興味の向かう先
舞台はエミリーの実家へ。ドイツ料理も美味しいですよw。(←少し作為的なものを感じます:笑)
日本ではレクリエーション前夜、楽しく会話します。
このキャンピングカーではタンクの水も簡易冷蔵庫もトイレも使える。まあトイレは取り換えのカセット式だから処理するのも大変だけど外で虫に刺されながらよりはいいと思うw。
シルバタリアのルーカス様もイエルフェスタのアウグスト様もかなり気にいったようでどういう手順でキャンピングカーを購入できるのかを確認していた。なんかこういうの好きなんだね。うん、判る~。お父さまの許可がいるんだけど運転許可を誰かが取れば私が推薦してもいいと思う。
屋外でみんなで食べた食事の美味しさは2倍増しだったし簡易ベッドも結構快適でぐっすりと眠れて気持ち良い目覚めだったよ。
顔を洗い朝食を済ませて早速ブロンベルグに出発した。
キャンピングカーのキャンプはとても楽しかったよ。
馬車だと大変だろうけど蒸気自動車だと直ぐに着いた。私の日本人的感覚だと坂道なんかだと馬が可哀想とか考えちゃうんだよね。その点蒸気自動車だと気兼ねがない。変かな?
ここが展開している牧場とその宿泊施設が整った場所だね。良く出来てるよ。
凄い景色だよ。みんな蒸気自動車から降りて見事な景色に見入っていた。
いやー、これずっと眺めてられるね。
「ソフィア様。あの丘に見える小さな屋敷がわたくしの実家でございます」
いやいやいや、どう見ても大きな屋敷だし、よく見ればお城に見えるよ。
「ソフィア様のおかけで牧場には様々な施設が整い楽しめますので本日はこれからお楽しみください。そして今夜はわたくしの家でささやかな晩餐をご用意させて頂きますのでよろしくお願いします」
「わかりました。エミリー」
確かに私の発案ではあるけど観光地をここまで頑張ったのはラスティーネ叔母様だ。
この宿泊施設は上流階級にまで対応しているものでとても良く出来たものだったよ。
ここでしばらく休暇を楽しんでブランジェルに戻る予定だよ。牛の飼育も確認しないといけないけど乳しぼりやバターの制作体験など様々な事を体験できるだけでなくポームのコートや遊戯施設、温泉施設もある。
もっと色々な所に沢山旅行したいと思うけど、こんなにゆっくり出来る休暇なんて本当に久しぶりだからね。
よし、まずちょっとバター作りを頑張ってみるよ。
こっちの世界の化学的処理は日本にはそういう職業はないのだけど、錬金術師がやってくれる。彼らは商業ギルドにも所属していて様々な事を対処してくれるけど、日本で言えば美鈴先生の友人の倉敷 利佳子博士のような研究者のようで、錬金術の師がいてその元で若い研究の好きな人達が頑張ってるよ。
こっちの化学的な事も沢山知っているので私の日本知識とすり合わせるのに欠かせない人達なんだけど、大きな声では言いづらいんだけど、研究に没頭し過ぎてずっと身体を拭いていなかったり、頭もボサボサだったりとみんな見た目とか全く気にしていないからちょっと臭う人もいるw。
錬金術師は貴族のお抱えもいるけど、殆どが貧乏なので、若く恐らく綺麗な女の人もそんなだからもうちょっと化学者としての待遇なんかも考えないといけないかもだね。貴重な知識を持つ人達だからね。
以前お話ししたけど、乳酸菌の単離プロトコルは簡単でこれは色々なものに利用が可能だ。錬金術師がいなければこっちで化学は進まなかったと思う。
これまでもバターが作れなかった訳じゃないけど、今回のようなバターの作成だと、遠心分離機で廻した生クリームを乳酸菌で発酵させたものだと香りがとても強くなる。凄く美味しんだよ。
(夢美の内緒話:凄くどうでもよくてかなり恥ずかしい話なんだけど、日本で牛乳を飲んだ空のパックをそのまま置いておくと内側の周りに残った牛乳がほんの少し下に溜まる。この残った最後に溜まったのが美味しくていつも私が飲んでるんだよねw。沢さんにも母にも『はしたないからやめなさい』といつも言われるんだけど、これも牛乳じゃん。飲んでた牛乳よりもなんかコクがあって美味しい気がするんだよね。あははは。みんなと比べると少し小さめの私でも頑張って牛乳沢山飲んでますw。『最後の一口頂きます』と言ってから飲んでるよw)
バター作りはガイドの『バターおじさん』が丁寧に教えてくれるw。
(発酵もこれも私の教えたやり方なんだけど、、、)
小さな瓶に入れて結構振る。
ブンブン!(バシャバシャ)
ひたすら振る。
説明してくれてるおじさんも凄く振ってる。長いよ。でも私達子供だから結構腕が疲れて来たよ。
身体強化を使ってはいけないのだろうか?w
ルーカス様やアウグスト様は最初と同じような速さで頑張ってるけど、私やエミリア様は結構厳しい。
「ソフィア様、代わりましょうか?」
「だ、大丈夫です。エミリー」
これが8000回~10000回振るんだよ。org.
