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ドゥープレックス ビータ ~異世界と日本の二重生活~  作者: ルーニック
第十章 夢の聖剣
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合宿のお礼と発掘物の考察

 合宿で色々と周りに迷惑をかけたソフィアがそれらの対処を行います。

 日本では発掘物がヤバイ事になりそうなので誤魔化そうと夢美も必死ですw。

 そんな中、これまでニヤニヤしていた美麗がついに動き出す。

 ソフィアはなんとかヴァルターを説得し夏休みの間にグレグリストに行く事になり、早速ゲートルード元王妃が仕掛けてきますが、、、。

【水着回は大人になってからw】


 さてと、夏休みだよ。


 日本人的感覚で行けば『夏だ! 海だ!』となりそうだけど、海水浴と言うのはこっちにはまだ無い。

 地球でも近代以降でないと海水浴などはやっていない。海で泳ぐのが健康にいいと言うタラソテラピーは、ギリシャ語の「タラサ(海)」とフランス語の「セラピー(療法)」からなる造語で、1967年に確立された自然療法として健康にいいんだけど私の子供体型だと恐らく期待されていないだろうから水着回はまだ早いのかと思うw。


 夏休みは一般的には家業を貴族として手伝うか避暑地で過ごすものなのです。

 本来は寒い地方であるグレグリストへ行くのは夏休みの間がいいと思う。

 取り敢えず色々と準備を始めてお父さまに許可を貰おうと思う。


【第2回ノーラのお酒w】


 私の場合、合宿前にみんなに仕事を押し付けたので、合宿は終わったけどそのツケとして先にみんなの希望を叶えなければならない。 

 私は子供なので魔法のような事も無理だよ。魔法ならこっちが教わりたい位だよ。


 弟子役として協力してくれた側使えエミリーと護衛騎士のルイーサ、それに女騎士のビアンカにはこれでもかと以前から欲しいと言っていた物をお礼にプレゼントした。リップスティックなんかだよ。欲しい色をみんなに合わせて作ったよ。



 合宿の間に一番面倒な仕事をお願いしたのがノーラだ。


 まだマルテよりもノーラの方が貴族の仕事としては詳しいからだけどマルテにも貴族として成長して貰ったら私の睡眠時間はきっと増えるだろうから頑張ってねw。


 ノーラは個人のお話を含めて恐らく一番忙しかったかと思う。

 ノーラ個人のお話というのはのシルバタリアにお願いしていたお酒がもう出来ていて、ノーラのお兄さんのエルマー様にお店を作ってもらっていたけどそのお店がもう開店したのだそうで、大人気で連日満員御礼なのだそうだ。

 まだ1年経ってないんだよ。どうやってお酒が作れたの?


 このカラクリをノーラに確認するとシルバタリアでお酒を発酵させたり樽で熟成したりするのに魔法を使ったそうなのだ。

 そんな魔法あったんだね。そう言えば以前マクシミリアン叔父様が『魔法で発酵させるのを失敗した』と言ってた事があったよ。


 この文明でもお酒って興味のある人が多くて意外に知識が多い。

 私なんかの感覚では適正な温度にして発酵を進めたのかと思いきや、適正な温度も日本と同じレベルで理解しているし、魔法もあるのだそうだ。


 発酵温度は、焼酎では25~30度と判っていて、既に赤ワインは20~27度、白ワインは12~18度とこちらも良く判っている。私はもう関わってなくて日本の知識を持ち込んでいる訳ではないのに、勤勉というか凄い熱心だよね。

 こういう熱心さが他の事にも発揮できれば文明なんて直ぐに進んじゃうと思うんだけどその辺りの偏りが人間の面白い所かもだよねw。私以外の人にも頑張って欲しいけど、、、。


 ノーラに魔法の事を聞くと、元はこの前聞いた小人のゴブリンが使っていた魔法なのだそうだ。

 ゴブリンはイタズラで家にある牛乳を腐らせる事がある。

 つまりこれは魔法で、本来は『牛乳を腐らせる呪文』だそうなんだけど、それをなんとか聞き取った人間が改良して『~ペルジェフェルメント~』というお酒の発酵を促す魔法に改良したものだそうだ。


