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ドゥープレックス ビータ ~異世界と日本の二重生活~  作者: ルーニック
第七章 悪夢の暗殺者
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閑話 酔いどれ司教の貧乏くじ

 みなさん、こんばんわ。学校、お仕事お疲れ様です。

 私は明日朝から用事でいないので先に更新させて頂きます。


 今回はレオン司教が何故あそこまで怒っていたのか?

 レオン司教がルントシュテットに来た時の事を見てみよう。勘違いしたその本心の思惑はなんなのか?w

 長すぎてカットしていた部分ですがあまりカットの意味が無くなってきましたねw。

 それではお楽しみください。


 ゴトゴトゴト。

 中央からルントシュテットに入りリングスタッドの街へ向かい馬車に乗る一人の男がいる。

 中央の大司教にレヴァントへの赴任を命じられた大司教の甥レオン・ギルバートである。

 彼は他の領地で街を管理する貴族とやり合い『狂犬』とあだ名を付けられてその地の助祭をクビになり中央へ戻されると、国王様からの依頼で大司教から新しいルントシュテットの街『レヴァント』への司教としての就任を命じられたのは一見、身内びいきの出世に見えるが、なり手のない左遷に近い物だ。


 領境の身分証明がやけに厳重で時間もかなりかかった。許可証があれば直ぐのようだが手間をかけて問い合わせを一件ずつやっている為だ。


 ヒック。


「旦那。飲みすぎですぜ。その恰好だと修道士さんですかい? 昼間っから酒なんかいいんですか?」

「ああ、放っておいてくれおやじ。飲まなきゃやってられるかよ。今度行く街は前の司教が貴族とつるんで問題を起こして一緒に処分されたダメなやつでその後釜にって赴任するんだぞ」

「すいやせん、司教様でしたか。するってぇと新しい街『レヴァント』ですかい? そりゃあ恵まれた話ですぜ」


「何が恵まれたもんか。そんな訳あるかよ。とんだ貧乏くじだ。商人の街だと聞いてる。商人と教会が仲が悪いってのは知ってるだろ」

「知ってますが商爵から男爵に叙爵されたマンスフェルト男爵様は市民から絶大な人気ですよ」

「そりゃあ商人は商品を売るんだから市民からは人気だろうよ。その陰で金融業であくどい商売をやって女子供にまで手を出しているだろう」

「そんな話はとんと聞きませんぜ。しかしそんなことに関係なさそうな司教の旦那がなんでそんなに荒れてるんですか?」

「関係ない訳あるかよ。その教区での税が少なけりゃ中央の大聖堂へ上納する金が減る。仕方なしに教会が金融屋に権威を与えて稼がせなきゃならない立場だからな。それで嫌になってるんだ。腐敗は向こうから歩いて来るって感じでな。まさに貧乏くじをひかされた気分だぜ」

「そんなもんなんですか? ルントシュテットじゃあ奴隷も逃亡者もそんな話は聞いた事がありませんがね」


「そりゃあお前さんがいい街に住んでるからだろ」

「ええ、リングスタッドは本当にいい街ですよ。もう着きます。後は巡回車に乗れば半日でレヴァントに着きますよ」

「何! 半日だと!」

「はい。ゲーリケ方面の外回りが早いですね。着きました」

「そ、そうか。助かった」


 支払いを済ませリングスタッドの街に立つ。


 酔いが覚めるほど目を見張った。

 中央など霞んでしまう程の繁栄ぶりだった。


 助祭だった友人のエアカードが『ルントシュテットなら嫌な思いをしなくともお金には苦労しないよ』言っていたのはまさか本当だったのか?


 いや、そんなの嘘に決まっている。


 巡回馬車だろうが、取り敢えず御者の言っていた『巡回車のゲーリケ方面の外回り』という物を探そう。いや確か迎えが来ると言っていた気がするが、、、。

 しかし凄く栄えているな。リングスタッドは確か息子のカイゼルがルントシュテットの騎士団で先年の中央で行われた対抗戦で活躍していたが確か子爵家だっただろうか?


 ここまで栄えているとは思わなかったが、カイゼルの父親は相当なやり手の貴族なのだろう。

 人々も明るく活気に満ちている。新しい街もこう市民の顔が明るいといいね。


「司教様。レオン司教様!」


 ん!?


