因縁の相手、強敵
「ここか…」
テツジから石のよく取れる場所を知りまた森へ飛び込んだ俺は数十分の旅の末そこにたどり着いた。石がよく取れるというスポットはいかにもRPGですよ!と言った感じの洞窟で入口には『モンスター出没注意』と書かれた看板まである。見たところ入口付近に取れそうな石はなくもう少し中に入ると沢山取れるようになるっぽい。
俺はとりあえず中に入るため足を踏み入れた、その時だった。
「キャーー!!」
洞窟の中から女の悲鳴のような声が聞こえてきた。洞窟だからかその甲高い声はこだまし、俺の耳を突き刺してくる。
そういえばテツジも言ってた。この洞窟はクエストでもよく使うらしく人がチラホラいるって。もちろん俺は他人に会いたくないので人とモンスターに注意して奥へと進んで行った。
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とりあえず入ってすぐにあった採掘ポイントで石をとる。採掘ポイントは松明が置いてあり洞窟にしては明るいといった印象だ。少し開けていて身動きもしやすい。だがここにはぱっと見た感じ目標の50個は無さそうだ。もう何個か採掘ポイントをハシゴしなくてはならなさそうだ。
そして採掘を始めてみて分かったのだが思ったより時間がかかる。普通は鉱石は専用の道具を使って採掘するらしいのだが始めたての俺にはそんなものはもちろん無い。素手でやるしかないのだ。
こりゃ大変だ。
「ふ〜一旦ここは終わり!…ん?」
1人でせこせこやっていると後ろに気配を感じた。何かと思って振り返るとそこには…俺の因縁の相手…スライムがいた。
しかも5匹。
「やっべ」
最序盤で勝利を収めたとはいえその時は1度も攻撃を喰らわなかった。つまり、スライムの攻撃力が分からないのだ。場合によっては即死も有り得る。俺はすぐさま逃げるため立ち上がった。
「キュー」「キュー!」
俺の逃げる様子を見てかすぐスライムも体当たりをかましてくる。
「うわっ!おっと!…やべ」
最初の3匹はかわすことに成功したがさっすがは人海戦術。残り2匹の体当たりを食らってしまった。即死はしなかったものの体が押し倒されその上に乗られる。スライムの少しの重みと地面に衝突した痛みで動けないでいると、かわした3匹のスライムも体の上に乗ってきた。重くて体が起こせない。
誰か…誰か…!
心の叫びも届かずスライムは顔の上にもやって来た。目の前が段々と暗くなってボヤけていく。
もしかしてこれって……ゲームオーバーなの……か……。
その時だった。
「お!やってんじゃん!大丈夫君?」
体がどんどん軽くなり、起き上がれるまでになった。視界も戻り周りを見渡すと、スライム5匹が全て真っ二つに切られ無惨にも倒れている。
「君ー見えてる?」
男が俺の目線まで屈み、話しかけてきた。男の手にはラノベで勇者がよく持ってるような立派な剣が握られている。どうやらこの男がスライムを切って瀕死の俺を助けてくれたようだ。
「あ…大丈夫です…あなたは…」
俺が残りの力を振り絞って聞くと男はにっこりと笑った。
「俺は…」
「ちょっと待って!」
男の話を遮るかのように男の後ろ…洞窟の奥からプレイヤーが3人駆け寄ってきた。そして、その中の1人の女が男の頭を力いっぱい叩いた。
「お前早い!もっとウチらを待てよ」
「あはは…ごめんね"はぁと"ちゃん」
「ゴメンじゃないよ〜僕達のこともちゃんと考えてよ〜」
「クラウンの言う通り、わたくしたち仲間でしょ?」
「ごめんって言ってんじゃん」
ん〜こいつら急に現れたと思ったらなんか喧嘩し始めた。
俺の事忘れてない!?
まぁ良いや。助けてくれたのはありがたいけど見るからに陽なオーラをビシビシ感じる。俺が1番苦手としてる集団だ。この場にいるだけで息が……スライムに押し潰された時より苦しい……。俺は彼らから身を隠し、そっとこの集団から離れようとした…が、剣を持った男に手をかけて止められた。
「ねぇ君さ」
ヤバい!これ難癖付けられて金とか取られるパターンだ!もしくはダル絡みだ!早く立ち去らないと…。
「ありがとうございますありがとうございます。…じゃあ僕はこれで」
「君さ…次の街…行きたくない?」
「え?どういう……」
男はまた笑顔を見せて答えた。
「俺たちは…行き方知ってるよ?」
その笑顔はやはり胡散臭く、キラキラの輝きがかえって俺には少し不穏に見えた。
NPCの名前もしっかり覚えておいて下さいね。
再登場的なのは当分先になると思いますが、、、