第11話 異世界令嬢、新聞に載って有名になりますわ!?
◆ 異世界令嬢、新聞に載りますわ!? 街の話題は私!?
カフェ・ルミエールの朝は、いつもより少し賑やかだった。
「おばあちゃん、新聞が届いたよー!」
響が店の扉を開け、新聞を手に持って入ってくる。
「ありがとうねぇ。さて、今日はどんなニュースが——」
老婦人が新聞を開いた瞬間、目を丸くした。
「まあ、なんと!」
その声にメルも興味を惹かれ、そっと覗き込む。
そこには——
『スイーツコンテスト優勝者、謎の令嬢メルフィーナ! 異国の貴婦人が魅せた奇跡のミルフィーユ!』
大きな見出しとともに、メルがミルフィーユを持って微笑む写真が掲載されていた。
「な、なんですの、これは!?」
メルは驚いて新聞を奪い取る。
記事には、スイーツコンテストでの活躍、紅茶を使ったミルフィーユの独創性、そして彼女の上品な立ち居振る舞いが称賛されていた。
『貴族のような気品と優雅な微笑みを見せる彼女、一体何者なのか!?』
「な、ななな……!!!」
メルは真っ赤になって新聞を握りしめる。
「ま、街中の人がこれを読むんですの!?」
「そりゃそうだろ。新聞だからな」
響がクスクス笑いながら肩をすくめる。
「すごいじゃないか、メルちゃん! こんなに大きく取り上げられるなんて!」
老婦人は嬉しそうに目を細める。
「そ、そうですけれど……!」
メルは新聞を持ったまま、落ち着かない様子でうろうろと歩き回る。
「こんなに注目されてしまって……私、どうすればいいんですの!?」
◆ 街の人々の反応
新聞の記事が出たことで、メルはすぐに街の話題の中心になった。
翌日、カフェ・ルミエールに訪れる客の数が、いつもより明らかに多かった。
「すみません、ここってスイーツコンテストで優勝した人がいるお店ですよね?」
「メルさんのミルフィーユって、まだ食べられますか!?」
「彼女に会いたいんですけど……!」
店のカウンターには、メルに興味津々の客たちが詰めかけていた。
「うっ……!!」
メルは思わず、カウンターの影に隠れる。
「ど、どうしましょう、響!?」
「何がどうするだよ。お前、人気者になったんだから、ちゃんと対応しろって」
「こ、こんなに大勢の人が私を見てるなんて、想定外ですわ!!」
メルはオロオロしながら、ドレスの裾をギュッと握る。
「お前さ、貴族の舞踏会とかで散々人前に出てただろ?」
「そ、それはそうですけれど……これは、また違いますの!!」
メルは緊張で顔を赤くしながら、小さな声でつぶやいた。
「だって……私のことを知らない人たちが、私を知ろうとしてるんですのよ……!」
貴族の社交界とは違う。
ここにいるのは、彼女の出身も背景も知らない人々。
ただ、スイーツコンテストで彼女の名前を知り、その実力に興味を持ってやってきた。
(私は、この世界での居場所を作ろうとしている……)
(でも、本当に私でいいのかしら?)
メルは無意識に、胸元のペンダントを握りしめる。
◆ 見えない影
その頃、カフェ・ルミエールの向かい側、少し離れた場所にある高級カフェの窓辺。
「……へえ、なるほどね」
カップを傾けながら、優雅に微笑む男が一人。
新聞の一面に載るメルの写真を眺めながら、指先で軽くテーブルを叩く。
「異国の令嬢……か」
その瞳には、興味と探るような光が宿っていた。
「面白い。どんな手を使ってでも、手に入れたくなる才能ってやつか……」
男は静かに新聞を折り畳むと、ふっと笑みを浮かべた。
——メルフィーナの新たな試練は、すぐそこまで迫っていた。
→ 次回:「異世界令嬢、新たなスイーツを考案しますわ!」
スイーツコンテスト優勝で有名になったメル。
しかし、さらなる試練が訪れる!?
「えっ、お店の新メニュー!? 私が考えるんですの!?」
次回、新たな挑戦が始まる——!