 周りの市民達がレオンを見る。

 一人の若い男が走って来た。

 

「レオン司教様でいらっしゃいますね。元リバーサイズの小教区の一つを預からせて頂いてましたアヒムと申します。お迎えに上がりました」

「おい。そんなに大声で呼ぶなよ。市民達が見ているだろう」

「す、すみません。でも大丈夫ですよ。この街では教会は人気ですから」

「そうなのか?」

「はい。リングスタッドでは孤児院が優秀でそれをここの司教様が世話しているんですよ」

「ほう。珍しく敬虔な司教もいたものだな」

「いや、それを司教様が言うのは、、、」


 カラーン、コローン、カラーン、コローン、、、、。


「でももうお昼ですね。食事をしてから参りましょうか?」

「ああ、酔い覚ましにどこか食事の出来るところを教えてくれ。奢るぞ」

「ありがとうございます。では折角ですからフェルティリトの店に行きましょう」

「なんだそのフェルティリトってのは? 豊穣の女神様か?」

「美味しいって領主から表彰された店ですよ」

「お、おい、貴族の店じゃないだろうな。そんなに高い所は奢れないぞ」

「大丈夫、庶民の店です」

「そ、そうか。頼む」


◇◇◇◇◇


「アヒム、ここは?」

「レオン司教様をお待ちしている間に見つけたチュウカの美味しいお店ですよ。わたしも詳しくはないのですが天津飯というのが美味しくてハマりました」

「本当に貴族が食べるような値段じゃないだろうな」

「庶民の店ですよ」

「庶民の店が領主から表彰されているのか?」

「はい。そういう所はルントシュテットでは沢山ありますよ」

「成程、まあ表向きは話の判る領主のようだな」

「市民から大人気ですよ。とにかく入りましょう」


「いらっしゃいませ♪」


 昼時で凄く込み合っていた。

 市民2人と相席だった。


「司祭様ですか?」

「わたしが司祭でこちらは司教様です」

「司教様! それは失礼を。ここの店は美味しいから是非ギョウザも召し上がってみてみください」

「いや、構わんよ。こんなに近くで市民と話せたのは久しぶりだな」

「ここの司教様はとても良い方で皆から信頼されていますよ」

「そうなのか。それはあやかりたいものだね。ところでギョウザとは?」

「これですよ。司教様もお一つどうぞ」

「お、おい、流石にそれは失礼だぞ」


「いや、頂こう。これはどうやって食べるんだ?」

「このハシでつまんでこっちのタレをつけて食べます」


 見よう見まねでやってみたがハシが結構難しい。

 ようやくタレにつけ口に運んだ。


「一口で。熱いから気を付けてください」


 パクリ。パリ。


 驚きの旨さだった。

 外側がパリパリしていたのに中は凄くジューシーだ。肉汁が野菜と溶け合わさり少し焦げた皮の部分と相まってとても上手い。酔い醒ましどころか逆に酒が欲しくなるな。いや、いかんいかん。

 

