最初の街"アイロニー"
俺はアイロニーの地を踏みしめた。街は中世のような様で人に見えない異人が沢山歩いていたり、食べ物屋があったりとよく見る異世界ゲームの世界観である。
俺はとりあえず街を一通り見て回ることにした。
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ん〜困った事になった!
俺は街の中心部にある地図パネルを頼りにアイロニーの外周を回ってみた。そもそもこんな話題になっているゲームで動ける街がここ1つな訳が無い。他の有名ゲームのようにどんどん次の街に進んでいくというゲーム性なんだと思った。だから街探索ついでに次の街に行く道も探していたんだ。
だが……周りはどこも森だった。じゃあ森を通って次の街に行くのかと思って1度出てみようとした。
が、出れなかった。透明な壁のようなものが邪魔して足を入れようとしても弾かれてしまうんだ。
結論!
この街には"出口が無い"。
唯一出入りが出来るのが俺も入ってきたあの"看板"がある場所。
どうなってるんだ……今の所おれ木の棒しか集めてないぞ。
1人じゃ解決は無理だと思い俺は通行人に聞くことにした。
誰でもいいから〜…今俺の前を通った水色の服の男にしよう。
「あの〜ここって何なんですか?どうやったら出られる?」
男はニコッと笑って光の無い目で答えた。
「ここは最初の街"アイロニー"。この世界には各街に攻略条件が設定されておりその条件をクリアする事で次の街に進む事が出来るよ。ちなみに1度条件をクリアした街はその後いつでもワープする事が出来るよ」
なんかこいつ無愛想すぎね?
でもよく分かった。このゲームはそういう方式で進んでいくのか。
で、アイロニーの攻略条件ってなんなんだ?
「あのーちなみに攻略条件って?」
男はまたニコッと笑って答えた。
「ここは最初の街"アイロニー"。この世界は~~~」
何だ。こいつNPCだったのか。見分けがつかないのは面白いな。
だが、こいつからはもう新しい情報は得れそうになかったので早々と彼から離れた。
ん〜ちゃんとしたプレイヤーに聞いたら分かるか?
さっすがに先輩プレイヤーだったら情報も持ってるだろうしな。
その後俺は数人のプレイヤーに話しかけたが帰ってきた答えは全員一緒だった。攻略条件は謎。多くのプレイヤーがこの最初の街、アイロニーで詰んでいるのだそうだ。
だが新しい情報も得ることが出来た。
アイロニーにはキーNPCに話しかける事でクエストを受ける事が出来てそのクエストの数がエグくて楽しいらしい。だから無限にこの街でクエストをこなして楽しんでいるとかなんとか。
俺は情報をくれたプレイヤーに場所を聞いてそのキーNPCに辿り着いた。
場所は酒場。キーNPCとはそこの看板娘である。酒場の壁には10枚のクエスト依頼が貼り付けてありそれを取って看板娘に渡すとクエストが受けられるらしい。
俺は依頼の紙を眺めた。
ん〜〜〜ん?
クエストには参加出来る最低人数と難易度が記載されている。
『××の討伐…難易度2…最低人数5』
『××採集…難易度1…最低人数3』
よく見ると貼られているクエスト全てが複数人で行うものだった。
俺、ぼっち、死。
くっ…!!ここでも俺のコンプ(コンプレックス)を刺激してくるのか...!?
貼り出されるクエストは誰かが取る事に補充されるらしいが1人で行けるクエストの補充を待ってるのもな〜
よし…誰かに話しかけて一緒にやって貰おう。
一応被害は最小限にする為に最低人数2人のクエスト依頼を取っといて、と…。
…誰にする?
酒場にはキャラメイクの自由度を象徴するかのように多種多様な人がいる。日に焼けた肌にムキムキの体の男だったりイケイケそうなギャルだったり眼鏡をかけた黒髪の根暗そうな女の子……ッッ!!!
あれは…同類!!
あのタイプだったら後々も干渉してこなくて大丈夫そうだろう。
「ねぇ君...俺と一緒にクエスト行かない?」
隅っこで立っている彼女の前に壁に肘を付いて少し体を斜めにして話しかけた。これは俺が唯一知っている初対面の女性に話しかける時のスタイルだ。これだったら行けるだろう。
ちなみに見た目がほぼほぼナンパな事に全く気付いていないことは秘密だ。
「え…なん…ですか…?」
少し怯えた様子だったがそんなことを気にする余裕は俺には全くない。この鈍感さだけは自慢できる。
「だから…このクエスト一緒に行こ!」
俺は依頼を見せ更に詰め寄った。彼女の頬が少し赤らむ。
「最低人数2人なんですね…良いですよ…」
ん?なんか思ってた反応と少し違うがまぁ良いだろう。
行くぜ!俺の初クエスト!!!
ゲームを通して、人として少しだけ経験値を得た了であった。
わんはゲームの中だとリアルより少しイキってます。けどふと理性を取り戻し恥ずかしくなるので大胆な行動はあまりしないですね。
酒場で話しかけた時は初プレイの興奮で少し理性が飛んでます。
アドレナリンさいこー