてもうどうでもいい。かんがえてみればもう里で母親の事を聞かれることもないだろう」

 何となくそれが強がりに見えてしまった。

「一つ約束してください」

「何をだ?」

「一緒に居てください。もし、母親探しに行くときは僕を連れていってください」

「……はぁ?いきなりどうしたんだ」

「僕が聞いた話だと白雪さんが氷柱さんを見つけたそうです。里の雪女さん達は知らないと、僕が聞いた話はこれだけです」

「本当だな?」

 少なくとも嘘はついていないし、これは僕の勝手な解釈だ。

「白雪さんが僕に教えてくれました」

「なるほど、白雪さんか…」

「仲がいいんですか?」

「……そうだな、保護者と言ったところか」

「その白雪さんが氷柱さんの事を純粋な雪女だと言っていました」

「私がか?」

「はい」

「……そうか」

 僕から、人間からしたら雪女は雪女だろう。ただ、雪女から、氷柱さんからして純粋な雪女とはどのように映るのだろうか。

「私はもう母親を探しても意味が無いんだな」

「多分、そうです」

「まぁ、母親なんてあの忍者屋敷の主だけで十分だろう。私ももう子供じゃないからな。これから男の家に行こうと思う」

「え…」

「まだ踏ん切りはついていない。だから陽太の家でお世話になるよ」

 差し出された右手に握手してほっと溜息をつく。

「……そう言ってもらえて僕は助かりました」

「出て行ったらどうしていた?」

「もし、出ていくつもりなら『ひどいっ、僕は試験を合格するためだけのおもちゃっだったんですね責任取ってください』って言うつもりでしたから」

「たまに陽太は退路を断たせるようなやり方をするな。私は嫌いだ」

「僕は氷柱さんの事が好きです」

「そういう冗談をいうところは嫌いだ…さっさと帰るぞ」

「はい」

 これから家に帰ったらどうなるんだろう。

 ただ、氷柱さんが隣に居るのには間違いのない事だ。もし、彼女がまた母親を探すと言いだした時は隣に居ようと思う。


今回で終わりですよ奥様。今回の話は副次的な物で鬼について調べていて何故か雪女に(断っておきますが鬼とは一体何なのか牛とのつながりがなぜあるのかというので調べてました。)なってしまったのです。こっちのスケジュールもあって色々突貫工事並に慌ててやったのがまずったらしく読み返してみれば色々と足りないところがありました。まぁ、毎回作品で足りないところ蛇足な部分もありますからそれはそれで仕方がないということにしてください。そして終わりを二つ作ろうとしてちょっと足りなかった気もします。後の話も考えて19で豪雪、20で氷柱の話で今度こそ完結という風にしたかったのもあります。次は縁切りの話にするかはたまたゆきじょの話にするか考えておきますのでまたどこかでお会いしたらよろしくお願いします。よろしければ感想なんか頂けると喜ぶかもしれません。ではここまで読んでいただいて(あとがきまでですね)ありがとうございました。

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