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ドゥープレックス ビータ ~異世界と日本の二重生活~  作者: ルーニック
第二章 夢の旅人
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シルバタリアの夕食会

「ソフィア様、ラッベルの木の樹液を何に使うんだ?」

「石油の見つかっていない今、様々なものに使えます。自動車のタイヤ、絶縁体、ベルトなどかなり応用範囲の広い重要なものになります」

「セキユとは何だ。いや、今は聞かない方が良さそうだな。しかしヘルムートから聞いたが、ラッベルの木の樹液はただの白いベトベトの樹液なのだろう」

「加工すれば便利なものになるのですよ。とにかく沢山シルバタリアの方々に生産して頂いてルントシュテットに沢山仕入れてくださいませ」


「わかった。しかしパイリートロム(除虫菊)はこちらで加工してプリーチス(蚤)除けとして既に販売されているが買ってどうするんだ」

「お香に入れて蚊を避けるものにするのですよ」

「お香?」

「インチェンスムです」

「あれは宗教家が乾燥したヘルビス(ハーブ)を焚くものだろう」

「様々なお香が蚊を退治したり安らぎを与えたりするのですよ」


「しかしあまり沢山は育ててないみたいだよ」

「ライスと二毛作で育てて頂いて下さい」

「ニモウサクとはなんだ」

「秋にライスを刈り取ったらパイリートロムを植えて春に花を摘み取ったら稲を植えてライスを育て始める年に二回土地を使う方法です。どちらも土地に良い効果で両方の育ちが良くなるはずですよ」

「そんな大切な事を教えていいのか?」

「だって沢山ないと取り引き出来ませんよね」

「そうだが、、、」


「うん? まさか安らぎとはこれは睡眠の為なのではないだろうな」

「す、睡眠は健康に良いのです。領民の健康を推進している叔父様がないがしろにしてはいけませんよ。こちらのセリークム(絹)や籐のまくらもとても役に立ちます」

「むぐっ、わかった。では取り引きに入れておくよ」

「カカオ豆もお願いします」

「それはもうかなり取り引きしている」


「叔父様、わたくしそろそろ夕食の準備に行かなければならないのです」

「わかった。出来るだけルントシュテットの食材も合わせて出して貰えるように頼んだぞ」

「はい、こちらの食材も生かして出来るだけ頑張りますね」

「頼む」


 

 さてと、では夕食の準備を始めましょ。


 小麦粉と片栗粉で薄い皮を作ってここでも人気のありそうな豚肉をミンサーでひき肉にして野菜をブレンダーで細切れにして中に入れた揚げ春まきが一品目だよ。調理器具があるから簡単だね。


 メインはチキンライス。味付けにはバター醤油も一応言い訳の為に使っておく。


 ここの屋台の焼き豚串も美味しかったけど焼き鳥も美味しいよ。醤油とみりんの美味しさも味わって貰わないとね。


 ここの海鮮の良さを引き立てるにはリバーサイズと同じだけど天ぷらがいいよね。天つゆも勿論用意する。エビ、キス、新鮮な野菜。うんうん、美味そうだね。


 でもこっちの人達の辛いタレも使う事を考えるとエビ団子を作ってフリッターにする。メレンゲにするのが天ぷらと違って洋風になるんだけどこれだと色々なタレを自由につけられるからね。


 感覚は判らないけどおそらくこれらの料理は赤ワインに合うと思う。

 デザートはタイ風パンケーキのロティとマンゴープリンだよ。


 小麦粉、醤油、みりん、バター、氷、生クリームと沢山買って貰おうね。


 私はついでにお米を炊いて貰って天つゆをかけた天丼を一つ作って貰った。

 ううー。先に食べたいくらいだよ。もちもちしてるご飯も美味そう。

 あの長い方のお米もピラフなんかには合いそうだし取引して貰った方がいいね。


 私は買って来た絹を出して貰いお兄さまの婚約者アリッサ様のコサージュを作り始める。

 小さな黄色い薔薇をいくつか作って行く。濃い緑の絹で葉を作って宝箱の白い羽を付ける。

 ケイトとハイデマリーに教えながら作った。二人共小さな薔薇を1つずつ作ってもらう。

 糸で止めて危なくないように針金を曲げて尖った部分を布と糸で隠して出来上がり。


 更にケイトとハイデマリーに小さな薔薇を作ってもらいリボンに縫い付けてもらった。

 アリッサ様の髪を縛るリボンの代わりにこれで縛れば可愛い髪飾りになるよ。

 次女のアンネマリー様の分はこっちの赤い薔薇でいいね。


 なんか作ってたら私のも欲しくなって来たよ。後で作ろう。


 よし、着替えて夕食に行こう!