中の生クリームが固まってきて音がしなくなってきた。
ハァハァ。
ガラス瓶の中で固形のものと水気に完全に別れたよ。
これを瓶から出す。ここで出て来た水気は脱脂乳だね。
冷たい水で固形になったバターを洗う。
残ったバターミルクを濯ぐ。まな板で潰してバターミルクとゆすいだ水をヘラで潰してさらに水気をキチンと出す。
ここに塩を1~2%入れるよ。
牛さん達の牛乳は季節によってかなり味が変わる。これは飲んでいる水の量にもよるし食べ物にもかなり影響されるよ。おそらくこれは牛だけじゃないのだろうけど、残念ながら私は母の母乳の味は覚えてないw。
牛さん達が夏の緑の草を沢山食べているとゴールデンバターという黄色い固形のバターが出来たよ。
ここの牧場で育てている牛さんは地球で言う所のジャージー牛のような種で、ようやく太ってきて牛乳も美味しくなってきた所だね。脂肪分が沢山含まれてる。ここで育てると直ぐにとっても人懐っこくなる牛さんなんだよ。
いや、でも、これマジ疲れた。
諦めちゃうかもと思ったけど、エミリア様も頑張って完成したよ。
でもシルバタリアのアリッサ様もアンネマリー様も全く問題なく仕上げた。いや二人共体力凄いよ。
か、かなり面白い体験だったけど体力勝負なんだね。はぁはぁ。
この体験施設でバターを作っている間に人数分の小さなパンを焼いてくれていて、バターが完成したら焼き立てのパンに自分で苦労して作ったバターを塗って食べる体験なんだよ。これはラスティーネ叔母様のアイデアだ。
暖かい焼き立てのパンでバターがとろりと溶けとてもいい匂いがした。
パクッ。
やばいなにこれ、めっちゃ美味いよ。
みんな満面の笑みだ。笑顔で更に美味しく感じる。
良くお腹が空いているとどんなものも美味しいっていうけど本当だったよ。頑張ってバターを作ったおかげでお腹も少し空いていてやっぱり自分でこんなに苦労して作ったバターだと格別な味で美味しいなぁと心から思った。
イエルフェスタの二人もシルバタリアの従妹達も色々な事を詳しく知って貰って自分達だけでなく領民にも美味しいものを食べて貰うにはどういう事をしているのかを見て貰い、作業によってより興味が湧き、自分達がどうすべきなのかを見出して貰えたら嬉しい。
自分だけ美味しいものを食べる為にお金を、、、じゃなくて、より美味しいものをみんなで食べる事が重要だね。みんなで一緒に美味しいものを食べるとより美味しく感じるし、みんなの美味しいっていう顔を見るのも凄く嬉しいよね。
先の事は判らないけど、この『興味の向かう先』が将来のご本人や領地に役に立つ事を願おう。
牧場の管理施設をエミリーに案内して貰ってエミリーには休暇を与えて家族で過ごして貰う事にした。今夜の晩餐もあるからね。
牧場の各施設、冬場の為の餌など、私がシルバタリアとイエルフェスタの子供達に説明した。
ここの牛達は太ってきてるので足の怪我もあるけど、広い牧場での放牧でかなり足腰も鍛えられているよ。こうやって実際に近くで見ると、この世界で見たどの牛さん達よりも立派に育ってくれてる。
暑かった夏の間に放牧地でない場所で牧草を刈り取りサイレージにして冬場の飼料にする。
刈り取ったものを乾燥して集めて大きな塊を作るw。
そこから空気を抜いて乳酸菌発酵を行うよ。
これが美味しい冬のご飯になるって牛さんも判るのかな。
『モー』って元気一杯だね。
イエルフェスタのアウグスト様もエミリア様も、シルバタリアの従妹のみんなも凄く真剣に聞いていて側使え達に細かくメモを取らせている。
国王様に農業は広めて貰うようにしたけど酪農はまだ周知されていないからね。こっちも頑張れば肥料を作るのも上手く回るからね。
