ソフィア/夢美/ソミアならば、、、~宝~
ヴァルターにアドリアーヌ王妃からのお願いが、、、。
日本では夢美の母の実家に発掘物を確認に行き驚きの発見が、、、。
その後日本でトンデモもない事に、、、。
えっ! 日本で魔法がバレた!?
母に伯父さんに連絡して貰い、出土した物を見せて貰うのはOKを貰った。
母に聞くと、今の発掘調査は以前お爺ちゃんの土地だった所をお爺ちゃんの代の弟(大叔父)が売ってしまった場所から出たもので、今許可をせずに発掘調査を止めているのは伯父さんなのだそうだ。
大叔父は独り者だったそうで既に亡くなっている。
私が子供の頃、近所で遊んでいた廃ホテルなんかも当時その弟が他の人に売ってしまった土地に建てられたもので、ホテルの経営が思わしくなかった頃に伯父さんが買い取ってそのまま廃ホテルになったそうだ。
伯父さんは国や県から重要な何かに指定されてしまうのを思い切り嫌っているようだ。
私達はその廃ホテルや以前の土地に建物を建設した際に出土した数々の物は伯父さんの家の蔵に適当に入れられているらしく、それを見るのは構わないし欲しければ私に全部くれるそうだ。
(ガラクタはいらないけど、、、)
但し、それらをSNSなどで公表したり、研究機関で公に研究する事はダメだという。
◇◇◇◇◇
「良く判るわ。うちも遺跡に当たった事でどれだけリゾート開発がストップした事かしら」
「こっちもそう」
「いやいやいや、そういうのが考古学が進まない理由なんじゃないの?」
「価値のあるものならばいいけど、たいした価値のない出土品なんて人がいれば物があるのは当たり前じゃないの。それを訳の分からない宝くじ感覚の学者に渡すとか絶対にわたくしも嫌ですわね」
「特に古くからの土地ならばその家の先祖のもの、、、」
いや、確かにそう考えると、伯父さんは先祖代々の土地を守りたいだけなのかもしれない。
でもあそこの相続税を考えると従妹が可哀想で土地を守るのはもう無理な気もするけど、、、。
税を払うだけで土地が減っていくのが今の日本だからね。
「素晴らしいわ。九条さん!!」
えっ! 何が、、、。
葛城部長が感激している。私がきょとんとした顔をしていると、
「貴方のお母さんのご実家辺りは古墳も多い地域で有名よね。そこで出土したものがこれまでどの研究者にも研究されていないものなのよ。わたし達がそれを最初に見れるのよ。本当に素晴らしいわ」
「確かに、、、。新しい発見があるかもしれない」
子供の頃見た事があったと思うけど、確か段ボール箱に入って泥だらけだった気がするけど、、、w。つまり葛城部長は『宝くじを沢山引く権利を貰えたわね』と言っているようだw。
「取り敢えず、その約束さえ守って貰えば、出土品は見せて貰えるし、離れ屋を自由に使ってもいいそうです」
「どんな所なの?」
「えーと、こんなのです」
私は大分前に撮影した母の実家の離れ屋の写真を見せた。
「あら、随分と大きいのね。これが離れ屋なの?」
「そうですよ」
「使わせて頂けるならそこにお世話になりましょう」
「判りました。連絡しておきますね。沢に降りれば沢蟹もいますよ」
「いや、遊びに行くわけじゃない」
「そ、そうでしたね。お散歩のついでならいいかもです」
あははは。
「でも、夢っち、楽しそうだよ」
「うん。そうだね、、、」
でも、私小さな頃にあの辺りで行方不明にもなってるから、遊ぶにしてもかくれんぼはやらないからねw。
私達は週末に伯父さんの家に厄介になる事になったよ。
◇◇◇◇◇
【ルントシュテットの教化の整備】
