初クエスト、散漫
王子の提案に俺は渋々承諾し、2人はイクシードの酒場へやってきた。目的はもちろんクエストをクリアする為である。
初めは別にどんなクエストでもいいかと思いアイロニーの時のように壁にかかっている依頼リストを見ると、少し見慣れない文字が目に入る。赤い星マークで明らかにアイロニーにはなかったもの。
「難易度……?」
アイロニーの依頼リストはクエストのタイトルと推奨参加人数のみの記載だったが、イクシードにはそれ全てに加えて難易度という項目が全クエストに記載されてある。
「…あぁわんはイクシードに来たばかりだから分かんないか!」
王子は依頼リストの1つを無作為に手に取った。
「イクシードからね…クエストには"難易度"って要素が追加されるの。難易度は1から順にあってね、どこまであるかはちょっと分かんない!」
その説明を聞き、俺も1枚手に取ってみた。
「"イクシードの守護神"(ダンジョン)…難易度は6……」
「あ〜それはダメ!絶対クリア出来ないから」
「ん?なにかそういう決まりでもあるのか?」
「違う違う!さっき難易度あるって言ったでしょ?普通のプレイヤーが1人でクリア出来る限界が3で上手い人でも4が限界。6なんて2人でも絶対無理だよ!」
王子は俺に1枚の依頼を突き出してきた。
「やるんだったらこれがいいよ!」
「"ゴブリン達との遭遇"…難易度は2……」
「まずはお互いの実力を知らないと!」
確かにそれは一理ある。
イクシードのクエストがどんなものか分からないし、俺はまだクエストでモンスターと戦ったことないしね。
「はい!これお願いします!」
ってもう勝手に依頼提出してるし!俺の確認なしかよ。
「分かりました!"ゴブリン達との遭遇"ですね!ではお気を付けて行ってらっしゃい!」
そう言った看板娘は、アイロニーのアリサではなくまた違う人物だった。胸元に『サナ』とある。
「わん行くよ!」
「痛ッ!」
王子に背中を思いっきり叩かれ無理やり引っ張られる。
「…良いよ!もう行くから!」
~~~
森を突き進み、地図に印してあるポイントへやって来た。一変して辺りは薄暗く、少し気味が悪い。
「やるぞ〜」
王子は全身にピンク色の皮の防具を身につけ、木の剣を手に持った。
俺は防具を常に身につけているが王子の場合戦闘時以外は着けていない。可愛い見た目をできるだけ見せたいしこの少しダサめの防具を着けて街を歩きたくないからだそうだ。
俺もスライムヘッド外そうかな……。
などと思っていた次の瞬間だった。
「ウ゛ウ゛ウ゛」
「!?!?」
呻き声がして振り向くと、1匹のゴブリンがこちらを睨んで立っていた。ジリジリと近づいてきて今にも襲ってきそうである。
「やァァァァ!!」
王子がそのゴブリンに斬りかかった。肩の辺りに一撃が入り紫色の血が吹き出す。
「やった!」
だがまだ倒れない。それに気づかず喜んでいる王子に瀕死のゴブリンが飛びかかった。
「きゃあああ!!」
「ウ゛ア゛ア゛」
間一髪俺が間に入って斬りかかり、ゴブリンの体が真っ二つに割れた。見た目の割に甲高い悲鳴とともにその体が消え、その場には何も無くなった。
「油断するなよ」
「……違うぞ!やっつけれたのは私が一撃入れたおかげだ!私の手柄だぁ!」
なんだこいつ…
クエストのクリアやモンスターの討伐によって手に入る経験値は達成者に均等に配られるから手柄とかないのに。
「いや〜大変だった!さぁ帰ろうか!」
ゴブリンを討伐し、イクシード初のクエストはクリア出来た。手柄を横取りされた雰囲気になってるのは少し癪だが俺も帰るか。
「ん?」
クエストが終わり、もう何もいないはずの周りの草むらから何者かが動く音がする。何かがおかしい。
「王子!このクエストのタイトルって何だったっけ?」
「え?何?なんか記録でも取ってるの?普通に"ゴブリン達との遭遇"でしょ?」
王子は能天気に腕を頭で組んで口笛を吹いている。
「"ゴブリン達との遭遇"か……そうだ…」
「それがどうかしたの?早く帰って報酬欲しいんだけど」
「ゴブリン"達"なんだ……!このクエスト…ゴブリンは1匹じゃない!!」
周囲を見渡すと草むらから数十匹のゴブリンの赤い目がこちらを睨んでいた。
王子の性格⤵︎ ︎
柔軟な発想を持ち、自他ともに認める陽キャ。
だが少し雑なところが目立ち、傲慢な1面も持つ。
わんとはほぼほぼ真逆の性格である。




