第12話 異世界令嬢、新たなスイーツを考案しますわ!
◆ メル、新メニューを考案しますわ!
カフェ・ルミエールの厨房に、メルフィーナの真剣な表情が浮かんでいた。
彼女の前には、小麦粉、砂糖、卵、そして様々なスイーツの材料が並べられている。
「つまり、私がこの店の新メニューを考案するということですのね?」
「そういうことさ」
老婦人は優しく微笑みながら頷く。
「スイーツコンテストであんなに素晴らしいミルフィーユを作ったんだから、メルちゃんのアイデアで、新しいスイーツを作ってみるのも面白いと思ってね」
「ふむ……!」
メルは腕を組み、考え込んだ。
確かに、コンテストでは貴族の感性を生かして紅茶を使ったミルフィーユを作った。
ならば、このカフェでも、特別なスイーツを生み出せるかもしれない。
しかし、ただ貴族らしい高級な菓子を作るだけでは意味がない。
(この世界の人々に受け入れられつつも、私らしいエッセンスを加えたスイーツ……)
メルは厨房にある食材をじっくりと見渡す。
小麦粉、砂糖、卵、バター、ミルク……そして、棚の上には様々なハーブや香辛料が並んでいる。
(異世界の素材を使って……でも、この世界の味にもなじむようなスイーツ……)
紅茶だけではない。
この世界には、まだ自分が知らない「食」の可能性が広がっている。
「メル、お前ならどんなの作るんだ?」
響が興味津々で覗き込む。
メルは指を顎に当て、思案する。
「ふむ……」
彼女の頭の中で、貴族の晩餐会で出されるスイーツが思い浮かぶ。
豪華なホールケーキ、砂糖細工の装飾が施されたペストリー、たっぷりのクリームと果実を使ったタルト……どれも美しいが、どこか重たく感じる。
(もっと軽やかで、紅茶に合うものは……?)
目を閉じ、コンテストで作ったミルフィーユを思い出す。
軽やかなパイ生地と濃厚なカスタードクリームの調和。
しかし、それとは違う新しいものを生み出したい。
(この世界の人々が驚き、そして愛してくれるスイーツを……!)
ゆっくりと目を開けたメルは、自信に満ちた表情で言った。
「決めましたわ!!」
彼女の目は、新たなスイーツへの情熱で輝いていた——!
◆ いざ、試作開始!
厨房には、メルが考えた試作品が次々と並べられた。
① 紅茶の香るシフォンケーキ
② ホワイトチョコレートのムース
③ キャラメルナッツのタルト
④ ハーブと柑橘のマカロン
「どれも美味しそうだな……」
響がゴクリと喉を鳴らす。
「だけど、一つだけだろ? どれにするんだ?」
「むむ……!」
メルは腕を組み、しばし沈黙する。
(この店のお客様に喜ばれる味……そして、異世界の要素も取り入れたスイーツ……)
迷う——どれも捨てがたい。
しかし、そんな彼女の背中を押したのは——。
「……この香り」
シフォンケーキを一口食べた瞬間、ふわっと広がる紅茶の香り。
まるで午後のティータイムに優雅な風を運んでくるような、心が安らぐ香りだった。
「これですわ!!」
◆ いざ、新メニュー決定!
こうして、メルの考案した紅茶のシフォンケーキが、新メニューとして決定した。
「うわ、ふわっふわ……! 口の中で溶ける……!」
響が驚きながら食べる。
「お店の看板メニューにしてもいいくらいだねぇ」
老婦人もにっこり微笑む。
「これは、お店の新メニューに決定ですわ!」
『新メニュー:メルフィーナ特製紅茶のシフォンケーキ』
こうして、カフェ・ルミエールに新たな看板スイーツが誕生した——!
◆ しかし、迫る新たな影……
「これは……ちょっと、やっかいなことになったね」
ルミエールの向かいにある高級カフェ「グラン・ベル」のオーナーが、新聞を手にしていた。
『異国の令嬢が作る紅茶スイーツ! メルフィーナの才能に迫る!』
「ふぅん……面白い子じゃないか」
新聞の写真に写るメルを見つめ、薄く笑みを浮かべるオーナー。
「これは……ちょっと、一度話を聞いてみるべきかもしれないねぇ?」
カップを持ち上げながら、オーナーの瞳が鋭く光る。
→ 次回:「異世界令嬢、高級カフェのオーナーに狙われます!?」
「あなたの才能、うちで活かしてみる気はない?」
突然のスカウト!? メルの選択は——!?
次回、新たな試練がメルを襲う!!




