ソフィアの1日
もう結構やっているかなと思いますが、更新しないと言っていて更新する『更新しない詐欺』は私も初めてですw。
所用で更新出来ないのは来週でした。自分の予定を把握していないってなんなんでしょうね。正直曜日しかわからなかったよw。
色々とカットしちゃってたので『スコーラ』という言葉が全く説明されていなかった事にさっき気が付きましたw。大した話ではなくて、貴族学院の近くの街のエリアの事がスコーラと呼ばれていて、中央の貴族の館は王城にも近く、便利な場所なので結構な身分の人達の館はこのスコーラかスコーラの近くに建てられている事が多いという場所の事です。まあ学生街と近いかもですね。
今回は普段通りのソフィア側の一日の会話回です。ダラダラと適当に書いていくとこうなっちゃうと言う悪い例で、かなり冗長になってしまいましたし今回はちょっと変な方も混じっていますがあまり気にしないで良さそうですw。
「姫様、おはようございます」
「リナ。おはよう」
「あっ、姫様。何か悲しい夢でも見ましたか? 涙が流れた跡がお顔についてて目が少し腫れていますよ」
「そ、そう言えば悲しい夢を見たかな」
「そうですか。でももう大丈夫ですよ。目が覚めればリナも一緒ですよ」
「ありがとうリナ」
「今当て布を濡らしてきますね」
「うん、ありがとう」
あははは、身体のこんなつながりもあるんだね。マジ泣きしちゃったからなぁ。
でもリナは本当にやさしい子だね。
こっちは今日は週末で午前にユリアーナ先生のホームルームだけで終了だよ。
ユリアーナ先生のお話も簡単なもので、簡単に一行でまとめると『新入生はおおよそ講義がどんなものか触りだけでも判ったでしょうからこれからがんばりましょうね』と言うお話だった。
その後オットーさんが迎えに来てみんなと一緒にスコーラのルントシュテットの館へ戻る。
貴族学院での事をエミリーとルイーサがノーラやヘルムート達に引き継ぎをした。
私はお父さまとお話しなければならないので面会のお願いをした後、クラウとフェリックスにコンバインの出荷のお話をして農業ギルドのホルツさんに早急に広めて貰い、その後ガラス職人のヴェルナーさんの工房へ行って夜はユリアーナ先生とマティーカの勉強会の予定だよ。
いや、私、今日も結構忙しいね。早く終わらせて寝る時間を確保する為に頑張ろうw。
で、、、。クラウとフェリックス、そして同席してもらったルントシュテットの農業ギルド長ホルツさんとお話するのに、私の隣にはちょっと余分な人がいる。
聞いてくるのは当然の疑問だね。
「あれ? 今日はユリアーナ様とご一緒ではないのですか?」
「ソフィア様、マクシミリアン様、こちらのお方は?」
「あー、えーとあまり気にしないでください」
「いや、お前達、そちらのお方は、、、」
やばい、これ、ホルツさんには判ってるんだ。
「ホルツ!」
「マクシミリアン叔父様、わたくしがお話します。ホルツさん、ちょっと、、、」
私は慌てて席を立ってホルツさんを廊下へ連れ出した。
◇◇◇◇◇
なんでこんな面倒な事になったかと言うと、おおよそ半時前の事。。。
・・・
私は貴族学院から館へ戻ってから面会をお願いしたお父さまに呼ばれた。
「お父さま、なんでしょうか? わたくしからもご相談があります」
ん? 誰だろ?
貴族程じゃないけどそこそこ身なりのいい人だね。
「失礼致しました。ご来客中でしたか」
「い、いや、ソフィア。お前に来客だから先に呼んだのだ」
「わたくしに?」
「やぁ、ソフィア嬢」
「国王様!!」
こんな格好してたから判らなかったよ。でも何で、、、。
「今日はとても気分が良くてね。一度ソフィア嬢の仕事を見せて貰おうかと思って来たんだよ」
「な、何をおっしゃっているのですか。そんなに簡単に貧血は治りません。暫く食事で体調をよくしてから出直してくださいませ」
「おお、ヴァルターの言う通りソフィア嬢は結構正論がきついな。わたしならもうすっかり元気だよ」
国王様は今日は随分と砕けた話方だね。『余は』とか言わないね。
でもよく見るとこの部屋には普通の服を着た国王様の護衛が壁際に沢山いたよ。
「お父さま!!」
「す、すまん。ソフィア。ソフィアの仕事を見学した際に得た事は口外しないように魔法契約は行った。すまないが少し付き合ってあげてくれないか?」
「えー」
何この国王様の行動力っ!
「ヴァルターが私に説明する際にソフィア嬢が『あの面倒な駄々っ子』と表現していたという話をユーリから聞いたよ。久しぶりに二人で大笑いしたよ。ソフィア嬢は本当に面白いよね」
「ユ、ユリアーナ、、、」
お父さまから冷や汗が流れる。
色々とユリアーナ先生に話を聞いて知ってるのか。まあ国王様が怒らないって判っての話だろうけど、そんな話を本人に話して笑ってるなんてどんだけ仲いいの! 完全に私がネタにされてるよ。
国王様の頼みは断れないだろうから仕方ないけど、、、なんだかなぁ。
「直ぐに国王様だとバレて大騒ぎになるのではありませんか?」
「大丈夫だよ。こういう服と髪型だと若く見えるでしょ?w こうして服装も一般的な服にしてるし中央じゃなくてルントシュテットの職人ならそうはバレないでしょ」
何このイタズラ小僧みたいな軽いノリ。もしかしてこっちが国王様の本性?