 食べ物や飲み物が腐るのか発酵なのかは出来た物が人にとって有用かどうかだけの違いだ。

 伯父様の時の白ワインが酸っぱくなってしまったというのは伯父様としては失敗だったのかもしれないけど、それは白ワインビネガーとして使えるから、、、はい。成功! 発酵ですw。


 魔法の呪文を唱える人によって発酵する時間は少し違うのだそうだけど、結構直ぐに発酵が終わるそうだ。この魔法をミクロ単位で想像すると菌がうじゃうじゃと、、、。いや、ちょっと私には厳しい妄想だっよ。はぁはぁ。

 それにしてもお酒飲みの人には便利な魔法もあるもんだね。


 と、他人事のように言ってるけど、ノーラなのでお願いはご想像通り、またお酒のお話だよw。


 ノーラのお願いではあるのだけれど、ノーラのお姉さんのアイラさんはもうシュトライヒの家を出て嫁入りしていて、そのお姉さんにお子様が出来て約3ヶ月後に出産予定なのだそうだ。

 私はお祝いのお酒をお願いされ、勿論これは祝いの酒『シャンパン』にしたよ。


 美味しく出来た白ワインをブレンドして美味しい白のブレンドワインと白と赤をブレンドしてロゼのブレンドワインをノーラに作ってもらう。


 葡萄の糖度によって発酵はかなり変わる。つまり天候とか雨量で葡萄の甘さが変化する。それによって発酵は結構違う事になる。でもそのワインが美味しいかどうかの判断は私が味見出来ないからノーラを信じるしかないけどねw。


 そもそもお酒の発酵って、酵母が糖分を分解してアルコールと炭酸ガスになるよね。

 だから糖のあるものなら基本的に何でもお酒になる。パンを作る時に砂糖を加えるのもその為だ。

 サトウキビ、お米、お芋、果糖のある果物もみんなそうだよね。


 ブレンドしたワインを煮沸消毒した瓶に詰めてそこに蔗糖(お砂糖:こっちでは蔗糖の事はスクロウゼって言うよ)を少し加えて更に酵母を追加する。この状態でキチキチにコルクを打栓して大体2か月くらい2次発酵すると酵母が糖分を分解してアルコールと炭酸ガスになるけど、今度はガスを抜かないできっちりと栓をしているから発砲ワイン、つまりシャンパンが出来るよ。

(今は白とロゼだけです)


 酵母は発酵が終わると(おり)となって沈殿するんだけど、本来はこの沈殿した澱は取り除くけど今回はそこまではやらない。後で改良すればいいと思う。

(本来は(おり)の部分を栓の位置に集めて凍らせて取り出すよ)


 期間は1年以上熟成するけど日程的にちょっと難しい。これはブレンドした作り方だけど、ワインの美味しかった年の単一のもので作った場合はビンテージシャンパンといってビンテージの場合は3年も熟成する。


 後3ヶ月じゃ両方共出来ないからここで魔法『~ペルジェフェルメント~』を使うw。

 1本でいいと言われたけどかなり沢山作ったよ。(失敗したら困るからね)

 箱単位で魔法をかけて渡す前に任意に取り出して確認すればいいと思う。


 でもノーラ、絶対に先に味見で開けちゃダメだからね。炭酸が抜けちゃうからね。

 あの飲みたそうな表情を見るとちょっと心配だよ。大丈夫かなw。


 心配しながら完全な熟成を待とうかと思う。



 では、取り敢えずお酒の事はお酒飲みに任せて私はこの魔法で文明を進めてみようw。


 マクシミリアン叔父様は『下水処理を憂いている公爵令嬢は後にも先にもソフィア様だけだろう』と失礼な事を言っていたけど私としては下水処理の更なる効率化にこの魔法が使えないか叔父様にお願いして試して貰った。これは伯父様のお仕事として割り振ったジャンルだから補填はいらないよねw。


