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ドゥープレックス ビータ ~異世界と日本の二重生活~  作者: ルーニック
第三章 夢の軍備
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バーミリオン

具体的な火薬や爆発物の作り方の部分をカットしました。すみません。理由はご想像の通りです。

 美鈴先生に炸裂弾と手榴弾の作り方を教えて欲しいとお願いすると、待ってましたとばかりに詳しく教えてくれた。実際にまず導火線の作り方から教わった。そして爆竹を作る。

 勿論日本で実際に導火線も爆竹も作るよ。


 パン!


 おお、家の庭だけど驚く程大きな音だったよ。

 砂を被せたけど吹き飛んだからね。


 基本的にこれを大きくしたものが炸裂弾で日本でも火薬を自作した後に使われたそうだ。でも私のやっている方が火薬の質も高く殺傷力も上がっていて凄いのだそうだ。これも気をつけないとね。

 弓で届いてから爆発するように導火線を正確に作らなければならない。


 手榴弾の点火装置も同じように爆発の仕組みを確認する。これはやはり焼き物で作るのが正解だと思うと美鈴先生も言っていた。硬いプラスチックでもあればいいけどね。

 効果が高まる仕組みも色々と取り入れた設計を一緒に考えてくれた。これだと入れ物があれば作れるね。導火線をこっちでティッシュで作ったので向こうではゴワゴワのトイレの紙で作ればいいと思う。

 

 そう言えば明日からこっちはテストだったけど家庭教師の美鈴先生と一切学校の勉強をしていなかったよw。

 夕飯食べたら範囲だけでも確認しておこう。



 選抜された人達とお城の脇の広い演習場へ向かった。

 どんな人達なのかを確認する為だ。わたしの常識とはかけ離れた凄い人達だったよ。

 以前、日本の父にスタジアムに野球を見に連れて行ってもらった時のホームランよりずっと凄い放物線を描いて遥か遠くの人が待っている所まで届く。 こっちの単位で100くらいだと言うけど150m位だと思う。

 身体強化してるから本当に力もあるんだけど遠くの人が素手で受け取ってるのに殆ど動いてないんだよね。

 更に遠くに人型の人形を立て剛弓で引く矢の先に重石をつけた矢を放つ。

 選ばれた人達はみんな人形に矢を突き立てる事が出来る人達だった。


 ビッシェルドルフ様に遠投と矢を放ってから届くまでの時間をカウントしてもらう。


 凄い人材だね。兵士の人達も貴族の騎士団の人に負けないように凄く張り切っていてリバーサイズの人達の成績が一番良く、続いてお父さまの近衛兵の人が優秀だった。

 ビッシェルドルフ様の言う通りドミノスのお父さまとの魔術契約をしてもらい守秘義務に対応する。

 情報を記述したものはメモであっても新たな騎士団の隣の特殊部隊用の部屋以外の持ち出しは禁止。火薬もきっちりと管理する。


 特殊部隊用の部屋へ集まり、午前中は講義の時間だよ。シルバタリアへの侵略を地形的に考えて過去の日本の該当する戦術を詳しく説明する。私は美鈴先生の影響で歴史がかなり好きになっていた事が改めて判ったよ。わたしもオタクなのかもしれない。推しはいないけど。


 陣形も日本の方が多いので正確な名称と共に利点と欠点を説明する。


 みんな必死にメモを取り、数多くの質問を貰ったけど私は冷静に全部答えた。本当に教える方は勉強になるよ。どこが判らないのかもとても判りやすいし私とのズレも良く分かった。


 お昼にカレーライスを作ってもらい、沢さんと苦労した日本で栄養補助食品として売られているカロリーバーと同じ物を2本ずつ試食してもらった。チーズ味とドライフルーツ味のコンバットレーションだ。カレーは大好評だったよ。レーションはおやつっぽく食べてみんな美味しいって言ってたから大丈夫そうだね。チョコ味があってもいいかもしれない。

