第一話:ゆきじょ一週間
第一話
僕の家に雪女がやってきて一週間が過ぎた。
「んー朝のすがすがしい気持ちは何物にも代えがたいねぇ」
名前を真冬豪雪という。なんとかっこよくて男気あふれる名前だろうか…だが安心して欲しい。見た目は真っ白な長髪の似合う綺麗な女性だ。
目をすっと細められるとドキッとしてしまうのは雪女としての力が強いからなのか、それとも僕が駄目なだけなのか…多分、前者だろう。
「ん?何朝から熱視線浴びせてくるの?」
「…いや、雪女って朝苦手ってイメージあったから」
「ああ、だから数日前からじーっとみてくるのか。オネイサンてっきり惚れたのかと思っちゃった」
雪女に惚れるとしても酒はがばがば飲む、飲んだら人の寝床で鼾をかいて寝る…挙句気持ち悪くなってゲロまで吐くようなお姉さんに胸キュンするわけないと思う。
「……ここにきて一日目はこれが初恋かも…とか思ったかもしれない」
「お、脈あり?オネイサン嬉しいなぁー」
「お姉さんには幻滅しました」
実家に帰らせていただきます。
「うそ?こんなに可愛いのに?心も綺麗なのに?」
人差し指で自分を指差す豪雪さん。心が綺麗な人は自分の事を綺麗だって言わないのです。
「心はともかく可愛い、綺麗と言う事は認めましょう」
「ナイスバディーで…」
胸を張って僕の前でポーズをとる。朝から目に毒である。
「…認めましょう」
「性格までいいのに?」
「性格がいい人は自分が吐いたゲロの処理を他人に任せたりしないよ」
酒を飲み、人の寝床でゲロを吐いたこの雪女は『汚いから掃除してちょ』といってまた眠ったのである。
「う…で、でも一回きりだよね?幻滅ってそこまで言う?」
言うと思う。ゲロ処理してきたら『何だか臭いからあっちいってよ』とまで言われた。
「まぁ、幻滅した理由はそれだけじゃないから安心していいよ」
「それって安心していいって言う?」
「ここにきて二日目からもう熱いからって言う理由で下着姿、テレビに近づいてみてるし、トイレの鍵はかけない、お風呂駄目なくせに一番風呂とかいって凍らせるし…」
「あ、あはは…ほら、雪女だから仕方がない…」
「最後なら好きなようにしていいって言ってるのに…」
「反省してますっ」
嘘くせぇ。
「ともかく、一目ぼれ云々は別としてこれでは同じ屋根の下に住む同居人として問題があると思うから今後僕に言われない様にしてよ」
「合点承知」
親指突き付けられても信じきれないのはまだ一緒に生活し始めて一カ月もたってないからでしょうかお母さん。
さらなるお小言を耳に届けようとしたところで相手にとって救いの主が現れる。
「お兄ちゃん、豪ちゃん料理出来たよー」
「あ、はーい」
「……はぁあい」
月子はそれだけ言うと去って行った。この家に真冬豪雪が住む事になった直接的な原因の女の子であり、僕の妹である。特別な力を持っていて雪女が監視しているとか実は雪女であるとかそう言ったことではない。何でもスキー研修に行った時に出会ったそうで元からこの家に来ることはその時に決まっていた事らしい。
というか、僕の両親すんなりと雪女の存在認めちゃってるからね。いまだに信じられなかったりするんだけどさ。
「頂きます」
「いただきます」
「……いただきます」
三者三様の頂きますをしてから食事に手を付ける。
「陽太醤油」
「はいはい」
「お兄ちゃん塩とって」
「はいはい」
食事はいつものように過ぎていき、夏休みと言う事もあって月子に皿洗いをさせるわけもなく僕が担当する。
「手伝おうか~?」
「いや、いい。そっちの片づけして欲しいかな」
「あいよー」
この雪女が僕、田原陽太の家にやってきた理由はちゃんとしたものがあるのだ。
いっかいこっきりのあとがきですよ。いや、最終話に書き込むかもしれません。さて、雪女の話です。地域によって呼び方は様々、雪女、雪女郎、すがじょ?と、調べる前はこの程度しか異名は知りませんでした。つららおんなも同じだーって誰かに聞いた話がありますがまぁ、それはそれ。雪女の昔話はどれも悲恋ですからね。風呂を勧められて消えてしまうか、話をした事によって雪女の正体を現し逃げてしまうか、殺されてしまうかの三択だった気がします。毎日更新出来たら御の字どの道短くまとめる予定なので世間一般的な夏休みが終わるまでには終わらせるよていです。




