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Episode 6

調査から帰って来ると、乃蒼から彰仁の不在を伝えられた鈴音、千夜、航の3人衆。

姫森ファミリーの歴史の中で、一人で出掛けたまま帰って来なくなった事例は今まで無かった。

なのだが、彰仁がその第一号になってしまうのではないか…鈴音は漠然とした不安を抱えていた。


「本当に、何も聞いてないの?」


鈴音が問い詰めると、乃蒼は答え始めた。


「えぇ…何も言ってなかったわ。荷物は持っていたけれど、ね…。」


「何を準備してたんだろう…。」


「戦利品でも持って帰るつもりなんでしょうね。

 彼は、私達司令部でも把握できない様なルートで情報や物資を仕入れているわ。

 聞いたところによると、情報や物資は脅したり人殺しをして手に入れてると。

 上手く証拠を消し去ってるから、私以外が彼の()()()を知る術は殆ど無いのだけどね。」


彰仁は姫森ファミリーの中で最もダーティーな男だとよく言われている。

敵と見做した者に対しては一切容赦せず、その非道さから虐殺ソムリエの異名を持つ。

勿論、証拠も綺麗さっぱり残さない。

そんな残酷な彼だが、仲間である姫森ファミリーの一員に対しては粗野ながらも優しいと言う。


「かなり危険な事を昔からしてきているのよ。汚れ仕事は全部俺がやると言って聞かないの。

 ボスに知られない様に、裏で何かしら…ね。」


「私に知られたらマズい事でもあるのかな…。」


「彼なりにファミリーを守る為に働いてるんだと思うわ。

 決して、褒められた方法じゃないのだけれどね…。」


乃蒼は溜息を付きながら言った。

鈴音は時折血生臭い臭いを携えて帰って来る彰仁の姿を思い出していた。

帰ってきて一言、シャワーでも浴びるかと言ってそのまま浴室に向かう彼の姿を。


「とにかく、帰ってきてくれないと困るんだよねぇ…。作戦会議でもしようかと思ってたから。」


「通信は幸いにも出来るみたいだから、呼びかけてみましょうか。」


乃蒼がそう言って、彰仁に向かって通信機で語りだした。


「彰仁、調査に行ってた3人が帰って来たわよ。あなたも早く戻ってきなさい。」


「ああ…俺も重要な情報を手に入れたところだ、今から帰る事にするよ。」


そう言ってすぐに通信が切れた。

乃蒼は取り敢えず無事が確認できたので良しとした。鈴音も一安心している。


そして、数十分が経つと彰仁が帰って来た。

スーツケースの中に荷物が沢山入っており、中身を見ると

武器庫から取って来たであろう爆薬や予備の武器が入っていた。


「連中の警備が随分とザラだった…何か面倒な罠でも仕掛けてあんのかと思ったがな。

 あっさりと解除出来ちまったよ。まさか、敵が入って来る事も考えてねぇのか…?」


「油断させるって魂胆だと思うわ。構成員一人一人は強いはずよ…

 短期間であそこまで名前を轟かせているんだもの。」


「間違いねぇな。」


彰仁は地下室に取って来た物資を収めに行こうとすると、

橙色の長髪をポンパドールにした女性が呼び止めた。

そのまま彰仁は振り返った。


「ねぇ…その物資、管理するのに費用がそこそこ嵩むんじゃないのかしら?」


「あ…?そうだな…地下室の改良もやむを得ないか。」


「今のアジトの状態では限界があるでしょ?うちの武器庫…空きがあったかしらね…?」


「それなら友介が知ってる筈だ…おい、友介。」


彰仁が呼びかけると、ソファで寝ていた友介は何ー?と言いながら起きて来た。


「武器庫、空いてるか?」


「ああ、入れられたはずだけど…それ、どうしたのさ。」


「龍神ファミリーの本拠地を突き止めたついでの、土産だな。使えそうな物ばかりだ。」


彰仁が説明すると、友介は付いて来てと一言言って先に地下室へと歩き始めた。

そして、武器庫の前に立って暗証番号を慣れた手つきで入れ始めている。

すると、物々しい音を立てて武器庫の扉が開いた。


「余裕じゃん…まだ沢山入りそうだね、入れて。」


友介がそう促すと、彰仁は手早く武器を放り込んだ。

そして、全部格納したのを確認して閉め切った。


「調査、一人で行ってるんでしょ?たまには僕も連れてってよ。」


「駄目だ…誰も巻き込む訳にはいかねぇ。

 友介、お前が実力者なのは分かってるけど…少しでもアジトを守る人員が居た方が良いだろ?

