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Episode 12

理央が龍神ファミリーと行動を共にするようになって数日。

姫森ファミリーと道草ファミリーは、合同訓練を行う為に別棟の道場に居た。


「何で私達も来なきゃいけないのよ…。」


ジャージ姿と言う滅多に見られない服装をしている乃蒼が愚痴る様に言った。


「たまには良いじゃないか、実際に外の世界を知る事も大切だよ。」


「はぁ…正直言って運動は得意じゃないのよね。魔法でズルしても良いかしら。」


航はフォローしつつも、意に介さない様子の彼女。

友介が二人を見て言った。


「航はともかく、乃蒼は大丈夫なの?魔女って魔法は強いけど物理攻撃は弱いって聞くし。」


「魔法でやれば良いのよ。嫌いなやつも簡単に消せる、それが魔法よ。」


早く帰りたいのか何なのか、毒づき始めている。友介は引き気味であった。

彰仁は苦笑しながら言った。


「安心しろ、流石に()()()()と殴り合いたいとか言う奴は居ねぇよ。」


「敬ってるんだか馬鹿にしてるんだかどっちか分からない言い草ね。」


「尊敬してるさ。それより、向こうの魔女もあまり乗り気じゃないみたいだぞ。」


彰仁が指差した方向を見ると、桜が顔面蒼白な様子で座り込んでいた。

幾馬が心配そうな顔をして話しかける。


「む…体調が悪いのか?」


「違う…私は、こんな激しい事をするって聞いてなくて…。」


「まだ何も始まってないぞ。先が思いやられるな…。」


「良いから、始めてて。閉会式ぐらいは、出てあげる。」


桜がそう言うと、幾馬は悩みつつもそこで休んでろ、と言ってファミリー代表の席に向かった。

歩美はやる気満々な様子で立っていた。


「ほら、幾馬。私達のコンビネーションを発揮するチャンスだよ。」


「いつも通りだ、やる事は変わらない。」


「あはは、熱い想いを持っていながら受け答えはクール。そういうの嫌いじゃないよ。」


歩美が言うと、幾馬はそうか、とだけ言って静かになった。

そんな中、どういう訳かテンションが高い彰仁に鈴音は苦笑いをしているのであった。


「よし、徹底的にしごいてやるからな!俺様の言う通りに動けよ?」


「あっちゃん、いつもと別人みたいだねぇ。」


「中途半端にやってられっかよ。」


「それもそうだね!みんな、私に付いて来られるかな?」


鈴音がそう言うと、ひとまず他の構成員は返事をした。

彰仁はそれでこそ姫森ファミリーだ、と言った。


そして、訓練が始まった。

特殊な人形に向かって攻撃を当てていくと言う物だ。

二人同時に当てると人形は壊れると言うもの。

同時に、なのでタイミングがずれる事は勿論…能力の違いも考慮しないといけない。

単純な様で難しいのである。

しかも、同じ武器を使う人間同士のペアじゃないから尚更。


それぞれが訓練に励む中、香恋が上手く行かないことにイラついて人形を蹴っ飛ばした。

するとどういう訳か人形が壊れたのである。


鈴音はそれを見て、珍しい事もあるものだねぇと呟いていた。


訓練をしている中、どういう訳か青年の声が聞こえた。

しかも、どこか聞き覚えのある声である。


「みんな、訓練かい?精が出るねぇ。オレは途中からだけど参加させてもらうよ!」


「お前、何でここに居るんだ!?」


彰仁がビックリしていた。無理もない、裏切ったかつての仲間が普通にそこに居るからである。


「アッキーじゃないか、久しぶり!」


「冗談じゃねぇ…今更何しに来たんだよ。」


理解に苦しむ様子の彰仁。

普通に話しかけて来てるじゃないか、仮にも殺そうとした相手に。

そう思っていた。


「話せば長くなるよ、色んなことがあったし…って何か風強くない…?」


「台風は来ねぇはずだが。」


「あれー?おかしいなぁ、誰かオレに向かって…ってうわああああ!!」


鈴音が突如扇から竜巻を起こし、彰仁に話しかけてきた青年をふっ飛ばしたのである。

青年は遠くへとそのまま飛ばされて行った。彰仁は飛んでいけ、お前は自由だと呟いた。