 これらは仮に今以上の効率化が望めれば既に日本の現状よりも色々と便利な事になる。

 

 地球でも後進国では例えば牧場の糞尿がそのまま川に流されそのまま海になどという問題がある。

 これは糞尿の処理、つまり下水処理も料金がかかるからで日本のように下水処理が発達していると様々な問題発生も抑えられ上手く回る。まあ料金の問題というよりも個々のモラルの問題だね。


 この場合でも処理のキャパや規模には限界があるけど今以上の効率化が望めればもっと多くの下水処理が施設で出来る事になる。


 一般的に下水というと臭いや蚊などを防ぐトラップや配管の太さ、勾配などに目が行く事が多いけど普通に脱気するだけでは浄化槽に糞尿を貯めるだけで汲み取る手間やその処理(肥料化と言っても全てではないし数年掛かる)、洗浄や消毒などが大変でバキュームカーの開発が急務になるけど私の場合は下水道を完備して下水処理施設を作っている。


 これは以前作った真空ポンプの逆で『空気の圧縮ポンプ』が命綱だ。


 下水は下水処理場に貯められて『活性汚泥』によってバクテリアで分解処理をするのだけどこれを活性化させるのが圧縮空気で空気を圧縮するとかなり高温になる。これは大体100度くらいなんだけどそれを活性汚泥に供給してプクプクと活性化して凄く綺麗に処理できるよ。


 何段階か層があって最終的にとても綺麗になるんだけど、ここで先に魔法を使う層を作って仮にそれが有用であってこの活性汚泥バクテリアによる処理時間が減れば処理するキャパが増え都市設計が楽になるよ。

 処理した後の汚泥は乾燥させ肥料などに廻し、水はほぼ飲めるレベルなんだけどゴミ焼却場に廻して発電に廻すよ。


 まだ出来ていないのだけれど冬期の地域暖房や電力、夏季の冷房、ゴミ処理(焼却)、下水処理、肥料とリンクして小さな単位で上手く廻して行ければ日本の非効率なものなどとは比べ物にならない程上手く廻す事が出来るかもしれないから頑張ってるよ。日本のように利権をそれぞれが独占したいのではなく効率的で便利な事をやりたいだけという事が日本と違うのかと思う。(クレームが来そうだからこの辺にしておこうかなw)



 同じく頑張ってくれたマルテにはマンスフェルト商会へマティーカを派遣して複式簿記の講義をやってもらった。これまではお父さまの所だけだったからね。


 えっ!? 私? うん、マティーカを派遣したよw。


 マティーカ『・・・』


 いや、マルテにはきちんと私が和菓子の作り方を幾つも教えて新しいお店を出店してもらいますw。

 開発出来たもち米や米粉を使ってとても美味しいのが色々とあるよ。ここでも重曹は大活躍で改めて電気がないとこんなの無理だと良く判ったよ。

 沢さんから教わった和菓子作りの実力が発揮できる時がようやく来た感じだよw。


 ここの文明の延長ではなく異国情緒がどんな風に受け取られるのかを私も試してみたいと思っていたから丁度いい感じかな。お店の雰囲気も完全にワフウ~!wで。


 きっとクラトハーンのラスティーネ様の旅館の近くに作れば似合うのかと思うけど私もちょくちょく食べに行きたいからブランジェルに先にお願いしますw。



◇◇◇◇◇


【通話魔法】


 あれから神功先輩に対して美麗が遠隔通話で話す事が出来るようになったけど、神功先輩からは『何かを伝えたい』というイメージと『感情』のみが伝えられるようになった。これはちょっと文字で説明するのは難しいよ。

 貴族学院でも『通話魔法』が得意でない人もそんな感じだったけど、これは得意でない人も頑張ればこれくらいは出来るようになるという事なのかもしれないね。誰もが出来れば貴族はみんな尖塔師になれちゃうからね。

 なんとなくのイメージレベルで、これこそ『虫の知らせ』なのかもしれないけどこれで呼び出してくれれば通話魔法が出来る人が連絡して結構便利に連絡が取り合えるかもしれないね。でもその場合でも尖塔師の人は欠かせない。