はぁ、なんかどうすんのこれ。もう本当に仕事の邪魔だよ。
「ではわたくしは国王様の事をなんとお呼びすればよろしいのでしょう?」
「ダルでいいよ。わたしはソフィア様でいいかい?」
「わ、わかりました。ではお仕事の邪魔だけはしないでくださいね」
「判ってるって」
「側使えと護衛はいつも通りわたくしの護衛達にお願いしますので国王様の護衛の方々は遠くからでお願いします」
「ダル!」
「ダ、ダル」
ノーラもヘルムートも顔が真っ青だよ。こっちが貧血で倒れるんじゃないの?
「お父さま。わたくしからもお話があるのですけど」
「判った。夕食後で良いか?」
「判りました。それで結構です」
すっかりとうちの運転手になってしまったお母さまの側使えのオットーさんに蒸気自動車に乗せて貰う。オットーさんは国王様に気が付いたようだけどあまり表情を変えずにダルも乗せた。
何かあると不味いからと急遽マクシミリアン叔父様も同席する事になった。
マクシミリアン叔父様。私のせいじゃないけど、忙しいのにごめんなさい。
蒸気自動車がスムースに走り出す。馬に乗って数人がついてくる。
「ソフィア様。この蒸気自動車は本当に凄いね。なんでこんなにガタガタとしないの? それにルントシュテットの館の電気やトイレも信じられない程だよ。王城にも、、、」
「ダルは随分とお元気そうですね。少し静かな環境ですとわたくしの考え事が捗りますわ」
「す、すみません」
オットーさんとマクシミリアン叔父様に同時に冷や汗が流れたのが見えた。
まあ簡単に訳すとw『貴方はうるさいから静かにして』という意味の貴族のお嬢様的言い回しだw。
正直先が思いやられるよ。
・・・
というのがここに来る前のお話だ。
◇◇◇◇◇
私は少し背伸びして廊下に連れ出したホルツさんの耳元に声を小さくして話す。
『ホルツさん。もうお判りかもしれませんが、国王様を今日見たという事は内緒です』
『わ、判りました。でもあの部屋にいづらいなぁ』
『すみませんが我慢してください。本当に面倒な駄々っ子です』
『め、面倒な駄々っ子、、、』
『あっ、それは内緒です。でももう本人にも私がそう言ってると知られちゃいましたけど』
『大丈夫なんですか、ソフィア様』
『多分。この見学は向こうからのお願いですから気にしなくていいですよ』
『は、はい』
私はホルツさんに説明した後、部屋に戻ってクラウとフェリックスに話した。
「クラウとフェリックスはよく『まだ完全ではないから』とおっしゃいますよね」
「はい。コンバインもまだ完全ではなく、必ずもっとよくなるのです。ソフィア様も完全ではないと言いますよね」
「でもわたくしは完全ではないワイヤーガラスを蒸気自動車の窓ガラスとして出荷しましたよね」
「そ、そうですが、、、」
「クラウ、フェリックス。ルントシュテットの農業は呑気に待っていられる状況ではありません」
「そ、それは存じています」
「宇宙の原理として、どんなものも全てのものが、たとえ陽子さえ崩壊するのです」
「宇宙? 陽子? それはどんなものでしょう?」
「宇宙とはこの地母神ゲーのこの星テーラ全てだけでなく夜空に見える星々全てを含んだ世界の全てを指します。陽子とは物質を構成する大元の要素です」
「物質を構成する要素の元とはなんだ?」
もう丁寧に注意するのは面倒だ。
「ダルは少し黙っていてください」
「・・・す、全てのものが崩壊する、、、」
「はい、これを熱力学の第三法則、エントロピーの増大と言います。いかに魔法と言ってもこの法則に逆らうことはあり得ませんし、おかしな事を言うのは 珍想者の妄想ですよ」
「そ、そうですね」
「エントロピーとは何だ。珍想者の言う事はどんなに凄い魔法使いでも不可能なのか?」
「ダルっ!」
「す、すまない」
※珍想者・・・後で魔法学の授業でも説明されますが、日本で言う中二病の事です。
(ちなみに国王様は若い頃、本を読み過ぎてこの病を患った事がありますし今でも妄想の凄い魔法が使えないか考える事があった少し残念な思考の方でしたw)
「鍛冶職人の作ったものも、すべてが完全ではありませんしいくら直して使ってもやがて壊れます。クラウやフェリックスが過去に良く出来たと思って作ったものも今考えれば感じ方も違うでしょ?」
「そ、それは私達そのものが未熟だったからです」
「では、今はもう未熟でなく、これからより腕が上がることはないのですか?」
「そ、それは、、、そんな事はありません。私達はソフィア様の仕事をこなしてもっと高みを目指します。でも今のコンバインは癖があり過ぎるのです」
「不完全なものが人々に愛されないとでもお思いですか? つまり、世の中のものはどんなものでも全て不完全であり、その不完全さを愛でる人もいます。その不完全なものの事を、詫び寂びと言いその良さを感じるのです」
「ワビサビ!?」
プラトンの言うイデアの世界は存在しないからね。
「マクシミリアン叔父様。叔父様の蒸気自動車は結構癖があるとおっしゃってましたよね」
「ああ、そうだ。あれは最初6割くらいの運転をしてから少しして普通に運転すると調子がいいんだ。ブレーキにも癖があるからな。あれを上手く乗りこなせるのはわたしか執事のマルク位だろう、他の者には触らせたくないな」
「随分と癖があるのにお気に入りなのですね」
「そりゃあここまで乗れば愛着があって可愛いものさ。ラスティーネなんか『あのじゃじゃ馬は私しか乗れない』などと言ってたぞ」
「叔父様も叔母様も詫び寂びをよく愛でていらっしゃいますね」