冬場の飼料にも乳酸菌や重機が必要だから他領とは色々とまだ調整が必要そうだ。
こういう物も商業特区レヴァントで売っちゃえばいいけど、まあマクシミリアン叔父様に相談してからだね。
凄く楽しい日だった。こんなお休みがあと何日もあるのかと思うと本当に嬉しかった。
日本の感覚では夏休みが始まったばかりのようだよ。貴族は子供でも色々とやる事や自領での課題も多いから宿題はないよ。
滞在する宿泊施設に戻って夜会の準備をリナにしてもらう。
宿泊施設は小さなものだけど私達が使っているのはそれなにり大きいもので貴族や有力者用の上級国民用のものだけど他にも宿泊施設が幾つも使われていておそらく夜会に出席するこの辺りの有力者だと思う。
しばらくしてリナが呼びに来た。
リナと多数の護衛を引き連れて夜会に出席する。
シルバタリアの従妹達もイエルフェスタの二人もめっちゃおめかししてるよ。シルバタリアの二人は以前私がプレゼントした髪飾りをつけてくれてた。
皆がこちらを見て頭を下げ、私も小さくコクリと挨拶する。
こういうのあまり出てなかったから良く知らなかったけど、上流階級の女性達の服が全員以前とは変わっていて前の『クリノリン・スタイル』や『バッスル・スタイル』のドレスは誰もいない。
かなり浸透して来てるね。
今日は立食じゃなくて座っての食事だから話に聞く国の催す新年の舞踏会とは違うのかも。
エミリーの家ではお父さまがヴェルナー・フォン・ブロンベルグさんで子爵様。奥様がデリカ様、兄のカイが騎士団で姉が同じく貴族学院から戻って来たカルラ様だ。
全員が起立して深々とお辞儀した。
「ソフィア様。ようこそお越し下さいました。いつも当家のエミリーをお引き立て頂き、またこの街への多大なご貢献、真にありがとうございます」
「ヴェルナー子爵様。デリカ様、カイ様、カルラ様、ルントシュテット家のソフィアでございます。本日はお招きありがとうございます。少量ではございますが、現在開発している野菜等をお持ちしました。ぜひ後程お召し上がりになってください」
「わたくし共はいつもソフィア様に頂いてばかりで恐縮でございます。今回はイエルフェスタのご領主のご子息やシルバタリアのご領主のご子息までご一緒されて頂き、このような機会などめったにございません。後で幾人かご紹介させて頂きたい者もおりますのでよろしくお願いします。本日はささやかなお食事も用意させていただいておりますのでお楽しみください」
「お気遣い恐れ入ります」
「ソフィア様。デリカでございます。いつも息子や娘がお世話になっており大変ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ」
「ソフィア様。カイ様などおやめください。いつものように、、、」
なんかこういう服装のカイを見るのも新鮮だね。厳格な家柄の反動でやんちゃなイメージしかなかったけど、言葉使いも騎士団の時とはちょっと違うねw。カイも貴族なんだなって初めて思ったよw。(失礼なw)
「カイゼルから伺いましたがカイは大活躍だったそうですね」
「お褒めに預り光栄です」
「ソフィア様。カルラでございます。。。。。」
さすが話に聞く厳格な子爵家だよ。みんな本当にきちんとしてる。後ろに控えていたのが引退したエミリーの祖父母のようで、遠慮していたけど私は挨拶した。
「しかしソフィア様。かなりの護衛の人数ですね」
「色々とございまして」
エミリーがリナに言う。
「リナ、護衛の方々にも同じ食事を用意させていますから順にお召し上がり頂くようにして下さいませ」
