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Episode 9

彰仁が銃弾に倒れ、航がアンダーボス代理になる事が正式に決まってから初めての朝。

真尋は医務室で彰仁の状態をチェックしている。

心拍や脈などは問題が無いものの、まだ目を覚まさない様だ。


そんな中、来訪者があった。

航が玄関に行き扉を開けると…集団だろうか、9人のグループが来ていた。

先頭には何処か彰仁に似た女性が立っている。


「交渉をしに来たよ、私達は道草ファミリー。

 キミ達と同盟を組ませてほしいの。キミはここのボス…?」


「僕は違うよ、代理のアンダーボス。ボスなら今仕事してるから、終わったら…。」


航が最後まで言う前に鈴音がやってきた。


「え、ちょっと待って…あゆちゃんじゃない?久しぶりだね!」


「スズちゃん!ボスになってもう…4年くらい?元気にしてた…?」


鈴音にあゆちゃんと呼ばれた女性は柊原歩美(くぬぎばるあゆみ)。彰仁の姉で道草ファミリーのボスをしている。

弟に負けず劣らずの剣の達人である。

二人で再会を喜んでいる中、航が話に入ってきた。


「ボス…この人は知り合い?」


「あっちゃんのお姉ちゃんだよ!小さい時によく遊んでもらってたんだ。」


「そうか…確かに彰仁と似てるね。彼のあの容姿はお姉さん譲りだったのか。」


航はどこか納得している様だった。

彰仁は耽美…と言うか何と言うか、端正で綺麗な顔立ちの美男子である。

気難しい性格やぶっきら棒な口調から怖がられがちなので、

声こそ掛けられてもすぐ逃げられるらしいが。


「上手だねぇ、褒めても何も出ないよ。」


歩美は苦笑していた。

そして、気になっていた事を言い始めた。


「で、代理くん。本当のアンダーボスは誰?」


「残念だけど、今は…。」


航が言葉を濁した。

弟があんなことになっている事を目の当たりにしたら、どうなるだろうと思ったのだ。


「今は…って、大丈夫だよ。スズちゃんから聞いてるから。」


「知ってたのかい…?」


「そうそう、良かったら見舞いに来てくれないかってね。そのついでに同盟の話もしようって。」


歩美がそう言い、鈴音も頷いていた。

航は溜息を付きつつ、言った。


「ボス…いくら彰仁のお姉さんと言えど、流石にそういう情報を伝えるのはまずいよ。

 僕ら姫森ファミリーの情報が盗まれたら、洒落にならないじゃないか。」


「航くんは心配性なんだから…大丈夫だよ、道草ファミリーの事はこっちで調べてるから。

 ね、乃蒼ちゃん。」


鈴音がそう言うと、近くに立っていた乃蒼が頷いた。

その後、乃蒼も口を開いた。


「穏健派のファミリーで、私達より少ない人数ながら実力を発揮して来た新進気鋭。

 ボスの柊原歩美とアンダーボスの後藤幾馬(ごとういくま)はマフィア界随一の名コンビと言われているわ。

 で、歩美さん…彰仁と幼少期はチャンバラごっこでよく遊んでて、その頃から結構強かったそうね。」


「おお、よくご存じで…。」


余りにも詳しく事細かに話し始める乃蒼に少し引き気味ではあった。


