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ドゥープレックス ビータ ~異世界と日本の二重生活~  作者: ルーニック
第五章 夢の貴族学院
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玉座

 日本では夏休み明け産業革命以降の博物館へ歴研で行く事になり大はしゃぎの夢美。

 国王様との打ち合わせはどうなるのか?


 歴史研究会の部室。珍しく部長からお誘いがあって部員全員が揃った。

 この部屋には日本の歴史、世界の歴史などの書籍が少しあって、テーマを決めて議論するので葛城部長がテーマを決める際には出来るだけ部員を集めるようにしている。まあ賛成者がいなければ部長一人とかになっちゃったら議論も出来ないからね。

 おお、滅多に来ない顧問の岩崎先生も来てるよ。ちょっと消極的に見える先生なんだけどとても真面目な先生でこれまでの歴史の授業で質問しても真摯に答えてくれる先生だ。


「では次の課外レクリエーションですが、どなたか希望はありますか?」

「はい!」

 

 ありゃ、私しか手を挙げないよ。意見がなくてもおそらく部長が発案してくれるけどね。


「では九条さん」

「わたしとしては埼玉の日〇工業大の工業技術博物館、明〇大学の明治大学博物館、総〇省の産業遺産情報センターがお勧めです」


「それらはどんな博物館なのですか?」


 葛城部長が興味ありそうな顔で尋ねて来た。おっ行けそうかな。


「工業技術博物館では工業技術の発展を製造年代別に展示しているそうで、ベルトで動力を工場内でシェアする様子や手回し動力や足踏み旋盤から蒸気機関車など7割のものが今も動くのだそうです。絶対に面白いです。

 明治大学博物館は商品、刑事、考古学の戦後復興期の製品や輸入されたものが展示されていて高度経済成長期の工芸品など貴重なものが沢山あるそうです。

 産業遺産情報センターは明治日本の産業革命遺産で製鉄・製鋼、造船、石炭産業の歴史を学べる素晴らしい場所です」


 しまった、ちょっと早口過ぎたかな。


「く、九条さんはこういう話になるととても積極的というか話が止まらなくなるのね。わたしは発掘なども好きですから考古学も展示している明治大学博物館がいいかな。でも他も興味ありますよ。他の方はどうかしら? 乙羽さん?」

「わ、わたしは総〇省とかだと硬そうで他の方がいいかと思いますけど、埼玉はちょっと遠いかなぁ」

「全然固くないし、埼玉なんて電車ですぐですよ。小旅行、小旅行!」

「あははは、本当に夢っちは好きだね。わたしは面白そうなのがいいから動くのが見れる埼玉かな」


「平峰くんと御手洗さんは?」


「ぼくは九条さんの話を聞くとどこも面白そうなので全部行ってみたいです」

「九条さん、蒸気機関車も動くのですか?」

「時々試運転してくれる時もあるようですけど私達が行ける日に試運転して貰えるといいですね。わたしもどれも行った事がないので見てみたいと思っています」


「面白そうですね。では、、、」

「部長。ちょっと待ってください。先生もいらっしゃっているので質問があります」

「何かな九条さん」


「はい。わたしは中等部で習う日本の歴史の教科書をお借りして全部読んでみました」

「もう3年の終わりまで読んだの? 凄いね」

「はい、そこで不思議に思ったのは、勿論過去に学ぶ事も多く古い時代の事も重要な事は判ります。古代史の人類の発生と移動でも現代では科学的にミトコンドリアDNAでなくY染色体DNAの最新情報やヒトゲノム解析で大きく解明されてるのに未だにおかしな説が書かれていました。でも最も驚くのは明治以降の歴史のページが少な過ぎではありませんか? これは全体の5%程度しか記述がなくてとてもがっかりしました。今の文化や生活に結びついた現代に役に立つ発想や社会の元はわたしが提案した博物館に展示されているもののような時期の発展が基盤になっているはずなのになぜ中学の教科書にこんなに記述が少ないのでしょうか?」


「うっ、、、そ、それはですね。えー困ったな。出アフリカもそうだけど君達には説明しづらい事も多いんですよ。確かに九条さんの言う通りで、産業革命以降つまり日本の明治以降の発展は現代には欠かせないものの基盤でとても重要な事です。でも教科書を作る人、選定する人達からは残念ながらこの時期の日本の発展は避けられていて記述が少ないんですよ」


