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ドゥープレックス ビータ ~異世界と日本の二重生活~  作者: ルーニック
第三章 夢の軍備
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大剣vs刀を免許皆伝の方に聞いてみた

 旋盤のカセット化設計が終わって水車と蒸気機関の切り替えが理論的に可能になった。今日は美鈴先生と外出の予定だ。


 まずデパートによって様々なコサージュを見て廻る。色々なのがあるんだね。私が記憶を元に作ったもののように絹かレースを使ったものが多くて宝石をあしらったものまである。絹ではなくてサテンかも。飾ってあるのを見るとやはりドレスに合わせないとちょっと日本の感覚だと浮いてしまう感じかな。


 針金とかは見えなくて緑のテープで巻かれて上手く隠れている。大きな花が一つの物が多かった。葉っぱは形に切ってあるね。他のお店に行けば違う種類もあるかもしれない。手芸店に寄って緑のテープや絹、羽などの材料を買った。後で母に教えて貰って練習するんだ。


 美鈴先生のつてを頼って今回の主目的の加工機械と重機を見に行く。加工機械は想像通りだったけど旋盤を動かすのを見せてもらい実際に刃物も手で持たせて貰った。かなり固そうだね。一通り使い方を教わり私もハンドルをくるくると回して少し削らせて貰った。あまり強く当てると割れてしまうらしい。本来はプログラムで動かして今は手動ではやっていないのだそうだ。


 やっぱりコンピュータって凄いね。私が小さく曲線で削って廻りにギザギザをつけた金属の棒をお土産に貰った。これが簡単に出来るってやっぱり現代技術って本当に凄いね。

 重機は重さもあるし機構が結構複雑だよ。動力を幾つも組み合わせなければこれ難しいね。

 めちゃくちゃ勉強になったよ。



 美鈴先生と別れて家へ帰り、沢さんにハンバーガーの作り方を教わった。バーガーバンズを焼き沢さんが持って来た挽き肉をプレスしてミートパテを作る器具を見せて貰う。これ欲しいよ。挽き肉にナツメグ、塩コショウを少し混ぜ少し捏ねて適量をプレスすれば簡単にパテが出来る。一応バジルも混ぜておこう。片栗粉を少し加えてもいいそうだ。うん、これハンバーガーのお肉の香りだね。

 プレスに先にラップを敷いて一つ分の挽き肉を置いてゆとりをもってラップを被せる。そのままプレスすればラッピングされたミートパテの出来上がりだ。沢さんのこのやり方だと洗い物が減って楽だね。

 やっぱ石油って偉大だよ。ラップ欲しい~。


 パテを焼く際もミートプレスで押し付けながら焼くんだね。出来は見た感じもうお店のとほぼ同じだよ。


 焼けたバンズを切ってバターを塗り、レタス、トマト、マヨネーズ、チーズと重ねてバーガーを載せケチャップとピクルスを添えて出来上がり。


 向こうのピクルスは白ワインビネガーで作った物を用意してあるからこれで行けそうだ。沢さんが用意してくれたバーガーを包む紙に入れたら凄く美味しそうに見えた。実際に美味しかったよ。


 乾性油系で油紙は作れるから今度作ろうかな。



 翌日、リバーサイズに入り休憩場所で漆の木の小さな木を幾つか持って帰って貰う。根を土ごと掘り返して貰い布でくるんで縛る。これで持って帰ってもお城の敷地で育つかどうかは判らないけど今心配しても始まらない。食材が少し減って荷馬車が空いたと思ったけど直ぐにまた一杯だ。ごめんねみんな。


 お昼はシルバタリアの食材が沢山あるのでじゃんじゃんお米を炊いて炒飯を作る。お城に戻ったら本格的に焼豚なんかも作ってやってみたいけどこれも結構時間が掛かったからか、作るそばからなくなって大人気だったよ。片栗粉を少し入れた醤油スープにとき卵を落とした中華スープと良く合って美味しかったよ。レンゲが欲しいね。

 これは早めにラーメン開発もしないとね。


 お茶を飲みながら私は叔父様に旋盤の素晴らしさを説明した。どうやって操作して削れるのか、固い刃を作って柔らかい鉄でいかに簡単にシャフトが作れるのかを身振り手振りで説明する。焼き入れをすれば強靭なシャフトになるからこれまでと違って簡単に量産が可能になる。続けて昨日日本の母に教わったコサージュとタイヤの話をしようかと思ったけどもう出発なのだそうだ。