 感想をノーラにまとめてもらい後でクルトとカリーナにフィードバックする。


 午後からの授業は演習場を立ち入り禁止にしてもらい火薬の扱いについて説明する。

 担当者に用途、名前、使用量を申請して天秤で正確に取り出し、担当者に量を確認してもらう。毎日残量を測り騎士団長へ報告する。

 実際に演習や戦時にもリストで申請してもらう。


 利用する火薬の量を間違えると大変なので利用前に利用目的を述べて上司が目視で確認する。

 誰かがミスをしてもこれ以上間違えは起こさせないよ。

 私も指定の手続きを行って火薬を用意する。

 まず全員を集めて板の上で少量の火薬に火種で火を着けて見せた。


 ボゥッ。


「「「うぉっ」」」


 みんな驚いていたけど凄く燃えやすい事を理解して貰えたと思う。

 

 燃焼によって急激な膨張が起こり、密閉されていた場合にそれが爆発になると説明する。


 私は昨夜マルテと作った小さな指先程度の人形を地面にいくつか立てて置いて真ん中に作った爆竹を仕掛けて砂を少しかけて火種で導火線に火を着けた。


 シューッ。

 パァァァン!!


「「ひっ」」


 砂が弾け飛び周りの人形が倒れた。うわっ、こっちまで砂が飛んできたよ。


「これが爆発です。わたくしが火を着けた線を導火線と言います。この長さによって爆発するまでの時間が変わります。つまり導火線に火を着けて敵に投げ、敵の場所で爆発を起こしてこの人形のように倒す兵器が炸裂弾と手榴弾です。この爆竹よりもずっと威力があります」


 しばらく質問が続き、先日のビアンカの事故がこれと同じ爆発によるものである事を確実に理解して貰えたと思う。爆竹の竹はクイスフェルメンタムの事で、フシの付いた竹を焚火に入れて爆発音がするものから来ている事なども説明した。


「導火線の作り方をわたくしが実演しますので、隊員は私の前に集まってください『鶴翼の陣!』」

 

 ザザザッ。速っ。

 おお、両翼が伸びて来たよ。きちんと理解してる。自分がどう動くのか他も考えて行動出来てるね。


 こっちのトイレ用の紙で作る事にしたよ。美鈴先生に『利佳子博士にトイレットペーパーを柔らかくするには何を混ぜるか聞いてもいいですかね』と確認すると直ぐに「デンプン」って美鈴先生が言ってたから今度試したいけどこっちの紙はゴワゴワしてるんだよね。まあ後で絶対に柔らかくするけど。


 もう一度きっちりと手順通りに火薬をもらい、目の前で長めの導火線を作った。

 全員にやってもらう。


 私がお手本で火を着けてビッシェルドルフ様に燃焼時間を計って貰う。

 届く時間と同じだからこれくらいでいいね。


 導火線に火を着けて決められた時間での燃焼が確認出来るまでみんなに頑張ってもらう。みんな直ぐに出来たよ。わたしなんかよりずっと器用だね。さすが兵士や騎士団だよ。


 炸裂弾の大きさの筒につけて剛弓で飛ばして人形に刺さってから一秒以内に導火線が燃え切るという事を繰り返して貰い全員が正確に出来るようになった。


「では、一つ炸裂弾を作ります」


 ~ 内容をカットしました。すみません。 ~


 最も弓が正確で速かったリバーサイズのカーマインさんに試射してもらう。

 カーマインさんが剛弓を構え導火線に火を着けて直ぐに矢を放った。


 シューン!


 ダスッ。


 バァーン!!


