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ドゥープレックス ビータ ~異世界と日本の二重生活~  作者: ルーニック
第五章 夢の貴族学院
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貴族学院入学

 なんか先週土曜は更新出来ない事を知らなくて更新出来ませんでした。申し訳ありませんでした。

 ノーラとヴァルターとの会話で貴族学院の事や王様の対応を話すバージョンとソフィア本人の理解を確かめる心の中バージョンの二通り書き、後者にして大幅にカットしました。まあ、カットはダラダラと説明が長くなっちゃったからなんですけどね。名前とかは設定資料として残そうかなという感じです。つまり同級生の事とかソフィアが言ってる事の技術や理由等については今回あまり詳しく書いていませんが後で少し出て来るかもしれません。会話が多いとなんとなくお芝居の台本っぽくて小説っぽくないなと気になっただけなので大した意味はありません。

(そう言えばゴブリンのお話で全部会話のみというのを書いた気がしますが、、、それはそれw)

 歴史研究会の危機についてもカットして概要だけにしましたがこっちはもしかしたら閑話で出すかもしれません。

 前回の聖女様の話もそうですが第五章からファンタジー系な要素も増えます。でも知識チートも頑張りますのでよろしくお願いします。

 貴族学院は国中の貴族の子供達が8歳になる年の夏の終わりから15歳になる年の夏まで過ごす貴族の為の学校で、様々な事を学び各領地の経営や騎士団、国の役職などのエリートを育てる為の学校だよ。

 8歳~10歳までの3年間が一般教養を学ぶプラマーリアと呼ばれる小学校のようなもので11歳からは専門のコースに別れて学ぶプロプリームと呼ばれる高等な学問を教えてくれる。


 私の上のエバーハルトお兄さまは私と入れ替えで卒業なので残念ながら一緒に通えないんだよね。エバーハルトお兄さまは私よりずっと年上だけどこれまでも接点が結構少なかったから一緒に学校に通いたかったけど残念だね。


 学校には領地毎のサロンがあってサロンの主人(マスター)として今年からユリアーナ先生が復帰(前もやってた事がある)するのだという。サロンだけでなく地理の講師も担当するそうだ。今年は既に私の側使えに決まっているリナとクラーラ、マティーカも含めて18人が入学する予定だよ。


 私達はこの後、スコーラの近くのうちの館を下見に行き、お父さまは国王様へシルバタリアのフリッツ伯父様と色々と最近のルントシュテット領の状況を説明に行くのだそうだ。


 ルントシュテット家は随分と前の国王様の際に活躍した弟が分家した際に名前を貰った公爵家だけど現存する他の公爵家や侯爵家よりも古い家柄に当たる。まあ古参というやつだね。つまりそれだけ国王様とは血縁は遠いはずなのにラスティーネ叔母様やマクシミリアン叔父様のおかげで今は国王様や中央の官僚との意思疎通はきちんと出来ているらしい。


 国王様と色々と面識の多い、ラスティーネ叔母様とマクシミリアン叔父様、ユリアーナ先生も一緒に行く。


 私はお父さまと国王様について打ち合わせをしてどうやって国王様のメンツを立てるかの私の意見をお話した。お父さまに色々な意味で呆れられながらもそれで行こうと快諾を貰ったよ。


簡単に言うと

・グレースフェール全体を考えた、農業改革。

・炭素を数パーセント入れた鋼鉄の製法と焼き入れ焼きなましの鍛冶技術の国王様への裏取引販売。

・初の鉄道を国王様の資金で作る。

・マカダム舗装を国王様の資金でシルバタリアとルントシュテットまで中央経由で結ぶ。


 大きく言うとこの4点という感じ。


 どんな話し合いになるかは私では判らないけど、お父さまと叔父様や叔母様に任せておけばいいよね。マクシミリアン叔父様、ブランデーを手土産に頑張ってチェスで国王様に負けて下さいねw。


 私には中央の街レグリアの方が興味津々だよ。



 私達は数台の蒸気自動車で中央へ向って出発したその日のお昼過ぎには中央の館に着いた。意外と近いね。お父さま達はそのまま明日の国王様とのお話の為にお城へ向かい、私は側使え達と中央の街レグリアの見学に行く。