 勿論、これもこの3人だけの秘密だよ。



【オーパーツ】


 実際には何段階かで考えなければならないと思うけど、発掘物について何らかの答えを出しておかないと葛城部長などから色々と面倒な事になりそうな状態だった。手を打っておく必要がある。


 こんな際、日本というか地球には凄く便利な言葉があったよ。


『オーパーツ』だ。


 この言葉はとっても便利で、年代測定結果が正確であったとしても『偽物』と思われる事が多い。

 年代測定そのものが正しくないのではないかとかコンタミなどが疑われる為、殆どが信じられないものに変貌してくれる。(※コンタミ・・・異物の混入)

 それだけでなく、不思議な事が好きな方もそれ以上の考察を『不思議だね~』と言う一言で止めてくれる事が多いとても便利な言葉だw。勿論、こういうのを元に色々と妄想するんだろうけど、、、。

 


 歴史研究部で葛城部長の主導で発掘物についての話し合いが行われ、私が最初に『オーパーツではありませんか?』と誘導する為に言った後、神功先輩と美麗、それに私は進んでは意見を言わず、結局これは『オーパーツ』だという事になったw。

 

 out of place artifacts


 その場所、時代に存在し得ない物。


 取り敢えずみんなにはそれでいいかなと思う。オーパーツならそれ以上どうにも出来ないからね。葛城部長からもこれで詮索されないかと思う。



【超古代文明】


 この後、神功先輩と美麗と残り、実際の事について話し合った。これは私的には第二段階だね。


 人類の進化については様々な事からおおよそ判っている。


 ホモ・サピエンスは20万年から30万年前にアフリカで誕生して4万年前くらいに日本に到達している。黒曜石などの分布から優れた航海技術が既にあった事はわかるけど、これらの文字の書かれた発掘物が30万年以上前という鑑定が正しいならそれは現人類のものではない。

 

 異様なオーパーツがその1つだけが発見された訳ではなくおそらく品質保持された古代の街は人類以前のものだ。

 仮に品質保持されていないものならば土に返り、地質調査でプラスチックなどの自然界に存在しないものが土壌に含まれているかどうかを確認出来るだけだと思う。

 普通ならば全てが朽ち果てる時間が経過している。

 でもあそこには見事な街が残っていた。この3人はそれを見ているし明らかに知っている。


 神功先輩が大好きな表現でいけば、人類の進化の前に優れた文明を持った別の人達がいて何かしらの原因で地下へ移動しそして滅びた。地上ではそれらの遺物は朽ち果てて見つからない。

 その人達の入れ替わりのように人類が発祥して現代まで繋がっている。

 但しそのルーン文字や古ラテン語が何らかの理由で人類の知能発達後に伝わり過去に使われてた。


 おおよそこんな感じなのかと思う。


『超古代文明』w


 完全にあっち系だよw。神功先輩は顔を真っ赤にして喜んでいる。


 私も実際にそうなのではないかと思っている。

 恐らくあの古代の街を詳しく調べればそれも判るのかもしれないけど、、、。

 正直、興味はあるけど今は色々とあり過ぎて手を出したくはないかな。


 神功先輩には伯父さんの許可が必要だから難しいと、ひとまずは諦めて貰ったけど、多分この人簡単には引き下がってはくれないよね。


 取り敢えず3人の打ち合わせはお開きにした。



【魔法買います】


「夢美。ちょっとあなたとビジネスのお話がしたいわ」


 美麗からの引き抜きの話なら断っているし今日は美鈴先生の家庭教師はお休みだ。

 徐々に人数は減ってるけど今日はずっとお話しているねw。


「美鈴先生は今日はお休みだよ」

「川端美鈴は関係なくあなたとビジネスの話がしたいのよ」


 はい?! 私とビジネス?

 母の田舎の話なら伯父さんに話してないし私も色々と困るのでやる気はないよ。


 美麗と二人で歴史研究部の会議室に入った。外にはメイドさんや美麗の秘書の人もいる。つまり二人だけの極秘のお話だ。

 

「美麗、母の田舎の事なら、、、」

「そっちじゃないわ。いやそっちかしら?」


 どっちだよ!


