可愛い女の子、怪しみ
1時間後…了とメイの2人はアリサのいる酒場まで帰って来た。もちろん俺のドクドク茸はカンスト。木の棒と違ってこんなにスムーズに終わったのはやはり話し相手がいた事が大きいだろう。
ドクドク茸無限回収の途中、次第に打ち解けていってメイとは沢山の会話をした。話の大部分はこのゲームのクリア方法について。何せ一切の情報を持たぬ身、流石に目標は欲しかった。
しかし無限とはそんなに甘いものでは無かった。初めて1週間のメイもやはりストーリーをクリアする方法は知らなかった。だがメイとの会話で新しい情報を一切得られなかった訳では無い。メイは2日前くらいにクリア方法についての噂を少しだけ耳にした事があるという。
それが"全クエストのクリア"。
酒場には常時10個のクエストが張り出されており、その紙がプレイヤーに取られる度に新しいクエストが自動で張り出される。だがクエストには被りがひとつも無いというのだ。似たようなクエストはあるものの報酬の数だったり参加人数だったり少しずつ違っているらしい。
だからプレイヤー達は考えた。
いずれクエストは全て終わる…と。
本当なのか…?ソースも曖昧で現実的じゃ無さそうな気もする。
でもその噂が本当でも嘘でも俺にとってはあまり関係の無い話だ。
どうせ全てクリアするつもりだからね。
「はい!ドクドク茸30個頂きました!報酬を受け取ってください!」
アリサから報酬の100Gが手渡された。どうやら参加者全員に報酬が全額払われるらしい。これは良仕様。持ち物を確認すると木の棒やドクドク茸が入っている枠とは別に右上に新たな枠があり、そこに100と表示されていた。
「わんさん!ありがとうございました!!」
「いやいやこちらこそありがとう!じゃあまたね」
俺はあまりプレイヤーと仲良くならないようにしている。
こういうゲームは本当にネタバレが怖いからね。
いつポロッと言われるか分かったもんじゃない。
俺も昔散々な思いをしたことがある。
あの時は……思い出したくないほど辛かった。
そのせいで俺は……。
それに誰かに手伝ってもらったり足でまといを作ったりしたくないしね!
俺はお辞儀をしてメイから逃げるように酒場を後にしようとした。
「わんさん!」
服に違和感を感じ振り返るとメイが俺の服を少し引っ張っていた。
「どうしたの?」
メイはモジモジした様子で俺の目を見て話しだした。
「…私たち…沢山お話して…仲良くなったじゃないですか…」
何が言いたいんだ?さっぱり分からない。
「だから…もし良かったら…フレンドになってくれませんか!」
フレンド…そんな機能あるんだ!
まぁよく考えたらあるか。うーんどうしたものか…
この先フレンド必須のクエストがあるかもしれない。
しかもフレンドがいたら楽しいゲームライフが送れるだろう。
いやでもまだ会って数時間の見知らぬプレイヤーとフレンドになっていいのか?
ていうか俺の無限回収見て若干引いてたよな…。
もしかして俺を晒し者にする気じゃ……。
なんかメイが胡散臭く見えてきた……。
俺は心の中で自分の思考を高速詠唱した。この間0.2秒である。
そして俺はある結論に達した。
……よし。断ろう!
「ごめん!ちょっと急いでて!また会った時で良い?ごめん!!」
俺は逃げるかのようにメイとは逆方向へ走っていった。
「わんさん…」
またメイの顔が赤くなった。
「もう...ツンデレなんだからっ…!」
~~~
俺はメイを撒いた後、とある建物の前に来た。外観は少しメタリックで『武器屋』という看板が表に吊るされている。そう。俺は武器を買いに来た。これもメイから教えてもらった情報だ。
このゲームでは武器が必須になってくる。クエストや通路である森などで敵モンスターと戦闘する際に使うと便利だとか。そしてこの武器屋で武器を作ったり買ったりする事が出来るらしい。作るのには素材が、買うのにはGが、それぞれ必要と聞いた。たぶんまだ俺は素材を持っていないので買うためにここに来たという訳だ。
俺は武器屋の暖簾を潜り中に入った。
「いらっしゃい!」
頭にハチマキを巻いて青いハッピを着た男に迎えられた。店中は武器や防具を身につけたマネキンやガラスケースに素材などが飾られている。俺はとりあえず店員らしきハチマキの男に話しかけた。
「あのすいません!武器を買いに来たんですけど」
男はこちらに振り返りニカッと笑顔を見せた。
「はいぃ!俺は職人のテツジって言うんだ。武器を買いに来たってぇ?予算はいくらだいぃ?」
「100円です。……あっ、100Gか……」
「う〜んウチではそんなに安いのはないねぇ。武器が欲しいなら買うより作った方がお手軽だよぉ」
100Gってそんなに安いのか…。
まぁあのクエスト自体簡単だったしそれに見合った報酬とも言えるな。
「ちなみに今俺の持ってるアイテムを使って出来る武器とかないですか?」
「そうだねぇ。……ちょっとないかなぁ。でも今から石を50個取ってきてくれたら良いの作れるよぉ」
石50個!?
それって……
楽勝すぎじゃん!
街ですれ違ったプレイヤーがカッコイイ武器持ってたから楽しみだったんだよなぁ。
俺はどんなのにしようかな〜!
俺は武器に胸を膨らませ、石を取るためまた森へ向かった。
-???
「ねぇ"ショウ"〜!暇だよ〜こっからどうするの〜?」
「ちょっと黙っとけよ"クラウン"!ショウが考えてんだろが」
「うるさいですわ"はぁと"ちゃん。もっとわたくしのようにおしとやかになられては?」
とある4人組がこの先の予定について話し合っていた。だが話し合いは平行線で3人が言い争いをしてどんどん話題が逸れていく。そんな中、ショウと呼ばれる淡い赤髪の男は争う3人を見ながら1つの決断を下した。
「そうだ!この街もそろそろ飽きてきたし新しい人呼ぼう!久しぶりに戻るか〜……"アイロニー"に」
ショウは不敵な笑みを浮かべ、その街を去った。
わんは実は心の中で一匹狼を意識してます。ただシャイであまり人に話しかけられないだけなんですけどね。それを正当化しようと頑張って狼を意識してます。でもワイワイガヤガヤ陽キャ陽キャなグループに憧れもあります。楽しみ方は人それぞれなんでそっとしといてください。