 お母さまのデパートやパン屋さん、お菓子屋さん、レストランとルントシュテット領から出店したお店があちこちにある。あそこは古い宿を改装した『ブルーベントス』というイタリアンのお店だ。いい雰囲気だし料理長が私の知っている人だから今度食べに行こうっとw。


 でもなんか他は思ってたよりも栄えてはいなかったよ。うーんちょっと残念。

 正直ルントシュテット領のブランジェルの方がよほど活気に満ち溢れている。

 でもお母さまの店とかは結構大きくて見て回るのが楽しみだ。


 館では電気工事がまだだったので近場の私のお家用の水車の脇に新しいベアリング付の軽やかな水車を設置して発電機を何台か動かして電気を供給する工事を行う。水洗トイレは既に設置済だよ。

 寝具は勿論最優先で用意済みだw。


 スコーラの寮に荷物を運び込む。意外と綺麗な部屋で他の部屋と比べると私の部屋は少し広かったよ。側使えや護衛が部屋にいる事も多いからだそうだ。

 エミリーとルイーサが久しぶりに私を訪ねて来て、今日だけ手伝いに来ているマルテとノーラ、そして私が可愛い服とリップを使っているのを見ると驚いていた。大丈夫だよ、エミリーとルイーサの分もあるからね。

 

 とうとう私も貴族学院かぁ。


 わくわくとしながら私はルントシュテットの館でお休みした。



 日本では中学入学から授業でも英語が始まったけど、なんとなく夢の中の言葉と近くて、文型の『S(主語)、V(動詞)、O(目的語)、C(補語)』の4要素からなる語順のルールが同じだったから単語さえ覚えれば慣れて簡単そうで助かったよ。日本語みたいに順が全く違う言語だけだったら大変だと思う。

 数学なんかの他の教科もすごく簡単な事ばっかりなので授業のような勉強が嫌いな私としては本当に助かるよw。

 数学では平面図形や空間図形が始まったけど、機械設計の設計図を小学生の頃から描いてるからね。

 等角、斜角の投影法の全体図だけでなく部品の展開図もやってるから正確に3次元図形を理解しないと無理だし、容積も最悪概算でも求められないと作れないんだよね。でもこうやって徐々に学校でも勉強していくんだね。


 中間考査で私は学年トップになった。母から美鈴先生にボーナスが出たらしい。美鈴先生がめっちゃ喜んでたよ。流石に私の兄も清廉中学で学年トップになった事はないからね。

 私はご褒美に3Dプリンタを買って貰ったよ。


 先日、美鈴先生と出した書籍の印税が意外と多く入って来たので、私は家族や普段お世話になっている先生達に何かプレゼントを買おうかと思っている。いや、あんなジャンルを読む人がそんなにいるっていうのはちょっと驚きだったよ。


 美麗お嬢様は学年3位でやっぱり成績も良かったよ。

 絡まれはしなかったけど、お嬢様には借りもあるしまた何か商売の事は相談させて貰おうかと思う。


 部活は花音ちゃんと梨乃ちゃんと一緒に歴史研究会へ入部したよ。

 3年の葛城部長によると私達が入部しなければ廃部になっていた程で、まあ色々とあって歴史研究会の部員は6人になって継続する事になった。

 活動は梅雨明けの暑い時期に遺跡発掘の手伝いに行って来たけど、遺跡発掘に携わる人達はみんな親切だったよ。葛城部長は遺跡発掘とかが好きみたいだけど他の歴史に興味がないわけじゃない。

 夏休みの間にどこに行きたいかとその理由を今度までに考えて来て欲しいと宿題を出されたよ。

 という事はですよ、私の要望も聞いて貰えるかもしれないよね。わーい色々と考えよう。

 楽しみ~w。

 


 貴族学院入学式当日の朝、側使えのエミリーとリナ、マティーカ、護衛騎士のルイーサとクラーラも私の家まで来て一緒にオットーさんの運転でワゴン車みたいな蒸気自動車で学院まで登校する。


 凄く安全運転だったけどあっという間に門の前まで着いた。他の貴族や領地の領主の子供達の馬車は貴族用の結構綺麗な馬車だけど、私達の蒸気自動車も貴族用にとても綺麗に装飾されていた為、かなり目立っていたようで、門の所の槍を持った門番さんも驚いてこっちを見ていた。ちょっとだけ渋滞してた。