「彰仁がたまに話してたのよ。姉貴は昔から強かったって言ってたわ。

 それより、お見舞いに来たのでしょう?医務室は玄関から左に曲がって真っ直ぐ行けばあるわ。」


「ありがとう!ほら、幾馬も行くよ。」


「む…引っ張るな…。」


幾馬と呼ばれた赤髪のツーブロックで大柄で顔に傷のある青年は、

歩美の勢いに押されながら付いていく事にした。

医務室へは乃蒼が案内して行く様だ。

他の7人は玄関に入ってひとまず挨拶をした。


「どうも、道草ファミリーです!」


まとまって挨拶したのもあるのか、なかなかに声が大きかった。

鈴音は元気だねぇと笑いながら言っていた。

理央がビックリしてソファから転げ落ちた。


「何なんだよ一体!オレを脅かしに来たのかい、この人たちは。」


理央が不服そうに言うと、鈴音と航が笑っていた。

そして、ツボにはまってしまった航をおいて鈴音が話し始めた。


「違うよー。今、幹部の二人があっちゃんのお見舞いに行ってるんだけど…

 戻ってきたら同盟を組めないか交渉しようかなぁって。」


鈴音が説明すると、理央がまた驚いた表情をしていた。


「え、と言う事は…助っ人になるかもって事!?」


「初めて襲撃して来た時の事、覚えてるよね?

 恐らくは、あれより大人数で来るんじゃないかと思うんだ…。

 だから、少数先鋭の道草ファミリーに協力を要請しようって事で、来てもらったの!」


「へぇ…カワイコちゃんいるかな?」


理央がふざけた調子で言うと、鈴音が苦笑していた。


「そういうのは良いから、理央くんもちゃんと話し合いは参加してよね。

 いつも寝てばっかりだから作戦も頭に入ってないんじゃないの?」


「大丈夫、てっちゃんが後で教えてくれるから!」


「困った時の俺頼みとかもう良いって…。」


哲弥はまたかよと言いながら苦笑していた。

理央は実力は問題ないが、お茶らけた言動や会議中に良く寝ていたりと素行があまり良くない。

何かやらかす度に哲弥がフォローしている流れになるのだ。


そして、彰仁の見舞いから戻って来た歩美と幾馬、案内をしていた乃蒼が戻って来たので

話し合いを始める事にした。場所はいつもの会議室…と言う事で航が準備していた。

鈴音が無線で呼びかけた。


「航くん、今から会議室行くけど…良い?」


「良いよ、椅子も人数分ある…大丈夫さ。」


「ありがとう、今から行くね!」


そして、鈴音が会議室に向かおうとすると肩を叩かれた。

ビックリして振り返ると、そこには真尋と彰仁が居た。

彰仁が居る事に他の構成員も気付いて驚いている。


「おいおい、俺が眠ってる間に随分と大層な事してくれてんじゃねぇか…。」


口を開けば彰仁からキレのある皮肉が飛び出す。

真尋が嬉し泣きとも言うような表情で鈴音に話しかける。


「ボス…彰仁くんがようやく目覚めてくれたよ!

 ウチの治癒能力もイマイチだったから、大丈夫なのかと心配してたら…

 傷一つ無い状態にまで回復してたんだ。

 後は目覚めてくれるかと思ってたら…ねぇ。」


「ああ、どうやら真尋が手を尽くしてくれたみてぇだな。で、航は居ねぇのか…?

