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Episode 11

理央の裏切りにより、混沌とした空気になっている姫森ファミリー。

同盟を組んでいる道草ファミリーも例外では無く、アジトの中で右往左往していた。


そんな中、鈴音による朝の放送が鳴り響いた。


「みんな起きてる?おはよう、良い朝…とは言えないかもしれないけど、頑張って行こうね。」


いつもと違う、何処か落ち着いた調子だった。

彰仁は流石にお前もな…と呟き、食欲が無いのか自分で朝ご飯を適当に済ませて一人自室に行った。


「仲間を救う覚悟があるなら…その身を捨てるまでだ。

 近道をしてぇなら、線路に行くのが手っ取り早い…だが、そんなくだらねぇ事は無しだ。」


意味深な事を呟きながら仕事をしていた。

そんな中、扉を叩く音がした。


「誰だ…用があるなら入ってくれ。」


彰仁がそう促すと、鈴音が扉を開けて入って来た。


「あっちゃん、ご飯食べたの?」


「一応…今日は生憎、食欲が無いんでな。」


彰仁は溜息を付きながら言った。


「ちゃんと食べないと力が出ないよー?ほら、これ…あげる。」


鈴音がサンドイッチを渡して来た。


「具材はね、海老カツと千切りキャベツにオーロラソースだよ!

 あなたは、こういうのが好きって昔から知ってるしね。」


「ああ、流石…幼馴染は強いな。」


彰仁は照れ隠しなのか冗談交じりに言った。そして、サンドイッチを食べ始めた。

鈴音は笑いながら言った。


「何それー!とにかく、私が居て良かったね。

 あっちゃんが優しいのは分かってる。

 何だかんだ言って…理央くんの事が心配でしょうがないんでしょ?」


「お前には敵わねぇな、スズ…。

 ああそうだ、俺は今まで仲間だったアイツがどうなっちまうのか気が気じゃねぇんだ。

 せめて、他の奴らの前でこんな姿を見せたくねぇから

 俺は部屋で仕事して気を紛らわしたかったのさ。」


「やっぱりねぇ…そんな事だろうと思った。

 大丈夫、私が居るから。」


鈴音はそう言って、彰仁の頭を撫でた。

すると、彰仁はビックリしたのか照れ隠しなのか動揺している様だ。


「お、おい…!何すんだよいきなり。」


「何かねぇ、あっちゃんって…誕生日的には私より年上でしょ?

 でも同い年だし、それに何か…弟みたいな…不思議な感じ。」


「俺が弟…?何言ってんだお前、どっちかと言うとスズは妹だろ。

 気まぐれだし、ワガママだし…。」


「わがままじゃないもん、それに気まぐれじゃないよ?」


「そりゃあ、他の奴らに対しては普通に接してるだろうよ。

 だけど…俺への態度、お前のは何だ?

 まるで、好き勝手言い放題してるみてぇだろ。」


彰仁が平常心を保とうと皮肉を鈴音に向かって言うと、まるで効いてないのか鈴音は笑っていた。

そして、急に真剣な表情になって言った。


「私はねぇ、あっちゃんが居なかったら今頃…精神がボロボロになって死んでたと思うよ。

 凶弾に倒れたって聞いた時はもう、気が気じゃ無かった…。

 でも、私はボスだし…皆を引っ張っていかなきゃいけなかったからね。

 あなたが目覚めてくれた時、私はどんな事より嬉しかったの。

 長々と、何を言ってるんだろうって思うでしょ?

 でもね、本当に…あっちゃんが居ないマジックシティなんて意味ないし、救う理由が無い。

 そう言い切れるくらい、私にとっては大事な存在。

 4年前の事覚えてるよね?」


鈴音が長々と話す中、突然の問いかけに彰仁はもちろんだ、と答えた。

そのまま鈴音が続ける。


「私がボスになろうって話になった時、賛同してくれる人は殆ど居なかったんだよ。

 まだ早すぎるとかさ、か弱い女の子に務まるのかとか…色々言われたっけ。

 乃蒼ちゃんと真尋ちゃんは必死でそういう声を振り払ってくれたんだ。

 勿論嬉しかったし、感謝もしてる。

 でも、私は何より嬉しかったのはね?

