あの日見た花の色を私達はまだ忘れてない
先輩達よりもみすぼらしいプレゼントに渡すタイミングを逸してしまう舞と夢美。
でもそれは、、、。
ブロンベルグの牧場の状況と貴族学院の授業が終わりサロンへ戻ったソフィアにマクシミリアンから火魔法使いが見つかったと聞かされる。
「お誕生日おめでとう」
「おめでとう!」
私と舞ちゃんは知佳ちゃんのお誕生日会に呼ばれ久しぶりに知佳ちゃんの家に来たけど、知佳ちゃんの部屋じゃなくて応接間だった。
11人いる。
多いなぁ。さすが陽キャだよ。
陸上部の先輩や同じ一年生でもみんな私と舞ちゃんよりも体格が良くて私達2人はお部屋の隅っこで縮こまっていたよ。
先輩達がプレゼントを知佳ちゃんに渡す。なんか私達が持ってきたものよりもみんな豪華そうだ。
あわわわ、私は舞ちゃんとどうしようかって渡すタイミングを逃していた。
順番にどんどん渡して行く。
陸上部の先輩が渡した大きな紙包はとても大きなクマのぬいぐるみだ。知佳ちゃんの笑顔がはじけて喜んでるよ。
クマのぬいぐるみが小さいし被ってて舞ちゃんが泣きそうな顔になる。
クシャ。
舞ちゃんが持ってきたプレゼントの袋を握りしめた。
いや、私のはもっと情けないんだよ。本当に私達もう隠れたいよ。
私達のプレゼントを渡す順番だけど、舞ちゃんはまだ泣きそうな顔をしている。
私は舞ちゃんの耳元に
『舞ちゃん、気持ちだって』
と言うと舞ちゃんが私を見てコクリと頷き笑顔を作って知佳ちゃんに小っちゃいクマのぬいぐるみを渡した。
「ありがとう。舞ちゃん。開けていいか?」
「うん」
ガサガサ。
「あっ!・・・」
知佳ちゃんが何かを思い出すように目を閉じてから舞ちゃんから貰った小さなクマのぬいぐるみを抱きしめた。
ギュッ。
「舞ちゃん、これ本当にありがとうな。私が小さい時に持ってたぬいぐるみだよね。覚えててくれたんだ」
「知佳ちゃんこれ好きだったけど、小学生の頃ダメになっちゃったの知ってたから新しく作ったんだよ」
「うん、本当に凄く嬉しいよ」
私も覚えてる。知佳ちゃんが凄く小っちゃい頃から大切にしていたやつだ。
舞ちゃんが本物の笑顔になったよ。
でも、、、。
ダラダラ。や、やばいなぁ。私はなんか余計に渡しづらくなっちゃったよ。
私も行くしかないよね。
「知佳ちゃん。これ。お誕生日と優勝おめでとう♪」
「夢ちゃん、ありがとうな」
知佳ちゃんがそのまま小さな袋を開いた。
コサージュのような小さなブローチだ。
「この花の色、、、。三人であの河川敷に行って咲いてたお花で冠を作りに行ったあの日見た花の色だ。。。」
あれ? なんで知佳ちゃんがこんなに懐かしそうなの?
舞ちゃんも花を見た。『そう、この色だったよ』とか言ってる。
いや、あの、ごめん。私、その花とか忘れてて今思い出したけどそれ偶然だからね。
「あの時さあ、夢ちゃんが凄い勢いで走って行った事があったよな」
「うん、わたしも覚えてる! あったよ。ぴゅーって行ってあの団地の上の階から落ちて来た小っちゃい子受け止めたんだよ」
あわわわ。
あ、あの件は、ちょっと、、、。
「そうだったなぁ。あれ凄かったなぁ。でもあの時だけなんだけどさあ、夢ちゃんの走り方がさあ、凄く綺麗だったんだよ」
「えっ!!」
「身体中どこにも力が入っていないように見えて、走る姿が綺麗っていうか、それでもって足のふくらはぎがダッってなって地面をこうけってさぁ。わたしもいつかあんな風に綺麗に走れたらいいなぁってずっと思ってて、この前優勝したのもあの夢ちゃんが走った時の姿が目に焼き付いてて、走りながらその姿が浮かんだんだよ。わたしじゃ未だその理想には届かないんだけどそう思ってたら勝てたんだよ。それで勝ったら夢ちゃんに真っ先に連絡したんだ」
「そ、そうだったんだね。でも大会があるなら先に教えてって。応援に行くから」
「そうだよ。知佳ちゃん水臭いよ」
「ごめんごめん。二人共なんか新しい生活に充実してるみたいで声をかけそびれちゃったんだよ。今度は声かけるから応援頼むな」
「うん」
「任せて」
「ちょっと、そっちの子。もしかして今の話、家の弟の聡を助けてくれた人じゃないか?」
「それ、多分夢ちゃんですよ」
「まさか、、、普通子供が4階から落ちたら大人でも受け止められないぞ! 弟の命の恩人なら、、、」
この後、私は陸上部の久住先輩の『お礼がしたいから家へ来てくれ』というお誘いをお断りするのが大変だったよ。人間関係は別にいいんだけどなんか色々と強化してたからそっちは隠したいからね。
でも舞ちゃんも学校も部活も充実しているみたいだし、知佳ちゃんはこれからも活躍するだろうから良かったよ。
私の自信のなかったプレゼント、なんか喜んで貰って良かった♪
バースデーケーキうまっ!