「ソフィア、お食事にいたしましょう」

「はい、お母さま」


 シルバタリア辺境伯が神に食前の祈りを捧げて私達も祈って食事を始めた。


「ソフィア、簡単にお料理を説明して下さいませ」

「判りました」


「こちらは揚げ春巻きというものです。屋台でも人気の豚肉、いえスイラを調理器具で挽き肉にしたものをメインに野菜などを入れて油で揚げてあります。いつもの辛いタレでもよろしいですし、こちらの醤油と特産の酢を合わせた酢醤油、ニンニクをすり入れたこちらのタレも良く合うと思います。召し上がってみて下さいませ」


 お母さまや辺境伯が先に口にする。外側がパリパリとして中は挽き肉でもちもちとした美味しい自慢の逸品だ。勿論、もう毒見としてマルテとノーラが全部を口にしている。味を知っているマルテが凄く食べたそうにしていた。


「美味しい~」

「かなり旨いな」

「まるでシルバタリアの為にある料理のようだ」

「はい、シルバタリアに合うものを考えました」

「素晴らしい料理ですね。こちらの赤ワインにもとても良く合います」


 好評のようだね。


「次は屋台で売っていたスイラの串焼きと同じようにルンテシュテットで売り出しています焼き鳥です。塩味だけでなくこのような醤油ダレを主に使っておりますので召し上がってみて下さいませ」


「これは私も食べた事があるのですよ。お酒に良くあってとても美味しいですよ」


 と叔父様が先に口にする。


「このシェーパを挟んだものはアクセントになって甘くて旨いな」


 ねぎまの事だ。


「こちらの若鳥やつくねも美味しいですよ」


 うん、軟骨まで砕いたつくねも良さそうだし甘辛タレも好評のようだ。


「こちらがシルバタリアの海鮮や野菜の良さを引き出す天ぷらとエビ団子のフリッターです。天ぷらは天つゆか柚塩で、フリッターはお好きなタレでお召し上がり下さいませ」


 さっき私もつまみ食いしたらエビもキスもめっちゃ美味しかったからね。


「旨い。この天つゆというのがとても合う」

「スクイーラがプリプリだよ。美味しい」

「焼くのもいいですけど、このように小麦粉で揚げるのも美味しいですよね」

「全くだな。素晴らしい」


「本日のメインはチキンライスです。お米をバター醤油で炒めたものに蒸したプルンチブム(鶏肉)がのせてあります。こちらの醤油ベースで生姜などを加えたタレをお好みでかけてお召し上がり下さいませ」


 しまった。みんな食べるのに忙しくなっちゃって無口になってきちゃったよ。

 はあ、これ一気食いだよね。奥様も凄い食べっぷり。


「お気に召して頂けたようで良かったです。本日のデザートはロティというパンケーキとマンゴープリンになります」

「パンケーキのソースはお好きな物をどうぞ♪」 


「わぁお」

「素晴らしいな、この地のマンゴーを使って貰えたのか」


 ビルムさんがお茶を出してくれた。


「おやつの時といいわたしの姪ソフィアは料理の天才であるな」

「ありがとうございます」

「どうだろう、次男のルーカスの嫁に来ないかね」


 えっ!


「お兄さま! ウルリヒのお話の途中ですわ。そういったお話はまたの機会にお願いします」

「そ、そうだな。しかしどれも素晴らしい物だった。必要なものは全て必要なだけ買うしレシピも全て頼むぞマクシミリアン様」

「畏まりました、ご要望に添えますように私共が必要な物も明日お打ち合わせさせて下さい」

「ビルムから聞いたが部屋を涼しくする装置を使っているらしいな」

「なかなかこの暑さに慣れておりませんので」

「その作り方は教えて貰えないのだろうか?」

「本日中にドミノスに確認致しますので明日までお待ち下さい」

「判った。ソフィア、美味しい食事をありがとう。とても楽しい夕食だった。ソフィアの食事がまだであれば用意させるがどうだろう?」

「わたくしの分は別に作っておりますのでご心配なくお願いします」

「なんとも用意が良いな。では明日話し合おう」


「「ご馳走さまでした」」


 子供達にまで挨拶されたよ。


 私はノーラにコサージュを出して貰いお兄さまに渡した。一応お兄さまから渡して貰わないとね。こちらはわたくしからです小さなリボンについているものは髪飾りにどうぞ♪ と渡す。