 それなら俺がアンダーボスとして全力で支えてやる、なんて言ってくれた事だよ。」


彰仁はそう言われて、んな事言ったっけな…ととぼけていた。

鈴音は言ってたよと笑いながら言い、そのまま続きを話す。


「私にとってはただ、幼馴染で仲が良い男の子だったあっちゃんが…

 その時から凄く頼もしく見えたんだ。

 あれからは色々と大変な事もあった。付いて行けないって言って辞めてく人もいたし、

 戦いに付いて行けずにそのままフェードアウト…なんて人も居た。

 それでもあっちゃんは何があっても、ずっと居てくれた。

 たまに減らず口なんか叩いてくれたけどね。

 私はそこから、あなたの事が…。」


鈴音が話している途中で、彰仁が遮るように言った。


「おい、ちょっと待て!告白する流れだったのか!?」


「んー?最後まで聞かなくて良いの…?」


「別に良いってそういうのは。今更言葉なんか要らねぇよ。

 お前が言いたいのはそう言う事だろ。」


そう言うと、彰仁は黙って鈴音を抱き寄せて来た。

何をするのかと思いきや、頬にキスをした。

鈴音はビックリして目を丸くしている。そのまま、顔を赤くして黙り込んでしまった。


「たまには俺に先を行かせろよ。お前ばっかりズルいぞ。」


彰仁が今までに無い様な優しげな表情になっているのに気づき、

鈴音は思考が追い付かない様子。

何か言葉を紡ぎ出そうと思ったが、彼女の口から出たのは…

ひゃい、と言う…何処か情けない返事だった。

その声を聞いて彰仁は笑いつつも、心配そうな顔に変わった。


「スズ、どうした。お前らしくねぇぞ…?」


「あ、あの…ちょっと待ってよ。あっちゃんも、もしかして…私の事を…?」


「馬鹿、言わせんなよ。好きに決まってんだろうが…。」


彰仁はいつもの悪態を付くかの様な調子で言った。

ただ、その顔をよく見ると何処か満更でも無さそうである。


「やっと、両想いになれたんだね!」


「遠回りばっかりしてたがな。まぁ、今考えりゃそれで正解だったよ。


彰仁がそう言うと、鈴音は何処か嬉しそうであった。

彰仁はその表情を見て、優しい気持ちになるのである。

そして、思い出したかの様に言った。


「…とにかくだ、今の目標は龍神ファミリーの討伐。

 道草ファミリーと連携を取る事、理央をどうするのか戦いの中で決める事だな。」


「うん、お楽しみはその後で…ね?」


鈴音がそう言うと、彰仁は何だよそれは、とツッコミを入れた。

そして、扉を叩く音がしたので鈴音はビックリして起立の姿勢になった。

彰仁が入れ、と言ったので扉を開けたのは真尋だった。


「お二人さん、随分と仲が良いねぇ。

 まぁ結構な事じゃないか…ギスギスしてるのが続くよりはずっと健康的さ。

 それで、何を盛り上がってたんだい?」


真尋が単刀直入に聞くと、彰仁はさぁな…と誤魔化す様に言った中、鈴音がストレートに言った。


「カップル成立したの、あっちゃんと。」


「待て、そう言うのは段階があるだろ…!」


彰仁が言うと、鈴音が別に良いじゃん、と言いたそうな不満気な表情をした。

それを見て真尋は笑っていた。


「そうかそうか、君達がやっとか…正直待ちくたびれた気分だよ。

 おめでとう!」


「悪い気はしねぇ。」


「ありがとう!私も嬉しいよ…それで、真尋ちゃん。

 道草ファミリーの、あの子…桜ちゃんが手一杯な時は助けてあげてね。」


「そのつもりさ…同盟を組むって事は連携をいかに上手く取るかってことだろう?

 この乾真尋に任しとけ。」


真尋がそう言って笑うと、彰仁も頼んだぞ、と一言だけ言った。

そして、颯爽と部屋を出て行った。


鈴音も気が済んだのか、また後でねと言い部屋を出た。

部屋の中は彰仁だけになった。


一人になった空間の中で、彰仁はあれこれと思考を巡らせる。

ぶっきら棒で皮肉屋なこの自分は、いざ目を閉じると誰もが寂しがっていた。

その一方で能天気で何処かおバカなアイツは、いざ居なくなると…どうだろうか。

憎しみの対象になっていた。倒さなきゃいけない相手に変わっていた。

かつての仲間を手に掛ける事になるんだ、並の覚悟じゃダメだろう。


そんな事を彰仁は考えていた。

ふと窓の外を見ると、紅葉が色づいていた。

空は混沌としたままであるが、まるでそれが灯りのように見えたのだ。

彰仁は思わずそのまま外を眺めていた。


昼になり、彰仁は仕事も終わらせてやることが無くなったのかリビングまで向かった。

そして、そのままソファに座り体を伸ばしていると、珍しく遥香が近くに来た。


「彰仁くん、ちょっと良い?」


「ああ…何の用だ。」


「私達の軍資金、不自然に使われてた日があったのよ。何か知らないかしら?」


遥香が言うと、彰仁は怪訝な顔をしてデータを見せてみろ、と言った。

そのまま手に持っていた紙を渡すと、確かに使われている様だった。


「絶対アイツの仕業だな。理央のやつは、何を企んでんだ?