◇◇◇◇◇
鉄を溶かすのは結構大変だ。熱効率や酸素供給の風、耐火など様々な技術の向上がここでもあったんだね。当たり前だけど私じゃなくても世界は普通に発展するからね。
コークスは石炭を高温の1000度以上、まあだいたい1100度くらいで蒸し焼きにする乾留工程で硫黄、コールタール、ピッチ、硫酸、アンモニアなんかが抜ける。
つまり副産物としてはコークス炉のガスと軽油、タールが得られるけど、このタールをさらにピッチコークスにする事も出来る。勿論軽油は貯めておいて燃料として使う予定だしアスファルトも可能だねw。
収量は重量比で言えば多孔質になって軽くなるから大体20%くらいだけど、鋼鉄を作る際の脱酸の還元剤にもなるし、高温を得る為にも有効に使えるよ。
錫の融点は231.9度と低めだけど、錫の溶融炉はコークスを使ってこれでもかと鉄を溶かす程の高温にする。ここに浮力の違う溶けたガラスを流すととても綺麗に拡がって板ガラスが簡単に作れるよ。
これが板ガラスのフロート法だね。
流していって徐々に先に行って冷やして錫に接していない方の面(錫面じゃない方)に傷をつけてガラスを切る(割る)。
これまでどんなに大きな吹きガラスを開いて伸ばしても歪みが出来てしまい、例え王城の大き目のガラスでも少し歪んでいる。鏡なんかは綺麗に出来たものを選りすぐってやっと小さな鏡が出来てたんだよ。
一般的な建築で一つ一つのガラス窓がかなり小さいのはこれが理由だよ。
それがこんなに綺麗な板ガラスが出来るようになったのは本当に画期的な話だね。
でも溶融炉は凄く暑かったよ。
で、私は惜しみなくこの大きな板ガラスを使って品種改良の為の温室を作るw。
おそらくこの国の財務の文官さんが金額を聞いたら腰を抜かすと思うw。
まだ初期投資コストがあるからヴェルナーさんも使って貰った方がありがたそうだけど、売れる自信のようなものはもう持ってるみたいだ。というか貴族からの問い合わせがひっきりなしになっているそうだ。いや、間違えなくこれが主流になるって。
日本の建築の専門家の前島さんは以前音響の専門家とホールを作った事があるそうで、色々と詳しかったよ。ガラスで作るとどうなるのかを聞いたら最初驚いてその後めっちゃ嬉しそうにしてたよ。
ガラスの場合、音の反射率(入射音と反射音のエネルギーの比率)が高いそうで、綺麗に反射を考えないとキンキン音に悩まされる事もあるのだそうだ。ガラスを多重にしても低音では変な振動が発生してしまう事もあるらしく、多重の幅と各壁面の角度が音響ホールの設計では重要になる。音の進み方は結構複雑系だけど多重の音のズレがそれぞれの場所で音響効果になってる事が簡単なシミュレーションで判る。
大きさ、形状、細かな角度なんかをとても細かく考えてくれて一緒に設計してくれたよ。
この音響ホール型の温室が上手く行くとお風呂で唄ってなんか上手く聞こえちゃうように結構この広いホールでも歌う位置に正確に立って唄うとお風呂の何倍も上手く聞こえちゃうから本当に不思議だね。
その位置に聖女エミリアオンステージ用の小さな台を用意するw。
エミリアとアンネマリーの二人はもう様とかつけないお友達だよ。
ここから唄った歌は、この温室のどこにいてもとても良く聞こえる。こんな魔法みたいな設計が出来るなんて本気で前島さん凄いよね。
空気の窓や耕運機などの搬入用の入口は作ったけど、ガラス張りの大きく特殊でお風呂みたいな温室が2つ出来たよ。
正直に言うと作る方が結構大変だったんだけどねw。
出来た時にステージの台に乗ってエミリアに実際に歌って貰ったら凄すぎて感動したよ。ケイトはマジで指を組み合わせて涙を流していたからね。(ラーラは隠れて外にいたけどw)
こっちは言わば娯楽って少ないからこういった知識はきっと後で役に立つと思う。
