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第7話 異世界令嬢、スイーツの虜になる!

 カフェ・ルミエールの厨房に、甘く芳ばしい香りが広がっていた。


「メルちゃん、今日のスイーツは特別だよ」


 老婦人が微笑みながら、小さなグラスに入ったデザートを差し出した。

 その瞬間、メルフィーナの視線が吸い寄せられた。


「これは……?」


 グラスの中には、艶やかな黄金色の層と、しっとりとしたクリーム色の層が美しく重なっている。

 陽光を受けたカラメルが、琥珀のように輝き、ほんのりと甘い香りが立ち昇る。


「これはね、プリンっていうのさ」


 響が説明すると、メルフィーナは興味津々な表情でスプーンを手に取った。


「……ふむ、見た目はとてもシンプルですわね」


 指先でスプーンを軽く押し当てると、表面がぷるんっとわずかに揺れる。

 慎重にスプーンを入れ、クリーミーな断面をすくい取る。


(な、なんて柔らかいのかしら!?)


「……まるで、宝石のようですわ……!」

「ふふ、早く食べてみな」


 老婦人に促され、メルはひと口含む。


 ——その瞬間。


「っっ!?!?」


 メルの瞳が驚きに見開かれる。


(これは……!?)


 舌の上で溶けるような口どけ。

 まろやかで濃厚な甘さがじんわり広がり、それを追いかけるように、ほろ苦いカラメルの風味が絡み合う。


「な、なんですの……この絶妙な甘さとほろ苦さの調和……!?」


 今まで食べてきたどんなスイーツとも違う。

 バターの香ばしさや、サクサクした生地の層を楽しむパイとも違う。

 しっとりとした生地が舌に溶けるケーキとも違う。


 まるで甘さが「流れるように」広がり、消えていく。

 それなのに、ほんのりとした余韻が舌に残り、もう一口食べずにはいられなくなる。


「い、今まで食べてきた貴族のスイーツのどれにも該当しませんわ……!」

「そりゃあ、貴族のために作られたお菓子じゃなくて、庶民が愛するスイーツだからな」


 響が隣でクスッと笑う。


「でも、美味しいだろ?」

「っ……!」


 メルは無言で、次のスプーンを口へ運ぶ。


「こ、これは……!!!」

「どうした?」


 驚きに固まるメルに、響がニヤリと笑う。


「この、クリーミーな口どけ……ほろ苦いソースとの対比……甘すぎず、それでいてしっかりとしたコク……!これはまさに——庶民の至宝ですわ!!!」

「いや、そんなに熱く語るもんじゃ……」

「響!! 私は決めましたわ!!」


 突然、メルは立ち上がる。


「私、スイーツの道を極めます!!!」

「はぁ!?!?」


 響と老婦人は、思わず目を丸くした。



◆ **メルのスイーツ革命、始動!?**


「こんな素晴らしいお菓子、貴族たちが知ったら間違いなく虜になりますわ! これは、歴史的発見ですのよ!!」

「お前、昨日まで『働くの大変ですわ……』とか言ってたくせに、なんで急にスイーツ革命家になってんの?」

「それはそれ、これはこれですわ!」

「いや、意味わかんねぇよ!」


 響がツッコミを入れるが、メルはすでにやる気満々だった。


「おばあ様! 私にもお菓子作りを教えてくださいませ!」

「ふふ、いいねぇ。じゃあ、さっそくやってみるかい?」


 老婦人は穏やかに笑いながら、メルの手にエプロンを渡した。



◆ **異世界令嬢、初めてのスイーツ作り**


「まずは、シフォンケーキを焼いてみようかね」


 老婦人が優しく説明する。

 メルは慎重に卵を割り、砂糖を加えて泡立てる。


(なるほど、こうやって空気を含ませるのですわね……!)


 慎重に泡立てていくが——。


「んんっ!? 手が疲れますわ……!」

「そりゃ、最初はそうだろ」

「こんな重労働、貴族の令嬢はやりませんのよ……!」

「いや、貴族関係ないから!」


 響のツッコミが炸裂する。

 なんとか生地を作り終え、型に流し込み、オーブンへ。


 数十分後——。


「焼けましたわ!!!」


 オーブンから取り出したシフォンケーキは、しっかりと膨らみ、ふわふわの仕上がり。


「やりましたわ!! 私、天才かもしれません!!」

「いや、初心者にしては上出来だけど、調子に乗るな」


 響が冷静にツッコミを入れるが、メルは満足げに頷いた。




→次回:「異世界令嬢、スイーツコンテストに挑む!?」


 ついにスイーツ作りに目覚めたメルフィーナ!


 だが、そんな彼女に、おばあちゃんから思わぬ提案が——!?


「今度、街でスイーツコンテストがあるんだけど……メルちゃん、出てみるかい?」


「スイーツ……コンテスト!?」


 異世界令嬢の新たな挑戦が、今始まる——!?


 次回、波乱の展開に乞うご期待!!

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