 オットーさんがドアを開けてくれてみんな降りる。オットーさんありがとう。


「それでは週末になりましたらまたお迎えにあがります」

「はい、その時はお願いしますね」

「畏まりました」


 皆で門番さんに初めて挨拶する。


「「おはようございます」」

「おはようございます。ルントシュテットの新入生の方ですね。真っすぐに進むと右側にルントシュテットの色の印があるサロンがあります。入学式までそちらへお願いします」

「ありがとうございます」

「いえ。恐縮です」


 私達はお揃いのルントシュテット領の色、濃い緑のスカーフをしているから簡単に判る。新入生って判るって事は私達みんな小さいし今日は入学式だからだけど門番さんはこの沢山の学生の顔とかも覚えるのかな。結構大変そう。


 入口の上に濃い緑枠のルントシュテットと看板のあるサロンへ着いた。


 おおー、広いね。100人以上は入れそうだよ。ソファーとテーブルがあちこちに置かれていて何十人もの学生がいてお茶を飲んだりお話したりしていた。結構広めのテーブルにユリアーナ先生がいて沢山の生徒が集まっている。

 ユリアーナ先生が私に気が付いたようだ。立ち上がって手招きをする。


「ソフィア様。こちらです!」


 私は側使え達とユリアーナ先生の席へ向かった。

 なんか、、、。みんなの視線が、、、。

 ウルリヒお兄さまがいた。上級生だから昨日は寮に泊まったんだね。


「ソフィア」

「お兄さま。おはようございます」

「おはよう」

「ソフィア様。おはようございます。ご入学おめでとうございます」

「ユリアーナ先生。ありがとうございます」


「皆さん、こちらがソフィア様です」


 ザッ!

 わっ、お兄さまとユリアーナ先生以外の近くにいた方々全員に(ひざまづ)かれたよ。

 わたしはノーラに言われていた通り皆さんに笑顔で答えた。


「皆さま、ルントシュテットのソフィアです。貴族学院ではわたしが判らない事ばかりなので教えてくださいませ」


「「はっ!」」

 

 なんかみんな元気だね。


「本日は入学式の為時間もありませんから、皆さんはおいおいサロンでソフィア様にご挨拶をお願いします。では、新入生の方。こちらへ集まってください」



 新入生が続々と集まって来た。

 全員簡単に名前だけ自己紹介して貰ったけど一気に覚えるのはちょっと無理かなw。後でエミリーかリナに聞けばいいよね。

 家名に領内の幾つもの街の名前が出て来たからそこの子供なんだね。とか言ってもこっちでは私は同じ年だから一緒だったよ。


「今日はこれから講堂で入学式がありますからこの後移動します。入学式の後、新入生はこちらのサロンで上級生の方々に学院について色々とお話を伺ってください。ソフィア様とウルリヒ様は王族のカーティス王子様主催のお茶会がありますので王族のサロンの方へお願いします」


 王族っ! 


「ソフィア様。カーティス王子とリーゼロッテ王女にはくれぐれも失礼のないようにお願いします」

「わ、判りました」

「ソフィア。カーティス王子は話の判る方だからそんなに緊張しなくても大丈夫だよ」

「ウルリヒお兄さま。判りました」

「リーゼロッテ王女はわたしもお会いした事がない。今年入学のソフィアと同じ学年だ」

「そうなのですね」


「ところでソフィア。今日からソフィア付の料理人がこの寮の食事を作るのだろう?」

「お兄さま。そうですけど、以前もわたくしのメニューはあったと思いますけど、、、」

「種類が少なかったのだ。これで色々と沢山食べれるな」

「そ、そうですね」


 ラスティーネ叔母様が言ってたけど、そう言えば少しウルリヒお兄さまの頬がふくよかになって来た気がする。食いしん坊さんだけど騎士科なのであまり太らないでもらいたいよねw。

 

 私達はユリアーナ先生と共に講堂へ向かった。


 同学年の側使えと護衛騎士以外は講堂の入口までで他の授業があればそちらが優先だ。

 結構な人数が集まって来たよ。子供ばかりなので結構ざわざわしてる。100人は超えてるね。


 教頭先生のゲルゾーン・フォン・ブライヒレーダー先生からみんなに聞こえるように入学式が始まる事が告げられ静かになると校長先生が紹介された。教頭先生はスカーフの色がラグレシアの物だ。校長先生はマンフレート・フォン・アルデンヌ先生で中央の方のようだ。


 校長先生が登壇して入学式が始まった。

 