製本工は様々な技術を持っている。こっちでは300年程前から普通の紙が瞬く間に広まり古い羊皮紙の本から紙に切り替わったものだ。紙に切り替わって製本工が増えたと言う感じだ。内容をまとめ表紙をつけて中身を整え本を作る人だけど、市民の多くは識字率も低く、主に貴族が本を書く。
本には2種類あって、日記のようなノートの事を白本と呼ぶ。いやこれ単にノートだけどね。それも使う人には売れるんだよね。貴族が白本に書いた物を後で別の本にするというパターンも多い。
製本工は遍歴職人としてさまざまな都市を渡り歩き貴族から仕事を貰う事が多い。
幸い、ルントシュテットにはマクシミリアン叔父様だけでなく私も他の製作者達も数々の本を出している為優秀な製本工が集まっている。
製本工のコニーは私の好きな可愛い絵を描いてくれるし字も上手いから結構お気に入りなんだよね。文章にも詳しくおかしな言い回しや誤字、脱字なども見てくれる校正まで出来る優秀な製本工だよ。
イソップ寓話の文章をまとめて大きな挿絵を入れた絵本としてまとめて貰う。
絵の部分は大量に作る場合、銅板で作るのだけれど、サンプルとしてコニーが持って来たのは手書きの絵が描かれていて、かなり上手い。
私は可愛い系のキャラにして貰い、さまざまな動物の特徴を上手く出せるような絵にして貰ったけど流石プロだねw。絵を描く技術だけでもまるで画家みたいだよ。
ここまで絵が上手いのなら紙芝居でもいいかもだね。
「ソフィア様。レオン司教とアヒム司祭がいらっしゃいました」
ありゃ、そんな時間か。
「では、本はこのままの方向でお願いします」
「はい、ありがとうございます」
製本工のコニーが嬉しそうな足取りで帰って行く。
大量にお願いしているんだから大変だろうけど頑張ってね。
マルテに合図するとマルテもコクリと頷いて入れ替わりにレオン司教とアヒム司祭が入って来た。
「良く来てくれましたレオン司教。アヒム司祭」
「ソフィア様。参上致しました」
ノーラがお茶をだしてくれる。
「ソフィア様のお陰でお祈りに参加する者達がかなり増えております。お祈りの時間を知らせるメロディは効果が高く、市民はあのメロディを聴くとお祈りの時間だと良く来て貰えるようになりました。このまま増えれば恐らく以前の倍は参加して貰えるようになるでしょう」
「それは良かったです。それでは他の街でも取り入れられるようにしましょう。本日来て頂いたのはまずこの本を見てください」
「これは?」
「寓話です。いくつか読んでみて貰えませんか?」
「はい」
レオン司教とアヒム司祭は大きな絵本を開き、二人で読んだ。
いくつかの話をしばらく読み続けアヒム司祭と何かを話している。
「ソフィア様! これは、、、」
「はい、これらを利用して子供達に聖典の補助として利用して貰いたいのですよ」
「凄い。これもソフィア様が?」
「いえ、イソップという人のお話をまとめたものです」
「聞いた事がありませんが、、、」
「とても昔の方なのですよ」
「例えばこれらの話をしてその後子供達と話し合いをして欲しいのです」
「素晴らし過ぎて言葉もございません。わたしはこれまで数多くの貴族と相対して来ましたが、お金以外の面で協力頂ける貴族の方に始めてお会い出来たばかりでなく、中央でも他のどの領地でも誰一人なしえない教会の弱体化を防ぐ協力を頂ける貴族の方のはソフィア様だけでしょう」
「今日の相談はこれだけではありません。市民の子供達だけでなく、周辺民や居留民にも広めて頂きたいと思ってアヒム司祭にも来て頂きました」