「凄く美味いな。このキミらが今日食べていたものは何というんだ」

「これはラーメンセットですよ。ラーメンと半チャーハンに餃子がついてます」

「成程、結構量があるな」

「美味いからこれくらいペロッと行けちゃいますよ」

「色々と教えてくれてありがとう。市民にこんなに親切に教えて貰った事はないよ」

「いや、こちらこそ司教様とお話が出来て今日は良いことがありそうです。それにギョーザを気に入って貰えて嬉しいですよ。ではわたし達は食べ終わったのでこの辺で」

「いや、待て、ここはわたしに奢らせてくれ」

「いや、そんな、、、」

「遠慮するな、これでも司教なんだぞ」

「そ、そうですか。それではお言葉に甘えてごちそうになります。市民から慕われる良い司教様ですね」

「いや、そんな事はないが祈る事くらいは出来る。この二人に神の加護がありますように」

「ありがたや。それでは失礼します」

「ああ」



「お決まりになりましたか?」

「さっきの市民と同じものをくれ」

「セットは半チャーハンでよろしいですか?」

「ああそれで頼む」

「わたしはその半チャーハンを天津飯に出来ますか?」

「出来ますよ」

「ではそれで」

「畏まりました。少々お待ちください。セットの半チャー、セットの半天津入りましたー!」



「アヒム。驚いたな。本当にここでは教会が嫌われていないようだ」

「さっきお話したではないですか。しかしレオン司教様が市民達とあのようにお話するとは少し驚きました」

「なに、俺は貴族が嫌いなだけだ。これは時間があればリングスタッドの司教にも会ってみたいものだな」

「それはこれから幾らでも機会がありますよ。今日はレヴァントに行ってレヴァントの男爵様のご長男とルントシュテットの次期領主との話し合いがあります。明日の男爵様と領主の娘である女神様との打ち合わせの事前協議ですから早めに戻らないと」

「忙しそうだな。しかし半日で行けるものなのか?」

「はい。女神様のおかげです」

「女神様ねぇ」


 自称女神様など誰でも言えるだろう。教会は認めてなどいない。俺が化けの皮を剥がしてやる。


 直ぐに出て来た料理はこれまで食べた事のない美味さだった。

 

「ア、アヒム。このような店はレヴァントにもあるのか?」

「レヴァントにはもっと沢山の店がありますよ」

「本当か!? それは楽しみだな」


 この後は一言も話さず一心不乱に料理をかきこんだ。

 あまりの料理の美味さに名残惜しかったが赴任先に沢山の店があると言うアヒムを信じてレヴァントへ向かう。

 アヒムが用意したチケットと言うシステムで乗れる大型の既に馬車とは呼べない箱だった。


 馬が見当たらないのにまるで馬を全力で走らせてるような速さだった。

 悪魔的な何かがこれを走らせているのかと思いもしたがその様な悪い感じは受けなかった。


 リングスタッドからゲーリケ、ビッセルドルフとあっという間に過ぎレヴァントへ着いた。

 

 レヴァントは先程のリングスタッドの街よりも更に活気に満ちた街だった。

 旗が立ち並び目の前で市でもやっているのかと思ったがこの道は聖堂へ向かうこの街の普通の道でどこもこのような賑わいなのだそうだ。


 普通の市場は所定の場所で定期的に開かれるもので、教会、城砦、都市、農村の広場で行われる。年市であれは年に数回、週市は毎週市が行われる広場では旗が立てられる。

 そこに立ち並ぶ店は都市在住の職人や商人の固定式の店舗の他、移動式の屋台、露店などがある。取引量が多くなると金融業も出て一種のお祭り騒ぎにもなるから大道芸や様々な催しがある。


 それが普通の道でこのような賑わいだと!


 商人の街とはこんなに活気に満ちていたのか。

 いや、貴族や商人は恐らく裏では悪どい事が行われているに違いないからな。

 

「司教様、雨が降ってきたようですがこの辺りの雨は直ぐに止みますから聖堂に着く頃には大丈夫だと思いますよ」

「いや、アヒム、お前何を言ってる?」


 そう言えばさっきからバラバラと変な音が、、、。


 天を見上げると空にとてつもない大きなガラスが張られている。

 

「な、なんだこれは!?」

「これはパサージュと言う物で雨の日でも買い物が楽に出来るようにした物だそうですよ」

「い、いや、あり得んだろ。あのような大きなガラスが幾らすると思う」

「何でも新しい製法で安く大きな板ガラスが作れるようになったそうですよ」


 良く見ると時折、蝶や鳥が色の付いたガラスで作られ何とも優しい雰囲気を出している。

 アヒムに聞くと『ステンドグラス』と言う物で、ルントシュテットのガラス職人は自在に色付きのガラスを作るそうだ。


 このルントシュテットだけなのか。その職人は神のご加護を頂いた尊き者達に違いない。

 是非とも会ってみたいものだ。


 先程の蒸気巡回車といい、これも余程素晴らしい技術者がいるのか凄い事だが、この為に商人や貴族によって恐らく裏では物凄い数の奴隷達が売り買いされた金だろう。

 逆にここまで凄すぎるのはそう疑わざるを得ない。


「この辺りには商人ばかりでなく職人も遍歴職人が沢山集まってるんですよ」


 それでこんなに賑わっているのか。指物師、製本工、金属加工業、毛皮細工師、それに石工と繊維業も遍歴に加わると言うがこれは凄い人の多さだな。


 逆に考えればそれだけ悪魔に負けた者達の金が流れているのだろう。


 俺は、、、この街でも貴族や商人とやり合う事になるのか、、、。


「司教様。着きましたよ。ここがレヴァントの聖堂です」

 