「「おおっ」」


 おわっ。目で見た爆発より遅れて凄い音がした。距離が遠いんだね。案山子のような人形が吹き飛んだよ。あちゃー、これ結構やばいね。みんなじゃなくて私は爆発規模は知ってたけど驚いたよ。


 ビッシェルドルフ様、ヤスミーン様、カイゼルさん、ザルツさんと隊員のみんなが目を見開いてその衝撃を見ていた。

 弓を放ったカーマインさんまで脂汗を流しながら固まっていたよ。


 人形をみんなで見に行く。結構遠い。


 人形の麦藁の首と腕が飛んでいて服が弾けるように裂け身体の部分がえぐれていた。これ胸の所に命中してるんだ。カーマインさん凄っ! 周りの土もえぐれているから威力はそれなりにあるんだね。


 破壊された人形をみんな真剣な表情で見ていた。


「これが炸裂弾です。今日はここまでです。明日以降に他の方々の試射と手榴弾の焼き物が出来ますから手で投げる方はそれ以降に実施します。では今日はお疲れ様でした」


 ビシッ、ビシッ! 兵士達の足が揃う。胸に手を当てる敬礼だ。


「「ザウスッ!」」


 おお、なんか本物の軍隊っぽいね。いや本物だったよ。ありがとうございましたのルントシュテットの兵士達の省略のお礼なのだそうだ。いやなんかすごく体育会系だよ。


 私は大量に頂いた赤い絹を使ってみんなにお揃いのスカーフを作り、お父さまの許可を貰って番号とルントシュテットの紋章を刺繍して貰って作っておいたものを特殊部隊の隊員に隊員の証だと言って配った。大叔父様やカイゼルさん、ザルツさんが欲しがったけどこれは私と隊員の人達のだからダメですよ。

 赤というよりもこれは朱色だからこの部隊の呼称は『バーミリオン』にする事にした。


 ちなみに騎士団の人ではなくて隊長に任命したリバーサイズのカーマインさんの番号が1番だよ。社会的な地位じゃなくてここは実力主義だからね。

 騎士団の人も威張る訳ではなく必死に学ぼうとしている姿勢が見えるから大丈夫だと思うけどカーマインさんとの意思の疎通はしっかりと保持したいと思う。

 

 大叔父様は『これまではルールだけで管理が行き届いていなかった』と私に謝罪した。

 私ではなくビアンカやヤスミーン様に謝って欲しい。そして大叔父様も怪我をしたのだから反省はして貰えたと思う。


 私も二度とあんな事故はごめんだよ。


 お茶の時間の後、お父さまから演習場に来て欲しいと呼び出された。

 なんか大きな荷馬車が演習場に入ってる。

 ラスティーネ様とユリアーナ先生、マクシミリアン叔父様もいた。ギルド長と鍛冶師達も来ている。

 私のバーミリオン部隊が弓と投擲の練習を辞めないので退場して欲しいのだそうだけど、、、。


「ソフィア、蒸気自動車の試作車が出来たのだが試してみたいので兵士を外に出して貰えないか?」


 おお! 遂に出来たんだ。やったね。

 でも、そんなのいつまでも隠していても仕方ないよね。


「お父さま、どうせ直ぐに公開する事になるのです。立ち入りだけ制限すれば構わないと思いますよ」

「うむ、そうだな。ではパウル、頼む」

「畏まりました」


 シートが外されて荷馬車から何人もで押して結構大きな車が降ろされた。

 屋根はついてないオープンカーだよ。


 様々な改良が最初から組み込まれていて、石炭の粉末を自動的にダクトから送り込む仕組みなので蒸気機関車のような石炭を放り込む人はいらないんだよね。二酸化炭素の排出も少なくて自然にも優しいよ。

 ダクトに逆流しない仕組みもバッチリだし供給を辞めて空気を遮断すれば直ぐに消える。

 水の残量も判りやすくしてあるから燃費が判れば追加を積み込んでおけばいいだけだよ。


 クラウとフェリックスが火を入れ温まって来た。


「では、二人で試乗いたしますのでご覧になっていてください」

「わたくしにも乗せてくださいませ」

「ひ、姫様!」

「大丈夫です」

「判りました。それではクラウの隣にどうぞ」


 私は助手席に乗り込んだ。後ろにフェリックスが乗る。


「わたしも載せてくれ」


 マクシミリアン叔父様が後ろに一緒に乗った。


「では発車いたします」


 ぐぃん!