 そんなに心配そうな顔をしないでください。ちゃんと次女のアンネマリー様の髪の色に合わせたのもこちらにありますよ。


 二人共満面の笑みを頂きました。可愛いね。


 ウルリヒお兄さまは食事中結構静かだったけど黙々と食べていたようで満足そうに眼を輝かせていた。アリッサ様にお礼を言われて少し照れてるかな。



 お母さまから召集がかかる。


「ソフィアのお部屋に集まりましょう」


 何で私の部屋なの。



「まあ、まあまあ!」


 お母さまが止まらない。ゆっくり天丼食べたかったのに、、、。


「ソフィア、これはとても涼しいですね」

「そうだ。ソフィア様、これは一体どんな仕組みなのだ」


「えーと、簡単に言うと気化熱を利用しています」

「キカネツとは?」

「暑い地面にお水を撒くと涼しく感じますよね」

「うん」

「それと同じで水が蒸気になって蒸発する時に周りの熱を奪うのですよ」

「水が蒸気になるってお湯を沸かして蒸気になれば熱くなるだろう」

「いえ、そうじゃなくて、、、」


 説明するのが面倒くさくなって来たよw。私は天丼を口に頬張りながら説明した。


「そこの水車の水の側は沸かさずに自然に水が蒸発しているのです。その際に周りの熱が奪われて少しだけ涼しく感じるのですよ。この蚊帳の網に水を流す事でそれを実現しています。その涼しい所の空気を扇風機で部屋の中へ運んで部屋の熱を下げて上の窓から温かい空気が外へ出て部屋が涼しくなります」


 もぐもぐ。


「うーん、結構難しいのだな。この技術を売って欲しいと言う話はどうする?」

「水車が必要ですからね。そんなに売れませんよ。戻ってから水と動力で動くコンパクトなものを作ります。蒸気機関や電力が出来るまでもっと水車を活用したくて今朝少しお話したこんなのも考えています」


 ノーラにメモを出して貰う。


 ガサッ。


「むっ! 誰だ!」


 ごくり。


「ヘルムート、ミスリアっ!」


 ダッ。


 人影が遠くに走り去って行った。


「間者か?」

「どうやらそのようです」

「うーん、館の敷地内だからこのシルバタリアの人じゃないですか?」

「ソフィアにはもっと護衛が必要だな。わたしがソフィアの護衛をやろうか?」

「いえ、お兄さま、私にはミスリアとヘルムートがいるから大丈夫ですよ」


「しかし確かに危険だな。重要な事はルントシュテットへ戻ってからにしよう」

「はーい」


 はぁー天丼美味しかった。

 マルテとお兄さまが欲しそうに見てたけどこれ一つしか作ってないんだよ。ってか二人共食べたよね。


「ソフィア、それも美味しそうでしたがアイスクリームはないのですか?」

「勿論ありますよお母さま。沢山作っておきました」


「ブレンダーがあるので、今日はソフトクリームです。チョコ、イチゴ、マンゴーがありますけどどれがいいですか?」

「イチゴがいいわ」

 もうお母さまにはクラーシクじゃなくてイチゴで通じるよ。

「ソフィア、わたしの分はチョコで頼む」

「お兄さま、わかりました。かなり美味しいはずです。叔父様は、、、」

「マンゴーで頼む」

「私はストレートで。マルテお願いします」

「はい、皆さま少しお待ちください」


 ブィン、ブィン、ブィン。


「これ別々に作ってミックスも出来るんですよ」

「今度はそれがいいな」


 叔父様が初めてブレンダーをまじまじと見た。


「これは細かく砕いたり、野菜をみじん切りに出来る調理器具ですよ」

「わかった、戻ったらこれも量産させよう」

「叔父様、わたしブランジェルにソフトクリーム屋さんが出来たら買いに行きます。よろしくお願いしますね」

「うぅっ」


 ソフトクリームはお母さまにもお兄さまにも叔父様にも大人気だったよ。

 でも私のだけ食べる前にノーラとマルテが毒見をしてるんだけどどうして? 解せぬ。


 そして誰も自分の部屋に帰らないんだけど、みんなこの部屋に泊まるの?



 次回:子供達のお茶会でコサージュや髪飾りのお礼を言われハンカチ折り紙を披露するソフィア。調子に乗って足のある鶴を折り、とうとう紙ひこうきを作って飛ばして遊ぶ。翌日丘からみんなで飛ばすシルバタリアでの最終日。

 お楽しみに。

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