Episode 13
合同訓練を終え、アジトへ帰宅した一同。
彰仁は自室で物思いに耽っていた。
「ああは言ってたが、スズの奴…本当に理央を手に掛ける事出来るのか…?」
そう呟き、パソコンを立ち上げてゲームをしていた。
流石に働きづめで精神的にも疲れが出て来ている。たまには息抜きをしようと思ったのだ。
扉をノックする音が響き、クエストを完了したところでセーブをしてタイトル画面に戻した。
入って良いぞと一言言うと、鈴音が入って来た。
「あっちゃん…乃蒼ちゃんと一緒に作戦まとめて来たから、後で目を通しておいてね。」
そう言ってノートを渡して来た。
そして、パソコンに映っているゲームのタイトル画面を見て、小さく笑っていた。
「懐かしいね…それ、私も結構やり込んでたよ。」
「お前もやってたのか。」
「上手くはないけど…そこそこ、かな?」
「いつかお手合わせを願いたいもんだ…。
で?俺の部屋に来るなんて珍しいな。何かあったのか?」
彰仁がそう言うと、鈴音が苦笑しながら言った。
「元気にしてるかなーって。」
「何だそりゃ、毎日顔合わせるだろ?お前こそ、いつもより元気が無いんじゃねぇのか?
痩せてる様に見えるぞ。」
「あはは…ご飯が喉を通らなくって。私は元々、そこまで食べないんだけどね。
お菓子だってあんまり美味しく感じなくなったの。」
いつもより顔色が少し悪い様に見えて、彰仁は心配になって訊ねた。
「理央の事、お前も気にしてんのか?」
「それもあるけど…何より、ね?」
「何だよ…。」
彰仁が怪訝な顔をすると、鈴音が真っ直ぐ見据えて言った。
「私は怖くて仕方がないの。あっちゃんが撃たれたって聞いた時、本当に…どうしようかと思って。
不安で不安で…。それに、かつての仲間をどうにかしなきゃいけないのだって…本当は辛いんだよ。
先頭に立つ人間だから、私が判断しなきゃいけないけど…でも、やっぱり辛いよ…。
今更、後戻りは出来ないけどね…。」
何も言わず、彰仁は鈴音の話を黙って聞いていた。
やっぱりそうだった。人前では気丈に振る舞ってるけど、一人の女の子だ。
繊細で傷つきやすい、もしくは思い悩みやすいのだ。
彰仁はしばらく沈黙してから口を開いた。
「無理すんなよ。探せば方法はいくらでも見つかるかもしれねぇだろ…?
お前は確かに強い。だけど、すぐに粛清とかしてしまう人間じゃねぇ…。
冷酷なリーダーだったら、皆恐怖に怯えるだろうさ。何か提案でもしようものなら殺されるってな。
だが、あの連中はお前が誰よりも優しい人間だから付いて行こうと思ったんだぜ。
俺はスズが姫森ファミリーのボスになってくれて良かったと思ってるよ。」
「情けないって思ったりしない…?」
「馬鹿言うなよ…思う訳ねぇだろうが。決めるのはお前だけど、俺も一緒に悩んでやる。
何のためにアンダーボスって役職があると思ってんだよ。」
「あはは…やっぱり、私の傍にいるのはあっちゃんじゃなきゃね。
ありがとう。」
雲っていた鈴音の表情が明るくなっていった気がした。
彰仁はそれを見てホッとしている様子だ。
「気が済むまでここに居ても良いぞ。」
「じゃあ、一日ずっと居ようかなぁ。」
「流石にそれは勘弁してくれ…。」
彰仁が苦笑しながらツッコミを入れると、鈴音も笑っていた。
和気藹々とした空気になった時、司令室から通信が流れて来た。
「誰か不審な人物が敷地内に入って来た様だ。建物の方に向かっている、撃退の方を…。」
航が言い終わる前に謎の爆発音がした。
驚いた鈴音はすぐに部屋を飛び出して司令室へと向かって行った。
そして部屋の扉を開けて言った。
「ねぇ、何か今爆発したよね!?」
「建物から離れた所の様だね。誰か巻き込まれていないか、確認しないと…。」
航はそう言いながら監視カメラのモニターを操作している。
彼の通信には乃蒼が横から小声で、前哨戦でも始まるのかしらねと呟いた声も入っていた。
「その心配は要らないよ。」
通信が入って来たが、その声の主は真尋だった。
航は怪訝な顔をしながら通信機で呼びかけた。
「どういうことだい?」
「ああ、実はね…ネズミがどうやらアジトから何か持って行こうとしたみたいで、
奴の隙をついて爆薬を投げて吹き飛ばしたのさ。」
説明する真尋に対し、自室で仕事をしていた彰仁が通信機で問いかけた。
「乾先生もハチャメチャな事するもんだな、建物が燃えたらどうすんだよ。」
「ふふ、安心したまえ。ウチの火加減は間違いないからね。」
「相変わらず緊張感の欠ける人だ。とにかく、Xデーまで時間が無ぇ。
理央の動向も気になるところだが、何より道草ファミリーと連携を取って奴らを倒さねぇ事には…
安心する事は出来ないだろうよ。」
「分かってるとも。」
真尋は武器を片付けてアジトに向かっていた。
「とにかく戻って来い。もう、奴は居ねぇんだろ?」
彰仁の声を受け、真尋はアジトの扉を開けようとした。
すると、突然銃声が鳴り響いた。
幸いにも真尋には当たらなかったが、植木に当たった様だった。
そして、見知った姿と声の青年が歩いて近付いてきた。
「久しぶり、真尋ちゃん。酷いなぁ…いきなりオレを吹っ飛ばすなんて。」
理央がやれやれと言った表情をしながら真尋に話しかけていた。
真尋はいつものふざけた調子じゃなくなり、彼を睨みつけるようにして言った。
「君は一体何を企んでいるんだい?