 避けられていて? あーこれ大人のダメなやつだね。お役人様め。父のところじゃなさそうだけど。後で部長と議論するしかないね。

 でもこれは岩崎先生に突っ込んでも仕方ないからなぁ。これはここまでにしておこう。


「判りました。そのおかしな教え方は現代の学問としてとても残念ですね」

「そ、そうだね。残念だね。でも九条さんの提案は全てまさにその発展期の博物館だ。大学で専門的に学ぶより先に様々なものを見て実際に触れておくことはとても大切だからわたしはどこも大賛成だよ」

「先生が行った事があるお勧めはありますか?」

「全部行ってるよ。どこも素晴らしいけれど、資料や展示だけではなくて動くものが見れるのも面白いかな」


 岩崎先生全部行ってるんだ。いいなぁ。私も行きたいけどなかなか時間が取れないんだよね。でも絶対に全部行くからね。


「では、6人ですが多数決にしましょう。埼玉がいいと思う人? ・・・」


 顧問の岩崎先生も納得して貰ったみたいで、私達は次の土曜に埼玉の日〇工業大の工業技術博物館へ行く事になったよ。色々と調べて時間とかを調整して交通手段も確認しなくちゃね。


 やったね。私の希望が取り入れて貰えたよ。わーい。



 王城での朝。早くにユリアーナ先生が来た。


「ユリアーナ先生、どうしたんですか?」

「ダルに呼ばれたんですよ。ソフィア様」

「ダル?」

「ああ、国王様(レクス)はダルーン・サンレグリアと言う名前で私の同級生で仲が良かったのですよ。彼の親しい間の呼び名です」


 ありゃま。


「ユリアーナ先生。貴族学院の授業の方は、、、」

「全くですよ。最初に顔合わせに出れば充分なはずでした。今日も授業があるのに休講ですからね。どこかで補講しないと、、、」


 ユリアーナ先生も大変そうだけど、この状況で朝早くに呼ばれたっていう事はユリアーナ先生の信頼があるんだね。


「エバーハルト様、ウルリヒ様、ご一緒に朝食を召し上がりに行きましょう」

「ユリアーナ先生。私達は呼ばれていないと思うが、、、」

「構いませんよ」

「またソフィアの朝食を食べたとなるとこれだけルントシュテットの者が多いと母上達に恨まれそうだな」


 そう言えばお母さまとアメリアはルントシュテットのお留守番だね。


 食堂へ行くと宰相様、技官の人、文官の人、そしてルントシュテットの面々が揃っていた。そんなに遅くないと思うけど、、、。ユリアーナ先生と私達も席に着いた。


「ソフィア嬢。本日の朝食はどのようなものか?」

「はい、宰相様。いつもルントシュテットで食べているものとほぼ同じものです。

 ヨーグルトのベリージャム添え、

 ベーコンとほうれん草のチーズオムレツ ケチャップソース、

 トマトとレタスのフレンチドレッシングサラダ ポテトサラダ乗せ、

 オニオンコンソメスープ、

 フレンチトースト ハチミツ&生クリーム

 になります。お打ち合わせを予定していますので頭に良い甘いものもいれております」


「甘いものは頭に良いのか?」

「えーと、沢山考えるとエネルギーを相当消費しますから糖分、つまり甘さを用いています。甘くないものがよろしければバタートーストも用意出来ますよ」


「判った。これらの毒見は?」

「はっ、既に全て毒見を終えております。大変美味しゅうございました。 はっ、し、しまった、、、」

「ベルガ! う、ううん!!」


 国王様が側使えに肩を借りてやって来た。

 だ、大丈夫なの?

 なんかめっちゃ顔が青いんですけど、、、。


「待たせたな。ルントシュテットの面々はみな顔色が良いな」

国王様(レクス)はお顔の色が悪く見えますよ」

国王様(レクス)などと呼ぶなユーリ。ほぼ身内だけだ。ダルと呼べ」

「はい」

「眩暈や吐き気、頭痛が酷かったのでこれでも2日前に治療で大量に血を抜いて来たのだ。昨日はすまなかったなルントシュテット卿」

「いえ、お気になさらずに」


 瀉血っ!!

 そうか。ルントシュテットではもう禁止したけどこっちではまだ信じてやってるんだね。

 私は慌てて叔父様の顔を見た。叔父様がうんと頷いた。これでどこかで進言してくれると思う。


「では、頂くとしよう。今日の食事はソフィア嬢のものだそうだね。ソフィア嬢は?」

「わたくしです。国王様(レクス)