 おお、なんかあんまり滑らかじゃないけど力強く走り出したよ。


 グィーン。


 速い、速いよ。馬車なんかくらべものにならない。スプリングが効いてるね。

 クラウがハンドルを切り右へ左へと蛇行して演習場の端まで行ってから発車地点まで戻ってブレーキで止まった。


「やりましたね。大成功です」

「はい、ありがとうございます」


「ソフィア、私と変わってくれ」

「はい、お父さま。クラウ、フェリックス良くやりました。安全運転でお願いしますね」

「はい、判りました」


 ユリアーナ先生とラスティーネ様も試乗した。

 ユリアーナ先生もラスティーネ様もとてもホッとした顔をしてとても嬉しそうだった。

 ユリアーナ先生とお父さまは自分で運転までしたようだ。


 試乗会が終わり車にシートがかけられた。


 丁度ギルド長と鍛冶職人もいるのでこのまま来客の会議室へ伴って貰い旋盤とタイヤ、ベアリングのお話をした。


 現在のシャフトは馬車と同じで、あまり長い時間高速運転を続けるとシャフトが熱を帯びてダメになってしまうだろうという事で、それをベアリングがかなり軽減する事を説明した。


 温度調節は非常に難しいけど長年鉄を扱っている人なら判ると思う。ガラス玉も同じだけど、三角の溝をまっ直ぐに作って斜面を転がして大きさの揃った球を作り、基準にあったものだけを使う。

 ギルド長がこれはガラスでも試しても良いですかと確認してくるので許可した。

 ついでにカラーガラスの作り方も教えた。アクセサリー宜しくね。

 

 ノーラがもう夕食の時間だと教えてくれたけど、話が終わらないよ。

 カセット式の駆動部を持つ旋盤の説明が終わりタイヤの概要について説明してたところで時間切れだったよ。明日は他の鋳型を作っていた職人も連れて来たいそうだ。

 私は荷馬車の荷台のようなものを蒸気自動車に繋げて引けないか? と確認するとギルド長は直ぐに試せますと明日見せてくれる事になった。


 今日は色々とやったけどなんか進んで良かったよ。


 私は夕食に急いだ。


「ソフィア、遅いぞ」

「すみません、皆さま。打ち合わせが長引いてしまいました」


 お父さまが神に食前の祈りを捧げて私達も祈って食事を始めた。

 アメリアも一緒の食卓についていた。


「ソフィア、貴方がアメリアに贈ったコサージュはわたくしに作ってくれたものよりも随分と綺麗なのですね」

「お母さま、あれは緊急で作ったものですからお母さまのは別に作りますよ」

「ソフィア、ありがとう。このようなものは式典やパーティでは必ずつけるものなので作り方を教えて売り出してはどうかしら?」

「はい、お母さまにお任せします。いくつかわたくしがサンプルを作りケイトとハイデマリーに教えておきますので後はお母さまにお任せしてもよろしいですか?」

「勿論ですよ。貴方ばかりいつも大変なのでわたくしの出来ることはやらせて頂戴」

「ありがとうございます。お母さま。よろしくお願いしますね」

「ええ」


 正直、コサージュとかどうしようかと思ってたから助かるよ。お母さまには箸しか作ってなかったからね。


 お母さまはこっち方面はやり手で洋服のブランドを2つ展開している。カジュアルを扱うシルベニアとフォーマルのラッツだ。シルベニアはお母さまがお父さまと結婚する前に展開していたそうだからファッション好きなんだね。フェリックスに髪留めに飾りの付けられるピンを頼んでおいたから髪飾りとコサージュはお母さまに任せよう。


 これで枕とハンバーガープレスが作れるよ。


「ソフィア様、先に土壌酸度計と重機も頼むぞ」

 マクシミリアン叔父様、、、。


 折角絹が手に入ったんだから枕が先だってば。


 ううっ、もうおもちゃはアメリアに任せるようにしようか、、、。


 アメリア:ビクッ!

次回:美鈴先生を確保しないと私が大変な事になっちゃうよ。貴族学院の側使え見習いが登場。

 おかしな豊穣の女神様伝説はこれで断ち切るからね。

 お楽しみに。

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