手あたり次第に品種改良っていう訳にはいかないからいくつか優先順位を考えていく。
取り敢えず私の案として最初にやってるのは、(日本語で言うとw)
バナナ、
ナス、
人参、
トマト、
スイカ、
メロン、
トウモロコシ、
桃、
カボチャ、
米、
辺りから手を付けようかと思っている。
小さかったり、硬かったり、白っぽかったり、酸っぱかったり、食べるところが少なかったり、種が多すぎたりと色々と問題点はあるんだけど、私が知ってる私のイメージでの完成形に近い品種がこの国のどの辺りに行けば手に入るのかをラーラに探してもらう。勿論人にとって都合がいい方向で考えてるから神様の進化の考えとは違うとは思うけどそれはそれ。
蒸気自動車で叔父様に各地から種を手に入れて貰ったよ。
マクシミリアン叔父様の側使えのヒルデガルトさんに農業ギルドから石灰や根菜用など様々な植物に合わせた肥料をルントシュテットから取り寄せてもらい小型の耕運機を使って作業を開始した。
エミリアの連れて来た農奴のラルフは最初は中央に来たおのぼりさんみたいだったけど、もう耕運機も上手く使えるし農業の知識はかなり持っていた。多分心配はいらないと思う。
土壌も整い栄養も豊富な温室で、本当に不思議な程エミリアが唄うと成長する。
この温室の全てであらゆる花が咲き乱れた。とても綺麗でエミリアもアンネマリーも私もケイトも他のみんなも一斉に咲いた花の感動する程の美しさにみんな「わぁ」とかしか声が出せなかったよ。
きっと私達はこの日見たこの花の色は忘れないのだと思う。
唄った2日後には収穫が可能で、週に2回は収穫できる。
これを一年続ければ52週でお休みを考えても100世代は進められる夢の様な品種改良の実験環境だね。
私、まるでタイムマシンを手に入れちゃったみたいだよ。
実が出来たものを次々と食べて行って優れた特性や味に対する点数を記載していく。
進捗があまりない時でも、ケイトとアンネマリーの味覚は信じられない程僅かな違いも見つけ出して有用種を振り分けて行く。
次の世代を作り、これを繰り返して行くよ。
私とケイトとアンネマリーは食べてばっかだけど、やっぱり聖女エミリアとラーラとラルフの働きも凄かった。
休耕とかにはしないからコンパニオンプランツで近くに有用な別の植物を植える。
例えばトマトにはバジル、ニラ、マリーゴールド、落花生と言う具合だよ。マリーゴールドはそのままだけどバジルはこっちではオーチマムって言うよ。
トマトは実がなった際にバジルに水分を取られてその反応で甘くなる。他にもバジルの香りがアブラムシなどの害虫を忌避するよ。
ラーラが実がなった際にいきなりトマト達が『ヤバイヤバイ、水が足りない』って大合唱を始めたって最初にびっくりしてたよ。そうなんだね。私にはそう言うのが聴こえなくて本当に良かったw。
コンパニオンプランツの多くは害虫の被害を減らすからなんだけどラーラによれば『成長が速くて虫が食べる暇なんかないよ』って言ってたからこれはちょっと違ったかも。でもマリーゴールドって私の身長より大きくなるんだね。聖女エミリア恐るべし。
マリーゴールドはもういらない事が判ったけどビネガーを入れた自然系の除虫剤なんかも試したかったけどここでは試せないね。
ラルフがラーラの指示で細かく成長しやすい環境を整えてくれているようだ。
ラーラはラルフに「あれとこれ」と指示を出して次々に花粉を受粉させている。ラルフは筆で受粉させる作業を知らなかったようだ。毎日のようにやってて本当に忙しそうだけどラーラが植物とお話してやってるとかこれ本当にファンタジーだよね。
ラーラ的に言うとイケメンと美人さんの雄しべと雌しべが、、、
はい、子供にはここまでだよ~w。
あれ? でもこれってなんかもう私、いらなくない? 美味しいのは食べたいけど、、、w