「周辺民や居留民にまで!」
「はい。周辺民や居留民のモラルが上がれば大きな意味でも領地全体が住みやすくなって良い効果が生まれるでしょう?」
「素晴らしいお考えですが、直接税を納めない彼らには多くの教会関係者は嫌がるでしょう」
「ですよね。そこでもっと大きな視点で考えて貰う為に各街の司教様や司祭様を呼んでレオン司教に彼らに協力を取り付けて貰いたいのですよ」
「反対する者を口説けば良いのですね」
「はい。それでもダメな街の司教は後でわたくしに教えてください」
「いえ、必ずわたくしが全員を説得致します。わたくしはソフィア様を全面的に支持致します」
この前やりあった司教様とは思えないね。でも熱血で真面目なのは知ってるからね。レオン司教にまかせよう。
「ありがとうレオン司教。周辺民や居留民に関しては聖堂よりも小教区の教会の方が多いでしょうからアヒム司祭も協力をお願いしますね」
「はい。喜んで!」
「わたしが実際の効果を話せば反対するものは少ないでしょう。
・教会のお祈りの時間を知らせるメロディ、
・寓話による子供達に対する話、
・周辺民や居留民にもそれらを拡げる。
恐らくルントシュテットはこれまでにない敬虔な者達で溢れるでしょう」
「はい、そう出来るようにお願いしますね。子供達は未来を担う宝なのです。これらに協力して貰える聖堂や教会には寄付を増やせると思います」
「ソフィア様に無限の感謝を!」
◇◇◇◇◇
【アドリアーヌ王妃の呼び出し】
数日後、ヴァルターがアドリアーヌ王妃に呼び出された。
ヴァルターはソフィアと共に呼び出されたが一人で王城へと向かった。
・・・
「ヴァルター。良く来てくれました」
「いえ、アドリアーヌ様のお元気なお姿を見られ大変光栄です。国王様のお加減はいかがでしょうか?」
「ダルは立ち直れると信じていますが、まだ時間が掛かるでしょう」
「同じ子を持つ親として判ります」
「しかし、国の運営は止められないのです」
「仰る通りです」
「ダルは血のつながる公爵家の貴方であれば国を任せる事が出来ると言っていますがいかがしますか?」
!!
「ご、ご冗談を。国王様もアドリアーヌ様も公爵家の役目を誤解されているようです。そこにいらっしゃるファルク宰相も公爵家でありますが、公爵家は国王様が間違った道に進まれようとした際に唯一止める事が出来る身内の貴族という役目なのです。国王様もご健在でアドリアーヌ様のご子息もご健在の今、何をおしゃっているのですか?」
アドリアーヌの後ろに立つ宰相ファルク・フォン・ツェレウスキーもコクリと頷く。
「わたくしはヴァルターの信頼を生涯忘れないでしょう。しかし本日は本当は貴方への直接の用事ではなく、一緒に呼んだはずの女神様の方なのですが、、、」
「ソ、ソフィアは疲れがたまったようで少し臥せっております」
「そうですか。ではあなたの許可を頂きましょう」
「どのような事でしょうか?」
「今、この国は危機に直面しています」
「はい」
「中央では国王様が倒れ、ヴァルドヴィーノ第一王子を失いました」
「アドリアーヌ様のご子息であられますカーティス王子が優秀ですからご心配はないでしょう」
「ありがとうヴァルター。イエルフェスタの領主ゲオルクも臥せっていますが、あそこのアウグストも恐らく大丈夫でしょう」
「左様でしたか、、、」
「問題はオレアンジェスです。コーエン・フォン・サクレールが亡くなったとの報が入りました」
「えっ!! サクレール卿が!!」
