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ドゥープレックス ビータ ~異世界と日本の二重生活~  作者: ルーニック
第四章 夢のファッション
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ピアノとドレスの袖

 お兄さま達とエミリー、ルイーサが中央へ戻った。貴族学院があるからね。

 私も来年は通うから頑張んないと。


 午前中はいつものようにバーミリオン部隊で練習してお昼の後アメリアと遊ぶ。


 マティーカは簡単な計算が得意だっただけなんだけど今はもうすぐ微積分で随分と難しい事もやってる。現実世界をきちんと計算するには必須だからね。

 私みたいに元々勉強が嫌いなのとは違ってやっぱり好きだっていうだけでこんなに一生懸命に勉強する事が出来るんだね。なんか見てて少し羨ましく思う。結果ではなくてこの差は大きい。美鈴先生が歴女のオタクならマティーカは数学男子のオタクだね。もう素数や円周率で遊ぼうか。


 残った側仕え見習いと騎士見習いはみんなこっちの私と同じ年なのでアメリアと一緒に遊ぶ時間を増やして楽しく過ごす時間を取るようにした。


 木工職人の手が空いたので紙で作っていたゲームを木できちんと作ってもらう。販売しても良いかとしつこく聞いてくるのでアメリアとお母さまに確認してくださいと言うとシュンとしてしまった。

 コマ、竹馬、ヨーヨーと私達の人数分作ってもらい職人のマーティンは余裕がありそうなので立体でチェスを掘ってもらう事にした。リバーシではもう勝てないので後でチェスでお父さまとも対戦してみよう。

挿絵(By みてみん)

 

 ようやくアロマを手掛ける時間が出来た。随分と前から収集がはかどったタブ粉に水蒸気蒸留法で抽出した精油を少しずつ入れて粘土のようにこねる。足りなければ水を足す。

 今の所ラベンダー、カモミール、タマネギ、ローズマリーだけど、精製した除虫菊もあるよ。


 取り敢えずアロマ系は線香の形にするために平たく伸ばして薄くする。

 この状態で定規をあててナイフで切れば細いお線香が沢山出来る。簡単だね。

 触ると折れちゃうから注意して良く乾燥させればアロマのお香の出来上がりだよ。


 精油もタブ粉も結構あったからみんなにも手伝ってもらい沢山作った。


 除虫菊のノミ除けは結構長くして長時間燃えるように一旦長くしたものを渦巻状にする。

 ああ、うまくやらないと折れちゃうねコレ。量産するにはおそらく渦巻状の型抜きを作って貰って作るのがいいかも。確か本物は二つ重なってたかも。


 かなり細いお香は夕方には乾いて、試しに使ってみた。

 火事にならないように容器に注意が必要で、灰が落ちる事を考えれば日本でも見た斜めに穴が開いてるのがいいかも。今はお皿の上で重石で斜めにして抑えた状態で火を着けた。


 うん、ラベンダーの香りだ。


 ラベンダーは副交感神経を刺激して、体と心の緊張を和らげ、リラックスした状態を作り出してくれる。ストレスが溜まってたり精神的に鬱だったりした時には、自律神経と心を安定させ、穏やかな状態にしてくれるとても快眠に適した香りだ。頭痛、生理痛、筋肉痛、神経痛、腹痛などの痛みを和らげてくれる効果がある。睡眠時に最適だね。

 タマネギの香りに含まれる硫化アリルという物質にも、気持ちを落ち着かせて眠りを誘う効果があるよ。


 絶対に売り出そう。私が一杯買うよ。


 しばらく香りを嗅いでいるとみんな気持ちよさそうにリラックスしていた。私なんか本当に寝ちゃいそうだったよw。


 お香のアロマは精油と共にお母さまのデパートで売ってもらう予定でようやく試作品が出来た所だけど簡単だから商業ギルドの職人が直ぐに対応してくれると思う。

 除虫菊も効果のほどは試さないと判らないけど蚊取り線香が一応出来たので、こっちは試してからジャンル的にマクシミリアン叔父様に売って貰った方がいいかもだよね。


 はぁ。今日はぐっすりと眠れそうだよ。



 久美子先生に後押しされて私は先生と先生の知り合いに習っている人達と合同の発表会に出る事になった。母はとても喜んでいた。私が渋々だけど合意したのは母がドレスを見に行きましょうと誘ってきたからだ。

 そっちは今興味があるんだよね。母と久美子先生は意気投合してしまい一緒に有名店へ出かけた。


 色んなドレスがあるけど日本の子供がドレスを着るなんていう機会はそうないと思う。おそらく一番多いのはこんなピアノの発表会位なんじゃないかな。そのチャンスは流石に逃せない。

 色んなドレスが売ってたよ。展示するマネキンもドレスだと上半身だけのもので頭がないものが多くドレスがより引き立つね。でもやっぱりレースや大きなリボンのついたものが多くて結構可愛い。