「先日見つかった剣は信じられない程古かったのに凄く新しく見えたわよね」


 そっちの話か。確かに全てが朽ち果てる時間は経過している。


「うん」

「あなたはそれに「品質保持」って書いてあると言ってたわね」

「うん、書いてあったよ」

「それも何かの魔法なのかしら?」

「魔法文字の書かれた道具の事を魔道具って言うんだけどその事だね」

「それはあなたは作れるのかしら?」

「簡単な事しか習ってないけど出来るよ」


 美麗がニンマリとした。


「何か魔法の呪文が必要なの?」

「必ず必要という訳ではないけど呪文を唱えると効果が上がるよ」

「そう。ではあなたに仕事としての依頼よ」

「何が仕事なの?」

「それは品質保持の他にどんな事が出来るのかしら?」

「うーん、色々とあるよ。今知ってるだけでも、品質保持の他に安全祈願、愛顧を得る、異性の愛、失踪者探索、犯人探索、博打祈願、宝探しなんかだね」


 貴族学院の授業で習いましたw。


「それを幾つか買いたいわ」

「はい?!」


「異性の愛とかは正常な話ではないわね。博打祈願もダメね」

「うん、やばい話だよね。そういうのをやる気はないよ」

「品質保持、安全祈願、愛顧を得るの3つを手付各1,000万で買うわ。それを私に出来るように指導する事に5000万。効果があればそれに対してもマージンを払うわ」


 !!


「な、何言ってんの? 御守りみたいなおまじないレベルかもしれないんだけど」

「わたしも効果を実際に目にしているじゃないの」


「美麗の会社のような大企業がそんな怪しい話に手を出すとかおかしくない?」

「ふふふ。そうかもしれないわね。これはわたし個人の話よ。昔、数十年前にわたしのおじいさまがやはり個人でピラミッドパワーの研究をやらせた事があるそうなのよ。今も細々と続いているのだけれどそれに似た感じかしらね」

「意味が判らないよ」


「少し詳しく説明すると、うちも現代の最先端技術でしのぎを削ってギリギリの戦いをしているのよ。大幅なブレイクスルーがない限り、川端美鈴やあなたが考えているような優れた別の価値でも取り込めない限り有利に戦う事は出来ない。つまり今は出来ない訳なのよ。それでもこの前見たような品質保持のような事が少しでも出来ればそれはとても強力な武器になるわ。仮に物品、例えばICチップの平均故障間隔が改善すればそれだけで他の企業より有利になる。その違いがどれくらいなのかがポイントね」

「おまじないかもしれないのに、、、」

「祈祷すれば少しでも良くなるなら私達は時間を割いて重役を幾人も連れて祈祷にも出向いているのよ」


 そんな事をやってるんだ。

 確かに日本では当たり前に家を建てる前に地鎮祭をやってるけど、やった場合とやってない場合の問題の発生率とかは確認してないよね。

 まあ教えるのは構わないとして、それでそんなにお金を貰うのはちょっとなぁ、、、。


「わかったよ。じゃあ教えるから本当に効果があると判るまで対価はいらないよ」

「あなた、それは商取引ではないわ」

「いや、私達中学生だから、、、」

「そう。では直ぐに準備するからお願いね」

「わかったよ」


 流石にこれは美麗だけでは難しくて魔道具を仕事に使いたいので西園寺財閥の総帥、つまり美麗のおじいさまに魔道具である事を話し特別チームを組んで秘密は厳守する。私は協力者という立場で参加するだけでおかしな話が漏れる訳でなければ良いかと思う。西園寺財閥の総帥の美麗のおじいちゃんもピラミッドパワーとかこんな話に乗るとしたら結構あっち系の好きな人なんだねw。