 それに、俺が居なくても航が代わりを出来るしな。」


「ふーん…まぁ、良いけど。」


友介は内心がっかりしつつも、そこまで言うならしょうがないかと気にしないことにした。

そして、地下室から上がって来るとさっき話していた橙髪の女性が居た。


「物資は多い方が良いに越したことはないけど…

 彰仁くん、貴方…一体どうやってそんなに集めてるの?」


「教えられねぇな、企業秘密…ってやつだ。」


「怪しいわね…。」


怪訝な顔をして話を聞いているのは事務担当の綾部遥香(あやべはるか)

姫森ファミリーの財政面を担当しており、強力な薙刀使いでもある。


「安心しろ、今回は大きな収穫があるからな。作戦会議の時にでも話そうと思う。」


「そう…楽しみにしてるわね。」


そう言って遥香は事務室へと戻って行った。

航と乃蒼程ではないが、彼女もあまり外で戦うことが少ない。

ただし、体力はスタメンの香恋や哲弥等に劣らずある為に、補欠要員となっているのだ。


彰仁は疲れた様子でソファに座ると、近くに鈴音が来て話し始めた。


「ねぇ、あっちゃん…最近は一人で調査に行く事が増えたよね。

 危険手当…必要なら、遥香ちゃんに言って出してもらってこようか?」


「別に要らねぇよ、お前は昔から心配し過ぎなんだ。」


「またそんな事言っちゃって…。本当は私に意識してもらってるのが嬉しい癖に。」


鈴音がからかう様に言うと、彰仁はムッとした表情になって言った。


「冗談じゃねぇ…んな馬鹿な事考えてる暇ねぇんだよ、こっちは。」


彰仁が皮肉めいた言い方をすると、鈴音は溜息を付きながら言った。


「私に内緒で何かやろうとしてない?こっちは気付いてるんだからね。

 何が目的は知らないけど、あんまりそう言う真似はしないでほしいなぁ…危ないし。」


「ご忠告どうも。」


ちゃんと聞いてるのか分からないような姿勢で彰仁は言った。

そして、そのまま休憩に入るかと思えば会議室へと歩き出して行った。


「そのまま休んでたら良いのに…。」


鈴音はそうぼやきながら、彰仁の後を追うように会議室へと向かった。

そして、会議室の扉を彰仁が開けていた所で話しかけた。


「あっちゃん…働き過ぎだよ?」


「またお前か…邪魔すんなよ。今から作戦会議をするから、俺の代わりに人呼んで来てくれ。」


「はーい…。」


鈴音は適当にあしらわれたので何処か不満に思いつつ、通信機を手に取った。


「みんなー!今から作戦会議をするから集まってね、遅れないように…!」


そう呼びかけ、準備をしている彰仁の手伝いをしていた。

そうこうしている内に、構成員たちが集まった。


「集まってくれてありがとう!まずは、龍神ファミリーの情報について話そうと思うの。

 聞きたいよね?」


鈴音が勿体ぶったような言い方をすると、聞きたいと言う声が上がった。


「まずは、俺が単独で掴んできた情報と…

 ボスが千夜と航の2人と一緒に見つけてきた情報の照らし合わせからだな。

 龍神ファミリーのアジトの場所から言うと、噴水公園の近くにある。」


「車で20分くらいだっけ…?意外と近いよね。」


「ああ…そんなところだ。それで、肝心の構成員の情報だが…

 深淵なる闇とか言う奴以外に情報がロクに出てきやしねぇんだ。」


彰仁が説明をしていくと驚きの声が上がっていた。

すると、青髪のフェードカットの青年が質問を始めた。


「それ、どういう事なんや?

 ワシが聞いた話やと、ざっと30人位がアジトに襲撃して来よったって事やけど。」


「俺の推測になるが…大勢の半グレや野良のマフィアを従えて、

 そいつらを取り込んでるって事だろうよ。便利な鉄砲玉扱いさ。」


「鉄砲玉か…随分と恐ろしい事しよるもんやな…。」


広報担当の青年、丹羽元太(にわげんた)は納得している様子だった。


「にしても、悪趣味な名前だと思わねぇか?俺だったらもっと格好良い名前にするぜ。」


「例えば?」


真尋が話に入って来た。


「ルシフェルとか。」


彰仁がそう言うと、真尋が堪えきれなくなったのか噴き出してしまった。

それを見て不満気な様子である。


「おい…何がおかしいんだ?」


「いくら何でもそれはないだろう、君。堕天使を名乗るとかなかなかヤバい奴じゃないか。」


「うるせぇよ、アザゼルの方が良かったか?」


「変わらないじゃないか。」


「話、戻した方が良いわよ。」


乃蒼が見かねて彰仁に言った。

真尋が相変わらず笑っていると、香恋が気になる事があったのか、質問を始めた。


「その、深淵なる闇って奴は、たった一人で半グレやそこら辺のチンピラを従えたって事?