血相を変えた様子で鈴音が来た。


「間に合った…!あっちゃん、何で気付かなかったの…?」


「感動の再会じゃなかったんだな…残念だよ。」


「私はおかしいと思ってたんだよ。何で私達が訓練をしてる所に普通に入って来てたのか。

 そもそも、理央くんが出て行った後に合同訓練の場所と日程を皆に教えたんだから。

 明らかに敵が入って来たに決まってるでしょ?」


「そりゃそうか。まぁ良い…お前の反応速度は本当に速いな。」


彰仁がそう言うと、鈴音は得意げな顔をしつつももう少し気を付けてよね、と付け加えた。

理央のような姿をした偽物だったと言う事か…彰仁はそう考えた。

それにしても、一体今は何をしてるのだろう…気になるところではある。


「彰仁さん、今の竜巻は何だったんすか!?」


「ああ、うちのボスはすげぇだろ?風も操れるんだ。」


彰仁がそう言うと、鈴音は苦笑していた。

そして神妙な顔つきになって言った。


「洗脳が解けなかったら、やるしかないかもね…。」


「え?理央さんやっちゃうんすか!?」


久志の素っ頓狂な声が聞こえた。


「強引なやり方だけどね。()()()()()()()()()って事。」


鈴音がいつもより冷たい感じの声色でそう言うと、彰仁は反論をした。


「そうは言うけど、加減出来るのか?」


「私は出来るよ、伊達にこの世界で生きて来てないからね。

 あえて生かすのも立派な戦略、極悪なやり方のあっちゃんには分からないかもしれないけど。」


「俺はファミリーの為にやってんだ。無意味に殺戮してるわけじゃねぇ。

 敵は少ない方が良い、だからその絶対的な数を減らすんだ…バランス取ってんだよ。」


「小難しいこと言っちゃって。まぁいいや…危ない時はあっちゃん、よろしくね。」


鈴音がそう言って伸びをすると、彰仁はやれやれと言った表情で頷いた。

二人のやりとりを見て久志はぽかんと口を開けていた。


「彰仁さんって、あっちゃんって呼ばれてるんすか?」


突拍子もない事を聞いてきたので、彰仁は一瞬戸惑いを見せるも答えた。


「ああ、そう呼ぶのはコイツしか居ねぇけどな。」


「元々はアキちゃんって呼ぶつもりだったけど、昔の私は舌足らずでねぇ…

 何かあっちゃんの方が呼びやすいし良いやってなったんだと思う。」


「じゃあ、幼馴染か何かっすか?」


「そうだな。幼稚園の前から…だっけか。」


彰仁が鈴音に確認を求めると、鈴音は頷いていた。


「あっちゃんは私より7ヵ月上だもんね、幼稚園に入るの早かったし。」


「ああ、俺が2月生まれでお前が9月生まれだしな。」


彰仁がそう言うと、久志はへぇと相槌を打っていた。


「何か彰仁さんって鈴音さんと結構歳離れてそうに見えたんすけど、

 意外とそこまで変わらないんすね。」


「留年したらスズと同学年だぜ、つまりはそう言う事だ。」


「あっちゃんは留年する様なおバカさんじゃないでしょ!」


鈴音がツッコミを入れると、彰仁が冗談だと誤魔化していた。

仲睦まじい様子を見て久志は微笑ましい気持ちになっていた。


「あ、訓練の続きやってくるっすね。」


「何だよやけに満足げな顔しやがって…行って来い。」


彰仁がぶっきら棒に言うと、久志はやってやるっすと答えていた。

やけに元気の良い様子の彼を見て、彰仁は何となく疲れがほぐれていた気がした。


「理央が抜けた穴はデカすぎると思ったけど、アイツなら何とかやれるかもな。」


「まぁ、戻って来て欲しいけどね…道草ファミリーの方も久志くんが居ないと困るだろうし。

 でも…すんなり帰ってきてくれなさそうなんだよね、ああ見えて。」


「アイツは変なこだわりがあるからな…。」


彰仁が溜息を付きながら言うと、鈴音は確かに、と言った。

理央は常におちゃらけていて大雑把に見えるのだが、実は神経が細かい部分もあると言う。

そんな中、彰仁が鈴音の方を見ている。視線に気づいた鈴音が言った。


「どうしたの?顔に何か、付いてた…?」


「違ぇよ、お前さ…いつも長袖だけど、何か隠してんのか?」


彰仁が日頃から気になっている事を言った。