「クラウ、フェリックス。今の伯父様の完全でない蒸気自動車に乗るお話はユーザの貴重な意見ですがどうですか?」
「ちょ、ちょっと驚きました」
「はい。わたしもです。そんな風に思って貰っていたなんて、、、」
「わたくしがこの後会う予定のガラス職人のヴェルナーが作るグラスには失敗して気泡が混じる事があります。先日見せて貰った色ガラスのコップの気泡はその偶然とも思える気泡が波間のしぶきを連想させ、とても風情がありました。わたくしが『しぶき』と名を書いたところ、中央の貴族に10倍以上の価格で売れたのですよ」
「偶然の失敗の気泡が10倍の値段?」
「ソフィア様、俺達、、、」
「ルントシュテットの農業の危機に今のコンバインを出荷してください。今のコンバインの価値はそれこそ計り知れません。不完全であればその後ユーザのニーズを聞いて次の2号機を作れば大丈夫です。あなた方の『完全ではない』がどれだけ優れているものなのかわたしは知っていますよ」
「・・・判りました。ソフィア様。直ぐに戻って出荷を開始します。フェリックスいいな?」
「もちろんだ。ソフィア様。わたしはまるで目からウロコが落ちたようです」
「良かったですね。ホルツさん」
ああ。もうホルツさん目から嬉し涙流してるよ。
「では、直ぐに手配してルントシュテットの農業の危機を救ってくださいませ」
「「はっ!」」
「あっそうだ。この後は国中に広げる事になると思いますからマルグリッドにそうお話しておいてください」
「く、国中!! わ、判りました」
ホルツさんとクラウ、フェリックスは急いでルントシュテットへと戻って行った。
「ソフィア様。助かったよ。あの二人は頑固に出荷しなかったがこれで間に合うだろう」
「マクシミリアン叔父様。間に合わせて貰わなければ困ります。ん? ダル? どうかしましたか?」
「い、いや、ソフィア嬢はいつもこんな事をしているのか?」
「こんな頑固な職人を相手にしていますけど、こんなのがしょっちゅうあっては困ります。わたくしの事はソフィア様ですよね」
「そ、そうだった。しかしソフィア様は素晴らしく明晰なようです。色々と後で伺いたい事があります。それとグレースフェールの農業の為に技官を一人ルントシュテットのコンバインの見学に行かせてもよろしいですか?」
「はい」
「ありがとうございます」
ダルは結構言葉使いの代え方が上手いね。玉座で『余は』って言ってるよりなんか合ってるような気がしないでもないくらいだよ。ダルw。
さてと次は何時だっけ? ノーラに確認する。
「ソフィア様。次は半時程後でガラス職人のヴェルナーの工房です」
「判りました。それではここでお茶に致しましょう。リナ、『ルノール』のケーキ屋さん『クラストゥーラ』でみんなにケーキを買って来てくださいませ。エミリーは紅茶を」
「「はい。畏まりました」」
マルテは『ケーキを買いに行くのは自分の役目だ』という顔で少し不満そうだ。ノーラは後輩を見る目で見送った。
「ソフィア嬢。いいかね」
「はい。なんでしょうか?」
「ユーリから聞いたのだが、ソフィア嬢は学問の誤りまで指摘しているという。これらの知識のみならず先程の職人を説得する知識は一体どこから得たのか?」
随分とストレートに来たね。お父さまから口止めされているし国王様でも隠すしかないね。
お父さまからそんなの聞いてるはずだし、権力をかさに聞くのはダメだよ。
ほら、叔父様が青い顔してるし。
「お父さまとはお話になられていらっしゃらないのでしょうか? やはり国王様ともなれば随分と自信がおありのご様子ですが、悪意はおありにならないのでしょうね」
「むぅ! そ、そうだったな。今は分が悪いようだ。ソフィア嬢から苦手にされては困る」
「それはありがとうございます」
ニッコリ。
流石に国王様はかなり優秀らしいから私の言い回しでも何を言いたいのかは理解して貰えてるねw。
お茶が入れられケーキが届いた。
私は一口お茶を飲み一息を入れる。ケーキと合わせる為のお茶もいい感じでバッチリだね。エミリーも慣れてきてるよ。国王様に入れる時は手が震えてたけどギリこぼさなかったよ。
「ソフィア様。ガラス職人のヴェルナーが品物は出来ているのでこちらにお持ちしてお見せしたいと使いがまいりました」
「そうですか。それでは『こちらで待つ』と伝えてください」
「はい」
「ソフィア嬢。ガラス職人にはどのような事を頼んでいるのだ」
「他の人がもう来てしまいますから言葉を戻しますね。ダルw。色ガラスの技術が向上してきたのでアダマス(ダイヤモンド)を砕いた粉をまぶしたグラインダーを数種類使って装飾を施したガラス細工の技術ですが、切子ガラスと言ってとても綺麗なのですよ」
「アダマスの粉!?」
「はい、とても硬度が高く硬いものです。手で持っても傷つけないように仕上げるのです」
「そ、そうですか、、、最近出回っている色ガラスはソフィア様の仕業だったのですね」
「そうですがこれは企業秘密ですよ」
「は、はい」
「ソフィア様。ヴェルナー達が来ました」
「通してくださいませ」
「ソフィア様。失礼いたします」
「ヴェルナー。よく来てくれました」
「はい。こちらにお持ち、、、。うっ、レ、、、」
「あ、そうでしたね。ヴェルナー。今日は特別に見学者がおりますが、一切気になさらないでくださいませ」
「えっ、は、はい」
一緒に来た他の職人達は気が付いていないようだね。マクシミリアン叔父様と同じように偉い人程度に思って貰ってるようだからこのままでいいね。
ヴェルナーさんはゴメン!
