第20話 異世界令嬢、新たな扉を開きますわ!
カフェ・ルミエールの店内には、紅茶と甘い香りが満ちていた。
ついに完成した**「メルフィーナ特製・ロイヤルミルクティーパウンドケーキ」**は、試食会で好評を博し、正式にカフェの看板メニューとなった。
「すごいわね、メルちゃん。このケーキ、どこか上品でありながらも親しみやすい味がするわ。」
老婦人が微笑みながら言う。
「ありがとうございますわ!」
メルは誇らしげに微笑んだ。ついに、彼女が求めていた“究極のスイーツ”が形になったのだ。
「これでようやく、私の理想のスイーツが完成しましたわ……!」
「でもよ、メル。」
響がカウンターに肘をつきながら、じっと彼女を見つめる。
「お前の目は、もう次のことを考えてるって顔してるぞ。」
「……ふふ、バレてしまいましたわね。」
メルは軽く笑いながら、紅茶のカップを手に取る。
「スイーツの完成は、ゴールではありませんわ。むしろ、ここからが新たなスタート……そう思いません?」
「はは、相変わらず前向きすぎるな。」
「それで、次は何をするつもりなんだ?」
「紅茶ですわ!」
メルの瞳がきらりと光る。
「紅茶に合う最高のスイーツを作ったのなら、それに合わせる“究極の紅茶”も必要ですわ!」
「なるほどな……」
響は苦笑しながら、メルの情熱に圧倒されつつも、どこか誇らしげだった。
「だけど、お前、紅茶のことはまだそこまで詳しくないんじゃないか?」
「ええ。だからこそ、紅茶の知識を深めるために、勉強を始めるのですわ!」
メルは胸を張り、カウンターに並んでいる紅茶の缶を見つめた。
「紅茶の産地、品種、抽出方法、ブレンド……すべてを学び、私の理想とする紅茶を生み出します!」
「そこまで本気なら、良い先生を探した方がいいな。」
老婦人が静かに紅茶を注ぎながら言った。
「実はね、昔からの知り合いに、素晴らしい紅茶のソムリエがいるのよ。」
「まあ!」
「彼に会ってみる気はある?」
「もちろんですわ!」
メルは即答した。彼女の新たな挑戦が、ここから始まる。
その夜、メルは寝る前にノートを広げた。
「紅茶とは何か……紅茶の魅力を知るには、まず歴史を学ぶべきですわね。」
彼女は貴族時代に学んだ知識を思い返しながら、新たに調べ始めた。
「紅茶の歴史は深い……でも、私はもっと“現代の紅茶文化”を知る必要があるのですわ。」
書き留めたメモには、「ダージリン」「アッサム」「アールグレイ」といった茶葉の種類や、「抽出時間」「湯温」などの要素が並んでいた。
「紅茶の種類や淹れ方一つで、味は大きく変わる……奥深い世界ですわね。」
翌日——
「準備はできましたわ! 紅茶の奥深さを学びに行きます!」
メルは意気揚々とカフェを出た。
その後、街の書店で紅茶に関する本を数冊購入。
「基礎知識も必要ですし、実際に学ぶ前に、少しでも理解を深めておくべきですわね。」
ページをめくると、各地の紅茶文化や、伝統的な淹れ方について詳しく記載されていた。
「これは面白いですわ……!」
新しい知識を得る喜びに、メルはますます目を輝かせた。
「さて、いよいよソムリエの先生に会いに行きますわ!」
その前に、彼女はカフェに戻り、試しにいくつかの茶葉を淹れてみることにした。
「まずは、香りの違いを比べてみることが重要ですわね。」
メルはダージリン、アッサム、セイロン、それぞれの茶葉を淹れ、香りを慎重に確かめる。
「やはり、品種によってこんなにも個性が違いますのね……!」
響が覗き込みながら呟く。
「お前、なんだか本当に研究者みたいだな。」
「当然ですわ! 紅茶の奥深さを知るには、まず自分で体験することが大切なのです!」
新しい目標に向かって、メルの挑戦は始まった。
→ 次回 「異世界令嬢、紅茶の奥深さを知りますわ!」
紅茶ソムリエとの出会いが、メルの世界をさらに広げていく——!




