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Episode 5

彰仁は屋上に居て物思いに耽っていた。

作戦会議まで時間がある、その間に外の空気を吸ってリフレッシュしようと言う事だ。

そんな中、屋上の扉が開く音がした。

振り返ると、真尋がそこに居た。


「彰仁くん、何か思い詰めていないかい?」


「そうだな…能力が使い物になってねぇし、ボスのあの言葉が気になって仕方が無いんだ。」


「あの言葉とは…?」


真尋が気になる様子で居ると、彰仁が答えた。


「私はいつまで生きて居られるかな…なんて言ってたぜ。どういう意図かは分からねぇがな。」


「…まだ、君に話していない事がある。聞いてくれるかね?」


彰仁が鈴音が言っていた事を思い出しながら言うと、真尋はいつにも無く真剣な表情になった。


「ああ。」


彰仁は短く返事をし、話を聞く体勢になった。


「ウチが毎日調合している薬は、ボスの精神面に作用するものだと言う事は良く知っているだろう。

 その薬の影響か、彼女の機械仕掛けの心臓に負担がかかっている様だ。

 このままだと、下手すればあと半年しか生きられない。

 だから解決策を研究室に籠りながらも必死で探していたのさ。」


「つまり、ボスはギリギリの状態で戦っていると言う事か?」


「そういう事だ。」


真尋が話し終えると、彰仁は誤魔化そうとするも動揺している様だった。


「俺に出来る事はねぇのかよ。」


「ふーむ…難しいだろうね。」


「それは何故だ?」


彰仁が問いかけると、真尋は難しい表情をしていた。


「奇跡でも起こらない限りは、不可能だろう。それに、実現するための材料がね…。

 精神面を良い方向のまま安定させる…と言う事が出来れば、

 材料を集めなくとも可能だとも思うが…。」


「それじゃねぇか、具体的じゃなくても俺が出来る事…。」


「ボスを不安にさせない事が一番だね。何でも良い、彼女に寄り添ってサポートするんだ。」


「おうよ。」


少しだけではあるが、モヤモヤが晴れた様子だった。

そして、屋上で居る間に時間が過ぎたので居間に戻る事にした。

先に戻っていた真尋が珍しく白衣を脱ぎ、コーヒーを飲んでいる。


「ここんところ、暑さが酷くて参っちゃうね。」


「オレも駄目。真尋ちゃん、いっそのこと…白衣の下は水着とか着たら?」


「流石にそれは無いだろう。」


真尋が苦笑していると、航が話に入って来た。


「水着は駄目だよ、冷えちゃうだろ?」


「確かに…。」


「まぁ、でも暑いのは分かる。流石の僕も数年ぶりに半袖を着てるからね。」


航は寒がりらしく、基本的には年中長袖を着ていると言う。


「ツッキーが言うくらいだから相当だよね、ああ…アイス食べたい…。」


「理央のアイスクリーム好きは相当な物だからね。毎日食べてるぐらいだし。」


冷蔵庫に無いと困るもので挙げるほど好きらしい。

自分が買い出し当番になった時は必ず買っている程。


「買い置きしてるんだよ、流石に毎日同じ味は飽きるから色んな種類のにしてるんだ。」


「そう言えば部屋に冷蔵庫があるね…あれの中身は全部アイスなのかい?」


イタズラっぽい表情を浮かべて聞いた。


「まさか…!他にもあるよ…水とか。」


「水とアイスだけか…。」


航は苦笑しつつ呆れた様な表情をしていた。

3人で雑談をしつつ盛り上がっていると、彰仁の声が通信機から鳴り響いた。


「ファミリーの調査、ボスと千夜が行くそうだ。他にお供する奴はいるか?」


すると航が名乗りを上げた。


「僕が行く。たまには外の空気を吸わないとね。」


「よし…じゃあ、これで決まりだな。よろしく頼むぞ。」


通信が終わると、航は上着を羽織って玄関へと向かい出した。

理央と真尋が同時に行ってらっしゃいと言って見送る。

鈴音と千夜は先に外に出て待っている様だった。


「ごめん、待たせたね。」


「大丈夫ですよ…行きましょう。」


航が詫びると千夜は快く受け入れていた。

それにしても場所は一体どこなのか、気になる様子。


「ボス、ファミリーのアジト…突き止めたのかい?」


「大体の目星は付いてるよ。乃蒼ちゃんがGPSまで駆使して見つけてくれたしね。」


「へぇ…あの人はすごいなぁ。」


大賢者と言われるだけある乃蒼の凄腕の収集技術にただ感嘆をする航であった。

そして、辺りを見回したりしている内に図書館へとたどり着いた模様。


「警備がザルじゃないか。」


「千夜ちゃん、前に行った時もそうだったの?」


「えぇ…意外とすんなり入れましたね。

 そもそも館長が留守にしてる場合も多いのです、ちゃんと仕事してるんですかね?」


千夜が愚痴る様に言うと、それを聞いていた鈴音と航は苦笑いしていた。

そして、通信機から彰仁の声が届いてきた。


「今日は何処で調査してるんだ?」


「図書館!龍神ファミリーの情報が何か足りないなぁって思ってね。」