 何て聖堂だ。これでは大聖堂ではないか。


「あの隣のホールでは今度『勇者と火魔法使い』の公演があるそうで楽しみです。反対側が孤児院になってます」


 なんだこれは、、、。ちょっと理解が追い付かないが追々考えよう。


 まずは元商人の貴族の息子と領主の息子との話し合いだと言うが、そんなろくに苦労もしていない親の悪どい金で育った奴らに従う必要などないだろう。


「お待ちしてまし、、、」

 ドテッ!


「ア、アヒム。あの何もない所で転んでるのは、、、」

「シスターのベアトリスです。ちょっとドジっ娘なもので、、、」


 アヒムはレオン司教に怒られるかと心配したが大丈夫だった。


「おい、大丈夫か?」

「は、はいっ! し、失礼しました」

「後でここの事を教えてくれ。他の者達は?」

「わたしだけです」

「なんだと。こんなに広い聖堂で、、、掃除はどうしているんだ」

「お掃除なら専門の人が来て掃除してくれます。私は聖典の整理や司教様のお部屋を用意していました」

「大切なものには触らせてないだろうな」

「も、勿論ですよ。そういうのは私が磨いてます」


「鐘も一人で鳴らしていたのか?」

「はい。簡単ですから大丈夫です」

「簡単だって! 水時計を扱っているのだろう? きちんと日時計で合わせているのか?」

「いえ、ここは機械式時計なんですよ」

「機械式!?」

「はい、一日に一度錘を操作するだけで時間も殆ど正確です」

「それは凄いな」

「鍛冶職人の話では領主の一族の方が作ったそうですよ」


「ああ、それは女神様ですね」


 そんな訳ないだろう。


「では鐘はその機械式時計とやらを見て鳴らしているのか?」

「いえ、自動で鳴らします」

「何!?」

「もうすぐ、、、」


 ゴーン、ゴーン、ゴーン、、、


「ほら、凄く便利ですよね」

「な、なんだと、、、」


 こ、これは不味い。

 それでなくとも教会は市民に人気がないのに、生活の要である時刻まで領主が知らせているなどと市民に知れ渡れば、我々教会関係者が不要と言われても仕方ないではないか!!


 完全に死活問題だ。こ、これは認める訳にはいかないぞ。

 こんな我々が不要だという意味で貴族とやりあわねばならんとは、本当に貧乏くじではないか!

 

 しかしそんな凄いものを開発するとはどれだけのお金を投入して研究をさせたんだ。

 いや冷静に考えろ。恐らくここまでを見ても間違えなく裏で悪どい金が相当量流れているに違いない。



「レオン司教様、レヴァントの男爵様のご長男ウィンデル様とルントシュテットの次期領主エバーハルト様がいらっしゃいました。お部屋の方へ、、、」

「部屋などいらん!」


 レオン司教が入口に立つ二人の元へつかつかと歩いて行く。


「おい! ここの金融業の金利はいかほどだ!」

「し、司教様ですか? お金が必要であれば家から、、、」

「どれくらいかと聞いているんだ!!」

「金利でしたら15%~20%と決まっています。それ以下なら大丈夫ですが、、、。まず、自己紹介を、、、」

「なっ! そんなにか!、、、帰れ!」

「えっ!!」

「とっとと帰れと言っているんだ」

「な、何故ですか!」

「教会の仕事である時を告げる業務を機械式時計で邪魔するだけではなく、そんな法外な金利を許す街の貴族などと協力してやっていく気はない!」

「ま、お、お待ちください!」


「ベアトリス。ここに聖水を撒いておけ、お客様がお帰りだ」

「えっ、は、はい」


 こうしてレオンは激怒したまま、アヒムとやけ酒を飲みに行き酔いつぶれるまで飲み翌日を向かえる。

 本人的にはそこで飲んだ酒も料理もどうやら美味かったようだ。

 

 次回:閑話:沢さんのご主人に夢美が、、、w


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