 契約書にサインしてから何日かかけて正確なルーン文字での処置と魔石、呪文などを説明した後、美麗が蛍光石の指輪やペンダントをいくつか用意してくれて私ももらったよ。

 対象となるものにルーン文字を入れ、在庫棚や保存ケースにも魔石が入る。

 このミーティングの際にはとても美味しいお菓子や紅茶が用意されていて、私はこれらでなんか得した感じだったよ。


 この後、美麗が『~ノニントレビット~』を唱えて魔石が光るまで練習したよ。

 美麗は結構優秀な魔法使いなのかもしれないねw。


 美麗に教えた効果は

 『品質保持』

 『安全祈願』

 『愛顧を得る』

 の3種類だよ。


「最後に一つだけ教えて頂戴。この前わたしが誘拐された時に何故『失踪者探索』や『犯人探索』を使わなかったのかしら?」

「あの時は知らなかったからだよ」

「あなた、、、現在進行形でこれらを誰に習っているのよ」

「あっ・・・」


 不味った、、、。そんなの夢の中なんて言っても頭おかしいと思われちゃうからね。


「内緒、、、」

「そう。判ったわ。それではさっそく色々と使わせて貰うわね」

「うん、頑張ってね」



【私個人の考察】


 で、最後に私の考察なんだけど、歴史研究部は『オーパーツ』として回避出来たけど、秘密を共有している美麗と神功先輩は概ね古代の街が判っていてその年代のものが多数あるとバレている。でも今は魔法を教えて静かにしてくれている感じだね。

 やはり『超古代文明』が正しいのかと思う。


 実際に、私はあれらの発掘物の文字を読んだけど『実質主義』のような感じで有益な文字ばかりで何かの記録とか連絡文章的なものはなかった。今ある情報だとその面から考察しても何も得られないと思う。


 問題は形状がちょっとおかしいと感じている事だ。

 普通のペンは人間が手で持って指で支えて文字を書く。

 普通のナイフも明らかに手で持つ部分は人間の手で持てるようになっているよね。


 この出土したものは無理をすれば持てなくはないけどナイフの手で持つ部分は丸過ぎるし何かの溝もついていて、仮にこれを手で持って何かを切ろうとすると人の手だと恐らく廻ってしまう力がかかると思う。

 この溝で回らないようにするとしたら手ではなく何か別のものにくっつけて使うのかもしれない。これは別の装置があるのかもしれなくて、個人的にはそれが何なのか知りたくもある。


 少し妄想するとマンガとかで腕の所が銃になってるような感じで、スポッとはずしてこの短剣をつけて、、、。

 いやー、なんか私もかなり中二病だねw。


 ペンも同じで他の装置にくっつけて使う、まるでペンプロッターのペンの取り付け装置部分がくっついているような感じだ。どう考えてもこの装置がペン側に付いている方がおかしくて、普通は取り付ける側についているよね。


 まあ、でも今は私の考察もここまでかな。


◇◇◇◇◇


 グレグリストはルントシュテットのクラトハーンから山を越えた北に位置し、冬には相当寒くなるらしい。行くとしたら夏しかないんだけど、『霊から知識を得る為の魔術』によって『カスヨイヤ』という自称天使から聞いた『ゾームの樹海』へ行く許可をお父さまから貰わなければならない。



「ダメだ! 危険過ぎる!」


 確かにビアンカにも『危険地域』だって言われていたけど誰に聞いても判らなかったんだよ。


「お父さま、わたくしは『カスヨイヤ』様から『ゾームの樹海の南側にある小さき家』を訪ねるように言われました」

「ソフィアの話した霊が本当に天使『カスヨイヤ』であるかどうかも判らぬではないか。ゾームの樹海には人ならざるものが住むと言われている危険地帯だ」


 人ならざる者!? 何この中二病臭!

 いや、それ人がいなくて単に動物が住んでるだけなんじゃ、、、。

 でもわざわざそう言うという事はもしかして他の種族が住んでる!?

 エルフ? ドワーフ? わぉ! キラキラ! ワクワク!