「俺達みたいなアングラの世界に生きてる人間しか入れない場所だ、罠とか気を付けろよ。」


「はーい。」


鈴音は軽く返事をして会話を終えた。

そして、慣れた様子で千夜は図書館の中を歩き始める。

そんな様子の千夜に、鈴音は尋ねた。


「千夜ちゃん、ちょっと聞きたいんだけど。」


「はい…何でしょうか?」


「哲弥くんと一緒に来た時、どの本で龍神ファミリーの事を見つけたの?」


鈴音は興味津々な様子である。

千夜はそれを見て言った。


「そうですね…確か、この青い本だったかと思います。

 要注意ファミリーをまとめた本ですね。」


「へぇ…結構分厚いね!私達のも載ってるかなぁ。」


「どうでしょう…あまり良い書かれ方をしてないんじゃないですか?」


「ちょっと見て見ようよ…ほら、航くんも。」


「ボス…分かったから引っ張らないでくれよ。」


そして、索引をまずは開き自分達のファミリーが何ページに載っているかを探し始めた。

千夜が何だか最初の目的から離れてる様な、とツッコミを入れていたが、鈴音は気にしていなかった。

ページをめくると、遂に姫森ファミリーが載っていた。

ボスである鈴音とアンダーボスの彰仁以外の構成員は載っていなかったが、

およそ10数人程の規模と書いてあり、ファミリーの歴史も書いてあった。


そして、ページを見ている中で

鈴音は先代ボスである父とアンダーボスの母が載っているのを見つけた。


「あ、お父さんとお母さんだ…何が書いてあるのかな。」


眺めている中で、鈴音は突如青ざめた顔になって本を落としそうになった。

何かショッキングな事が書いてあったのだろうか、目には涙を浮かべていた。


「大丈夫か、ボス!」


航はすかさず鈴音を支えた。

鈴音は表情が変わらないまま、黙り込んでしまった。


「これは…事細かに書いてありますね…。」


千夜も何とか平常心で本のページを見ている様だ。

書いてある内容は、元姫森ファミリーの人間に両親が殺されたと言う内容だ。

しかも最新版であるためか、事件の詳細や犯人の顔写真まではっきりと載っていた様だ。


「哲弥さんが先代の悲劇を語ろうとした時に、彰仁さんはやめろと言ってましたよね。

 彼も詳しい事を何処かで知っていたのでしょうか…?」


「そうだね。彰仁はどうやら、僕達とは全く別のルートで情報を仕入れてるらしい。

 取引をしてる時に知ったんだろう。」


航は考え込みながら千夜の問いに答えていく。

そして、千夜も反応をすぐ返す様に言った。


「確かに聞いた事無いですよね?彰仁さんは一体どこで情報を手に入れてるのか。」


「ある意味、彼が一番姫森ファミリーでマフィアらしい人間だからね。

 目的を果たす為なら手段を選ばない一方で、

 仲間への情はあるからなるべく巻き込まない様にしている、と。」


「普段からぶっきら棒でどこか近寄りがたいですし、あの振る舞いも何か意味があるはずです。」


千夜が得意気に言うと、航はそれはどうだろう、とだけ言っていた。

鈴音はようやく落ち着いたのか、二人に謝りだした。


「2人とも、本当にごめんね…!」


「いいんだよ、落ち着いた?」


航が優しく声を掛けると、鈴音は頷いてから話し始めた。


「はぁ…何とかね…。

 私、あの時…眠らされていたの。だから犯人の顔なんて知らなかったんだけどね…。

 まさか、あの…深淵なる闇とか言う奴だったなんて…!」


「深淵なる闇…友介さんと映子さんから名前は聞いた事があります。

 龍神ファミリーのボスですよね?」


「うん…ますます許せない…!」


鈴音が今度は怒りに震えている様だった。

そしてもう疲れた、と言った表情になり、千夜と航に言った。


「とにかくもう帰ろう?私、とっておきの情報手に入れちゃったし。」


「えぇ…ボスの名前も知る事が出来ましたしね。」


航も納得している様だったので、早速3人で帰る事にした。

それぞれ疲れていたのか、真っすぐアジトへの帰り道を歩くのみだった。

そして、玄関の扉を開けると乃蒼が珍しく出迎えてくれた。


「おかえり、何か収穫はあったかしら?」


「えーっと…衝撃の事実を知っちゃったなぁって…。」


「そう…話はまた、後で聞くわ。千夜も航も…お疲れ様。」


乃蒼は鈴音の表情を見て、すぐ聞くのはやめようと思い立った様だった。


「ああ、ありがとう。たまには外に出てみるものだね。」


「私への嫌味?」


「まさか、そんな事は無いよ。」


「冗談よ…そう言えば、彰仁が帰ってきてないのよね。」


「え?あっちゃん、出掛けてるの…?」


鈴音が驚いて目を丸くしている。


「一人で何処かに行ったみたいね。何も無ければ良いのだけど…。」


乃蒼は心配そうな顔をしている。

鈴音も何処か不安なのか、乃蒼の手を握り始めた。

それに気付いた乃蒼は、嫌な顔一つせずに握り返した。


「ボスも不安なのね…。」


果たして、何が目的で一人出掛けて行ったのだろうか。

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