美少女、詐欺
-次の日
「さ!やりますか!」
今日も昨日と同じく朝からゴーグルを装着した。脳の処理が始まり、現実からゲームの中へと意識が切り替わっていく。
『イクシード』
早速俺はアイロニーの時と同じように探索を始めた。イクシードはアイロニーの西洋風とは別で日本の平安時代のような風景だ。教科書で見たような景色が、今自分の視界にで鮮明に映っている。そんな目を見張るような街並みを横目に見つつ柵に沿って外周を回った。
次の街への入口、つまりイクシードの『出口』を探すために。
「え!?あれは……」
歩き始めて数分、とある看板を見つけた。
『出口』
あるじゃん出口!!
まだイクシードがどういう場所なのか分かってないがそれは後でもう1回来たらいい事だ。
完クリ厨には2つの人種が存在する。
1つは最初から全てのタスクをこなして進んでいくタイプ。そしてもう1つは俺みたいに1度ストーリーをクリアしてから残ったタスクをこなしていくタイプ。だから俺にとってよく分からない場所などすぐ攻略する必要は無いのだ。
とりあえず先に進もう。
俺は看板の横の道に足を出した……が、やはり謎の壁があり阻まれてしまった。
やはり無理か……。
アイロニーであんなに苦労したのに難易度が上がってるであろう次の街でもつと簡単に行ける訳ないんだ。
ゆっくり手がかり探していくか〜
「ひとまず街を探索して……と」
「イクシード来たばっかなの?私が案内してあげよっか?」
「ヒョッ!?!?」
俺の背後から突然女の子が話しかけてきた。ぱっちりな目にツインテールとアニメヒロインのような美少女だった。まぁここはほぼアニメみたいなもんなんだが。
もちろん俺は自分をさらけ出した。突然現れた異性に何をしたらいいのか分からない陰な俺をな!
「え…あ…あん……」
まぁそらそうだろ。誰だって女の子に話しかけられて普通に話せるわけないだろ。舐めんな。
キョドる俺に彼女は手を引っ張り歩き出した。
「遠慮しなくていいよ!!行こ!!!」
ニコッと笑う彼女に俺は心を打たれた。
突然現れた美少女に連れていかれる…こういうのも悪くないかも……。
それから俺たちはイクシードを歩き回った。
「ここは酒場!アイロニーにもあったよね。それと見た目以外はほぼ一緒だから大丈夫」
酒場…。
「ここは武器屋!これもアイロニーとほぼ一緒!」
武器屋……。
基本的にアイロニーがマイナーチェンジした感じか……。
外見が全く違うから同じ場所でも新鮮味がある。
「さっき私たちがあった場所が出口!とあるクリア条件を達成したら通れるようになるよ!」
「クリア条件って……」
「もちろん教えてあげるよ!
……私の言う事聞いてくれたらね?」
……俺今女の子と会話してる〜!!
なおテンパりすぎて話はあまり聞いていない模様。
「ちなみになんだけどキミの名前聞いていい?」
「わん」
「私は王子って名前!よろしくね!」
女の子で王子…ボーイッシュって事!?
はわわわ…。
頭で百合の花が咲き、内に秘めていたオタクの自分が顔を出す。
そう。俺は生粋のオタなのだ。普段は冷静を保っているがたまにこうやって暴走する。
「でさぁ。聞いて欲しいことなんだけど……これから私と一緒に行動しない?」
「……え?」
え?え?え?え?え?
…ええええぇ!!!!
もしかしてこれ誘われてる!?もしかしてこの子俺と一緒にゲームやりたいと思ってる!?もしかしてこの子……
俺の事好き!?
「もちろ……」
いや待てよ…冷静になれ俺。今少し話しただけでも心臓が爆発しそうなんだぞ?
このまま一緒に行ったら俺どうなっちゃうんだ?
それに俺の信条がある。
冷静…冷静…!!
「えーと……」
このまま別れたら「なんかごめんね」って変に気を遣われて優しく解散することになってしまう。
でも俺は…純粋にゲームを楽しみたいんだ!
「あの〜それはちょっと厳し…」
「なんで?私イクシード案内してあげたよね??こんな恩も返せないの?じゃあ私がしたことなんだったの?責任取ってよ!」
あれ?なんか思ってた反応と違くない?女の子って全員優しいんじゃないの?
ってかなんか表情も変わって圧が……。
「責任取れよ!!」
「ヒョッ!?!?!?」
拝啓紗来奏多様。
貴方がおすすめしてくれたゲンテンオブムーンクエイク。
ヤバい奴多すぎます。なんでですか。ねぇなんでですか!
