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第十四話:陽太の涙ぐましい事情

第十四話

 試験会場となる公民館はいたって普通の公民館だった。

「何だか体育館的な物を想像してたよ」

「公民館なんてこんなものだろう。体育館は人間の町の奴を使わせてもらってる」

「とかいいながら氷柱はそういったものに参加してないでしょ」

「運動苦手なんですか?」

「人間が苦手なだけだ」

「なるほど」

「陽太や月子は大丈夫なくせに?」

「陽太と月子とは仕方なく…こほん、公民館の中に村役場みたいなものもある」

 氷柱さんの話によると、人間と雪女の間に入る役割を持っている人たちがいるらしい。まぁ、そういう人たちがいるから『雪女』の試験があるらしい。人間の家に居候し、相棒を探して里に戻ってくる…雪女が人間と交わり、子を成すための一つの手段だそうだ。

「ねぇ、雪女の一族に男はいないの?」

 二人に聞いてみると凄く変な顔をされた。

「う、うーん…居ないと思うけど。ほら、雪女、って呼ばれてるし…」

「雪男だったら…」

 きっとこの場に居た僕たち三人の頭の中にはイエティ的な何かが闊歩している事だろう。

「…だよねぇ。でもいるんじゃないの?」

「しつこいなぁ…もしかしてあたしが男だって思ってるの?」

「いや、なんでそうなるの」

 ぶーっとふくれっ面になって豪雪は続ける。

「だってぇ、おかしくない?陽太ぐらいの歳なら女性の体に興味ありまくりでしょ?」

 くねくねと体を動かし、豪雪はどうだと言わんばかりにポーズをとった。

「ふむ、それは私も思っていたところだ。よくもまぁ、男の隣で寝起きが普通にできる物だとな。初日なんか体を弄ばれると思っていた」

「氷柱さんまで…」

「そして、今回の雪男はいないか発言…もしかして陽太は男が…」

「いや、違うよ」

「じゃあなんで?これ以上っ…納得できない答えだったらもう本気で押し倒すからね」

 人差し指を突き付けられてそう宣言される。

「んーいや、さ、両親がそういうあれですっごく若い時に子供産んだらしいんだよね。育てられないっていう状態で施設に預けて…ある程度働くようになったのはいいけど行方不明になったんだよ」

 二人して黙って聞いている。

「ま、こんな感じかな。本当かどうかわからないけどこの話にかなり影響受けている事は確かだよ」

「…そ、そういう思い話するときは事前に言ってよっ」

 そう言われても困る。

「ということはまだ兄か姉がいるのか」

「どうだろう、本当かどうかわからないよ。なにせ中学の保健体育のあったその日の晩に話されたからね」

「…村のお偉いさんにはこの話をするべきだな。子供を作らせようとやっきだから…人間と雪女はやはりお互いに事に急ぎ過ぎる節がある」

「子供はともかく、あたしはそれでも陽太と会えてよかったよ。だから、雪女になったらこの役場に入って人間との架け橋を担う役割につきたいんだ」

 空気が少し重くなっていたのでその話に乗ることにした。

「ふーん…それが雪女っていう試験に受かりたい理由?」

「まぁね」

 目標をもっている相手をそうそう落胆させるわけにもいかないだろう。

「そろそろ帰って試験に向けて勉強しようか」

「え?いきなりどうしたの」

「二人とも目標があるんだから勉強したほうがいいでしょ?また村の観光しに来る時は殺伐としてない時に期待してるから」

「…うん」

「そうだな、その時はゆっくりできるだろう」

 豪雪は一つ伸びをすると右手を天に突き上げる。

「いきなりどうしたの」

「え、陽太の為にも絶対に受からないといけないと思ってさ。大丈夫、雪女になれば就職したようなもんだから給料はいる」

「…」

「子供育てられるから」

「…はいはい、はぁ」

 にやっと笑う豪雪に僕はため息しか出なかった。


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