表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/20

第9話 異世界令嬢、秘策のスイーツを考案しますわ!

 ◆ スイーツコンテストへの挑戦! 最高の一品を作りますわ!


 カフェ・ルミエールの厨房に、甘いバニラの香りが漂っていた。

 カウンターの上には、メルが試作したスイーツがずらりと並ぶ。


「……どれも美味しそうですわね」


 メルは腕を組みながら、自分の作ったスイーツを吟味する。

 シフォンケーキ、スコーン、タルト、カヌレ——。どれも老婦人の指導のもとで仕上げた自信作だ。


 しかし——。


「でも、これじゃダメですわ!」


 メルは勢いよくテーブルを叩いた。


「えっ!? なんで!?」


 響が驚いてメルを見る。


「このコンテストで優勝するためには、ただ美味しいだけじゃいけません! 他にはない、私だけのスイーツを作る必要がありますわ!」


 メルの瞳がキラキラと輝く。

 響は苦笑しながら、「まあ、お前らしいな」と呟いた。


「ふむ……なら、どんなスイーツを作るか決めなきゃな」

「ええ。せっかくなら、私のいた世界には存在しなかったものを……」


 メルは考え込む。


(だったら、逆に貴族の世界で食べられていたスイーツを、この世界の技術で作り上げたらどうかしら?)


「おばあ様、コンテストの審査基準は何なのですか?」


 メルは老婦人に尋ねた。


「うん、審査員は“味・見た目の美しさ・独創性”の三つを基準に評価するんだよ」

「……独創性!」


 メルの瞳が輝く。


「だったら決まりですわ!」

「お? もう考えついたのか?」


 響が目を丸くする。


「ええ! 私が作るのは——究極のミルフィーユですわ!」



 ◆ 究極のミルフィーユを作りますわ!


「ミルフィーユ?」


 響は首を傾げる。


「ああ、あの何層にも重ねたパイ生地のお菓子だね」


 老婦人が頷く。


「ええ! でも、普通のミルフィーユではありませんわ! 極限までサクサクに焼き上げたパイ生地と、この世界の特製カスタードクリームを使った、究極のミルフィーユです!」

「なるほど、確かにお前のいた世界のスイーツと、この世界のスイーツを融合させるって発想か」

「そうですわ! そして、ただのミルフィーユではなく、私が生まれた国をイメージしたアレンジを加えます!」

「ほう、どんな感じに?」

「まず、パイ生地を四層にして、間に紅茶風味のカスタードクリームを挟みます!」

「紅茶の風味……?」

「ええ! 私の世界では紅茶はとても貴重なものでした。その香りと甘みを活かしたカスタードクリームに、ほんのりとしたラム酒の香りをプラスして、大人の味わいに仕上げます!」

「……うまそうじゃねぇか」


 響がゴクリと唾を飲み込む。


「さらに、トップにはキャラメリゼを施し、パリッとした食感をプラス! そして、仕上げに金粉を散らして、見た目も貴族らしく優雅に!」

「……いいねぇ、なかなか考えたじゃないか」


 老婦人が感心したように微笑む。



 ◆ 試作開始! 究極のミルフィーユへの道


 こうして、メルのミルフィーユ作りが始まった。


 しかし——。


「うぅ……! パイ生地が膨らみすぎましたわ!」

「こっちは焼きすぎて硬くなっちまったな」

「これは……ラム酒が強すぎて、お子様には向きませんわね……」


 試行錯誤の日々が続く。

 メルは諦めずに何度も作り直し、微調整を繰り返した。

 何度も失敗しながら、少しずつ理想のミルフィーユに近づいていく。


(あと少し……あと少しで、最高の一品になりますわ……!)


 そんなある日——。


「お、今度のは見た目もいい感じじゃねぇか?」


 響がメルの新作ミルフィーユを見て言った。


「……ふふ、今回のは自信がありますわ!」


 メルは嬉しそうに微笑みながら、焼き上げたミルフィーユをお皿に乗せる。


「じゃあ、試食タイムだな」


 響と老婦人が、スプーンを手に取った。


「いただきますわ!」


 パリッ……!


 キャラメリゼされた表面が心地よい音を立てる。

 次の瞬間——。


「……サクッ!」


 軽やかなパイ生地が、口の中でほろほろと崩れる。

 それと同時に、紅茶の香りがふわっと広がり、まろやかなカスタードが舌を包み込んだ。


「……こ、これは……!」


 響の目が大きく見開かれる。


「うん……これは、すごいねぇ」


 老婦人もにっこりと微笑む。


「……やった……やりましたわ!!!」


 メルの歓声が、カフェ・ルミエールに響き渡った。




 → 次回:「異世界令嬢、スイーツコンテスト本番!」


 ついに迎えたスイーツコンテスト本番!

 メルのミルフィーユは審査員や来場者に受け入れられるのか!?

 そして、強敵たちとの対決の行方は——!?


 次回、異世界令嬢の挑戦が、ついにクライマックスを迎える——!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