「はい。コーエンは愛妻エリザベートの死後、あの若さで頭が真っ白になる程憔悴していましたが、今回の嫡男ゲルフェルドを放逐した件で倒れ、そのまま息を引き取ったそうです」
「真に残念です」
「残されたのはまだ貴族学院を休学中の幼い次男アデルのみで、オレアンジェスは現在酷い状況に陥っています」
「そのような事になっていようとは、、、」
「オレアンジェスには唯一、以前戦争をした事のあるヒーシュナッセの国境があります」
「はい、しかしヒーシュナッセは船で幾つもの文明の遅れた地域の侵略を行っているのではありませんか?」
「それでも国境の接するオレアンジェスの力が弱くなればグレースフェールに再び攻め入る事もあるでしょう」
「確かに。仰る通りでしょう」
「では先にヴァルターの用事を。今、国はルントシュテットからの提案のあった工事に力を注ぎ、他に廻すお金が足りません。そこで、オレアンジェスを助ける為に、ゲートルード元王妃が集めていた宝を売ろうかと考えているのですが、どこか良い売り先はないものかとヴァルターに相談したかったのです」
「アドリアーヌ様。ルントシュテットにも多くの外国商人がおりターオンの商人には売れるでしょう。ですが、ゲートルード元王妃の集められた宝であればこのグレースフェールから出さない方が良いものも沢山あるでしょう。その為、こちらで鑑定させて頂き、国外に出すべきものでないものは、再度そちらでご鑑定頂いた後に当家で買い取らせて頂きたいと思いますがいかがでしょうか?」
「判りました。ありがとうヴァルター。それは貴方にお任せしましょう。そのお金でオレアンジェスを救って欲しいのです。そしてルントシュテットの協力領地としてオレアンジェスも入れて欲しいのです」
「それはお話合いが必要かと思います」
「その話合いと救済のアドバイスを貴方の娘の女神様、ソフィア嬢にやって欲しいのですよ」
「ア、アドリアーヌ様。それは一体どういうことでしょうか? ソフィアはアドリアーヌ様にお目通りした事もないかと思いますが、、、」
「こちらでもオレアンジェスの事は聞いていましたが、コーエンが亡くなった事の連絡と復興の願いは、貴族学院のテオバルト・フォン・ベートマン・ホルヴェークからのものなのです。ホルヴェーク卿が現状を同僚のアイヒホルン卿に相談した所『女神様ならば出来るだろう』と言ったそうです」
な、なんだこのアドリアーヌ様の笑顔は、、、意味が判らない。
アイヒホルン卿が!?
確か魔法学の講師だったと思うが、、、はっ!! 神のご加護かっ!
くっ、確かにご加護の神の名を他に漏らしている訳ではないが、立場上これではホルヴェーク卿にもアドリアーヌ様にも大いに疑われるではないか!! なんて事を!
確かにルントシュテットの我々が無関係な訳ではないが、、、。
「わ、判りました。わたくしでは無理かもしれませんが、、、」
「あなた方ならば出来るでしょ? 直接統治しろとは言いません。アドバイスで結構なのです」
「オレアンジェスの状況も正確に把握しておりませんのでなんとも言えませんが力の限りやってみましょう」
「ではわたくしからの勅命です。ヴァルター・フォン・ルントシュテット。ルントシュテットの力を使いオレアンジェスの復興へのアドバイスをお願いします。出来ずとも攻めませんが貴方に出来なければ他の誰にも出来ないでしょう。オレアンジェスのアデルにはわたくしから連絡しておきます」
「勅命謹んでお受け致します」
さて、どうしたものか。ソフィアは冬休みの後もしばらく休んでも問題はないだろうが、、、。アデルが成人するまでの間、私が後ろ楯になる程度で大丈夫なものなのだろうか?