 私はスクエアネックのピンクで大きなリボンのが可愛いなと思っていたら、久美子先生が


「ピアノの発表会だと弾くのに邪魔にならずに手を綺麗に見せるためにノースリーブが多いのよ」


 と、発表会用のドレスを教えてくれた。


 落ち着いた感じの赤と黒で実際の裾は真っすぐなんだけどガラが斜めにデザインされたドレスとさっき見たピンクのスクエアネックのドレスを買って貰った。これもカッコイイね。


 久美子先生も母も凄く楽しそうでこっちも楽しくなったよ。でも練習曲以外はまだ3曲しか弾けないから頑張って練習しないとね。


 それにしても先日、兄の持ってたマンガで見て凄くびっくりしたけどあれみたいな露出過剰な服は、日本にも向こうにも全く見当たらなかったよ。男の人が考えるのは本当に意味不明だね。

 それでも凄く昔には地球でも裸にスケスケの布のドレスもあったっていうから判らないものだけどそんな変な時代じゃなくて本当に良かったよ。そんな世界なら私死んでもいいからマジ籠って寝てたね。いや私が一番露出を増やそうとしてるのかもだよ。



 美味しい朝食が終わるとお母さまが

「シルバタリアへ出かけた時にヘルムートが曲をソフィアに教わったと聞いたのですけど、ソフィアは楽器が演奏出来るのかしら?」


 いやいやいや、こっちの楽器は触った事ないしヘルムートのようにビオリーニナを弾くとか絶対に無理だよね。そんな事よりもドレスのデザインを、、、。


「あれは鼻歌ですよお母さま。わたくしビオリーニナしか見た事もございません」

「そうなのね。貴族学院へ行けば習う事になるのだけれど家ではシピオーネを弾くのよ。これから見に行きましょう」

「はい」


 おお、このお城にも楽器が置いてあるんだね。


 私の側仕え達7人とお母さま達9人とで奥の行った事がない部屋へ向かった。いやウルリヒお兄さまとの探険が足りなかったね。まだ沢山行った事がない所があるよ。


「こちらです」


 オットーさんが開く扉の前でお母さまが私に入るように促した。

 結構な人数が入れる小さなホールで少し上がった舞台にはピアノがあった。


「これがシピオーネです」


 私は急いで鍵盤の方へ見に行く。

 わぉ。久美子先生が言ってた通り本当に同じ鍵盤の配列だよ。マジで同じとか先生に習っている音の理論は本気で宇宙でも通じる話だったよ。いやごめん。先生の話を信じてなかった訳じゃないんだよ。


「お母さまも何か曲を弾かれるのですか?」

「ええ、少しは弾けますよ。これから貴族学院へ行くまではわたくしがソフィアにシピオーネを教えようかと思ったのです」

「お母さま、このシピオーネでしたらわたくし少し弾けるかもしれません」

「えっ! ソフィアは見た事がないのでしょ?」

「はい、でも少しですよ」


「まあ、まあまあ。それは凄いわ。何かわたくしに聞かせて貰えないかしら」

「はい」


 私はシピオーネの前に行く。

 椅子に座り足元を見るとペダルもあるね。やばいちょっと高さがギリギリだよ。ダンパーペダルと消音ペダルの二つだった。構造までほぼ同じなのかな。この類似性はとても興味があるね。

 音階は同じだと思うけど少し触ってみる。

 うん、同じだよ久美子先生! 先生のお話の通りだよ。


 鍵盤のサイズは気にならないくらいに同じ大きさだったよ。手元を見てれば大丈夫。いや、これこっちの私が小さいんだ。

 おそらく楽譜は違うんだろうな。


 私は練習しているノクターンを弾き出した。クラッシックでもロマン派の曲は切なさがたまらなくて私も好きだ。


 間違わないで弾けたよ。短い曲なので直ぐに弾き終わった。


「ソフィア、凄いわ。他の曲も聞かせて頂戴」


 ありゃ、これどうしよう。まあいいか。

 私はちょっと運指の速いワルツを弾き出す。

 お母さまと私の側使え達もうっとりと聞き入っていたようだ。私もこの曲好き。

 お母さまはしばらく私の指を見ていた。


 なんかこれこっちで先に発表会をやってしまった感じだったよ。

 いや、もうそろそろ勘弁して欲しい。


「ソフィアにはわたくしのレッスンは必要なさそうですね。わたくしが教えて頂きたいくらいだわ」


 まずい、お母さまがちょっと寂しそうだ。またやっちゃったかな。


「お母さま、このようにシピオーネを弾いていると袖が膨らんでいると弾きづらいですよね。そこでわたくし袖のないドレスも良いかなと思っています。お母さまのお部屋で続きをお話ししませんか?」