俺の美少女への偶像は今放たれた強烈なパンチによって砕け散った。
「分かりました……」
「よし!いい子だ」
「じ…じゃあクリア条件を……」
王子は先程の怖い圧はどこ行ったのかと思うくらい無邪気な笑顔を見せた。
「クリア条件はね……
……100Lvに到達すること!」
なるほど…アイロニーは頭使うというかヒラメキが必要だったけど次は実力が大事になってくるのか。
それにしてもいきなり100Lvか。俺まだ1桁だぞ。ここでめちゃくちゃプレイヤーが振るいに落とされるな。
さ!クリア条件も聞いたことだし未練たらしいが立ち去るとするか。
「あ〜!待って待って!私色々知ってるから教えてあげる!」
本当にさっきの圧はどこいったのか、一変してあたふたと焦りを見せるその様はさながら舐められないようにする中学生ヤンキーのようだ。整った顔に似合った可愛げがある。
まぁ1度一緒に行動するって言ったんだしちょっとくらい話聞いてやるか。
俺もそこまで鬼じゃないからな。
「ちょっとなら…」
「ありがとう!って約束は守ってよね。ちなみにだけどわんはLvの上げ方知らないよね?」
確かに言われてみれば…。普通のゲームだったらクエストをこなしたら上がると思うんだけど、それ以外の事は全く分からない。
なんせこの手のVRゲームは初めてだからね。
「ちなみに今何Lv?」
俺はステータスを確認してみた。
わん
Lv6
HP…12
攻撃力…3
防御力…2
魔力…0
知力…1
胆力…2
「6Lvになってる…なんで……」
「Lvはね、モンスターを倒したりクエストをクリアする事で上がるんだよ。モンスターそれぞれに経験値が設定されてて倒したら貰える…って感じ!」
「じゃあ他のステータスって…?」
「10Lv上がる度にステータス経験値が貰えるからそれを振り分けることであげれるよ。ちなみに100Lvに到達する毎に☆が1つLvの横についてまた1Lvからだよ。☆が1着いた状態だったら出口に入れるらしい!」
なるほど。つまりイクシードではひたすらクエストこなしてレベル上げしたら良いのか。アイロニーより単純で分かりやすいな。これだったら俺一人でもいけそう。
て事で俺はこれで…
「あ〜待ってよ!!まだ終わってないよ!」
イクシードの街並みに王子の張り上げた声が響いた。
「さっきクエストクリアで経験値手に入るって言ったよね?クエストってさ…複数人でやらないとクリア出来ない代わりに沢山経験値貰えるやつがいっぱいあるんだよね……。だからさ…私と組まない?」
俺は悩んだ。
1度は切り捨てたその考えも、よりはっきりと誘われた事によってまた揺らいでいたのだ。確かに王子はイクシードについて少し詳しいから役に立つとは思うし何より情報をくれた恩もある。
……あ、あとかわいいのも"一応"メリットとしとくか。
でもやっぱり俺のゲームライフは誰にも邪魔されたくない。さっき王子のヤバい片鱗が顔を覗かせたし、信用という面では100%持てはしない。
…………よし決めた!あぁしよう。まだまだ俺の無限は始まったばかりだからな。
「案内もしてくれてLvの説明もしてくれて本当に本当に!ありがたいんだけどごめんなさい!じゃあこれで」
「ねぇ」
立ち去ろうとしたがやはりまた止められた。振り返ると王子はまた最初の時のような圧を見せていた。
「わんさ〜何か誤解してない?」
誤解?俺が王子の事を一瞬だけ性格良さそうな美少女と思った事か?
「わんは心の中でどうせまた誰か他の奴が誘ってくれるって思ってない?」
「え……」
「よくその格好で誘われると思ってるね」
王子は俺の頭を指さした。その指先にはもちろん俺の特殊装備であるスライムヘッドが。
「私だったらそんな目立つキモイ人誘わないけどな〜」
コ…コイツ……ッッッ!!
「こんなチャンス二度とないよ。私のビジュ可愛いし」
もう既に、俺に逃げ場などなかった。
わんはゲーム内でも現実でも女の子と話すのが苦手です。目が異性と認識してしまったものには平等にキョドります。それが男ってもんです。なお慣れてきたら少しずつは話せるようになる模様。
そしてわんが嫌いなゲーマーランキングはこんな感じです。
1.害悪プレイヤー(何のためにやってるか理解できない)
2.出会い厨(ナンパは外でやれ!)
3.姫プレイヤー(少し憧れる気持ちはある)
どこにでもいる普通の高校生男子だね!




