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ドゥープレックス ビータ ~異世界と日本の二重生活~  作者: ルーニック
第二章 夢の旅人
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キャンプ

「夢美ちゃん、化学者の知り合いの利佳子にお願いしようと話したのだけど『危険な事は子供には教えられない』って言うのよ。夢美ちゃんが戦争も何もかも『思考実験』しかやってないって説明しても信じてくれないのよね。連れて来いって言うから今度一緒に研究室へ行ってみない?」


 美鈴先生の言う通り、化学の歴史やその発展の実態は本当に危険な事も多くて正直私が考えても確かに小学生のやる事ではないよね。でも必要なんだけどなぁ。


「お願いします」


 そもそも夢の中は本当に地球なのか疑わしいんだよね。調べただけでも魔法は地球でも古い言い伝えが沢山あるから当時のより詳しい状態だとしたら不思議じゃないのかもだけど、私が気になるのは月だ。

 星は見た事のある星座もあるっぽいからそのうちには詳しく知りたいとは思うけど、どうも月の大きさが日本から見るのより大きいと思うんだよね。星座とかは詳しく知ってるとカッコイイけど、今はちょっと他が忙しくてあまり勉強の範囲を拡げたくはない。


 月は手を伸ばして5円玉の穴の大きさとほぼ同じって良く聞くけど、私の腕の短さは別にしてもはっきり言って私の手のひらくらいはあるんだよね。


 何を心配しているのかと言うと、物質構成や物理法則が地球と同じかどうかを心配していて、元素周期表や物理法則が違えば私の勉強知識なんて役に立たないよね。プラトーによって人の強さには限界があるし、何も燃えるものが存在しないのに火の魔法とかが使えるような神の奇跡でもあり得ない俗な中二病的願望の妄想の世界なら、はっきり言って本当にくだらない妄想の夢だとそんなの私みたいな小学生でも判るので私は勉強なんかしてないで絶対に毎日寝て過ごすよ。


 今の所は少なくとも同じ宇宙っぽいし、実際にソフィアも私に繋がっているっぽいから私は死に物狂いで勉強している。


 そうなると文明の発展で重要なのはやっぱり化学だと思う。蒸留法以外の様々な物質の単離方法も資料だけじゃなくて具体的に知りたいし他の物質も沢山作りたいと思っているからね。

 その博士にお願いして生き残る為に頑張ろうと思っている。でも、その前に自分で勉強、勉強っと。



 翌朝、マルテに早めに起こされてリバーサイズを出発する。朝早くから剣術を練習する音が聞こえたけど見送りの時には次男のヴィルヘルム様はいなかった。


 馬車で進むと徐々に温かい地方で見る木が目に入って来る。なんて言うか知らないんだけどこれは日本の感覚だね。今の所興味のある植物しか判らないんだよ。空気の乾燥具合とか雰囲気も徐々に温かい地方っぽくなってるよ。なんかこう言うのって旅行で遠出している感が上がっていいよね。


 今日はお待ちかねのキャンプの予定で今からわくわくしている。しばらくマルテと紐であやとりしてたんだけどマルテに絡まっちゃったしもうすぐお昼だね。


 少しひらけた所でお昼にする事になった。


 リバーサイズの食材はみんな肥えていて美味しい。リバーサイズ男爵から食材をこれでもかと沢山頂いた。後ろの馬車を確認すると生きたにわとりが何羽もいるし大きな桶ではスラングスクイーラムというとても大きなエビを泥抜きをしている。今晩はキャンプのバーベキューの予定だから今から楽しみだよ。

 これらの食材は後で仕入先として叔父様とミスリアと相談しよう。


 お母さまが持ってきたという薔薇も水差しに沢山刺さっていた。成る程、切り花をこうやって持たせてるんだね。とても綺麗だ。


 お昼は昨晩からクルトとカリーナに作って貰ったチキンカツサンドやハムサラダサンドイッチ、チーズと唐揚げを切ったものが挟んである唐揚げチーズサンドがたっぷりと準備してある。

 卵の好きなノーラ達の為にタマゴサンドもあるけどこれは直ぐになくなっちゃったよ。


 お兄さまも口の周りがケチャップだらけでこんなのマンガでしか見た事がないレベルの面白さだった。お兄さまの側仕えのマーヤさんが慌てて布巾をお兄さまに渡してたけど食べる方が先だったみたいだね。


 食後にミスリアとヘルムート、ノーラとマルテを伴ってお散歩すると恐らく『漆』だと思われる木が数本あった。ミスリアに樹液を確認したいからグレーのゴツゴツとした幹に少し傷をつけて欲しいとお願いするとヘルムートが

「わたくしにお任せください」

と小刀を取り出して小さく『フッ』と息を吐いた後2度小さく振る。

 なんかカッコイイよヘルムート。私に見やすいように私の顔の高さを斜めに切ってくれたのも点数高いね。よく気が利く私の護衛騎士は本当に凄いよ。


 樹液が染み出して来る。私はかぶれないように近くの枝を拾って樹液を確認するとやっぱり漆だったようだ。小さな木も何本かあるので帰りに叔父様に持って帰ってもらおう。


 パカパカパカ。


 カイゼルさんが馬に乗って来た。


「姫様、そろそろ出発致しますのでお戻りください」

「はい」


 うん? なんかカイゼルさんの乗ってる馬はとても大きくて頭の所になんか角っぽいのが二つ生えてるよ。これ絶対に普通の馬と違ってカッコイイね。


 私達は戻って漆のあった入り口近くの木に印をつけて貰う。

 クルトとカリーナが鳥の処理が終わったと報告してきた事をオットーさんから聞いた。うんうん、夜はキャンプだからね。


 なんか旅行感が高まって来たよ。

 叔父様に漆の事をお話する。確か黄土を焼いて作る赤色の顔料ベンガラなどを混ぜれば使えるはずだね。何故か叔父様はベンガラの方に食いついて来たよ。まさか赤い顔料無いの?