「判りました。まいりましょう」


 ホッ。お母さまはやっぱりドレスのデザインには敏感だから食いついて来たよ。

 リナとお話するとリナはシビールスという横笛が少し吹けるそうだ。今度一緒にやろうね。


 私はお母さまに肩からレースのロングスリーブ、袋になっていないベルスリーブとパゴタスリーブ、パフスリーブと提案して行き、キャプスリーブやノースリーブ、キャミソールと紹介していった。


「つまりこのノースリーブだとシピオーネを弾くのにも邪魔にならないのです」

「腕を出し過ぎじゃないかしら?」

「二の腕は隠すよりもあえて潔く出した方がすっきり見えることもあるのですよ。お母さまのような細い腕でしたら誰もが憧れると思います」

「まあ、ソフィアはシピオーネだけでなくてお世辞までうまくなっていたのね」

「いえいえ、お世辞ではありませんよ。お母さまの腕がより美しく見える袖も試してくださいませ」

「そうね。貴方にはいつも驚かされるけど、ここまで沢山の袖の種類を考えているとは凄く楽しみだわ。これは誰にも真似出来ませんね。貴方はわたくしの誇りだわ。ソフィア」

「いえ、それはわたくしを褒め過ぎですよ。わたくしはお母さまの娘なのですから当然です。わたくしお母さまのお店が始まったらすぐに見に行きますからこういったものを作る方をお願いしますね」

「任せて頂戴ソフィア。わたくしにはそれくらいしか出来ないけど一緒にグレースフェールを発展させていきましょう」

 

 ありゃま、いつの間にかルントシュテット領じゃなくて国の発展になっちゃってるよ。


「はい。お母さま」


 私は袖のデザインと子供用のドレス(これ日本で見て気に入ったやつだけど)のデザイン画をお母さまに渡して部屋を後にした。



 料理学校の方は続々と料理人を育てていて、私は今年もフェルティリトのメンバーに選ばれている。マクシミリアン叔父様がフェルティリト協会の会長だ。今は中央とシルバタリアにもあるので向こうの担当者もいるけど、シルバタリアはあの執事さんもフェルティリトの担当者の一人らしい。

 今度マクシミリアン叔父様が各お店の紹介の冊子を作るそうだ。一応忖度して貴族のお店には最低でも星が1つ与えられているw。つまり貴族のお店なら星2つ以上が美味しいお店だねw。


 このお城の今晩の夕食は特別にフレンチだよ。料理学校のフレンチのコースで二人卒業の為に『私の試験が受けたい』という事だったのでルントシュテット家の晩餐を試験として正式にお願いした。

 卒業試験では二人以上のメンバーに味を認められないと独り立ち出来ないルールにしているからね。


 以前、簡易に教えたものではなく今晩は授業でやって貰った完全なフルコースのディナーでアミューズから始まり、オードブル、スープ、ポワソン、ソルベ、アントレにサラダやチーズも挟みアントルメやフルーツの後カフェ・ブティフールまでを楽しむものだよ。


 頑張ってたの知ってたから完成度が楽しみだよ。


 食事が始まる。以前は大叔父様や叔父様とお話することが多かったけど、お父さまとお母さまが最近私に沢山話しかけるようになった。きっと周りから見たら私は変な娘だと思うけど大切にされてる感がして少し温かい気持ちになって来るよ。

 

 こっちの料理にもそれなりに美味しいものもある。チーズやガーリック、コショウなどを駆使しておいしくオーブンを使った料理なんかはこっちで食べても美味い。当たり前に少しの工夫で作れる料理は当たり前にこっちにも沢山存在するからね。


 でも地球で工夫に工夫を重ねたフレンチや和食はおいそれとは手が届かない程の料理人の工夫や極めた味がある。


 食事マナーもそれぞれにあるからね。

 カトラリーの出し方や水を置く位置も正しくグラスはキチンと右奥に置かれた。

 お父さまもお母さまにもとても気に入って貰えたようだ。うん、これは合格だね。

 二人共、こっちのアルキマギルという料理長の称号ではなく『シェフ』の称号を与えて卒業だ。

 彼らはブランジェルの街と中央へ行ってフレンチのお店が始まる予定だよ。頑張ってね。




「美麗お嬢様。九条夢美の剣道の強さは異常です。免許皆伝を得ているそうですが日本の選手権勝者が変装して対戦しましたが全く歯が立ちませんでした。そして素早さも現代科学では解明できない程のものでした」

「なによ、それ。そんなあり得ない報告をする為に貴方達はいるのかしら? 家庭教師がただの歴女だの無駄な話はいらないのよ。成績や能力の高さ理由が知りたいのよ。判るかしら?」

「は、はい」

「ならばすぐに行動しなさい」

「はっ」



 次回:今日時間が取れたら先にイラスト回の予定。

 お楽しみに。

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