 お父さまが呟いた。


『しまった!』


「南側と言う事は樹海の外ですよね。外ならば大丈夫ではありませんか? アドリアーヌ王妃様から頂いた名誉ある『ヒヒイロカネ』です。わたくしが使えなければ建国の英雄クリストファー様に申し訳が立ちません!その為の努力をわたくしがしなければならないのは当然です」

「そ、そうかもしれぬが、、、せめてわたしが一緒に行ければ、、、」

「わたくしの護衛の方々も皆さん強いですよ。夏休みのこの機会しかございません」


 苦虫をかみつぶしたような顔でお父さまが言う。


「・・・判った。ソフィアが言い出したら決して折れぬからな。本当に南側を探すだけだぞ。樹海の中はダメだ。目的のその小さな家と言うものが見つからなければ直ぐに引く事。それに護衛にビッシェルドルフをつけるから後で予定を確認するように。尖塔師を連れ毎日報告するように」

「判りました。ありがとうございます。お父さま♪」


 お父さまは細かな条件を沢山付けた。額に手を当てているけど一応許して貰えたよ。なははは。


 さっそく準備して大叔父様とお話するしかないね。


◇◇◇◇◇


 クラトハーンの街に領境があり山越えでグレグリストに入る事も出来る。でも中央からはモルキッソの街に平地から入る事が出来るので中央からの方がいいと思う。

 大叔父様は騎士団長でもあるけれどクラトハーンの元伯爵で顔も広いからグレグリストへの口利きも頼りになるよ。


「ソフィア様。グレグリスト卿とモルキッソ卿に協力を仰ぐ事になった。ソフィア様の事は高く評価しているがグレグリスト卿は失脚したゲートルード元王妃のご実家でもある。ゲートルード元王妃は隣街のプリンステレ・ルーファスで蟄居しているが我々の歓迎パーティに出席するようだ」

「大叔父様。わたくしはまだ恨まれているのでしょうか?」

「時間も達ち落ち着いたからこその出席であろう。もしくは娘のエルフリーデの婿探しかもしれぬがな」

「ならば大丈夫そうですね」

「念の為、ミスリアとヘルムートには護衛としてではなく出席者としてソフィア様の護衛に当たるが問題はないだろう」

「判りました」

「では詳しく天使『カスヨイヤ』から聞いたという話を教えてくれないか?」

「はい」


 私は大叔父様に詳しく説明した。


 ・・・。


「成程、大体判った。ゾームの樹海があるベンタスは一応フラバスという栄えた部分もあるが言葉の違う幾つもの集落で『準街』と認識されている。アルフビートの街に拠点を置いて明るいうちに探索するのがよかろうと思うが、現地へ行ってからだな。アルフビートの街の貴族は昔馴染みだから先に連絡を入れておこう」

「ありがとうございます。現地の方に詳しくお伺いしてからの方がいいですね」

「そうだな。それが懸命だろう」

「はい」


「ところで最近ルントシュテットで美味い食材が出回っておるようだがこれもソフィア様が?」

「そうですよ。イエルフェスタのエミリア様とシルバタリアのアンネマリー様と一緒にやっています」

「うむ。そうかそうか。うふふふ」


 大叔父様はむっちゃニコニコだった。こんな所にも食いしん坊さんがいたよ。


◇◇◇◇◇


 色々と忙しく準備を進める。

 でもルントシュテットの騎士団の練習なんかは欠かさないよ。

 思い切り困った事にあのランハートさんと同じく第一騎士団を辞めてレイモンドさんまでルントシュテットの私の所まで弟子入りに来たのだそうだ。

 

 頭おかしいの? この国の第一騎士団と言えば剣を目指す者が誰でも憧れる職業のNo.1と言っても過言ではない。そこを辞めて私のような子供に弟子入り!? そんなの私がイヤですw。


 中央からクレームでも来るかと思ったけどフランチェスカさんから『バカ二人がルントシュテットへ向かいましたがよろしくお願いします』と連絡が入ったそうだ。


 はぁ。諦めてくれると思って色々と頑張ったのに、、、。


 腕前は二人共かなり強い部類だけどやっぱり精神的なものを整えて貰う必要がある。

 私が剣道の際に行っている黙想は邪念を払う精神統一を行っているもので、これは平静に出来れば別に正座しなくともいいんだけどここでは全員が正座している。


 うぉっ!