 俺達が財政難になって、仲間割れする事を狙っているのか…?」


「私には分からない。でも、そうかもしれないわ…。」


「律儀にデータにまで残して、何がしたいんだか。

 まぁ良い…アホキノコなりにあれこれ考えてんだろ、対策を練らないとな。」


遥香はえぇ、と短く返事をして事務室に戻った。

今度は友介が近くに来た。彰仁はまた何かあるのかよ、と悪態を付きつつも話を聞くことにした。


「今度は何だ…?」


「えーっと、地下牢から何故か囚人が消えている。」


友介がそう言うと、彰仁は落ち着いた調子で尋ねた。


「檻とか罠とかあっただろ、あれはどうした?」


「突破されてるし壊されている、修繕しないといけないみたい。

 ああ、面倒臭いなぁ。」


友介が溜息を付きながら言うと、

彰仁は真尋じゃなきゃ無理だなと思った。


「こうなったら乾先生に頼めよ。建築も出来るみてぇだぞ。」


「ほんとに…?凄いね…。」


友介は感心して驚いている様だ。


「じゃあ、後で頼んでみる。疲れてるだろうにごめん。」


友介が最後に謝る素振りをしたので、彰仁は気にすんなとだけ言った。

他にも何かありそうだと思い、彰仁が身構えていると…今度は香恋が来た。


「あのさぁ、アッキー。」


「何だよ…また何か理央がやったのか?」


「へ…?違うって。アタシのアクセ知らない?」


思わず吹き出しそうになった。

そのまま落ち着いて言った。


「そのぐらい自分で探せよ、馬鹿。」


「ちょっと、それは無くない!?」


香恋が涙目で抗議するも、彰仁は知らん顔である。

やれやれ、と言った表情に変わり言った。


「部屋に落ちてたりしねぇのか?真面目に探せっての。

 そんで?アクセってどれだよ。お前…色々持ってるから分からねぇんだよ、こっちは。」


彰仁が悪態を付く様に言うと、香恋が説明を始めた。


「ブレスレット。黒いので…雷が書いてあるやつ。

 あれがないと、アタシの能力が暴走しちゃってコントロールできなくなるんだ。」


「すげぇ重要なブツじゃねぇか、それを早く言え。」


「言おうとしたじゃん!アッキーがふざけんな馬鹿とか言うから。」


彰仁と香恋が兄妹喧嘩みたいなやり取りになっているのを見て、

他の構成員は微笑ましいのか笑いながら見ていた。

それに気付いた彰仁はこっち見んな、と悪態を付きながら突っ込んだ。

静かになったので落ち着いた声で言う。


「別にそういう言い方はしてねぇだろ…?分かったよ、乃蒼にでも頼んで来い。

 あの人は探し物の天才だぞ。」


「しょうがない、言ってくるかぁ…。」


「何で嫌そうなんだよ。」


「えー?何か怖いし。」


香恋が不満気に言うと、彰仁は苦笑しながら言った。


「怖くねぇよ。すげぇ優しいぞ、あの人は。」


「圧を感じるんだよなぁ。」


「そりゃ身長があるからな。理央と同じくらいじゃなかったか。」


「あ、待って…理央の名前出さないで。何か今、無性にムカついてきた…。」


香恋がイラついてきたのか、拳を強く握って震えている様だった。


「そりゃ悪かったな。とにかく言って来いよ。」


「はーい…。」


香恋は返事をしながら、とぼとぼとPC室へと歩いて行った。

そして、彰仁は紅茶を淹れて飲みだした。

余程激務で疲れてるのか、やけにおいしく感じた様だ。


ソファでくつろいでいると、鈴音が話しかけてきた。


「聞いた?ちょくちょくファミリーの中でトラブルが起きてるよね…。」


「事務の方からも、地下牢も、何なら香恋の私物も…何かしらの報告が上がってるぜ。」


「全部理央くんの仕業だとして、何が目的なんだろう…?」


「俺もはっきりとは分からねぇが、確かなのがある…。

 混沌を起こして、ファミリーの団結をバラバラにしてやろうって事だろうよ。」


彰仁がそう言うと、鈴音は何か腑に落ちない様子だった。


「それは分かるんだけど、わざわざ証拠に残るような事するかな?

 お金だって、その日に使ったって言う記録が残ってるみたいだし、

 地下牢も何か背格好が理央くんみたいな人がやってたのが映像に残ってるし、

 香恋ちゃんのは部屋に侵入したと思うけど。一体、どうやって…って話なんだけどね。」


「アイツは潜入調査もよく行ってたし、盗賊ギルドとの関わりもある。

 もしかしたら、知り合いのツテで…色々思いついてやったんじゃねぇのか?」


「なるほどねぇ…その能力をマシな事に使えば良いのになぁ。」


鈴音が言うと、彰仁は全くだ、と相槌を打った。

そして、真剣な面持ちで言った。


「で?どうすんだ…?友介のは真尋が何とかするみてぇだが、お金と香恋のは面倒だぜ。

 奪ったお金を何に使うのか、奪ったアクセサリーで何をするつもりなのか、

 理央の企みを暴かねぇ事には…。」


すると、鈴音が思いついたかの様に言った。


「私も調べてみる。あっちゃん、手が空いてたら一緒に調査行こうよ。」


「ああ…。もし空いてなかったら千夜でも誘ってくれ。」


「良いよー。私達が留守の時は…航くん達にお願いしようかな。」


それが良いだろ、と彰仁は言った。


理央の不可解な行動、そして姫森ファミリーの中で起こる様々なトラブル。

果たして…解決の糸口は見つかるのだろうか。

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