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子供たち

作者: 山田マイク


 先日。

 ベビー服の手作り市があるというので駆り出されました。

 会場は超満員。

 30分かかってようやく入場しました。

 中も大盛況で、ママたちがところ狭しと赤ちゃん服を見て回ってました。

 僕は少し離れたところで買い物が終わるのを待っておりまして。

 人の流れを見るともなく眺めながら休憩所の長ソファに座っていますと。

 「すいません、隣、座ってもいいですか」

 携帯用ゲーム機を手にした少年がそう声をかけてきました。

 僕はああ、いいですよ、と少し横にズレました。

 ありがとうございます、と少年。

 彼はすぐにゲームを始めて、しばらく夢中でプレイしてました。

 その時、背中にドスっ、という軽い衝撃があり。

 振り返ると、いつの間にか座っていた女の子がソファの上でジャンプしてて、僕の背中に蹴りが入ってました。

 慌てて母親らしき人がやってきて。

 すいませんすいませんと謝ってこられました。

 いえいえ大丈夫ですよと苦笑しますと。

 女の子はしゅんとしてごめんなさいと言って、ママに抱っこされて雑踏に消えました。

 

 そうしてしばらくまた眺めていますと。

 今度は足を他の若いママさんに踏まれまして。

 一瞬、僕の目を見たその金髪ママさんは、すぐに目を逸らして行ってしまいました。

 とにかく混んでいたので仕方ない。

 そう考えていると、隣の少年のところに保護者らしき男性がやってきました。

 ガムを噛みながら、いかついグラサンをかけて、少年に話しかけてます。

 少年はその人にも敬語でした。

 事情は分かりませんが、父親ではないんだろうなとなんとなく感じました。

 保護者の方は大きな声で笑い、乱暴に少年を立ち上がらせ、どこかへと行ってしまいました。

 その刹那、少年は僕の方に向き直り、ありがとうございました、とお礼を言いました。

 一瞬、なんのことだろうと思ったんですけど、多分、僕が少し横にズレたことへの礼なんだろうと思い至りました。

 うーん。

 なんて出来た少年なんだろうか。

 僕は感心しつつ、少年の消えた方向に目を向けました。

 頑張ってほしいなと思いました。


 そんな感じで雑踏に揉まれることしばらく。

 やがて向こうから、世界一可愛い子がやってくるのが見えました。

 僕はここだよと手を振りました。

 子供というのは未来そのものだな。

 そう強く感じながら。

 

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