「ソフィア様。こちらでございます」
木箱から取り出されたのは綺麗に細工された切子グラスだ。
かなり見事な出来だね。
「とても綺麗です。素晴らしい出来です」
「こ、これは凄いな」
「ダル!」
「す、すみません」
「こちらは割り出しを細かくしたものです」
「う、美しい! 色だけでなくこんな細工が出来るのか!」
「ダル!」
「よ、よろしければご許可が頂けるのであれば後でお届けいたしますが、、、」
「是非頼む。ヴェルナーであったか? 早速許可しよう」
「は、はい」
「それはかまいませんが、わたくしの家の分が出来てからですよ」
「えっ、は、はい」
まあ、ヴェルナーさんが王室御用達になるのは喜ばしいけど、、、。
「こちらは割り出しを下だけにして上は山河の絵にしてみました」
「なんという美しさだ。まるで春の息吹を感じるな」
いや、今日は私への報告なんだけど国王様はノリノリだね。
「ルントシュテット家のものは作らせて頂いている最中でございますが複雑な絵柄の為ここまでしか出来ておりません」
あっ、私の描いたお気に入りのキャラのも出来てるよw。
「可愛い♪ 素晴らしいですよ。ヴェルナー。大変よく出来ました」
「ヴェルナー。これはかなり売れるぞ。ルントシュテットで経済規模に見合った職人を集める必要があるな」
「ま、待て。マクシミリアン。このように優れた物をルントシュテットでしか販売しないのか? 中央は?」
「ダル! 本日は見学のはずではございませんか?」
「そ、そうだが、、、」
「ダ、ダル。後でご相談しましょう」
叔父様が申し訳なさそうに国王様をあだ名で呼び捨てにする。こんな面白い光景が見られるとは思わなかったよw。
「頼むぞ。マクシミリアン」
「はっ!」
「マクシミリアン叔父様。これはランプシェードなど他にも応用が出来ます。それらを含めて現在のルントシュテットに合わせた経済波及効果を算出する手法ですが現状に合わせた新しい方法をマティーカと整理しました。後で使ってみて下さいませ」
「それは助かる」
「ソフィア様。マクシミリアン様。よろしくお願い致します。お約束の作ったものがお気に召すようであれば名を頂けるというお話ですが、、、」
「はい。家で注文した分以外にも名を付けますが、、、ダル。お気に入りのようなのでこれらに名を付けて下さい」
「よいのか? どのように付けるのだ?」
「はい。先程感じたように『春の息吹』とか心のままですよ」
「わかった」
職人達が準備し、箱と札に筆で名を入れる用意をする。
マクシミリアン叔父様から冷や汗が流れたのが見えたけどこれは放置したw。
流石のヴェルナーさんも国王様から直筆で名が貰えるとは思っていなかったのか喜びで少し震えている。
国王様はもう一度一つずつ手に取り吟味しながら名をしたためていった。
結構時間が掛かったけど、国王様は全部に名を付けた。こういう感覚は正直私よりも優れていると思う。確かに頭が良くてこちらの言葉の語彙力があるね。って私から思われても仕方ないけど本人が楽しそうだからいいか。
名付けが終わりヴェルナーさんは何度も頭を下げ帰って行った。
「ソフィア様。お疲れ様」
「今日は大変でしたね。叔父様」
「い、いや、まだご本人がいらっしゃるのだが、、、」
「もう早くルントシュテットの館へ戻ってご飯食べたいです」
「エバーハルト様がルントシュテットへ戻り、急遽レオノーレ様とアメリア様がいらっしゃるそうだよ」
「えっ、それってもしかして、、、」
「わたしが一緒の食事では不満かな?」
「い、いえ。そんな事は言ってませんよ。・・・はぁ」
私達はオットーさんに蒸気自動車に乗せて貰いルントシュテットの館へ戻った。
国王様はお父さまとマクシミリアン叔父様とお話に行ったけど私は自室へ戻る。
でも直ぐに叔父様が訪ねて来た。
「すまないソフィア様。国王様がディナーに同席される事を話したらカリーナが倒れた。すまないが厨房を少し見て貰えないか?」
「カリーナが!! 判りました。その前にカリーナはどちらに?」
「2階のメイドの休憩室だ」
「判りました。ノーラ少し先に厨房へ行って様子を確認していて下さい。マルテ、エミリー、リナ、休憩室へ行きますよ」
「「はい」」
カリーナを貴族学院から戻すんじゃなかったよ。
ルントシュテットのお父さまや叔父様達から見たらカリーナは一度スパイ容疑で捕まって今も私の管理下だ。もしもここで国王様に少しでも何かあったらと精神的に厳しかったのかもだね。
クルトは王城だけど他にも元々ルントシュテット家の料理を担当していたカールさん達もいる。
お父さまは心配して『中央に出店したフレンチのシェフを呼び出そうか?』と言ってたそうだけどお店を放り出して来て貰うなんて出来ないよ。
それに今日はお兄さまもいるからボリュームのある献立の予定だからね。