 一体どんな手を使ったんだろうね?」


「超能力を持ってんだろ、マインドコントロールとかすりゃ可能なはずだ。」


彰仁がそう言っていると、鈴音が話したそうにしている。

それに気付いた彰仁は黙って鈴音に話の主導権を譲った。


「えーっと、あっちゃんは…アジトの場所と龍神ファミリーの構成員の情報を

 ある程度調べてくれたんだね。

 次は私…千夜ちゃんと航くんに付いて来てもらって、図書館に行ったの。

 龍神ファミリーのボスがね…実は…。」


真尋は鈴音が途中まで話している時、何処か声が震えている事に気付いた。


「実は…なんだい?」


「先代のボス…お父さんと、お母さんを殺した、犯人…なの。」


鈴音は涙声になりながらも、最後まで話す。

そして彰仁はポーカーフェイスを貫いたまま、話を続けた。


「じゃあ何だ?俺達が倒そうと意気込んでいるファミリーのボスは…お前の仇って事か?」


「うん…何としてでも、やらなきゃ…。」


鈴音が俯いたままそう呟くと、彰仁はそうか、と言った。

しばらく沈黙が流れた後、鈴音は涙を拭って落ち着いたのかまた話し始めた。


「私はね、もう皆知ってると思うけど、あの時…眠らされていたの。

 だから、図書館で調べるまで何にも知らなかったんだ。

 まさか、襲撃して来たアイツが…私に深く関係してるなんて、ね。」


隣で聞いていた彰仁も頷いていた。


「ますます、ボスの為に勝利をあげないといけないわね。

 それで、作戦はどうするつもりなのかしら?」


乃蒼が作戦の事を聞くと、彰仁が話し始めた。


「あぁ…まずは、外で戦うのは…香恋、哲弥、友介、映子、真尋、元太の6人だ。

 建物の中が俺、理央、千夜、遥香の4人で動く予定だな。」


彰仁がそう言うと、哲弥が気になる事があるのか質問をしだした。


「良いんだけど、香恋が迎撃しきれない時もあるだろ?逆もあるし。

 そうなったら動いて良いか?助っ人は多い方が良いしな。」


哲弥の提案に対し、鈴音は確かにそうだよね、と言った。彰仁も俺も協力するぞと言った。

そんな中、航が口を挟んできた。


「待ってくれ。ボスが戦闘に初めから参加するかどうかでも変わるんじゃないか。

 僕と乃蒼は司令室から動けないし、人数も限られると思うよ。」


「それはそうだな…ボス、体調は大丈夫か?」


「うん、ここ最近は絶好調だよ!」


鈴音は眩しい笑顔でそう答えた。

彰仁はお前のそういう顔、久しぶりに見たな…とぼやいていた。


「それなら何とかなりそうだ。無理だったらその時は航にでも相談しような。」


「ああ、いつでも大丈夫だよ。」


航は穏やかな表情を崩さずにそう言った。

それを見て彰仁は助かるよと言った。

そして鈴音に確認を求めた。


「ボス…こんなもので大丈夫か?」


「良いんじゃないかな?ただ、更に言うなら担当する領域も決めた方が良いよ。

 私は香恋ちゃんのサポートに回った方が良いかもしれないね。」


「アタシからもそうさせて貰えると助かるなぁ。この前みたいに多かったらヤバいじゃん?」


香恋がね、お願いと言う風に頼み込むと、鈴音は苦笑しながら快諾した。


「良いよー。私も最近、暴れられてなかったしねぇ。

 紅蓮の舞姫なんて大層な二つ名付けられちゃってるから、実力を見せつけてやりたいし。」


「助かるよホント…当日は一緒に頑張ろ、ボス。」


「香恋ちゃん、よろしくねー。」


彰仁が辺りを見回して言った。


「誰か決まってねぇ奴はいないか?」


一同は大丈夫と返事した。

すると、鈴音が会議の締めで挨拶をした。


「それじゃあ終わるね。…各自、来る戦いに備えるように!」


「仰せのままに!」


こうして作戦会議は終わりを告げたのである。

来るべき戦いの為に、各自準備を進めていくのであった。

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