「ありがとうございます。そうさせて頂きます」
エミリーのこういう気配りも凄いなぁ。
「こちらが、、、」
この後、農業や酪農、工業に携わる方々を紹介して貰った。初めての人もいたけど満面の笑みだったよ。流石に私が少し幼いので驚いていたようだ。多分私なら『こんな小さな子が色々な権利を持ってるの?』と疑念を持っていたかもしれないw。
ヴェルナー子爵様に私に晩餐の挨拶をして欲しいと言われたけど遠慮させてもらった。
幾つものテーブルが出されていて私はイエルフェスタの人達と同じ席に着席した。
シルバタリアからは3人も来てるからね。
ヴェルナー子爵様が簡単に挨拶して『娘のエミリーが側仕えをさせて頂いている』と私が紹介され、イエルフェスタから、そしてシルバタリアからも賓客が来ていると紹介された。リナが椅子を引き、私は起立して皆さんにちょこんとお辞儀した。
食事が始まる。
ブロンベルグにもいくつかのお店が出店しているんだけど、今日はその1つドイツ料理のお店で、さっきシェフが顔を出してこっちを見てた際に目があったけど、私も良く知ってるウードが担当したようだ。
ウードは熱血漢という感じで料理教室の際にも凄く気合を入れて頑張ってたよ。でもこれも全部私が沢さんに教わったものなんだけどね。
ここでは酪農が盛んで、丁度ドイツ料理には様々な肉(おもにポークが多いけど)が、特に挽肉なんかにして使われるからこの街には良くマッチしてるんだよね。
ドイツ料理はドカッっておっきな肉の塊が出て来る事もある料理が多いのでリナに取り分けて貰う。
まず出て来たのがズッペだ。ドイツではスープの事をズッペというよ。
これはドイツ南部の郷土料理で、パスタ生地の中にひき肉、玉ねぎ、ほうれん草などを詰めた大きめのラビオリのようなものを、透き通ったスープに浮かべたものだ。宗教的に肉が食べられない金曜日に出されたマウルタッシェンというものだ。(でも挽肉は入っているw) 郷土料理なので色んな作り方があるんだけどこれは沢さんから教わった普通に大きなラビオリが入ったスープという感じ。
刻んだ小さなネギで飾り色合いも良くてとてもいい塩梅だよ、良く出来てるよウード。
次に甘いマスタードを添えて出て来たのは仔牛肉にレモンやハーブで味付けした「白いソーセージ」という意味のミュンヘン名物のソーセージでヴァイスヴルストと言うものだ。これは傷みやすいため、伝統的に午前中に食べるべきものだと言われている。食感がとてもふわふわとしていて、これもかなりウードが頑張ったと思う。これ凄く難しくて私も苦労したんだよ。
凄い、ふわっふわだよ。
続いて出て来たのがザワークラウトとルーラーデンだ。
ザワークラウトは多くの人がご存知のキャベツと塩だけでも作れる漬物で、キャベツの繊維が無くなるようにしっかりと揉み込んで作る。水分もしっかりと出てるよ。
ルーラーデンは肉巻き料理で、中にニンジン、玉ねぎ、ピクルスなどを入れて紐で縛って本来は黒ビールで煮込むものだけどまだ黒ビールを作ってないから代替えだけどとても美味しい。
これは子牛肉を使ってるね。さすがブロンベルグ。
メインはポークフィレかと思ったけどシュニッツェルでした。
お肉は牛肉はリント、豚肉はシュヴァイン、鶏肉はフーンと言うのだけど、今日はリント(Rind)。
肩肉を使っているみたいだ。これは筋に切れ目を入れながらとても薄く伸ばしたお肉をパン粉をまぶしてしっかりと揚げたものだよ。薄いからどこでも食感がサクサクとしててどこを食べても美味しい。でも本当にお肉がここまで美味しくなったよ。牧場万歳!