カリーナの部屋へ行くと真っ青な顔をしていた。カリーナは生理も少し重いそうで時々青い顔をしている事があったけど、今日は飛び切り青い。
教わった呪文を唱えたら少し過呼吸ぎみだったカリーナも落ち着いたようだ。
「今晩の料理は貧血にも良い物も作りますから後でカリーナも食べてみてくださいね。でも今日カリーナにお願いしたデザートは食べちゃダメですよ」
「はい。ソフィア様。でもあれ味見したらとても美味しかったですけど、、、」
「あー、それダメですよ」
「す、すみません」
「後はお休みしてゆっくりとしてください」
「はい」
私達は一階の厨房へ行く。
カールさんもかなり真剣な顔をしていたけど私を見たらニッコリとする余裕はあるようだ。
「カール。手が空いたらこちらに」
「はい。大丈夫です」
「なんでしょう?」
「クルトが貴族学院から王城へ呼ばれたのはご存知ですか?」
「はい。聞いています。そして本日国王様がいらっしゃっている事も先程伺いました」
「その通りです。国王様は少し貧血気味ですので、鉄分の多い料理を作って欲しいのですよ」
「今からでも大丈夫です」
「本日はどのようなメニューの予定ですか?」
「はい、ライスかパンで、メインはリバーサイズから生きたまま取り寄せたスクイーラ(エビ)にパン粉をまぶしたエビフライです。スープはあっさりとしたトマトスープでサイドメニューはかつ煮とバラ肉を使った方の生姜焼きではなく生姜煮です。サラダ系はブラシカの千切りメインのコールスローでデザートが抹茶アイスクリームの予定です」
どれもご飯に合って絶対美味しそうだね。
碾茶を粉にした抹茶はタンニンが他のお茶と比較してもかなり多い。タンニンは鉄と結合して鉄分の吸収を悪くするから抹茶アイスはダメだね。
碾茶はもやしみたいに途中で日光を遮って育てる抹茶の元だよ。
貧血には飲み物では緑茶も紅茶もダメ。お酒なんかもっての他だし、、、。
トマトスープじゃなくてライスに合わせるとするとあさりの味噌汁とかがいいけどお味噌が作れないんだよね。麹菌なんて、兄の漫画で見たみたいに菌が見えても簡単に見つけられるとは思えないからなぁ。顕微鏡の高性能なのを作っても確率から行けば多分500年位は掛かるよねw。
「国王様用に、少しメニューを変えましょう。エビフライは天ぷらにした後天むすにして胃にもたれない程度にします。スープはあさりを使ったクラムチャウダー。かつ煮の代わりに鳥のレバーのたれの焼き鳥、小松菜の小鉢を何か。デザートはストレートなアイスクリームでお茶はオーガニックなハーブティーでお願い出来ますか?」
「はい。畏まりました。わたしの料理を食して頂けますかね?」
「食べてもらいますよ」
「はいっ!」
カールは笑顔で答えた。かなり誇らしそうだけど美味しいのを頼みますね。
これは大丈夫そうだね。一応カリーナ担当の抹茶アイスクリームだけ味見。うまうま。
私は自室へ戻り、オットーさんに大きなプランターを用意してもらう。これ貴族学院にも用意してもらおう。ここからまるで家電のようにアースを一階の地面まで引き延ばして釘を使って地面に差す。
これでラーラは他の植物と会話しやすくなるようだ。
後は牛乳だね。
「ソフィアは相変わらず忙しそうだね」
「そんなじゃないですよラーラ。これは普通です」
「他の人はこんなに働いてないよ」
「わたしは立場的に頑張らないと戦争で滅ぼされちゃうかもしれないから頑張ってるんですよ」
「そう言ってたみたいだね」
「ラーラはそんな事まで知ってるの? もう何年も前の話だよ。ラーラは種だったんじゃないw?」
「種w。リアルタイムじゃないけどソフィアの話題は多いから知ってるんだよ」
・・・。
笑いながらラーラと他愛のない話をして私も少し落ち着く。
食事の準備が出来たみたいだ。
お母さまとアメリアが来ていた。私は国王様にご挨拶してから二人にご挨拶して席に着く。ノーラの椅子を引く手が震えていた。
私の正面が国王様なのは何か理由があるのだろうか? 私がお父さま、叔父様と叔母様を順に見るとみんな目を逸らしたよ。
「レオノーレは相変わらず美しいな」
「国王様。王妃様達に怒られますよ」
「全く、貴族学院でヴァルターとあそこまで仲良くなければわたしも狙ったのだがな」
えっ、お父さまとお母さまの恋バナ? き、聞きたい。
ウルリヒお兄さまも興味深そうに瞳を輝かせて国王様を見た。
「国王様。子供達もおりますのでご勘弁を」
「なんだ、つまらんな。ところで今日はソフィア嬢の料理なんだろ? 楽しみだなどんな料理なんだ」
「国王様は貧血なのでわたくし達とは少し違うメニューですよ。それにお酒も禁止です」
「なっ! ヴァルターやマクシミリアンから聞いたが、ワインという美味い酒があるのだろう」
「ああ、ワインは貧血には特にダメですね」
「そ、そんな、、、。少し、少しならいいだろ?」
「他の鉄分をちゃんととって一口だけですよ」