「ほう、随分と可愛い女神様だな」

国王様(レクス)!」

「構わぬ。では宰相頼む」


 国王様に代わって宰相様がお祈りをして食事が始まった。

 通常は上位の者が祈るのだけど今日は仕方なさそうだね。


 国王様(レクス)がヨーグルトを美味しそうに食べて続いてスープを口にする。

 やはり驚いた顔になった。


「美味いな。これは良く食べるものなのか?」

「はい、普段ルントシュテットで食しているものです」

「それは羨ましいな。どうだヴァルター。余と交換せぬか?」

「ご、ご冗談を」

「はっ、はっはっはっ」

国王様(レクス)!」


 国王様(レクス)はそのまま食事を続けてサラダもフレンチトーストも全部たいらげた。


「久しぶりにこんなに沢山食べられた。感謝する」

「いえ、お口にあったようで良かったです」


 国王様(レクス)が私に向かってコクコクとした。


「ユーリ。打合せの前に余の部屋へ来てくれ」

「はっ!」


「ソフィア嬢。お世辞ではなく本当に美味しかった。打合せでは頼むぞ」

「はい。宰相様」


 技官の人も文官の人も礼をしてから席を離れた。


「叔父様っ! ユリアーナ先生っ!」

「ああ、昨日も顔色は悪かったが恐らくこれは瀉血が問題だろう」

「ソフィア様。それは本当ですか?」

「はい。頭痛、吐き気、眩暈、集中力の低下、疲れやすさ、蒼白などの症状は血液が不足している状態で起こるものです。国王様にルントシュテットの状況を正確にご説明して頂いてお止めになるように進言してください」

「おそらく部屋には侍医もいるだろうから反対されるだろうな」

「血液を抜いて良くなる病気はありません。逆に貧血状態がそれらの症状を起こしているのです」

「貧血の症状で大量の瀉血など自殺行為だな」

「その通りです」


「ソフィア様。これはどのような仕組みなのでしょう?」

「血液の中の赤血球というものの中のヘモグロビンという物質が少なくなった状態です。このヘモグロビンが呼吸で得た酸素を運ぶのですが、これが少ないと酸素が体中に行き渡らずに様々な不調が発生します」

「ソフィア様の言う酸素とは確か呼吸で得るわけですからそれは呼吸を止めたのと同じ状態になると?」

「はい、その先ですが脳に行きわたらなければ意識が朦朧とすることがあります」

「成程、確かに。それは判りやすいですね」

「ユリアーナ先生。貧血の原因は骨髄の病気や腎臓の病気、赤血球の破壊等の病気の場合もありますが、栄養素の不足や血を失う事が主な原因です。その為月経のある女性は貧血になりやすいのです」

「ソフィア様が領地で行った施策によって死亡率は減りましたし女性の貧血症状の割合も激減していますよユリアーナ先生」

「では食事療法もあるのですね」

「はい。特に若い女性に推奨しているものですが食材さえそろえばそれなりには対処が可能です」

「判りました。それではマクシミリアン様。どれくらい改善されているのか教えてください」

「はい・・・」


 叔父様がルントシュテット領の改善状況を細かくユリアーナ先生に話した。


 先にユリアーナ先生一人に色々と聞いてから打ち合わせのようだから私達は一旦部屋へ戻り呼ばれるまで待つ事にした。



「ユリアーナ先生ではありませんが、わたしたちも講義をさぼってしまいましたね」

「ごめんねリナ。エミリー」

「いえ、ソフィア様がお謝りになる事ではございません。国王様の呼び出しの方が重要でございます」

「リナ。今日の授業は何だったっけ?」

「今日は魔術で確か最初は礼拝堂で神様にお祈りするのだったと思います」

「最初の授業でお祈りの後魔法についての一般論を習い課題をクリアすれば今季の授業は終わりです」

「なんでお祈りするの?」

「神のご加護を頂いている場合にその確認と指導の為に先生への報告があります」

「それは個人情報ですよね」

「魔法契約で先生は知った生徒の情報は他の方には話せません」

「成程。これに出れなかったからどうなるのかな」

「その場合、補講があります。出席しなかった生徒が集められて講義終了後に礼拝堂でお祈りをして報告かと思います」

「はぁ、最初から補講かぁ」

「姫様、わたしもです」

「そうだね。リナ。一緒に頑張ろうね」

「はい」




「なんと、それは真か?」

「はい。その証拠にルントシュテットでは驚くべき改善が見られています」


「は? 何を根拠にそんな事を申されるか!」

「ゲーリケ・シモンズ。余は其方に発言を許してはいないぞ」

「しかし国王様(レクス)。騙されてはなりませんぞ。ユリアーナ・フォン・ビッセルドルフは瀉血で治る病などないと言っているのです。実際に癲癇で暴れるものはおとなしくなっているではありませんか?」