 お母さまがコサージュの話をしたがっていたけど馬車が違うので叔父様とタイヤの話をする。樹液を酸でゴムにして、ゴムに炭素つまり炭を混ぜて固くする。黒くなっちゃうけどこれは仕方ないよね。タイヤはみんな黒だし。形状を保ち強度を増すためにワイヤーと繊維をいれたままゴムタイヤの形で固める。炭素の量で固さを調整して柔らかいゴムと固いゴムでノーパンクタイヤにする。チューブがないとガタガタが厳しそうだけど開発が難しそうだから後回しだね。今の木のタイヤ部分も合わせてホイールに形を整える必要がある。

 叔父様に聞くと頭を抱えながらも鋳型で剣を作っていた職人が何人かいるそうで人手も大丈夫そうだよ。次はベアリングとチューブだね。


 細かく比率なんかを話していたらリバーサイズ男爵の館に着いた。

 次男はまたいなかったけど並んだ中に兵士と年配の人がいた。


 ミスリアが教えてくれた。

「お祖父様の先代、ザルツ・リバーサイズと兵士長のカーマインです」


 私が叔父様の補助で馬車を降りると全員が跪いた。


 ザッ!


 何事なの!?


 年配の人が私の前に来て跪き右手を出した。

「ソフィア姫様、左手が不自由なもので片手でお許し下さい」


 右手を開いて私に差し出す。これ私が手を取るのかな?

 叔父様とノーラを見ると緊張した顔でコクリと頷いた。


 私は手を取った。


 年配の人、恐らく先代のザルツ様は自分の額を私の手のひらの裏につけた。


「姫様、我が孫ミスリアが命をかけお守り出来なかった事、どんなに謝罪しても許される事ではありませぬ。そればかりか孫の命まで救って頂いたなど、どんなに礼を尽くしても足りませぬ。わたくしザルツ並びにこのリバーサイズの兵士達は姫様と命を共にする事をお誓い申し上げます事をお許し下さい」


 いやいやいや、あれはたまたまだよね。

 叔父様が慌てて声をあげる。


「待たれよ、ザルツ殿。それは判っておっしゃっているのかっ!?」

「勿論でございます」

「・・・ふぅ、判った。ソフィア様、許して差し上げてくれ。このままではいつまでもザルツ殿はその手を離さぬだろう」


 説明が欲しかったけどこれ仕方ないね。


「許します」


「おお、有り難き幸せ。カーマインやったぞ」

「はっ」


「リバーサイズ男爵様、本日も宜しくお願いしますね」

「喜んで。こちらへ」



 来た時と同じ部屋へ通され執事さんがお茶だと呼びに来た。私は意味を聞こうと叔父様の所へ行こうかと思ったけど忙しそうでお母さまの所へ向かった。


「あれはいざと言う時に主であるリバーサイズ男爵よりもソフィアの命を優先して己の命に代えて守ると言う誓いです。先代の左手はイエルフェスタの元騎士団長イゴールとの立ち会いでやられて不自由になったのです」


 あの大きな人か。成る程、そんな事があったのか。


「このリバーサイズは兵力が強くルントシュテットの軍事の要ですからソフィアにつくのは良し悪しですね」


 悪い面もあるんだね。後でお父さまとお話する必要がありそうだね。


「今はミスリアとヘルムートが護衛騎士を辞退させられる事を止めなければなりません」

「えっ! ミスリアとヘルムートが?」

「二人ともリバーサイズの出でザルツ様に鍛えて頂いたのですからあの剣幕では、、、」


 それはダメだよ。あんな暗い中で弓で近距離で射られてあんな大剣で襲われたらどうにもならない事もあるよ。詳しく説明してどうにかそれは防ごう。


 お母さまとお兄さまと共にお茶へ向かった。



 お母さまの言った通り私の前でザルツ様がミスリアとヘルムートに自ら護衛を辞するように言った。

 話を聞くとお父さまへ伝わった連絡がその後でリバーサイズへも届いたようだけど詳しい状況まで伝わってはいないようだ。


 私は暗い森の中から近距離で弓を射られそこに襲って来た人が走って来たから誰でも無理だと説明した。それにその人を倒したのはミスリアの剣だし弓兵もヘルムートが倒している。

 私は辞めるのはダメだとハッキリとザルツ様に伝えた。


「わたくしの左腕はイエルフェスタの元騎士団長イゴールとの手合わせで不覚をとったものです。盗賊に落ちたイゴールにはわたくしが引導を渡してやろうと考えておりましたが見事姫様が打ち倒して頂いたと伺いました。いかように倒されたのでございますか?」