「お、おう。シモンズより厳しいな。ではヴァルター頼む」
国王様ではなくお父さまがお祈りをした。
「これは何だ。見た事がないな」
「これは天むすです。ライスに天つゆに漬けた天ぷらを入れてあります」
「一口で食べられそうだな。どうやって食べるんだ」
「お箸で挟むか手で食べても大丈夫です。尻尾は残してもいいですよ」
「面白いな。手で食べよう」
ぱくっ。もぐもぐ。
「美味いな。この天ぷらと言うスクイーラがライスととても合うな。このライスもモチモチして美味いぞ」
国王様の顔がぱあっと明るくなる。確かに心なしか貧血で真っ青だった顔も血色が戻って来たようだ。
「そのライスはシルバタリアのフリッツ伯父様の所で作っているそういうモチモチの種です。ライスはパンの代わりに主食になります。ルントシュテットでも作り始めました」
「成程。しかし小麦の方が人気があるのではないか?」
「グレースフェールでは芋を食べている不作の地域もあるのですよ。畑の稲作ではなく水田の稲作を始めたら収量倍率が増えました」
「収量倍率?」
「はい。例えばグレースフェールの各地域では麦1粒を撒いて5~10粒の麦が取れます。現在のルントシュテットでは農業改革によっておおよそ20~30粒です。でも水田の稲作では130~140粒の米が収穫できます。グレースフェールでは不作で飢餓の地域もある事を考えれば水田の稲作が可能な地域ではこれらの効率的なものを優先するのも一案だと思います」
「一案どころではない。可能な地域はそうしよう。こんなに美味いライスが食えるのなら必ずやるべきだ」
「お願いしますね。国王様」
「マクシミリアン。その茶色いのも少しよこせ」
「はい」
焼き鳥や小松菜のお浸し、クラムチャウダーを食べてマクシミリアン叔父様のかつ煮まで貰っていた。
「いや、驚いたな。ブラシカなど普段手をつけないのにこんなに美味いものだったのか。いや、この調理法が美味くしているのだな」
デザートが出て来て私達の抹茶アイスクリームと国王様の普通のアイスクリームが違う事が当然だけど判る。
「これも違うのか? ヴァルター。一口寄越せ」
「国王様。抹茶も貧血には大敵なのですよ。普通のアイスクリームも美味しいですよ」
「一口だけだ」
無理やりお父さまの抹茶アイスクリームをスプーンですくった。
「うごっ!」
な、何! ああ、スプーンを口に入れたまま驚いたのね。
「これは美味すぎる。もっと、、、」
「早く貧血が治るといいですね」
「つ、作り方を全部、城の料理人に教えて欲しい」
「レシピをご購入頂ければ国王様も食べられますが、貧血の食事療法が終わってからですね」
「ヴァルター、レオノーレ。直ぐに全部売ってくれ」
「は、はい」
「しかし、ソフィア嬢が貴族学院に入る前に婚約を決めているとは二人共やってくれたな。公爵家であれば辺境伯家よりも王族を優先すべきであろう」
「国王様。それは、、、」
「お父さま。わたくしがお話します。国王様。決して政治的思惑だけで婚約したのではございません。以前、シルバタリアへ行った際にお会いした三男のオスカー様はわたくしの事を気に入ってしまい食事も手につかないとおっしゃっていました」
「本当か? しかし辺境伯家の三男であろう。資産はあるかもしれぬが家督も継げぬし何者にもならぬではないか。ソフィア嬢はどう思っているのだ?」
「わたくしですか? わたくしは資産があれば寝室を作ってぐっすりと眠れますし、オスカー様は可愛いなぁって思っていますよ」
「むぐぅ」
「ひとまずその話は判った。この後話がしたいのだが、、、」
「わたくしはダメですよ。ユリアーナ先生とマティーカの勉強会があります」
「あれだけ働いてまだあるのか? しかし夜にまでユーリの家庭教師があるのか?」
「違いますよ。わたくしがお二人に教えるのです。特にユリアーナ先生はまだ微積分があやしいのですけど、今日は微分を詳しく出来ると思います」
「何! ソフィア嬢が先生なのか?」
「はい。今日は地動説の為のメンシス(月)とソリス(太陽)の距離の違いとプラネタイ(惑星)の楕円周期の極座標表現の単位時間微分計算と出来れば年周視差と光行差まで行きたいと思っています」
「ま、全くわからんが見学をしても?」
「はい。邪魔をしなければいいですよ」
「ヴァルター、レオノーレ。ソフィア嬢の勉強会が終わったらソフィア嬢と共に話がある」
「畏まりました」
「マクシミリアンとラスティーネ、ユーリも一緒だ」
「「はっ」」
何か企んでいそうな顔だね。
ユリアーナ先生とマティーカは先に来て待っていたけど、国王様が見学するとは思っていなかったようだ。
そもそもこの地母神ゲーが司るこの星テーラの事を球形であるという事はなんとなく誰でも知ってるけど、教えられているのは違っていて平面で天動説だ。古い文献を読むとかなり古くのは地動説もあったようだけど、科学が発展していない為に年周視差が確認出来ないので天動説が主流となっているというだけなんだよね。
