第17話 異世界令嬢、ついに決着の時ですわ!
静寂がホールを包み込む。
審査員長の声が響く中、メルフィーナは深く息を吸った。
「それでは、紅茶スイーツ対決の勝者を発表します。」
観客の誰もが息を呑み、次の言葉を待ちわびている。
「今回の審査の結果——勝者は……!」
一瞬の沈黙。
その時、メルの心臓が高鳴った。
(大丈夫。私のスイーツはしっかりと審査員の皆様に届いたはず……!)
そして——
「メルフィーナ・エルフィーネさんです!」
ホールに拍手が響き渡る。
「やったぁ!」
観客の間からも歓声が上がり、メルは一瞬呆然としながらも、すぐに背筋を伸ばし、優雅にお辞儀をした。
「光栄ですわ。」
審査員の一人が微笑みながら言う。
「あなたのシフォンケーキは、まるで紅茶と共に語りかけるような味でした。紅茶を楽しむ時間を、より特別なものにしてくれるスイーツだったのです。」
「ありがとうございます。」
メルは胸を張って答えた。
一方、対戦相手のアレクは穏やかに微笑んでいた。
「見事な腕前でしたね、メルフィーナさん。」
彼は静かに拍手を送りながら、メルをじっと見つめた。
「あなたのスイーツには、人の心を動かす力がある。それが今回の勝敗を決めたのかもしれませんね。」
「私の作るお菓子は、ただの高級スイーツではありませんわ。人々の時間を豊かにするもの。それこそが、私の目指す味ですの。」
メルの堂々とした言葉に、アレクは目を細め、満足げに頷いた。
「なるほど、納得しました。」
そして、彼はゆっくりと手を差し出した。
「おめでとうございます。素晴らしい勝負でした。」
メルは少し驚きながらも、彼の手を取る。
「こちらこそ、素晴らしい機会をいただき、感謝いたしますわ。」
静かな握手。
観客の拍手が再び沸き起こる。
その様子を、ホールの片隅でじっと見つめる影があった。
「……やれやれ、大したもんだな。」
響は腕を組みながら、どこか誇らしげな表情を浮かべていた。
(メルのことだから、やってくれるとは思ってたけど……本当にやっちまうとはな。)
彼は、ふっと笑みをこぼしながら、静かに拍手を送った。
こうして、紅茶スイーツ対決は幕を閉じた。
その後、メルはカフェ・ルミエールに戻り、響や老婦人と勝利の余韻を楽しんでいた。
「改めて、おめでとう、メル。」
響がぽつりと言う。
「ふふ、当然ですわ。」
「調子に乗るなよ。」
苦笑しながらも、響はどこか嬉しそうだった。
「でも……これからどうするんだ? グラン・ベルのオーナーに認められたってことは、お前のスイーツはもうただの新人のものじゃない。」
「ええ……だからこそ、私はもっと上を目指しますわ!」
メルは自信に満ちた笑顔で答える。
「カフェ・ルミエールの名を、この街だけでなく、もっと広めますわ。紅茶とスイーツの最高の組み合わせを、より多くの人に届けたいのです!」
その言葉に、響と老婦人は顔を見合わせ、ふっと笑った。
「お前らしいな。」
「じゃあ、もっと忙しくなるねぇ。」
メルは頷き、窓の外を見つめた。
(この勝利は、まだ始まりに過ぎませんわ。)
彼女の新たな道が、今まさに開かれようとしていた——。
→ 次回 「異世界令嬢、新たな道を歩みますわ!」
勝負を終えたメルフィーナが、新たに見据える未来とは——!?