この料理絶対子供達大好きだよねw。
一緒に出されたポテトがご飯の代わりだ。
マナーとしてドイツ料理はカトラリーの使い方が難しくて殆ど手は使わないし、例えばポテトはナイフで切ってはいけなくてフォークだけで食べる。
本来はお水は出されなくてスパークリングを頼むのだけど、ブロンベルグのお水はとても美味しいから出てたよ。後で小さい魔法瓶に貰おうw。
他の人達を見ると流石にドイツ風のマナーがキチンと出来てるのはブロンベルグ家と酪農担当者だけだったよ。
頑張れウード♪
ウードが一番最初に私のテーブルに挨拶に来た。
「ソフィア様。ご無沙汰しております。この街の美味しいお肉を使った料理は如何でしたでしょうか?」
「ウード、大変美味しかったです。ここまで美味しくなっているのは牧場のお肉が美味しいだけでなくウードの腕前が上がったからですよ」
「いえソフィア様のお陰でここの肉も本当に見違える程に美味しくなりました。しかしお褒め頂きありがとうございます。イエルフェスタのアウグスト様、エミリア様。何か至らぬ点はございましたでしょうか?」
「いえ、素晴らしい料理でした。大変美味しかったです」
「この美味しさにはあなたの努力が相当あったのだろうと思いました」
「恐れ入ります。わたくしではなくソフィア様のお陰です」
「この味は本当にウードが頑張ったからですよ」
「ありがたきお言葉、しかと胸に刻みます。ソフィア様に教わりました技術にさらに磨きをかけ邁進します」
「また是非食べに来たいから頑張って頂戴ね」
「はい」
ウードがシルバタリアの席へ向かう。
「ソフィア様。ルントシュテットではあのようにアルキマギル(料理長)が挨拶に来るのでしょうか?」
「はい。ここではアルキマギルではなくシェフと呼んでいます。美味しい料理を作ってくれる人にはわたくしも敬意をはらっています。味の感想をきちんと伝えれば好みの味にして貰えるし、仲良くなれば特別な料理を作って貰えるかもしれないでしょw」
「成程、それは素晴らしいですね」
「意思の疎通でより美味しい料理が食べられるのですよ」
「ここのお肉も、これらの料理も全部ソフィア様が?」
「はい」
「ソフィア様はどれだけ知識をお持ちなのか。しかもとても興味深い事ばかりです。勉強熱心なのですね」
「あは、あははは、、、」
私は完全に笑って誤魔化したw。
勿論、ここまで美味しいものが食べられるようになったのは私じゃなくて沢さんのおかげだよ。
いくら感謝しても足りないくらいだよ。本当、今度花束でも送ろう。
・・・
ブロンベルグ子爵はデリカ様と共にイエルフェスタのアウグスト様やエミリア様に挨拶しシルバタリアの従妹達にも色々と取り引きなどの話をしたようだ。
この街にイエルフェスタの領境があるからイエルフェスタからの賓客はとても重要だ。
私にも満面の笑みで『今後ともよしなに』と言っていた。エミリーの家族はやっぱりみんなしっかりとしているようだw。
私達はこの後、結構な日数を色々な施設で遊び、色々な事を話し、みんなとかなり親しく過ごした。
◇◇◇◇◇
阪〇の総合学術博物館の見学の為に前乗りした私達はホテルの豪華さ、部屋の豪華さにクラクラとしていた。
夕食の時間に食堂へ行くと、奥まった特別な個室のようなスペースへ案内された。
岩崎先生もみんなもかなりドキドキしているようだ。
かくいう私もちょっと驚いてるけど、夢の中では公爵家なのでそこまで違和感のようなものはないけど、日本ではさすがにここまでのVIP対応は私も経験がないよ。
かなり豪華な中華だった。
私達は岩崎先生や部長の葛城さんに引率されているのではなくまるで美麗に引率されているようだった。
圧倒的な美味しい食事の後、お茶をしながら話し合いを行った。
窓から見える宝石をちりばめたような美しい夜景が美麗の背後で煌めいた。美麗は元々可愛いけどそれも何倍増しで可愛く見える。
私達が大人になって、きっとこんな所でプロポーズとかされたらイチコロなんだろうねw。
岩崎先生は紹興酒で少し顔が赤くなってるよ。
私が明日の予定について説明する。一応私がガイドを作ったからねw。
『豊中キャンパスの一角にある待兼山修学館の中にある総合学術博物館の開館時間は10:30からで、、、』