まず、オレアンジェスの状況を詳しく調べ皆と相談するしかないか。
◇◇◇◇◇
【明菜(夢美の母)の実家】
結局、乗車時間は凄く短いけどガラガラだった新幹線のグランクラスに乗り美麗の系列ホテルへ前乗りしての朝、ホテルのマイクロバスで伯父さんの家まで送って貰った。
美麗の系列ホテルの豪華な食事とぐっすりと眠れる寝具は流石だったよw。
「いらっしゃい。良く来たね。夢美ちゃん」
「伯父さん。ご無沙汰しています。これ父と母からです」
「あははは、手土産なんかいいのに。でもすっかりとしっかり者になったね。明菜やお父さんは元気かい?」
「はい。毎日忙しそうではありますけど、、、」
「そうだね。夢美ちゃんも東京が嫌になったらいつでもこっちにおいで」
「あははは、そうですね」
「じゃあ、離れ屋は自由に使っていいから」
「ありがとうございます」
私は引率の岩崎先生や、部長、メンバー全員を紹介した。
「掘り出したものは蔵に入っているので後でケイコに鍵を渡しておくから自由に見て貰っても構わないし欲しいものがあれば持って行っていいよ」
「はい。ありがとうございます」
私達は離れ屋に入った。畳の匂いがした。
「夢っち、ここ何畳あるの、すっごい広いね」
「これは確かに広いわね」
「あははは、数えた事ないよ。田舎だからね」
「いや、これ相当な地主さんだからだよ」
梨乃ちゃんは玄関の大きな石の前で立ち止まる。それこの辺の雲母だって。
部屋へ入ってからも梨乃ちゃんがポケーとしている。まあ東京の家と比べたら広さは広いよねw。
伯母さんのケイコさんが鍵を持って来てくれて、どの蔵なのかを教えてくれた。
お昼と夕飯はごちそうしてくれるし、お布団は自分達で出し入れして自由に使ってもいいそうだ。
そう言えば子供の頃、東京のお爺ちゃんとこっちで合宿に参加した事があったけど、あの時と同じ感じで、レクリエーション的な合宿にとても適している場所なのかもだね。
荷物を脇に置いて動きやすい服に着替えてから、私達は早速蔵に行ってみる事にした。
大きなカギを開けたけど扉が重くてみんなで開いた。
ギィー。
相当分厚い扉だね。一応補修がしてあってそんなには崩れていない。
2階もある大きな蔵だけど、昼間なのに暗くて、小さな窓をいくつか空けてようやく物が見えるようになって来た。
確か、入って直ぐの右側、、、あった。
大きな段ボール箱がいくつかあったので、蔵の外に出した。
1つは重くてみんなで引きずってようやく出せたよ。
段ボールを開けてみるとなんだか良く判らないものまで入っていて、一つはどう見ても剣のように見える。黒い剣で古いものとは思えない程綺麗なものだったのでこれは発掘物ではなくてもっと新しいものなのかもしれないね。
葛城部長と神功先輩が『外の水道で洗いましょう』というので発掘物の泥を全部洗い流した。
勿論傷つけたりしないように気を付けて洗ったよ。
「信じられない。この剣はとても新しそうに見えるけど恐らく古いもの。こっちはお香の入れ物で、どっちの様式も日本の歴史にない」
「これは年代を調べないと判らないわね。でもこんなのまるでお宝だわ」
「その話が本当なら結構面白いわね。夢美の伯父様が下さるというのなら夢美ならば貰ってもいいのでしょう?『SNSなどで公表したり、研究機関で公に研究するのは禁止』という事は、公じゃない機関ならいいのよね。私の所で年代測定くらいなら直ぐに出来るわよ」
「九条さん、、、」
わ、わたしならか、、、。
ま、まあ、伯父さんもそう言ってたし私が持ってる分には公表しなければ別に大丈夫なはず。
なんとなくそれっぽいなという品物を分け他は段ボールに入れて戻して小さな段ボールに貰っていくものを分けた。
葛城部長と神功先輩は蔵の中の他のものにも興味津々だったけど、そっちは違いますからね!
