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第4話 異世界令嬢、居候生活始めますわ!

 ◆メルフィーナの異世界居候生活、開幕!


 カフェ・ルミエール。木の温もりを感じる趣のある建物で、窓には可愛らしいレースのカーテンが揺れている。入り口の扉には手書きの看板がかかり、そこには『CAFÉ LUMIÈRE』と優雅な筆記体で記されていた。


 店内からは香ばしいコーヒーの香りが漂い、木製のテーブルや椅子が整然と並んでいる。まるで時間がゆっくり流れるかのような、穏やかな雰囲気が広がる。


 その二階が、老婦人と孫の響が暮らす住居だった。階段を上がると、木目の美しい廊下が続き、リビングにはアンティーク調の家具が並んでいる。窓からは柔らかな陽光が差し込み、部屋全体に心地よい温もりを与えていた。


 メルフィーナは、異世界の知らぬ土地で、この場所に居候することとなったのだった。


「ここが君の部屋ね。狭いけど、しばらくは我慢してくれよ」


 響がドアを開けると、メルの目の前に広がったのは、小さなベッドと木製の机、そして見たことのない不思議な家具が並ぶ部屋だった。部屋の片隅には衣装ダンスが置かれ、その上には手編みのレースが敷かれたランプが灯る。壁には小さな時計とシンプルな棚が取り付けられ、そこには色とりどりの雑貨や本が並べられていた。


 メルはおそるおそる部屋に足を踏み入れ、ベッドの柔らかさを確かめるように座る。


「まあ……思ったより悪くありませんわね」


 しかし、目をやった先に、見慣れぬものがあった。


「これは……何かしら?」


 メルは壁の不思議なコンセントを見つめた。

 これは魔法陣かしら? 何かを差し込めば発動するとか……?


「おい、それには触るなよ」


 響の声が飛ぶが、時すでに遅し。


「試してみますわ!」


 メルは手にしていたフォークを、勢いよくコンセントに突っ込もうと——


「待て待て待て待て!!!」


 響が全力で止めた。


「なぜそんな危険なものを壁に埋め込んでいるのですか!?」

「普通に電気を使うための……って説明してもわかんねぇか!?」

「うーん……納得いきませんわね……」


 メルは唸りながらフォークを置いた。



 ◆未知との遭遇!?


 数分後。


「響!! これは一体……!?」

 メルの叫び声がキッチンから響く。


 急いで駆けつけた響が見たのは——

 冷蔵庫の中に頭を突っ込んで震えるメルの姿だった。


「お前、何してんの!!?」

「こ、ここは異世界の氷室なのですの!? どうして飲み物が凍っていませんの!? なのに涼しい!!」

「いや、それ普通に冷蔵庫な!」

「れい……ぞう……?」

「魔法じゃなくて、科学!!」

「科学ですの!? なんですのそれは!?」

「説明してると日が暮れるから、もういちいち驚くな!!」



 ◆さらなる驚き!


「きゃあああああ!!!」


 バッシャアアアアア!!


 響が駆けつけると——

 シャワーの水を全身に浴びながら、メルが悲鳴を上げていた。


「こ、これは……!? 水が……勝手に……っ!」

「いや、シャワーだよ!! ちょっと落ち着け!!」

「まさか……無意識に魔法を!? 私が知らない間に詠唱を……!?」

「してねぇから!! ただの水道!!」


 響は呆れながら、ずぶ濡れのメルにタオルを投げ渡す。


「この世界の技術、侮れませんわね……」

「頼むから少しずつ慣れてくれ……」



 ◆放っておけない。


 それからというもの、メルの異世界ポンコツぶりはとどまることを知らなかった。


 電子レンジを「魔導具ですの!?」と覗き込み、危うく顔面を焼きかけたり。

 洗濯機が回り始めた瞬間に「……これ、壊れてますの!?」と本気で怯えたり。  

 テレビをつけると「え!? え!? 誰か閉じ込められていますわよ!?」と大騒ぎしたり。


 そのたびに、響のツッコミが炸裂した。


 最初は「なんで俺がこんなポンコツ貴族のお守りを……」と不満に思っていた響だったが。


 メルの素直さや、異世界の常識に全力で向き合おうとする姿勢に、次第に「放っておけない」と思うようになっていく。


「……まったく、世話の焼けるお嬢様だな」


 響は小さくため息をつきながら、それでもどこか楽しそうに、メルの隣に座るのだった。



 ◆夕方になり、カフェ・ルミエールの一角で、老婦人、響、メルの三人は食卓を囲んでいた。


 老婦人が準備した温かい食事が並ぶテーブル。湯気の立つスープ、香ばしいパン、そして彩り豊かなサラダ。どれもシンプルな料理だったが、異世界の食文化に触れるメルにとっては、どれも新鮮に映った。


「このスープ……とても優しいお味ですわね」


 スプーンを口に運びながら、メルが感嘆の声を漏らす。


「そりゃあ、うちのおばあちゃんの特製だからな。家庭の味ってやつだ」


 響はパンを千切りながら言う。


「ふふ、ありがとうねぇ。メルちゃんも、たくさん食べておくれ」


 老婦人は優しく微笑みながら、メルに料理を勧めた。


(この温かい雰囲気……どこか懐かしい気がするわ)


 メルはカップを手に取りながら、ふと目を伏せる。

 王宮の食卓とは違う、飾り気のない素朴な料理と、和やかな会話。

 この世界に来て、初めて心が安らぐような感覚を覚えた。



 →次回:「異世界令嬢、働くって大変ですわ!」


 ようやく居候生活にも慣れてきたメル。  しかし、異世界で生きるためには、お金を稼ぐ必要がある!?


 初めての“仕事”に挑戦するメルフィーナ!  果たして、彼女は無事に役目を果たせるのか——!?


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