主に大阪大学で研究してきた資料が展示されているだけでなく、神功先輩が言っていたコンピュータの原型、特に1950年に日本で最初に作られた真空管式10進演算装置や顕微鏡の歴史、特に国産第一号の電子顕微鏡は1939年に開発されたもので今の技術の礎になっている。また部長の葛城さんが好きな豊中キャンパスのある待兼山から出土した貴重な土器や埴輪が展示されている。神功先輩お勧めのマチカネワニがほぼ完全な状態で残っているものもあるよ。全長8m、頭の大きさだけで1mもある大型ワニで、頭骨にはワニ同士でケンカした跡が残っているそうだ。
(これを読んでいただいている現在:ってなんだよってw。にはもうとっくに終了しているけど、私が行った際には)身体イメージの創造展示が行われていてこれもとても興味深いよ。
部長の葛城さんだけでなく神功先輩もかなり発掘物には興味があるようで、他の部員のみんなも私の説明で興味を持って貰ったようだ。
「夢美、以前『あなたの知識は偏っている』とあなたの『興味の向かう先』がおかしいような事を言ったことがあるけど撤回するわ。あなたの説明を聞いてなぜこういう物に興味を持つのか少しだけ判った気がするわよ」
「でしょう!?」
しまった、またオタク返事しちゃったよ。
美麗は最初はつまらなそうにしていたけど、私の説明に少し身を乗り出して来て質問までしてきたよ。私が説明して興味が少しは湧いたのかもしれない。
しばらくして部長の葛城さんと神功先輩の『ここで出土した埴輪の顔の下側に線刻があるのは何故か』という討論になって私も参加した。線刻のあるイレズミは卑弥呼系の鯨面文身の話にまで至り、あれらは出土も限られていてここで話しているのはあくまで仮設だけどわたしも結構面白かったし岩崎先生も議論に参加してきたよ。楽しい。
仮に天皇家でなく当時別の国であった卑弥呼系が今の時代まで続いてたら、男子は子供から大人まで全員顔に凄い入れ墨してたからねw。(パラレルワールドならあり得るかもw)
他のメンバーも更に興味が深まったようだ。
でも、部長の葛城さんと神功先輩のこういう議論の嬉しそうな顔といったらなかったねw。
いや私もだったよ。誰も言わないけど単純にヒゲかもしれないけどw。
で、来週も連続して新しい遺跡へ行くという話に移ったんだけど、、、。
なんか美麗のホテルの場所が意外と私の母の実家に近い。
「許可関係と発掘の広さもわからなくて、まだ発掘が進んでないようでお手伝いでなく少しの出土品の見学なら可能なんだけど、結構珍しいものが出ているようなのよ」
「ホテルはもう押さえてあるから行ってからでいいわね」
「あの、それは場所はどこですか?」
「えーと、群〇県の〇〇〇という地域ですね」
「えっ!!」
「九条さん、どうかしましたか?」
「もしかして〇〇郡の〇〇〇ですか?」
「そうです」
「そこうちの母の実家のある所です」
「あるって言っても近くにでしょ」
「いや、そうじゃなくて、その土地の名前そのものが母の実家の名前でおそらくその辺りは全部母の実家の土地ですよ」
「それは相当な大地主なのね」
「凄い凄い」
「えーと、母は長女なのですが跡取りは母の兄、つまり伯父で、先祖は数代城主をやっていたりその前は住職だったりもしたようですが、確か家系図では平安時代からです」
「では、発掘の話もあるんだけど、九条さんのお母さまのご実家の近くで何か出土したものはあるのですか?」
「そう言えばなんか昔のものが一杯ありましたけど、、、」
そうか、そう言えば発掘した出土品も恐らくあったね。研究とかの流れに乗ってないから完全に頭から抜けてたよ。
「では、特別にそれらを見せて頂く訳には、、、」
「じゃあ、戻ったら母に相談してみます」
「是非お願いね!!」
「わ、わかりました」
何この葛城さんの勢い。
「九条さん、九条さんのお家の蔵も見せてね」
しまった神功先輩の話、忘れてたよ。
「は、はい」
そのうち、、、。忘れてくれないかな。
「では、明日は朝食をとってからゆっくり行きましょう」
「「は~い」」
美麗の一流ホテルのベッドはやっぱ一流だったよ。
一瞬でぐぅ。w
来週は夏休みでお休みになります。
次回:イエルフェスタの要望で急遽イエルフェスタまで足を延ばすソフィア達。出発前にルーカスが突然ソフィアに告白!?
イエルフェスタでは衝撃の事件が!
このまま内戦になってしまうのか!? ソフィアにはもう止められない?
夢に落ち込む夢美はレクリエーション当日、気分を切り替えて楽しむ。
ここで更なるアイデアが浮かぶ夢美。疲れ切って帰りの新幹線ではぐぅw。