ケイコさんが呼びに来てみんなでお昼を食べた。
『おかわりします』と、ずっとケイコさんがおひつの前で座って待ってたのでおかわりしたよw。
ケイコさんに発掘物をいくつか貰って行く事を話した。
ケイコさんのこの姿を見て思い出したけど、この離れ屋は昔小さな時にお餅つきの際母と参加したことがあって、並んで何十人もここで食事していたね。なんか懐かしいなぁ。確かきな粉餅とかあんころ餅とか美味しかったよ。きな粉もあんこもおばさん達が作ってたからね。
最近は伯父さんのお餅つきとか参加してないけど、まだ毎年やっているのかな。
冷たく冷やしたスイカを切ってくれてみんなで食べた。これも伯父さんの畑で取れた物だ。
神功先輩は分類した発掘物に興味があるようでスイカをかじりながらずっと眺めている。岩崎先生と何かを話しているようだ。
「これ新しい発見どころかトンデモないお宝発見かも」
「確かにこんな発掘物は見た事がありませんね」
「なんか文字が書いてあっるっぽいけどわたしだと読めない」
神功先輩に読めなければ潰れちゃってるかなんかかなぁと思ってちょっと見ると、、、。
えっ! えー!
わ、私、読めるよ。これ夢の中の文字じゃん!
な、なんで、、、。
私は喉元まで出かかったけどギリ言わなかった。
というよりも夢のお話だなんて話しても信じて貰えないだろうし、こんなに古いものとの繋がりが全く分からないよ。
でも、後で全部見て読んでみる必要があるよね。
なんか神功先輩が言うようにトンデモない事実が発覚だよ。
・・・。
私達は食後の散歩というか近くを見て何かありそうな所がないか探す事になった。
いや、子供の頃一杯遊んでてそんな記憶ないけどね。
でも、古墳とかそういうのって小さな山になってたりもするから確かに葛城部長や神功先輩、岩崎先生のような詳しい人が見たらなんか見つかるのかもしれないね。
「では、班に別れましょう。先生も入れて3名ずつで、九条さんは西園寺さんと神功さんと一緒ね」
や、やられた!
花音ちゃんと梨乃ちゃんとは別にされて、面倒そうな二人を押し付けられたよ。
はぁ。
仕方ない。私この辺り詳しいし案内してあげよう。
出かけようとすると伯父さんが
「この辺りは時々こう、落とし穴みたいに足がずっぽりと埋まってしまうような所があるから気をつけてな」
「はい」
「この前も膝までずっぽりとハマってしまったよ。ははは」
「あははは、気を付けます」
「シンクホール」
「神功先輩、シンクホールって何ですか?」
「石灰岩なんかの地域で地下に空洞が発達して表層が崩落して生じる陥没の事」
「落とし穴みたいですね。膝くらいなら大丈夫ですよね」
「稀に30mくらいのも出来る事がある」
「怖い事言わないでくださいよ。子供の頃遊んでたけどそんなの見た事ないですよ」
「じゃ大丈夫だと思う」
取り敢えず以前発掘物が出たという廃ホテルの方かな?
そう言えばいつもいた美麗のメイドさんや黒服の人達はどうしてるんだろう?
「美麗、いつもの人達は?」
「さすがに貴方の伯父さんの家に泊まる訳にもいかないから近くで待機していて夜は昨日のホテルよ」
「そうなんだ」
なんかそれでも凄い気がするけど、、、。
子供の頃遊んでた廃ホテルに着いた。
「ここがさっき言ってた発掘物が出たっていう廃ホテルです」
「なんか発掘物よりも肝試しとか心霊的な聖地のような面白さがある」
「神功先輩、こ、怖い事言わないでくださいよ」
窓ガラスとかは以前見た時よりも割れてるところも多いけど、中の荒れ方も結構酷い。
神功先輩がそのままホテルの中に入って行くから私も美麗もついて行った。
いや、ホテルの位置だと発掘物とか遺跡とかは絶対に見つからないと思うけど、、、。
電気なんか勿論来てないから日陰はかなり暗い所もある。
「あそこなんか光ってる」
一階の床の下の方が少し緑に光ってるっぽいね。
神功先輩がその場所に行くと、、、
ズボッ。
わっ!