「皆さん、貴族学院へ入学おめでとう。これから皆さんは、、、」


 なんか偉い人のお話はどこも同じようで長くて本当に眠くなっちゃうけど本当にうとうとしたら怒られちゃうよね。

 前に講師として並んでるユリアーナ先生が眉を寄せて心配そうに私を見てる。やばいやばいw。頑張ってなんとか目だけは開けておこう。コクリコクリw。


 校長先生の長いお話が終わり、ユリアーナ先生を含めた新入生担当の講師が紹介されそれぞれ簡単に抱負のような事を話していた。各先生も出身領地の色のスカーフをしてるから各領地から先生も来てるんだね。学年主任だという貴族学の先生が時間割があるのでそれを確認して明日から遅れないようにと注意され簡単に入学式が終わった。

 

 ルントシュテット領の他の生徒達はサロンへ戻り、私とウルリヒお兄さまは側使え達と王族のサロンへ向かった。流石に私はちょっと気が重い。なんか正式な場所とか得意じゃないんだよね。エミリー達も合流した。


 王族のサロンは豪華なテーブルが一つなのにめっちゃ広かったよ。奥に二人いるのが王族の人だと思う。左側の一番奥の方の席が私達の席らしい。手前にはシルバタリアのマンフレート様、アリッサ様、ルーカス様とアンネマリー様もいたよ。私は小さく腰の辺りで手を振るとアリッサ様とアンネマリー様も小さく振り返してくれたよ。奥の席にウルリヒお兄さまが、その隣に私が座った。


 と、いう事はこれは王族主催の各地の領主の子供達が呼ばれているんだね。公のものは王室主催、王族が催すものは王族主催になる。

 桃色のスカーフの生徒が最後に入って来た。あれは確かピシュナイゼルの色だ。

 

「まあ、王族主催だと言うのにピシュナイゼルの方々は随分と悠長な事ですね」


 奥に座った小さな王女様が大きな声で嫌味を言う。

 はぁ、面倒くさそう。


「リーゼロッテ。そんなに待ってはいないよ」


 多分、今フォローしてくれたのがカーティス王子様だね。

 ウルリヒお兄さまも、話の判る方と言ってたから間違えないと思う。


「まあ、カーティス王子は口を挟まないで下さいませ。わたくしはピシュナイゼルの方々にお話してますのよ」

「す、すまない、、、」


「リーゼロッテ王女様。遅れました事お許し下さい。我がピシュナイゼルの新入生が先生に呼ばれていたのです」

「次からは気をつける事ね」

「はっ、以後気を付けます」


 いやいやいや、それ生徒のせいじゃないんだから気をつけられないよね。

 私が口に出して突っ込もうとするのを察したのかウルリヒお兄さまが私を見て王族の席から見えないように口に指を当てた。

 これは正直、先が思いやられるけどそうですね。出来るだけ王族には関わらないように気を付けよう。


 タイミングよくケーキスタンドが運ばれて来た。

 私の作ったやつだね。とても小さなケーキが沢山並べられスタンドは5つ出された。各出席者に紅茶が用意される。


 私がケーキを取ろうと側使えに話そうとするとお兄さまに

『ソフィア。王族の後だ』

 と、小さな声で怒られた。そんな順番があるんだね。


 うー、面倒くさいけどこれが貴族社会だ。一応これでももう貴族の作法的なものはノーラから叩きこまれているからね。でも早く帰ってお昼寝でもしたい〜!


 王女様が側使えにケーキを取らせ、王子様も指を指して側仕えが取る。

 ウルリヒお兄さまがこっちを見てニコリとした。


 ふふーん私の番だね。

 私はモンブランの小さいのを取ってもらった。これは生クリームを敷いてあるし栗も今の時期が一番美味しいんだよ。これこれ。でも手に持って齧ったりしたらお兄さまに突っ込まれる事請け合いだw。


 私の次に公爵家、侯爵家と続き、辺境伯家、伯爵家と各領地の人達にお茶とケーキが揃った。

 ピシュナイゼルは伯爵家だったと思うけど中でも最後だったよ。


 

「では、わたしから紹介しよう。新入生がいるからまず自己紹介からだね。わたしはこの国グレースフェールのカーティス王子です。新入生の皆さんよろしくね。そしてこちらが今年入学のリーゼロッテ王女です」


