第十一話:ゆきじょの里へようこそ?
第十一話
おばあちゃんの田舎にでもやってきたかのような錯覚。それなら村を見て周ろうかと思えば豪雪がそれを許してくれなかった。
「ダメダメダメダメダメぜーったい駄目ぇ」
「なんでさ」
「簡単に言うならまだペアが出来ていない奴が陽太を捕まえるだろうからな」
「そりゃもう婚期を逃した女性みたいな肉食獣が村を闊歩しています、はい」
豪雪がしみじみとした調子で言うのだった。
「でも今の時期なら僕みたいに家に連れてきている人のほうが多いんじゃないの?」
「あまーい」
「そう簡単に事は進まないんだ」
何やら複雑な事情があるようだ。
「里を出れない奴もいてねー」
「…ここを出ること自体が試験の始まりだからな」
ある程度の力をもつか、もしくは力の制御で何とか突破するかのどちらしかないらしい。だから試験が近づこうと出れない雪女さんはいるのだそうだ。
「だからこの時期はもう凄いらしいよ。男を囲って護り続けないといけないからね。ま、里に男を連れ込んだ時点で嫉妬と羨望渦巻く視線にさらされてたんだけどさ」
人が何かを成し遂げた時のような表情をしているところ悪いけど、まるで物のように扱うのはどうかと思う。
「どんなに綺麗な雪女が家にやってきても絶対について行っちゃ駄目だよ?」
「わかってるよ」
「どうかなー…優しそうな雪女とか胸の大きな奴には着いて行きそうで不安なんだけど」
まぁ、胸で釣るなら氷柱がいるから大丈夫かという豪雪とそう言われてまんざらでもない氷柱さん。
「陽太があれならやらしいことして時間潰してもいいよ…あ、ここハートマーク付いてるからね」
「どうでもいい…」
とりあえずこれ以上縁側に居てもしょうがないし、家の中を案内してもらう事にした。
「ここが家族だんらんの場所だね」
「私が言うのもおかしいが冷え切ってたな」
「…ま、雪女だから仕方がない」
どうやら家族仲はあまり良くなかったらしい。
「私と豪雪の母は奔放な人で今もどこに居るのかいまいちわからない」
氷柱さんの生みの親と変わらないような性格なのだろうか。
「もう何年生きてるのかわからないおばばだからね」
「え、おば…」
「ただいまー」
何故か屋根から声がしてきて隣の部屋に何者かの気配が…。
「き、きたっ」
「うろたえるな豪雪っ」
氷柱さんもどこか落ち着きがなく、僕を隠すようにして隣の部屋へと視線を向ける。
「……」
「こないな」
「あれれー、この人だぁれ?」
「え…」
僕の背後から声がした。怖くて振り返る事が出来ない。
「お母さんっ…」
「いつの間に…」
「お帰りもなしとか酷くない?」
若い。ただ、よくあるように見た目が小学生とかそういった物ではなく、少し年の離れたお姉さんみたいな見た目だ。
「こ、この人は私と豪雪の試験のパートナーだ」
「そ、そうそう、だからもう少しで試験あるから里に連れてきてるの」
「ふぅん?」
「うわっ」
きづけば豪雪と氷柱さんのお母さんに体を触られている。逃げようにもぴたりと刃物を首元に押し付けられている。
「んー…ボディチェック完了。よろしい、怪しいものじゃないようなのでこの家の滞在を許可します」
心底ほっとしたような顔をして二人がこっちを見ている。
「じゃあまた出かけてくるからゆっくりしてってねー」
それだけ言うと二人のお母さんは出ていってしまう。
「…まさか帰ってくるとは思ってなかったから…ごめん陽太」
そんなことよりあの人は何者なのですかいと聞きたくなった。
「…忍者なんだ」
「は」
雪女のほうがまだ実際に居そうである。
「その、最初の恋人が…伊賀だったか甲賀だったかの忍者だったそうで…おっかけしてたら忍者になっていたらしい」
信じてもらえないかもしれないと言う顔をしている氷柱さん。でもさっきの身のこなしを見る限りでは信じてしまいそうだった。
「気に入らない人が家に入ってきたら宙づりの刑だから。あ、あと勝手に家の中をうろついて変な物とかさわっちゃ駄目だよ?罠が発動するからっ」
念には念をという顔で氷柱さんが続ける。
「…私と豪雪の部屋から出るときはどちらかと必ず外に出ることだ。トイレも、風呂も、どんな時も…約束してほしい」
「……」
ここは雪女の里なんですよね?忍者の隠れ里…じゃないですよね。