「とても大きな剣を大振りして来たので普通に避けて切りかかる籠手を切り、振り下ろす剣の軌道を変えて峰打ちで脳天を叩きました」

「!!!」

「イゴールは剛剣と言われた大剣の使い手です。いかように剣を合わせても勝てる剣はありませんでした。姫様の剣をお見せ頂けませぬか?」


 兵士長のカーマインさんも凄く気にしているようだ。

 私はノーラに刀を持って来て欲しいとお願いし、剣の作り方を変えて今の剣は強くなっている事を説明した。


「おじいさま。姫様のおっしゃる通りでわたくしの剣も新しいものになっております。ビッシェルドルフ様が以前の剣と打ち合わせ以前の剣が切れたと聞き及んでおります」

「なんと! 剣が切れただと! ミスリア。其方の剣を見せて貰えないか?」

「隊長。よろしいでしょうか?」

「構わぬ。暫くすればこの地にも来るであろう」


 スラッ。


「見事な輝き。素晴らしい」

「おじいさまも見ただけで判るのですね」

「勿論だ」


 ノーラが刀を持って来た。


 ザルツ様を始めミスリア以外のリバーサイズの人全員が目を見張る。


「こ、こんな細身の剣で、、、」

「これは刀と言うのですよ」

「しかし姫様、ここまで細身の剣では打ち合えば折れてしまいますぞ」

「打ち合ったりはしないのですよ。そういう剣道なのです」

「剣の道?」

「はい、しかしたとえ打ち合ってもそのまま当てたりしません。ねえ、カイゼルさんミスリア」

「はい、姫様のおっしゃる通りで姫様の剣術はその刀で敵を斬るのです」

「斬るのは剣でも同じではないか?」

「うーん、判りづらいですよね。マルテ、まな板とお肉と包丁を持って来てください」

「はい、少しお待ちください」


 私は戦って見せるよりもお料理の方が好きだからね。


「実際にわたしはイゴールさんが振り下ろす剣を持つ手を先に切り落としました」

「あの剛剣よりも先に、、、」


 マルテが速攻で持って来てくれた。


「えーと、お肉にこうやって包丁を打ちつけても良く切れませんよね」


 私は包丁を上から肉に叩きつけるように落とした。


 バチッ。


 少し切れたけど途中で止まった。


「これまでの剣でカイゼルさん達騎士団の方々が斬るというのはこういう斬り方です」


 私はお肉に包丁を当てて引くように切った。勿論切れるけど少し曲がった。切り口を見せる。

 カイゼルさんもザルツ様もコクコクと頷く。


「そして私の刀はこうやって斬ります」


 お肉に包丁を当てて押すように切った。切り口も綺麗に正確にしっかりと切れる。こっちの料理人もクルトもカリーナもみんな肉を引いて切っていたけど、私の方法で包丁を作ってからは押す切り方で切って貰っている。


「今では他の料理人も全て押して切るこの切り方にしています。この方が力任せに引くよりも正確に切れるのです。ですので普通は剣同士は当てませんが仮に当たったとしてもそのままぶつかり合うのではなく私の刀は斜めに斬り当たる為に折れないのですよ」

「押し斬りながら当たる、つまり力の方向が違い衝撃が緩くなるのですね?」

「その通りです。相手の剣筋の軌道を変える程度ですが、こちらの刀が早ければ衝撃は殆どありません。ミスリアもカイゼルさんも私と手合わせしていますから判ってると思います」


「おじいさま、その通りです。ソフィア姫様の練習用の剣で腕や胴を切られれば木剣で殴られているようではなくまさに押し斬られているのです」

「全く異なるなんと奥の深い剣術を使われていらっしゃるのか!! これはまさに剣の道。姫様、実際に肉まで使って頂き判りやすくご教授頂きました事深く感謝致します」

「いえ、少しでも何かのご理解のお役に立ったのであれば良かったです」


 お肉はスタッフのみんなで美味しく頂きますからご心配なくw。


 取り敢えずミスリアとヘルムートの護衛騎士辞退は回避出来た。


 リバーサイズへ渡しておいた粉末醤油を使ったエビ、ワカサギ、山菜の天ぷらでもてなされ薬草の香りのするミスリアの実家でゆっくりと休んだ。

 


 次回、調子にのって開発を進めた軍備に問題が発生してしまい自分の責任だと落ち込むソフィア。

 お楽しみに。

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