 俺の代わりに仕事をしてもらったんだ、また引き継がねぇとな。」


彰仁がそう言うと、鈴音が苦笑しながら言った。


「もう…あっちゃんって相変わらずワーカホリックだよね。」


「お前だって無茶するだろうが。」


手厳しいツッコミに鈴音はそこまで言わなくても、と言う顔をするがすぐに笑顔に戻った。

そして言った。


「とにかく今言わせて。あっちゃん、おかえり…!」


「待たせたな。」


真顔で変にかっこつけたようなフレーズが飛んできたので真尋は吹き出してしまった。


「全く、理央くんもそうだが…彰仁くんも時々ふざけた事を言うね。」


「俺だって人間だ、たまにはそう言うのもアリだろ。

 それで…スズ、お前に姉貴からプレゼントだってな…会議の後にでも行って来いよ。」


彰仁はそう言うと、鈴音は人前でもボスと呼ばなくなったことに対し目を丸くするも、

そのまま返事をした。

そして、会議室へ未だにざわめいている構成員たちを引き連れて向かう。


「で?俺達と道草ファミリーが同盟を組むと…22人ぐれぇか?」


「そんなところだねぇ。私達と違って作戦指揮と暗殺、事務と広報担当が居ないんだよ。」


「じゃあ姉貴と側近の奴が掛け持ちしてんのか?」


「そうそう、本当…あゆちゃんも凄い働き者だよねぇ。」


鈴音と彰仁はそんな他愛の無い会話をしていた。

そして会議室の扉を開けると、歩美と幾馬を初めとする道草ファミリーの面々は歓迎の拍手をした。

航は彰仁の姿を見て驚いていた。


「怪我はもう大丈夫なのかい?」


()()()が手を尽くしてくれたからな。」


「その呼び方はよせ…。」


彰仁が冗談めかして真尋をそう呼びながら航に言った。

当の真尋は苦笑しながらツッコミを入れた。

そして、航に一言言った。


「航…短い間だけどご苦労だった。大変だっただろ、俺の代わりは。」


「まぁ…思ってたよりね。何とかなったよ。」


航は穏やかな調子でそう言った。

そして、道草ファミリーが前の方にまとまって座っているのを確認して彰仁は口を開いた。


「それで、姉貴はファミリーを引き連れて何がしてぇんだ?」


「同盟を組みたいんだよ!私達も龍神ファミリー討伐を目指してるからさー…

 その人数じゃ無理って事で断られてばっかりだったんだ。まぁそいつらは消したけど。

 だから、スズちゃんのファミリーなら組んでくれるかなぁって。」


「共通の敵が居るけど、自分達の人数じゃ到底無理だから…俺達にお願いしに来たって訳だ。

 拠点はどうすんだ?引っ越すって聞いたが。」


彰仁がそう言うと、歩美は鈴音と目を合わせて小さく笑っていた。

そして、歩美が話し始めた。


「それはもちろん、近所だよ。あわよくば駐車場も貸してほしいかなぁ。」


「駐車場…空いてたっけ、あっちゃん。」


「5台しか空いてねぇな。車持ってるやつって誰だ?」


彰仁がそう言うと、幾馬が口を開いた。


「俺と、ボスと、あとは…。」


すると、黒と金のツートーンで片目隠れの髪をした青年が手を挙げた。


「僕っす。」


「そうか…お前もだったか。全部で3台、後はファミリー専用車だ、10人乗りのやつがある。」


幾馬がそう答えると、彰仁は言った。


「それなら大丈夫だな。

 アホキノコが貰ったとか言って、車勝手に停めてるからどうしたもんかと思ったけどよ…。」


「だってさー、売るにしてもあんまり価値が無さそうだし。」


理央が不満気に言うと、彰仁は溜息を付きながら言った。


「車は乗ってなんぼだろ…それで、お前…いつになったらあの2台どけてくれんの?