床が抜けていて神功先輩がそのまま地面の穴にずっぽりと胸の辺りまでハマった。
うわっ、伯父さんの言ってたのこれか。
私は美麗と一緒に地面に降りて神功先輩の腕を引っ張って、引っ張り上げようと声を合わせる。
「いちにのさんっ」
ズボッ!
わっ!
キャー!
落ちた。
結構落ちてるけど私は直ぐに心の中で呪文を唱えて身体強化をした。
3人で落ちてる空中で体勢を直していると、凄く古い記憶がよみがえった。
これ小さな頃に落ちたのと一緒だ。
ズシャッ!
美麗が腕を何処かにぶつけた。神功先輩は頭が下になってる。
不味い。
結構な高さを落ちてるからこのままだと危ない。
私は二人を空中で捕まえて両脇に抱え、僅かに見える壁を足で蹴りながら落ちる速度を出来るだけ遅く出来ないかと頑張った。
もう地面だ!
ドン!
あたー!
ふぅ。二人をどうにか大けがさせないで済んだみたいだ。
あっ!
美麗の腕がかなり切れてる。神功先輩は足をくじいたようだ。
美麗は傷を一生懸命押さえてそれでも取り乱さないようにしているけど流石に泣きそうな顔をしている。美麗の方はこのままだと傷跡も残るだろうし直ぐに縫合なんかの対処が出来ないよ。
もう隠している場合じゃない。
「お二人共、これから見る事は内緒にして貰えますか?」
「この緊急事態に何を言ってるの。携帯が繋がらないのよ」
美麗は血だらけの手で携帯を操作して恐らくあの黒服の人達を呼び出そうとしたようだ。
「神功先輩?」
「わたしも足くじいてて多分歩けない」
私はドロミス神から教わった呪文を唱えた。
『~エルクルフルト クルリトン クレステペタル~』
右手が白く光ると二人の驚いた表情が見えた。
美麗の腕の傷に近づけ傷がくっついていく。
結構深く切っていたようだけど内部も皮膚の部分も元通りにくっつき傷跡も見えないようになった。
「美麗。どう?」
「ど、どうって、貴方これ、、、」
美麗はそう言いながら腕を伸ばしたり縮めたりして確認し私を見た。
私は美麗から目を逸らした。
「じゃあ次は神功先輩の足ですね」
もう一度呪文を唱える。
『~エルクルフルト クルリトン クレステペタル~』
右手が白く光り神功先輩の足も痛みもなく動かせるようになったようだ。
取り敢えず緊急の状態はどうにかなったけど、どうしよこれ。
「ま、魔法、、、」
「ど、どうなってるのよ。傷跡すら残ってないわ」
「でも血が沢山流れてるからそれは戻らないからね」
「貴方、魔法使いだったの?」
「えーと、これは多くの人が出来るはずの普通の事みたいだよ。でも一応内緒で、お話はここを出れてからにしようよ」
「そうね。わかったわ。治してくれてありがとう」
「上に戻ったら今タイアップしてる魔法少女の服送る」
「いや、いりませんよ」
一瞬、私が魔法少女の恰好をした妄想w。
「でも、ここ何でこんなに明るいんですかね」
「あの天井の方の緑に光ってる部分が沢山あるわね」
「何かのガラスのような結晶だと思う。でも不思議だけどこの地下空間はかなり大きそう」
言われてみればかなり広く、あちこちに倒壊した建物のようなものまである。
私達が落ちたのってこの上の穴だろうけど、あっちの建物の塔みたいな斜めになってる所から上に行けるかも。
「これだけの広さがあれば大きな街が作れそうだわね」
「探険したい」
「いやいやいや、二人共何言ってるですか。今私達遭難してますよね。ちょっとここで動かないで待っててください」
本当、この二人ダメだよ。
『~ポテイスタス プライシーディウム~』
『~プテス ターテム コリポリ~』
『~ダ ミー ビーラ~』
私は貴族学院の授業でまだ習っていない、神の加護を受ける魔法と身体強化、肉体強化の魔法を自分にかけた。
私自身が神の力によって少し光る。
『ソミア、塔の上だ。ソミアならば出来る』
ドロミス神の声がさっき見た建物の塔みたいな方から聞こた。
「光ってる。これ完全に魔法」
「ちょ、ちょっと黙って待っててくださいね」
私は建物の塔みたいな斜めになってる所まで飛びそこを駆け上がると上の方まで走った。
ダッ、ダー!