光行差が確認出来るように頑張るつもりではいるけど今は後回しだよ。
なので科学や望遠鏡、観測技術の発達は取り敢えず置いておいて、理論と計算方法くらいなら私が先に説明できるから微分の実践としても地理を教えるユリアーナ先生にはピッタリだねw。
意外にスムースに進んだけど、やっぱりマティーカの方が微分や式を解くのは早かったよ。
この辺りは日本で言えば高校の物理だろうけどマティーカは8歳なのに本当に凄いね。
私もこっちじゃ同じ年だったよ。
ユリアーナ先生は『占星術の歴史が変わってしまう』とワナワナとしていたけどそれは仕方ないよね。
マティーカは国王様に『なんと優秀なのだ』と驚かれて顔真っ赤のテレテレだったよw。
勉強会が終わってオットーさんがサロンの方へ案内してくれる。
本来ならお風呂に入って寝る準備をする頃なのでお話は早く終わらせたいね。
夕飯を食べた後なのにクラッカーや飲み物が用意されていたけど、国王様がお酒を飲めないのでみんなお茶にしたようだ。
「ソフィア嬢の今日の話では伝説や物語に出て来る凄い黒魔法は一切ないような口ぶりだったな」
「いえ、わたくしはそんな事は申し上げておりませんよ。現に魔法はいくつも使えますし魔獣のような理解が難しい生物もいます。でも物理法則で不可能なものは出来ないと申し上げているのです。物語というものは空想を楽しむものです。その空想も整合性が合わなければ只の珍想者の妄想だと申し上げているのです」
「な、何を根拠に!」
「いえ逆ですよ。何を根拠に出来ると言うのか? ですよ。今は科学力も低く解明されていない事も多いのは事実です。神様のお力も判りません。ですが、例えば火の魔法などは典型です。火はそのものがエレメントなどではなく何かが急速に酸化する現象ですが、珍想者が書く物語の火の魔法は一体何が燃えているのですか?」
「あ、あれは色々とある。火の精霊にお願いしてとかだな、、、」
「いえ、空想の方法ではなく何が燃えているのですかとお伺いしているのですよ」
「その、、、ま、魔素的な何かだ」
「魔素とはどんな物質ですか? 新しい未知の元素はわたくしの知識では限られていますが、何かの混合物であれば何の化合物でしょうか? それを人がどのような方法で何から出しているのですか?」
「・・・そ、そんな事判る訳ないであろう」
「それでは物理的に存在しないものは何も燃えていないと考えるのが今の科学の答えとして正しいのではありませんか? つまりそう見えるとしたら幻覚ですね」
「そ、そんな事はない!」
「でしたらその否定を覆すだけの根拠を教えてくださいませ」
「うっ、、、」
「まあ、可能性はまったくのゼロではありませんよ。一瞬で消えてしまいますが、オナラでしたら一瞬ですが燃えます」
「ソフィア!」
「すみません、お母さま」
「ならば物語の勇者はオナラの達人だとでもいうのか?」
「一瞬の火魔法ならばという条件でです。でもそれは魔法ではありませんけど」
「むぐぅ」
「珍想者の物語の雷撃魔法も同じです。相当な分厚い脂肪でないと人が感電して死んでしまいます」
「・・・」
「ソ、ソフィア様。珍想者の物語の話をこれ以上しても仕方ないだろう。その辺で、、、」
マクシミリアン叔父様が国王様が言い負かされているのを危惧して止めに入る。
「でも、治癒魔法で発光器官なんかないのに手が光る現象はまるっきる判らないんですよねー」
「何! それは神的魔法の神の光だ。 まさか、ソフィア嬢は神的魔法の使い手を知っているのか?」
「ソフィア様!」
ありゃ? これは不味いんだね。ちょっと失敗。
ダラダラダラ。
「ソフィア様。神的魔法の際の光に見えるものは神威によって光ると言われているもので人の力ではないのです。ですから恐らくソフィア様のおっしゃる人の世の物理現象とは異なると思われますよ。まだ貴族学院では習っていないのかもしれませんが今仰ってるのは黒魔法のお話では?」
「そ、そうなのですね叔父様。も、もしもそんな事が出来る人がいらっしゃったら、調べてみたいものですねー」
ダラダラダラ。
国王様はかなり訝しそうな目つきで私を見ている。
その神的魔法とか神威とかって何。まだ習ってないけどそんなのあるんだね。
あーでも変な事聞くんじゃなかったよ。
「では、もしも火魔法が使える黒魔法使いが現れたらソフィア嬢はいかがする!」
「それは魔法ではなくタネのある手品ではありませんか?」
「タネも仕掛けもない本物の魔法であればだ」
「そんな事があれば国王様のご要望に何でもお1つだけお応えしますよ」
「よーし、言ったな。そうなればわたしの息子の嫁に来い」
「えー、結婚は本人の希望が優先されるべきだと思いますからそれはイヤです。火魔法の方をお連れになってからゆっくりとお考えください」
!!
