炎魔法、驚異
…ってこんな某映画の名シーン再現してる場合じゃない...!
このままお嬢を放置してたらここら一体のキレイキレイ草が焼き尽くされてしまう事が容易に想像出来てしまう。かといって俺はただのプレイ初日の1Lv男だ。お嬢のLvがどのくらい高いのか分かんないけど俺の長年培ってきたゲーム勘が言っている。今の俺では勝てる相手では無いと。
さて…どうしたものか……。
こんな事考えてる間にもお嬢の邪魔は止まらない。
「『ハイフレア』」
「ちょ…まっ…」
俺がどんだけ叫ぼうが躊躇する様子さえ見せない。
もう…こうなったら…。
「……じゃあね!」
俺は颯爽と採集ポイントから走って逃走を始めた。
「まちなさい!」
すぐさまお嬢も追い掛けるように走り出した。俺はとにかく後ろを振り返らず走り続けた。
-10分後
「はぁはぁ…やっと追いつきましたわ…」
やはりLvの差があってか採集ポイントから少し離れたところですぐ追いつかれてしまった。お嬢も体力をかなり消費しているようだが俺はそれ以上。体力が完全に尽きもう全く走れない状態だ。
「観念なさい『ハイフレア』」
無情にもお嬢は俺にまたしてもあの魔法を放ってきた。
「っっぶね…!」
幸いにもこの『ハイフレア』という炎魔法は速度があまり速くなく、すんでのところで交わすことができた。安心したのも束の間、またすぐに攻撃が飛んでくる。
「『ハイフレア』」「『ハイフレア』」
毎度毎度俺がすんでのところで交わし、その後すぐにまた次の攻撃がやって来る。それが続くとお嬢側も避ける先に攻撃を置いたりと対応してきている。その場しのぎの小手技はもう通用しなくなってきていた。
「『ハイフレア』」
ヘトヘトな俺にこれでもかとまた攻撃がやって来る。
はぁはぁ避けないと...。
俺は屈んだ体を起こし隣に動こうとしたその時だった。
「うわぁ」
足元にあった小石に気が付かず、躓き転んでしまった。それに構わず攻撃は飛んでくる。
「がぁぁぁあぁ」
ついに俺は足に『ハイフレア』を食らってしまった。痛みが脳を突き刺し俺の思考を止める。
もう…俺はダメなのか…。
「もう終わりですわね…全く…とんだ阿呆でしたわ。手間をかけさせる…」
お嬢は苦しむ俺に一切の躊躇をせず、手のひらを向け魔法陣を展開する。その様子は何処か楽しんでいるようにも見えた。
「『ハイフレア』」
お嬢が詠唱し、手元が光った。
……
「……なん…」
「…ふんっ…勝った」
しかし、ハイフレアは発射されず、何も起こることは無かった。
これこそが俺の狙いだった。
「なんで出ませんの!?私の魔法!!なんで!なんで!!」
困惑するお嬢を横目に俺は勝利の優越に浸りながらお嬢のそばまで足を引きずりながら近づき、肩をぽんと叩いた。
「魔力切れだよ。普通に考えてこんなよく計算されたゲームで無限に魔法が撃てる訳ないだろ?お前は魔力が切れたんだよ」
「で…でもわたくしの魔力がいくつだなんて分からないはずでは!?」
「そうだよ。そこが分からなくて正直賭けだったけど良かった。思ったよりお前の魔力が少なくて」
「くっ……」
お嬢は足から崩れ落ち地面を思い切り叩いた。
「じゃあ俺は戻るよ。あの採集ポイントで炎魔法をバンバン撃たれたらキレイキレイ草が燃え尽きてヤバかったけどね。では…
…ご機嫌よう!」
「キィィイィィイ」
お嬢の発狂を勝利BGMに、俺は燃え盛る森から離れた。
わんはゲームオーバーになる事を相当ビビっていますが勿論ゲームなので実際死ぬことはありません。ですが無限はかなりリアルな体験をお届けする没入型VRゲーム。臨場感は相当なものでしょう。そんな状態で死を体感するとどうなるか。。。結論、怖いんですね。臨死体験みたいなもんです。できるだけ味わいたくは無いですね。