 既に自分の持ってんだろ?」


「分かった分かった…ねぇねぇ、君は要らない?」


理央はさっきの片目隠れの青年に話しかけた。


「実物がないと何とも言えないっす…。まぁ、見たところで要らないっすけどね。」


バッサリと切り捨てたこの青年は生塩久志(うしおひさし)。道草ファミリーの射撃担当である。

独特な話し方で良くネタにされているが、早撃ちの腕と正確さはかなりのものである。


「青い方は俺のサブにするぞ。で、サビが酷い奴は要らねぇから戦闘中の移動用にするか。」


彰仁は剣の腕もさることながら機械に強く、整備の腕もかなりのものである。


「えー…マジかぁ。まぁいいや…そう言えば自己紹介ってしたの?」


「してねぇな…。じゃあ、俺達の方から。」


そして、鈴音と彰仁を含む13人全員が自己紹介を終えた。

次は道草ファミリーの番である。


「じゃあ私から。姫森ファミリーアンダーボスの彰仁の姉、柊原歩美です、よろしく。」


「俺は後藤幾馬…アンダーボスだ。宜しく頼む。」


「僕は生塩久志っす…担当は射撃、理央さんでしたっけ?一緒にバディ組みましょうね。

 よろしくお願いするっす。」


久志まで自己紹介を終えた後、桃色の髪をポニーテールにした少女が手を挙げた。


「私は北見玲奈(きたみれいな)、潜入担当。弱点探しもお任せあれ、よ。」


「僕も続くよ、えー…流川研二郎(るかわけんじろう)です。迎撃担当です、適当によろしく。」


紫髪のストレートなロングヘアーと目の下のクマが特徴の青年が自己紹介を終えると、

次は銀髪のボブカットと眼鏡が特徴の大人しそうな雰囲気の少女が口を開いた。


堂本桜(どうもとさくら)…開発・救護担当。よろしく。」


自己紹介が途中まで進み、理央と元太が口を挟み始めた。


「何かみんなそれぞれキャラが立ってて良いねぇ。」


「せやな、ワシらと組むにしても全く遜色のない逸材ばかりや!」


2人が盛り上がっていると、彰仁が静かにしろと言いたげに咳払いをした。

すると、茶髪のドレッドヘアーと両腕にはめたリストバンドが特徴の青年が自己紹介を始めた。


「俺は土岐孝一(ときこういち)。特攻担当だ…何か、面白れぇ事になりそうだな。

 よろしく頼むぜ。」


孝一がニヤリと笑いながら自己紹介を終えると、

緑髪でパーマが掛かったショートヘアの少女が話し出した。


「あたしは蛯名美来(えびなみく)。情報収集やってまーす、よろしくね。」


元気よく自己紹介をした後、最後に水色のツンツンヘアーの青年が自己紹介を始めた。


「俺は森口良樹(もりぐちよしき)、拷問担当さ…。悪人はとことん痛めつけてやらないとなあ!

 よろしく!」


全員が自己紹介を終えたのを確認して、鈴音が話し始めた。


「えーっと、道草ファミリーの皆ありがとうね!

 同盟の事から話すんだけど、まずは私達と同じ…マジックシティの平和を取り戻すと言う目的と、

 龍神ファミリーの討伐を最終目標にすると言う事で良い?」


「もちろん!とんでもない奴らだって聞いてるからね…何とかしたいと思ってたんだ。

 彰仁も、その点は大丈夫だよね?」


「姉貴に言われなくても、俺は味方が増えるなら歓迎するスタンスで居るつもりだ。

 反対する理由はねぇよ。」


彰仁がそう言ったので、同盟を組むことが決定したのだった。

そして、鈴音が作戦の説明を始める。


「それじゃあ、改めて当日の動きを説明するんだけど…基本は私達が動くの。

 道草ファミリーの皆はまずは待機してもらって…

 劣勢になって来た時に一気に出て来る感じで良いかな?」


孝一が手を挙げて話し始めた。


「俺達は隠れられるところに身を潜めりゃ良い訳か。」


「そうそう!建物の中でも良いし、外の地下駐車場の所でも良いよ。」


「当日はうちの航が指揮をするから、言われたとおりに動いてくれ。」


鈴音と彰仁がそれぞれ説明をすると、道草ファミリーの面々は納得している様だった。

すると、道草ファミリーの開発・救護担当の桜が口を挟んできた。


「あの…私、あまり戦闘は得意じゃないから…医療班として控えさせてもらえないかな。」


すると真尋が言った。


「ウチも戦闘に出てるからねぇ。まぁ、その時はその時さ…航くんから案内があるはずだよ。」


「僕が状況を判断して指揮をするから、そこは安心してもらっていいよ。」


航も並んでフォローをした。

桜は安心したのか、ホッと胸を撫で下ろした。


「他に聞きたい事ある奴は居ねぇか?」


彰仁が言うと、全員から大丈夫と言う声が聞こえてきた。


「じゃあ、今回の作戦会議は閉会だ。道草ファミリーも味方に付くと言う事だが、油断するなよ!」


彰仁の声で作戦会議は終了した。

そして、各々は準備に入った。


龍神ファミリーとの戦いの前に、大きな前進があった一日だった。

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