恐らく美麗にも神功先輩にも完全に魔法がバレてるけど、この状況では仕方ないよね。
まるで教会のようなものだなぁと思いながら一番上まで行くと、
『そこだ。そこを掘れ』
斜めに埋もれている塔の先端の方を手で掘る。
おそらくなんかの教会っぽい建物だね。
あっ!
建物の一番上についていた何かの像が出て来た。上に空間がありそうだ。
これ、小さい頃に見て怖いと思った石像じゃんか。ドロミス神?
空いた穴から上を見ると縦穴の上に光が漏れている隙間が見えた。
私子供の頃、ここに落ちたんだ。
という事はここを登れば外に出られる。
「美麗、神功先輩。ここから外に出られそうです。二人の為にロープか何か借りて来ますから待っててください」
「わかったー!」
私は結構狭い穴の壁を足で蹴りそのまま何回かで縦穴の上まで出た。
簡単な板が置いてあったよ。
伯父さんの家まで走って長くて丈夫なロープを借りて直ぐに戻った。
二人は塔の部分を登るのも危なそうだから一人ずつロープで安全に上まで連れて行って私が上に行ってロープで引っ張って助け出せたよ。
はぁ。びっくりした。
二人共怪我も大丈夫そうで良かったけど、後でなんか色々と二人から問い詰められそうだよ。
神功先輩はさっき座ってたから泥だらけだけど美麗は意外に汚れてないね。
「助かったわね。あ、ありがとう」
「本当に死ぬかと思った」
なんか美麗が素直にお礼を言うなんて新鮮だよw。
「なんか小さい頃、わたしここの縦穴に落っこちて行方不明だったんですよ」
「よく助かったわね。その時も魔法で?」
いやいやいや、これはどうしようか。
「そんな訳ないじゃんか。でもその話は後にしようね」
「それよりもあの空間。遺跡なんていうレベルではなくてあれだと古代の街」
「地下にあれ程の広い空間があるなんて遺跡を使った一大リゾートが作れそうだわ」
「伯父さんの土地だから無理だと思うけど、、、でもその話も後でしよう。これ葛城部長や岩崎先生に話しても大丈夫かな?」
「一体どこからどこまで話せるっていうのよ。貴方の魔法まで見たのよ。取り敢えずこの三人の秘密だわね」
「えー、でもあの空間、絶対探険してみたい。絶対にお宝が沢山ある」
いや、神功先輩は絶対にお金には困ってないよね。トレジャーハンターですか。
「神功先輩。この3人の秘密ですよ」
「わ、わかった」
「じゃあ美麗のその血を洗い流してから夕飯に戻りましょう」
「わかったわ。傷跡を残さない手術は出来るでしょうけど治るまで相当時間も掛かったでしょうね。それに貴方の塔や穴を登る運動神経、貴方の魔法は色々とずるそうだったわね」
「いや、それも内緒でって」
「まあ、いいわ。おかげで命拾いしたようだから」
・・・
私達は離れ屋に戻り『何も見つからなかった』と報告した。
葛城部長はもしかしたら古墳かもしれないという小さな山のような形を見つけたそうだけど、伯父さんの許可がないから掘ったりはしていないそうだ。
みんなは自然満載の散策でトレッキングのように楽しんでくれたようだ。
私達は夕飯の後、伯父さんから貰った発掘物をいくつか並べて色々とお話してから広い畳の部屋で眠った。
私達って凄い冒険をした気がするし、色々と問題は繰越したけど、ど、どうにかなるよね。