「それは先程ご説明しました通り、酸素が足りずに意識が薄れているのです」

「むぐぐっ!」

「もう良いシモンズ。少し黙れ!」

「はっ」


「ではユーリ。食事による改善も出来るのか?」

「はい。但し時間は掛かりますが確実に改善されるでしょう」

「判った。では食事療法を続け他の病でないか様子を見る事にしよう」

「良かったですよ。今ダルに死なれては困りますからね」

「これもソフィア嬢によるお話なのか?」

「その通りです。ご明察痛み入ります」


「シモンズ卿。後でルントシュテットで禁止した民間療法などの資料をお届けします。因みにソフィア様の施策前の乳幼児死亡率は23%でしたが昨年の乳幼児死亡率は出生1,000人あたりに対して2.3人、つまり0.23%と1/100に減りました」

「な、なんだと! そ、そんなに」


「もう良いかシモンズ。では本題へまいろうユーリ。その蒸気自動車は其方の目から見てもそんなに優れたものなのか?」

「はい。昨日のお昼過ぎにソフィア様がリーゼロッテ王女様から中央にまだないものを請われルントシュテットに連絡してエバーハルト様が夕方には届けにまいりました」

「なんと、ルントシュテットから30リーグもあるのに半日だというのか? リーゼロッテか、、、」

「はい。ダルも元気になったらご試乗ください」

「ううむ。更には道路の整備や大量に人を運ぶ鉄道。これはこの国の傭兵の歴史が変わるな」

「はい。おそらくもっと驚く事もソフィア様はなさるでしょう」

「もっと驚く事?」

「いえ、もうやっているかもしれません」

「何! いや、一度にそう言われても対処できんな。ユーリから見るとソフィア嬢は何者なのかね?」

「はい。あの方は大賢者でなければ神でしょう」

「大賢者か神、、、」


「おかげでわたくしは間違っているの知りながら貴族学院の講義で間違った事を教えなければならないのです」

「学問の誤りまで指摘しておるのか? なればそれは正しい事をそういう説があると双方教えてくれ」

「時間は掛かりますがダルの頼みでしたらそう致しましょう」


「大賢者か神では貧血の余が会うのは心臓に悪いな」

「ソフィア様は心優しい方ですからもっとフランクでも大丈夫ですよ。でもソフィア様は当初ダルの明晰な頭脳でショックを受けたと心臓の発作をお疑いだったそうですよ」

「そ、そうか。しかしルントシュテット卿にはやられたな。貴族学院入学前に婚約しているとは。嫁に取れぬではないか」

「それはヴァルター様のご判断ですね」

「ではルントシュテット卿と話をしてまいろう」

「はい。お供します。シモンズ卿、参りますよ」

「わ、判った」

「大丈夫ですか? 主治医なのですから国王様(レクス)をお願いしますよ。わたくしの親友ですので」



 改めて私が詳しく説明した。

 技官のヴァルディ・フォン・ヘルフさんと宰相様は驚いたように口を開けて動かない。でも文官のヴォータン・フォン・ブレドウさんは何故かニヤニヤしていた。

 私が叔父様を見ると叔父様は小さくコクリと頷いた。


「話は全て判った。()()進めよう」

「さすが国王様(レクス)です。ありがとうございます」

「ソ、ソフィア!」

「あっと、すみません」

「いや、構わぬ。しかし国王の立場がなければ余が手伝いたい程だ。どうにかする手段はないものかね」

国王様(レクス)!」

「いや冗談だ。何か誰でも意見があれば言って欲しい」

「以前も申しました通り、軍備にそれだけ税を使うとなると増税が必要ですな」

「ほう。ブレドウ卿。施しの方が優先かね」

「その通りです。教会の立て直しもありますし炊き出しが一年続けられなければ民が死にますぞ」

「炊き出しは必要なだけ行いその間に学ばせ就労につければよかろう。すぐに施しも要らなくなる」

「皆ルントシュテット卿のように優秀な訳ではないのだ。軍備などより優先すべきで、さもなければ民の不況を買っても増税しかあるまいな」


「ふう。本当にルントシュテット卿の言う通りだったな。余は軍備に繋がる話で税を増やすつもりなどない。良く聞けヴォータン・フォン・ブレドウ。税の使い方で最も優先すべきは国を守る軍備であろう。それを優先せずしてまだ使える教会の立て直し? 民を育てもせずに炊き出しの施しを続ける? その為に増税だと! バカも休み休みに言え。増税を議論するならば教会の立て直し費用であるなら判るが、民意を離れさせ、このグレースフェールの国力を落とそうとする理由(わけ)は何かっ! 答えよヴォータン・フォン・ブレドウ!!」

