森「話し合い」
4人は出会った広場に輪になって腰を下ろした。彼らが口を開かなければいっさい音がしない。鳥は鳴かず、風も吹かない。静かすぎて、不気味だった。
「自己紹介でもするか」
一番年上らしい黒い短髪の男が、自然と司会者のようになっていた。
「じゃあ、おねーさん、名前は?」
無愛想な女に話を振った。
「りん」
「年は?」
「ハタチ」
「趣味は?」
「読書」
「ハッキリした人だな……」
間髪いれず即答する女に、呆れるようにして言った。
倫はそっぽを向いた。
一瞬だけムッとした顔を見せてから、司会の男は今度は真向かいにいる夏季と視線を合わせた。
「お嬢ちゃんは?」
「喬松夏季。15歳。趣味は……料理かな? 特技は、運動」
夏季は『お嬢ちゃん』と呼ばれた瞬間にむしずが走った。
「へぇー、いいじゃん。今度俺にもなんかメシ作ってよ」
にかっと歯を見せて、愛想よく笑った。
「はぁ……?」
なんかキモい。 と夏季は思った。
「茶髪の君は?」
「矢川哲。16歳、趣味は……将棋」
「渋い! おじいちゃん子だな?」
「まあね。じーちゃんは昨日死んだけど」
みんな黙ってしまった。
男が咳払いした。
「ごほん。俺の名前、聞きたいか?」
「聞きたい」と夏季。
「どっちでも」と哲。
「聞きたくない」倫が言った。
「小野田俊。21歳、大学生。趣味は飲み会。以上」
「おっさんみたい」
夏季が哲に耳打ちした。
「なんだってー?」俊がぐいと詰め寄った。
「なんでもないです!」夏季が首を横にぶんぶん振った。
「さて、どうするかね」俊が言った。
「どうしようもないじゃん」と哲。
「何もしないって訳にはいかないだろう? 俺は動いた方がいいと思うんだが」
「下手に動くと危ないわよ」倫が言った。
「だよなー」と哲。
「でも、落ち着かないよ、ここ。気味が悪い」
夏季は不安げに、辺りを見回した。
「ちょっとだけ、探検してみないか?」
俊が切り出した。
「行く」夏季は既に立ち上がっている。
「まあ、ちょっとだけなら」
哲も腰を上げた。
「わたしここにいるわ」
倫がムスッとした顔で言った。
「そう? じゃ、すぐ戻るから」
俊は気にも留めない。
「1人で大丈夫ですか?」
夏季が声を掛けてみる。
「ええ。全然平気!」
「かわいくない……」俊、哲、夏季は、心の中でつぶやいた。