「ソフィア!!」
「ソ、ソフィア様!」
「ううむ、王家に嫁ぐ事を嫌がる貴族の子女がいるとは思わなかったがやはりソフィア嬢は面白いな。ならば気に入ればで構わん」
「それならば考えてもいいですよ。そんな面白い事を出来る人が本当にいて、それを楽しませてくれる度量のある方でしたら面白いかもしれませんよね。もしもの時には許嫁のオスカー様にはわたくしからお話します」
「ソフィア様、、、」
「もしもの時ですよ。大丈夫です。あり得ません」
「ソフィア様」
「なんですかユリアーナ先生」
「わたくしはアフリークの方で雷撃を放つ魚がいると聞いた事があります」
「それは電気ウナギや電気ナマズではありませんか?」
「いや、魚の種類までは、、、」
「あれらは電気の発生器官を体内に持っています」
おそらくマンドラゴラのラーラにも近い器官があるかもしれないよね。ピリピリって言ってたから。
まあ普通の体内電流かもしれないけど植物に塩分はない。
「そんなものを持つ動物がいるなら人もそんな種族がいてもおかしくないのではありませんか?」
「その上で、敵を殺傷する程の雷撃つまり電撃であれば自分も感電してしまいますからそれらの魚はとても身体の脂肪がぶ厚くて感電死しないのですよ」
「脂肪がぶ厚い!?」
「はい、今の時代、人で太っているのは貴族か裕福な商人、教会関係者くらいですけど、中でも相当太っている彼らの体内に人を殺せる程の発電器官が備わっている方がいれば可能かもしれませんね」
「そ、それはかなり難しいでしょうね。成程、雷撃とはあの電気なのですね」
「わたくしも物語で肥え太った感電しない程脂肪がぶ厚い勇者のお話は読んだ事がございません」
「ソフィア様。確か昔、ピシュナイゼルに火魔法を使う魔術師がいるような話を聞いた事がある」
「マクシミリアン。それは本当か? いつ、どこで聞いた!?」
珍しくマクシミリアン叔父様が『しまった!』という顔をした。
「が、学生の頃、ピシュナイゼルの者にです」
「ははは、聞いたかソフィア嬢。直ぐに連れて来てやるぞ。首を洗って、いや花嫁衣装を着て待っているのだな」
えっ、ちょっとマジそれ? 本当に何が燃えてるんだろ。
それは興味あるね。
でも、国王様も貧血なのにあのスパイを追い詰めた時は少しカッコいいなぁって思ったのに、今はまるでイタズラ小僧のように元気だよ。本当に貧血だったの?
これで国王様の話は済んだようだ。
なんか企んでる風だったけどつまり無理やりにでもみんなの前で私を囲い混む言質を取りたかったんだね。でもこれは無理筋だと思うけど。
お父さまもお母さまもそんなに心配そうな顔をしないでも大丈夫だと思いますよ。
ってお母さまは怖い目のまま少し口元が笑ってるよw。
国王様は頭いいって聞いてたけど、おかしな物語を信じちゃってる? 信じたい?少し珍想者側の人だったよ。
整合性が合うかどうか位頭で考えれば子供でも判断できますよ。国王様。
というのは言わないで心の中だけにしておこう。
「ソフィア」
「何でしょうお兄さま」
「その、、、オナラは燃えるのか?」
「はいw。燃えますよ」
はぁ、疲れたけどお兄さまの話で力が抜けて少し笑えたよ。
この後、緊張とヤキモキの連続でノーラまで倒れた。もう勘弁して。
美鈴「夢美ちゃん、この前の陽子崩壊の話あるでしょ?」
夢美「はい、あのカミ〇カンデのやつですよね」
美鈴「そうなんだけどさ、実はあれまだ確認出来てないんだよ」
夢美「えっ、あんな前からやってて理論上一年で一度は確認出来るって話なんでしょう? 大統一理論が、、、」
(やばい、フェリックス達に陽子も崩壊するとか断言しちゃったよ)
美鈴「実はそのニュートリノも予想より大分少なかったりもするんだけど大統一理論は最新の修正を加えればまだ生きてると思うよ。んでね」
夢美「??? んで?」
美鈴「今はスーパーカ〇オカンデのンデの意味が、前の核子崩壊実験(Nucleon Devay Experiment)からからニュートリノ検出実験(Neutrino Detection Experiment)に変わっちゃったんだよ」
夢美「誤魔化すの上手いっ! 沢さん座布団持って来て。じゃなくて。なんで、、、それって税金で作った目的と、違、、、」
美鈴「ちょーっと待った! そこまでだって夢美ちゃん! 純粋な子供はそれ以上言っちゃいけないんだよ」
夢美「ううっ、カミ〇カンデの『ンデ』め!」
美鈴「夢美ちゃん、『ンデ』は悪くないよ、『ンデ』は」
次回:大会で勝ち続ける夢美の前に立ちはだかるのは、、、。
遂に待ちに待ったあの味が登場!w
ソフィアとドロミスの事を何か知っているヴァルターは、、、
(ソフィアの謎に迫っちゃう(うそっぽい)かも)
という事ですみませんが日程を間違えていた私は一週お休みをいただくと思います。
よろしくお願いします。