「グレースフェールの王女、リーゼロッテよ。ここにいるカーティス王子とは違いわたくしは第一王妃ゲートルード王妃の娘よ。そこの所よく覚えておく事ね」


 ああ、性格の良さそうなカーティス王子は第二王妃の息子でこっちの面倒な方が第一王妃の娘なんだね。それでさっきカーティス王子に強く言ってたのか。

 言われたカーティス王子は苦笑いをしている。王家も面倒くさそうだね。


「では、リーゼロッテ王女に順番に自己紹介して下さい。ルントシュテットから」


 ウルリヒお兄さまが立ち上がる。


「リーゼロッテ王女様。ルントシュテットのウルリヒでございます。以後お見知りおきを」

「貴方がウルリヒね。騎士コースで活躍していると聞いているわ。グレースフェールの為に頑張って頂戴」

「はっ」


 何様だって。いや王女様か。

 私の番だ。面倒だけどしょうがない。


「ルントシュテットのソフィアでございます。わたくしも今年入学致しました。よろしくお願いします」

「えっ、貴方がソフィアなの? 豊穣の女神様なんて大層な話を聞くけどどうせマクシミリアンが全部やっているのでしょ」

「リーゼロッテ王女様。今日のこのケーキもこのケーキスタンドもソフィアが作ったものです」


 ウルリヒお兄さま、面倒だからいいって!


「まあ、ソフィアさん。これは本当に貴方が作ったものなのかしら?」


 答えてやる必要を感じない。というかお父さまとの取り決めで今はまだ答えてはいけないはずだ。


「さあ、どうでしょうか?」

「ソフィアっ!」


「ま、まあ~!! あ、あなた、、、」

「つ、次を、、、」


 カーティス王子様が慌てて話を進める。

 しまった。ユリアーナ先生に言われてたけどこれは面倒王女様を怒らせちゃったかも。


「イエルフェスタのアルノーでございます。リーゼロッテ王女様。以後お見知りおきを」

「同じくイエルフェスタのアウグストです。リーゼロッテ王女様」

「二人とも話は聞いてるわ。よろしく」

「リーゼロッテ王女様。イエルフェスタのエミリアです。よろしくお願いします」

「まあ、貴方が聖女エミリアね。是非中央でも力を発揮してもらいたいものだわ」

「えーと、そ、それは、、、」

「後でお話しましょう」

「は、はい」


 イエルフェスタって確か以前襲われた厄介な領地だったよね。でも聖女様なんていうのもいるんだね。まあ私みたいなのも女神とか言われてるくらいだから一緒かな。


 ・・・


 各領地の自己紹介がやっと終わったよ。

 私はケーキを食べてお茶を飲んだ。美味しい~。


「ソ、ソッ」

「ソフィアさん。貴方や貴方の側使え、護衛まで皆お髪が思ったよりも綺麗ですし口元も何かしてらっしゃるのかしら?」


 あー、シャンプーとリンス、それにリップの事だね。

 今イエルフェスタのエミリアさんが誰かに何か話したそうにしてたけど、、、。


「本当だね。ルントシュテットのソフィア嬢の口元はとても可愛らしいね」


 いや、カーティス王子様。そんなに褒めなくてもいいですよw。

 私はイエルフェスタのエミリアさんが何か話すのを待ったけど、そのまま俯いてしまったよ。


「はい、中央でもわたくしのお母さまのデパート『ルノール2号店』でシャンプーとリンスが販売されていると思います。この唇に塗っているものはリップクリームと言って乾燥による荒れや渇きを抑えるものです。秋口になりましてこれから乾燥の季節ですから必要かと思いまして」

「シャンプーとリンスは同じものを使っているはずです。本当に同じものなの? 何か隠しているのではありませんか? そ、それにそのリップクリームというものは未だ王室に献上されていませんよ!」


 うん? 使い方が正確に伝わってないのかな。髪が長いとクシャクシャやっちゃうと逆に痛んだりするからね。おお、これはいい情報かも。もっと使い方を正確に伝えないとだよ。


 でもリップの方は作ったもの全てを献上しなければならない訳じゃないよね。言いがかりだよ。でもこれまだ中央じゃ売ってないんだよね。


「リーゼロッテ王女様。シャンプーとリンスは髪の洗い方がございますが、手順や方法が正確に伝わっていないようです。王女様の側使えの方に私の側使えからお伝えしておきますね。またこちらのリップクリームはまだ中央で販売しておりませんので品物がございません」