彰仁くんを殺そうとしたり、そっくりな影武者を合同訓練に紛れさせようとしたり…
さっきはウチまで殺そうとしたね。まさか、姫森ファミリーを壊滅させようと…。」
「教えられないねぇ。それに、すぐにくたばる様な弱小共なんて…興味無いよ。
企業秘密ってやつだからさ…知りたいなら、オレと一緒に龍神ファミリーに…。」
理央が真尋を連れて行こうとした時、彰仁が自室の窓を開けて飛び降りてきた。
彼の頭目掛けてドロップキックをかまし、理央は倒れ込んだのである。
「いつまでも戻って来ねぇから、何かに巻き込まれたんじゃねぇかと思ってな。
部屋から覗いてたら、どうやら…裏切り者が姿をのこのこと見せやがったと言う訳だ。」
彰仁は理央が持っていた拳銃を没収しては、
地下牢から退屈そうな顔をして出てきた友介に渡した。
「道草ファミリーのメッシュ野郎にでも流しといてくれ。」
「オッケー…って、これ…理央のだよね?まさか、来てたの?」
「ああ、今はすっかり伸びてるけどな。俺がドロップキックをぶちかましたら、このザマだ。」
彰仁が指差すと、理央は泡を吹いて倒れている状態になっていた。
「撃つのが上手いわりに撃たれ弱いってね…。」
友介は呆れた様な表情をして、理央を引きずるようにして連れて行った。
真尋は突然現れた彰仁に驚きつつも、感謝の言葉を述べた。
「助かったよ。
彰仁くんが来なかったら、ウチまで龍神ファミリーの悪事に加担させられるところだった。」
「俺が言えた義理じゃねぇけど、気を付けろよ。」
彰仁がやれやれと言った表情で真尋に言うと、善処するよと言う声が彼女から聞こえた。
そして、鈴音が扉を開けて真尋の元に駆け寄った。
「ビックリしたよ…まさか、理央くんがこっちに来てたなんて…。
怪我は無いよね?」
「ああ、問題は無いよ。
向こうに連れて行かれそうになったタイミングで、彰仁くんが降って来たのさ…助かった。」
「降って来た…?あっちゃんが…?」
鈴音は何が言いたいのか分からないと言った表情をしていた。
彰仁がそれに気付いて一言言った。
「まぁ、何だ…俺が部屋から飛び降りた先に理央が居た…ってだけだ。」
「部屋着姿でよくやるね…!?」
「伊達に鍛えてないからな。」
彰仁が澄ました顔で言うと、鈴音は苦笑しながら危険予知は私の方が上手だけどねと返した。
そして、アジトの中に戻り…司令室へ向かった。
航が真尋の顔を見ながら言った。
「本当に危なっかしいね、君は。」
「しょうがないだろう。たまにはウチも戦闘で役に立ちたいからな。」
「無事だったから良いけど、勝手に行動するのは止めて頂きたいものだね。
それで、結局そいつはどうしたんだい?」
航が問いかけると、彰仁が答えた。
「友介が引きずり込んで行ったな。
俺の足技が頭に命中して気絶したから地下牢に縛り付けるつもりなんだろ。
それと、真尋が言ってたネズミの正体は理央だったぜ。
何やら企んでて、真尋にも協力してもらおうと思ったんだろうよ。」
「そうか…友介に誘導尋問を行ってもらって、洗いざらい吐いてもらわないとね。」
「ああ、アイツ…嬉しそうだったしな。友介のあんな顔…久しぶりに見たぜ。」
彰仁が冗談めかして言うと、航が苦笑していた。
姫森ファミリーを裏切り、突如としてアジトに現れた理央。
彼の企みとは一体…?