とは言っても私も忙しくてお肉の方も既に頑張ってるよ。
こっちはほぼ農業ギルド長のホルツ・カッテさんにお任せしてもう随分と前から色々と始めている。
手を広げ過ぎても私が対処できないので牛さんからだ。
ルントシュテットの各領地は人口が増えていると言っても都市だけでなく山村も多い。面積にして約67%もが山を含めた森林で中央を含めて他の領地の水源にもなっている。こう考えると田舎だよね。
ルントシュテットの急速な発展で山村の小さな村では若年層が都市部へ移動する事も多い。
農業ギルド長のホルツさんが刈り取れない程の作付面積を見積り損ねたのもこれが原因だ。
ルントシュテットの文官達は『市場経済の原則として社会インフラの整った都市部へ移住させるべき』とか『中山間地域や限界集落からは居住者が賢く撤退すべき』などと言ってたよ。
これには私は反対だ。(もう何でも反対する私w)
「では、その移住費用はどなたが負担するのですか? 森林の管理は?」
「・・・」
彼らは頭も良くて貴族学院でも専門に経済を学んだ人達だけど、私からしたらかなり適当な経済至上主義の一部の考えしかなく、目先の事しか考えていないように見える。これにも誰も答えられなかったよ。勿論答えたとしても私は更に色々と言っちゃうだろうけどねw。
勿論経済は重要だよ。私が色々とやってるのもその為なんだからね。でも大切な事を忘れたらダメだ。ルントシュテットでは木材も沢山必要だけど、無計画に木を刈り取ればハゲ山になるのと一緒でそんなおかしな事はして貰いたくない。
食料の自給率を保ちもっと魅力的な農業や林業、そして観光業を含めて山村でも楽しい生活をして貰いたい。他の領地の水源として考えても森林地域の管理は重要だし山村が国益に重要な事は明白で山村の位置付けはもっと大切にしなきゃだと思っているよ。
私は山の麓に広い牧場を作った。これはエミリーの地元ブロンベルグとオレゴーに作ったよ。いや利益誘導じゃなくて最も牧場に適した場所を選定しただけだからねw。それを言い出したら今年の同級生のロザリーはオレゴーの貴族だからね。農業ギルド長のホルツさんの地元カッテにはまだ作ってないんだけどごめん。
簡単に言うとこの牧場っていう施設は酪農家が所有している育成牛を預かって育てて戻すお仕事だね。勿論ここの牛さんも沢山いるよ。
観光や牧場によってブロンベルグとオレゴーには『田園回帰』現象が起こり、若年層の人口が驚くほど増加してくれたよ。少なくともこの二つの街では耕作放棄地はなくなった。
日本人とは感覚が違うだろうけどやっぱり魅力のある場所に人が集まるのは同じだと思う。
牧場のお仕事は牛さんを大体生後7か月齢くらいから預かって13ヶ月齢くらいから妊娠させて分娩の3ヶ月くらい前に酪農家さんに返すという感じだよ。このブロンベルグの牧場では夏450頭、冬には300頭程度を養っている。
夏は牧場で放牧、冬は牛舎と運動場内で飼育するよ。牛舎には屋根があるから過ごしやすいと思う。
一日2回濃厚飼料を食べてもらうけど、餌箱に入れると牛さんがみんな走って食べに来るから好評なんだと思う。
牛舎にも粗飼料があるから適当に食べて貰っている。みるみるとみんな太ってきて体格が大きいから以前とは段違いだね。
健康状態や発育状況を観察して貰って怪我をしていたら治療を行う。私が見に行った時も足元を怪我している牛さんがいて包帯を巻いて貰ってたよ。体重が増えてるから弊害かもしれないので注意が必要だね。
人工授精や受精卵の移植は私では未だ出来ないので発情期には牛さんに頑張ってもらう。
はい、子供はここまでだよ~w。