「まあ、独り占めしようという事かしら? 何とかしなさい!」

「いえ、あのシルバタリアからまだ次の素材が届いていないのです」

「何をつかっていらっしゃるのかしら? シルバタリアのマンフレートさん」

「王女様。申し訳ございません。存じ上げません」

「ソフィアさん」


 私は口元に手で×を作って


「いや、製品の秘密なので素材は内緒ですよ」

「ま、まー!」

「リーゼロッテ! 商売であればそれは普通の話だよ」


 カーティス王子がヤキモキしてるね。きっといい人だなこの人。ちょっと可哀想になって来たよ。


「わかりました。王女様。リップクリームはなんとかしてみますね」

「よ、良ろしいのかソフィア嬢」

「はい」

「早くお持ちなさい!」


 あー本当に面倒な王女様だよ。カーティス王子も大変だねw。

 私はリナに直ぐに運んでもらえるようにルントシュテットまで連絡するように、エミリーには王女様の側使えに髪の正しい洗い方を伝えて貰えるようにお願いした。


 その後、各領地の方々はルントシュテットの私達に質問したがっていたようだけど、王女様が悪い見本を見せてくれたばかりなのでかなり遠慮しているようだった。

 各領地の側使え達が慌ただしく耳打ちしていたのがかなり目立ったよ。


 そんなこんなでウルリヒお兄さまは私の隣で正面を向いて脂汗を流しているけど、ようやく面倒王女様相手のお茶会が終わり王族が退席して私達も解散した。



 上位の貴族が他の貴族の前で下位の貴族に嫌味を言う事はある。しかしこれは正論でなければ聞いている他の貴族にも信頼を失ってしまうため、何か失態に嫌味を言うのはあるけど、今日の王女様のような事は普通はあり得ない。


 そう言えば日本のお兄さまの漫画を借りて読んだけど、たまたま読んだ漫画のように人前で感情をあらわにしてけなす事が貴族の当たり前なんてことはここでは全くない。というか貴族としてダメな例になってしまう。


 どんなに驚いても奇声を上げたり感情を露わにしたりする事のないように人前に出ても大丈夫なように教育されているからね。領民に対しても悪い事をやってる貴族でも必ず影でやっていてそのような悪い噂がたたないようにしている。(まあ、貴族社会などと言ってもこれがここの現実なんだけどね)


 だから今日の王女様のように他の貴族の前で感情的に話すのは貴族としてダメな例で、このままだと同じ時期の私達が大人になってもリーゼロッテ王女様に貴族の信頼が集まる事はない。逆に諫めようと努力しているカーティス王子様の株が上がるよね。

 勿論今日は王族なので誰も否定もしなかったけど誰も支持していないと思う。私と同じように面倒な王女様だという印象しかなかったと思う。


 でも、、、

 ムフフフ。王女様のお話では美容室が必要だよね。お金の匂いが、、、イヤイヤイヤ発展でしたw。


 こっちにも床屋さんはあるんだけど、日本のと違っていて、歯の治療や怪我の治療も行っているんだよね。私はこれまでお城の側使えにやって貰ってたけど、話を聞くと髪を切っても頭を洗ったりはしないそうだ。

 きちんと温かいタオルやお湯を使ってシャワーノズルで髪のキューティクルを傷つけないように洗ってリンスで優しくトリートメントしたらそれはもう良いものですよ。

 パーマネント薬は原料的にこっちではまだ作れないから無理だけど、正しい髪の洗い方が広まっていないなら販売時に宣伝すればお客さん来るよね。

 よし、更なる発展の為に設備と人員の教育だっ!


 などと考えながら私達はルントシュテットのサロンへ戻ろうと歩いていると騎士達が溢れていた。


「ユ、ユリアーナ先生。どうしたんですか?」

「ソ、ソフィア様。大変です。国王様がご昏倒されて、ヴァルター様達が全員王城で軟禁されました。ウルリヒ様とソフィア様をお連れに騎士達が、、、」


「えー!!」


>どんなに驚いても奇声を上げたり感情を露わにしたりする事のないように

 私ダメだったよ。org


 次回:お城にドナドナされるソフィアとウルリヒ。

 その前に時間が取れれば貴族学院や中学の登場人物のイラスト回かも。無理っぽいかも。

 お楽しみに♪

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