鈴音は溜息を付きながら言った。


「何でそれをあっちゃんが知りたがるの?」


「俺は側近だし、お前から見たら身内みたいなもんだろ。

 小さい頃は夏の暑い時期なんか、半袖だったしよ。今じゃ全くそれが見られねぇし。

 まさか、リストカットとかじゃねぇよな…。」


彰仁が言うと、鈴音が不機嫌な顔をしつつも口を開く。


「私がそう言う事やる人間だと思う?」


「分からねぇ。お前はいつも八方美人だからな…良くも悪くも、だ。

 悩んでるなら言え、その為のアンダーボスだろ。」


「見ても良いけど、後悔しないでね。」


意味深な事を呟いた後、上着を脱いで下に着ていたTシャツの袖をまくって見せた。

腕には刺青なのか魔法陣なのか、良く分からないものが刻まれている。

彰仁は思わず呆気に取られてしまっていた。


「私がファミリーのボスになった日の夜に、両腕に激痛が走ったの。

 何が何だか分からないまま、見たら…丁度それがあって。

 詳しい事は何一つ分からないんだよ、何でこれが急に出来たのかすら、ね…。」


「俺は知らなかったぞ、そんなのが出来てたなんてよ。

 まるで呪いだぜ。」


驚きを隠せないのか、いつもより目を見開いたまま彰仁が言った。


「そうかもしれないし、違うかもしれないね。今は何とも言えない。

 ただ、私が自分で触っても何も起こらないし痛くも無いんだ。」


「風呂とかどうしてんだ?秘密にしてても見られるだろ、誰かに。」


「一人で入ってるから問題ないよ。」


鈴音は特に悩む事も無く答えた。


「そうか…お前の病気と何か関係は…?」


「前より、酷くなったね。能力を使うと実は頭が痛くてしょうがないんだよ。

 いつもこうだし見られたくないから、耐えてるんだけどね。」


「やっぱり呪いじゃねぇのか?」


彰仁が言うと、鈴音が考え込んでから口を開いた。


「さぁね…真尋ちゃんに聞いても答えが出ないんじゃないかな。」


「諦めんのかよ、そんな簡単に。消せるかもしれねぇだろ?」


「結果として、勲章みたいになってるから良いけどね。」


鈴音が苦笑しながら言うと、彰仁は溜息を付きながら言った。


「あのなぁ、勲章ってのは俺たち野郎共が欲しがるもんだ。

 女子が…ましてはお前の様な可憐な奴には要らねぇだろ?」


「私は香恋ちゃんじゃないよ…?」


「知ってるっての。俺が言いたいのはそう言う事じゃなくてだな…

 本当は暑いの我慢してるんだろ、誤魔化しても無駄だぜ。

 日焼け対策とか適当な事抜かして長袖で隠す口実にしてるって訳だ、そうだろ?」


「日焼け対策はしないといけない事だけど、ねぇ。

 少なくとも、見せたら怖がるでしょ。あっちゃんだって、ピアス開けるぐらいでやめてる癖に。」


「それとこれとは話が別だろ、俺のはただのお洒落とかそういうのだしな。

 お前は望んでも無いのに、体に足枷を付けられてるって事になんだぞ。」


彰仁が言うと、鈴音はやれやれといった表情で言った。


「あなたが言いたい事は分かったよ。とにかく、この話は二人だけの秘密にしようね。」


「俺たちで自ら掟を破るのかよ…。」


「堅い事は考えないで良いの。私が元々、掟を作ったんだから。

 だから破るのも変えるのも自由なんだよ。」


鈴音がそう言うと、彰仁が頭を抱えて言った。


「お前…俺が法律みたいな事サラッと言ってんぞ、大丈夫か?」


「だってファミリーのボスなんだもん。」


鈴音がそう言って微笑むと、彰仁はやれやれといった顔になっていた。

そして合同訓練が終わったようで、それぞれの位置についている。


「皆お疲れ様!今日の訓練で出来なかった事は、決戦の日までに仕上げるようにしておいてね。

 それじゃあそれぞれのアジトへ帰ろうね…解散!」


鈴音の簡潔で勢いのある挨拶が終わり、一同はそれぞれの建物へと向かって行った。

彰仁は道中で理央が何をしてるのか、鈴音の秘密を知ってしまったからにはどうするか、

悩んでいるのであった。

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