前にも話したかもだけど、当たり前だけど自然界では野生の動物は冬眠前のいくつかの種しか脂肪が殆どない。それも常ではないから決して霜降り肉になる事はあり得ない。流石に珍想者のお話でもこちらにはそんなふざけた話はないよ。でも仮にそんな牧場みたいなゆるーい世界があれば相当平和で穏やかで食料が豊富で誰も生きていくのに困らないんだろうなぁ。まあゲームとかの中だけだろうけど電源を落とす前にそれなら行ってみたいよ。
こっちの酪農家も結構かつかつでやってたから特に冬場は飼料がなくてやせ細ったガリガリの牛を諦めてっていうパターンだったんだけど、冬場の飼料の問題はサイレージを作る事で解決出来た。
サイレージは牧草を乳酸菌で発酵させると長期に保存する事が出来るという技術だね。
乳酸菌の単離はそんなに難しいプロトコールではないけど雰囲気的に今日は説明は省くねw。
牧草の発酵も結構簡単で、まず牧草を収穫する。
規模が大きくなって来たのでこれもコンバインのように刈り取ってそのまま別の運ぶためのトラックに入れるようにしたら随分と楽に出来たよ。
次にその牧草を建屋に運び込んで、それを重機で踏んで空気を抜く。うん、使い方はこれもあってるから大丈夫w。乳酸菌の発酵は嫌気性で空気を嫌うからね。がんばれ乳酸菌w。
はい、簡単にサイレージが出来ました。
パチパチパチ。ここまで色々と揃ってると簡単だね。
ここのバターなんかを作る際にも乳酸菌で発酵させた発酵バターを作ってるよ。
これめっちゃ美味しいからね。
なんか身体にある柄を覚えちゃった牛さんが出荷されていく様子を見るとちょっと感傷に浸っちゃうこともあるけどこれは色々と考えれば仕方ないって頭では理解しているよ。
でも、これが本当のドナドナだ。
ラスティーネ叔母様が色々と進めてたんだけど、ブロンベルグでは乳搾りの体験や近くで牛が見れたり、時計台を見たりする観光が人気で、今度は観光でも行ってみたいと思ってるよ。
エミリー、私を牧場観光に連れてって♪
お肉も美味しくなって来て、これで野菜や果物も美味しく出来ればご飯ももっと美味しくなるよね。楽しみ~!
◇◇◇◇◇
平日、貴族学院で講義が終わりルントシュテットのサロンへ戻るとマクシミリアン叔父様が来ていた。
「ソフィア様。ピシュナイゼルで火魔法使いが見つかった」
「えっ!?」
叔父様は先週、国王様がルントシュテットの館へ非公式にいらっしゃった時からザルツ達にピシュナイゼルへ向かわせ調査していたらしい。
叔父様が険しい表情をする。
「その火魔法使いと接触した際にカーマインが火魔法でやられ大火傷をしたそうだ」
「わたくしすぐに向かいたいですけど、、、」
私ならその火傷を治せるかもしれない。
でもまだ今週は講義が残っている。
私は国文学は先週もう感想文を出したし魔法の課題も終わってるから今週の残りの講義は私は殆ど終えていてユリアーナ先生の地理位だけど、、、。
と、ユリアーナ先生の方を見る。
「ソフィア様。今週のわたくしの講義はソフィア様に教えて頂いた事を皆さんに教えるだけですから出席の必要はございません。どうぞピシュナイゼルへお急ぎ下さい」
おお、今週はもう大丈夫そうだよ。
「では叔父様。わたくしすぐにでもピシュナイゼルへ行きたいですが、ここの側仕えと護衛はまだ講義が残ってます」
「大丈夫だ。マルテとノーラ、それに護衛はわたしの護衛達を連れて行く」
「判りました」
「ソフィア様!」
「エミリー、リナ、マティーカ、ルイーサ、クラーラ。心配せずに講義に集中して下さいませ」
「「はっ!」」
「でも、、、」
「リナ。大丈夫ですよ」
「はい」
「わたくしがいない間の予定を調整して下さいませ」
「わかりました姫様」
こうして私は急遽叔父様達とピシュナイゼルへ向かう事になった。
カーマインの事は心配だけど正直、本当に火魔法使いがいるなら是非会ってみたいよ。
もうワクワクだよ。
次回:ピシュナイゼルへ向かい火魔法使いの謎に迫るソフィア。
夢美は普段通り友達と遊び梨乃ちゃんの凄い性格の面白さに改めて気が付くw。