 あぁ、、、。

 二人共筋肉が発達してるから正座はきついね。私みたいにふにゃふにゃで筋肉がないと結構楽だよw。

 明鏡止水の境地に達してもらうのはこの二人はもうちょっと掛かりそうだ。

 でも真剣にやろうとしているので九条流を教えてるよ。

 殆ど大叔父様に任せているけど、、、。


 このランハートさん達の行動を知ったウルリヒお兄さまが練習に参加したくてヤキモキとしていた。

 春の大会では出場したものの全く活躍出来ず貴族学院でも悶々とした日々を過ごし練習に熱が入っていたそうだけど学業の方が遅れ夏休みなのにお兄さまの側使えに遅れている勉強を教わっている所で身体を動かせないのだそうだ。


 私はお兄さまとは手合わせをしないように言われているのだけど、身体が動かせないなんて可哀想で、なんか一緒に隠れて外に遊びに出ていた頃を懐かしく思ったよ。


◇◇◇◇◇


 私達はキャンピングカーを用意して中央側からグレグリストの城下町モルキッソへ向かった。

 面倒だけどランハートさんとレイモンドさんも騎士団と一緒に護衛に加わった。一応この人達強いからねw。まあ騎士団長の大叔父様達が一緒なんだけどね。


 モルキッソのグレグリスト伯の領主館で行われる歓迎パーティというのは正式なものではなく準パーティという事だけど楽器演奏の入ったダンスパーティで料理も沢山出されている。グレグリストの名士を集めたパーティだ。


 私はチャンスだと思って色々とやらせてもらいました。

 ミスリアとヘルムートの為に思い切りですよw。


 ミスリアには背中の大きく開いたカクテルドレスにこれでもかというお化粧で髪をアップにする。

 ヘルムートもカッコイイ衣装とエタノールの単離実験から()たエタノール(ダジャレっぽいねw)で作ったヘアリキッドを使って髪を上げたカッコイイヘアスタイルをばっちり決める。

 柑橘系でいい匂いがする。

 二人にはオレアンジェスでもお世話になったからこのドレスも貴族服も勿論全部私のプレゼントだよ。

 ミスリアはこのパーティで一番目立つ美しさで、ヘルムートもとてもカッコイイんだけどなんかちょっと顔が緩んでたよw。


「ノ、ノーラ。このわたしのドレスは背中が空き過ぎではないですか?」

「わたくしのもこんなに空いてます」

「わ、わたしのもです」

「ミスリアもマルテも良く似合ってますよ」


 勿論、ニッコリとするノーラも良く似合っている。

 どうやら私が「はしたない」と「美しい」の感覚の線引きの位置を変えてしまっているようだ。


 ダンスの方なんだけど貴族学院でもダンスは学ぶけど私は未だ学んでいない。でも一応お兄さまのお相手位なら少し出来るというレベルだよ。勿論踊るつもりはない。


 もう大叔父様と一緒にグレグリスト卿にもモルキッソ卿へのご挨拶も済んでいる。

 グレクリスト伯からはゾームの樹海まで案内をつけてくれるそうだ。

 それでもこの地の商人など色々な人に挨拶されたよ。商人達はマルテの事も知っていたよ。有名男爵令嬢だね。


 私はようやく色々な立食のテーブルをマルテ達と廻り珍しい料理をつまんでオーランジュ(オレンジ)を絞ったジュースを飲んでいる。この辺りには内海があってお魚も捕れるんだね。

 うまうま。


 !!


 後ろからいきなり圧を感じた。ちょっと変な圧だね。殺意までは感じられない。

 何かあるとイヤだから私はテーブルにお皿を置いて隣のミスリアに目配せする。

 ミスリアも気が付いたようだ。

 来る。


 ドシン!


 

 次回:ゲートルードと絡む事になるソフィア。

 食事は江戸前寿司回ですw。

 ルーファスのゲートルードの館に呼ばれトンデモない事件が発生する。

 お楽しみに♪

 

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