「うぅっ!」

「後で話を聞く。この者を捉え軟禁せよ」

「「はっ!」」


「は、離せっ! 国王様(レクス)! わたしは無実ですぞ!」

「話は後だ」


 文官のブレドウ卿が連れて行かれた。


「ルントシュテット卿が昨日言った通りだったな。恐れ入った」

国王様(レクス)。彼についてはこちらでも調べはついております。チョイナー出身の女性を侍らせ不明資産の増加が驚く程確認されており確かな証拠も揃っています」

「うむ、マクシミリアンは相変わらず優秀だな」

国王様(レクス)程ではございません。宰相様、そちらの魔法契約書を見せて頂けませんか?」

「これか」

「やはり、これはブレドウ卿のお名前ではありませんよ」

「何!」

「宰相、そう言う事だ」

「も、申し訳ございません。確認が足りませんでした」


「ソフィア嬢。お見苦しい所をお見せした」

「大丈夫です。これまでも幾人も見ております」

「我が国の領土であるシルバタリアの三角諸島に毎日のように来ていたチョイナーの船もソフィア嬢のお陰ですっかりと来なくなったからな。フリッツも喜んでおったぞ」

「捉えた乗組員の証言から想定される侵略性国家がそんなに簡単に侵略を辞めた訳ではないと思いますよ」

「判っている。今は早急な国の立て直しが先だ」

「はい。その通りですね」


「農業技術は本当に無償で開示してよろしいのだな?」

「はい。貴族ではなく各領地の農業ギルドへご開示いただければと思います。この国の民がこれ以上飢えるのを黙って見ている訳には参りません」

「見事な考えだ」

「わたくし共にはまだ他が簡単には追い付けない革命的技術の土壌酸度計、耕運機、田植え機、コンバインがございますから領地の収入はそれで充分です。これらも普及の為にいずれ他領でも作れるように致します」

「あいや、判った。ここまで自動化できるなら本当に農業すら楽しそうに思える」

「楽しいですよ」


「そうかね。ではルントシュテット卿。鉄道と舗装工事は余から其方らに発注しよう。こちらは軍備を国からと各領地にそろえる。軍備の名声は余のものとなるがそれで良ろしいか?」

「畏まりました。既に国王様にお売りした権利ですからそれで構いません。ですが人材が圧倒的に不足しております。大きな橋をかける必要もございますので中央だけでなく各領地からも人材を手配出来るようにして頂けると助かります。こちらで面倒を見ます」

「成程。直ぐに施しもいらなくなるとはそういう事か」

「ご明察痛み入ります」

「見事だ。ルントシュテット卿、ソフィア嬢。直ぐに魔法契約を作るから卿は残って欲しい。ソフィア嬢、ユーリ。貴族学院を休ませてしまいすまなかったな。皆もご苦労であった」

「「はっ!」」


国王様(レクス)。明日にはルントシュテットから腕利きの料理人を手配致します。ソフィア、メニューを頼むぞ」

「はい。お父さま。お昼は既にクルトに作らせております」

「それはありがたい事だ」

「光栄至極です」


「では話はここまでだ。マクシミリアン、ユーリ。手元に資料があれば頼んだぞ」

「「はっ」」


 ふぅ。やっと終わったよ。


 やっぱりヘム鉄の含有量は動物の方が多いからシルバタリアに行けばその辺りの食材が豊富なんだけど取り敢えず、小松菜のクルミ和えと焼き鳥屋さんからレバーを仕入れてニラレバ炒め、吸収しやすいようにビタミンCを含む果物と肉や卵の動物性タンパク質を一緒に美味しく食べられる料理を用意したよ。貧血の場合は摂取してはいけないものも多いから注意が必要だね。


 後は早く国王様(レクス)が元気になってくれるといいね。こっちの宰相様達も瀉血をしているからか本当に顔色が悪いから民間療法が禁止に出来ればいいけど私はそれは言えないよね。

 ルントシュテット領の結果だけ伝えて後は宰相様にでも頑張ってもらおう。


「ところでソフィア嬢。玉座に興味はないかね?」

「全くございません。国王などやったら気持ち良く寝る時間が減るじゃないですか。それに座り心地ならわたくしの椅子の方が柔らかくて座りやすいと思います」

国王様(レクス)!」

「即答かね。わははは、宰相。冗談だ冗談」


 にしては目だけ真剣だったよ。

 もう。私の夢は心地よい睡眠なんだから国王様は邪魔しないで欲しいよ。


 来週は更新が難しいと思うので、このまま書いて、出来たら先に更新します。


 次回:礼拝堂でのお祈りで神の声を聞くソフィア。

 日本では夢美がマジ泣きの号泣!?

 お楽しみに♪


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