 午後、更に進むとより植生が変わり私は外を見ながら欲しい木なんかがないか真剣に探したけど見つからなかったよ。



 結構日が高い時間に今晩キャンプする場所に着いた。叔父様によるとちょっと先に領地の境を区切る標石がある境界門があるらしくルントシュテットの兵士に挨拶してくると言うので一緒に見に行った。


 少し手前にも小さな砦があったけどこの境界門は双方の領地の管理なのだそうだ。門は結構古そうだね。槍を持った兵士達が叔父様と私、それに側仕えと護衛を見ると頭を下げた。叔父様有名なんだね。


 明日の朝通過するからよろしく頼むとワインを一瓶差し入れをしていた。



「叔父様、この辺りに街があればシルバタリアとの取引も楽になるのではありませんか?」

「ああ、そうなんだがこの道を切り開くのも大変でこの大きな森をどうにかしないとならないから簡単ではないんだよ」

「でしたら移動する為の蒸気自動車の後は重機ですね」

「ソフィア様、重機とはなんですか?」

「重機は様々な工事をする為の働く自動車ですよ」

「それは凄いな。工事の人を集めるのは結構大変なんだよ。でもソフィア様、出来れば城に戻ってからにしような」

「わかりました」


 プー。折角今発展の為の案を出してるのに。

 叔父様と私の側仕えと護衛騎士には完全に私の発案だとバレてるけど、一応周りには叔父様の仕事っていう事になっていて私の仕業だと知ってる人はかなり限られている。


 これまでの様々な事も叔父様の成果という事にしてあるから面倒な貴族の応対や他の細かなお話も全て叔父様にお任せしていて正直この有能な叔父様のおかげて私はかなり助かっている。

 こんな幼女が色々とやってたらここまで上手くはいかなかったと思う。


 私はそのまま必要な事項をメモして整理した。叔父様が覗き込んでいたけど日本語で書いてるからきっと判らないと思う。


「ミスリア」

「なんでしょう姫様」

「そう言えばミスリアの実家で夕食の時に楽器を演奏していましたよね。あれはなんて言う楽器ですか?」


 バイオリンっぽい楽器だったんだけど、、、。


「あれはビオリーニナという楽器です。マクシミリアン様やヘルムートが得意ですよ」


 ?? なんとなく響きがバイオリンに似てるね。


「ソフィア様、貴族は嗜みとして貴族学院でなんらかの楽器を習う事になる。楽器がかなり高価な事もあるが貧乏な騎士爵だとシビールスも多いが、珍しいものではウヌマルクムなどもある。その家毎に色々な楽器を習う事になるんだ」

「叔父様もビオリーニナでしたらルントシュテット家はビオリーニナですか?」

「いや、ルントシュテット家はシピオーネが多いな。私は母上や兄上に勝てそうもなかったからビオリーニナにしただけだ」


 いや、知らない名前ばっかでどんな楽器なのか想像も出来ないよ。

 珍しくヘルムートが話しかけて来た。

「ソフィア姫様も何か楽曲をご存知なのですか?」


 うーん。


「実はわたくしもビオリーニナを持ってきたのですよ。夕餉の際に時間があればお聞かせ出来る機会もあるかと思いまして」


 なんかそれ貴族の食事っぽくてカッコイイね。でも今日はキャンプの予定だからキャンプファイヤーっぽいのが合いそうだからちょっと違うかも。


「今日はキャンプなのでみんなで踊れるような曲ならこんなのを知ってますよ」

 

 私はフォークダンスの有名な曲を口ずさんだ。


 ターララララ、タララーラ、タラーラーララ、ラッタッタ~


 ヘルムートが慌ててメモを取り出し何かを書いてる。


「姫様、もう一度お願いします」

「いいですよ」


 これ短くて繰り返しだから簡単だよ。


 ~タッタンタッタン、ンタラーラ、ラッタッタ~


「こういう曲でキャンプをした時に二人で組んで踊るのですよ」

「姫様、それでは後でわたくしに踊り方を教えてくださいませ」

 

 マルテが面白そうに私を見る。そんなのがキャンプで本当に出来たら面白いね。

 私は苦笑いをした。


 

 下働きの人達が頑張ってくれてバーベキューの準備が出来たようだ。いくつもの鉄板が並べられて火が着き温め始めたようだ。

 側仕え達がお皿を持って待機している。


「ソフィア、これはどうやって召し上がるのですか?」


 お母さまもお兄さまも初めてなのかも。


「これはそちらにある腸詰や焼き鳥、スラングスクイーラム、チキンステーキ、うどんをこの鉄板で焼いてお醤油やお塩で食べます。ステーキや焼き鳥には特別なタレを用意してあります。パンやスープ、ワインやサラダも用意しましたから好きなものを召し上がってください」

「これも楽しそうな食事なのですね。それでは頂きましょう」


 お母さまが神に食前の祈りを捧げ私達も祈って食事を始める。


「姫様、どれがいいですか?」

「私はスープとパン、それに腸詰とサラダをお願い」

「沢山ですね。判りました」


 ノーラとマルテが二手に別れ対処した。

 護衛騎士や騎士団達も順番に食事をとり、楽しそうにしていた。


「ソフィア様、これはなかなか楽しい食事だね。こんなパーティーがあってもいいかもしれないな」

「叔父様、普通のパーティはどんなのですか?」

「それなりに美味い料理もあるがみな冷めた料理なんだよ。これも側仕えが毒見をするとしてもかなり温かいものが旨く食べられるのがいい」


 成程、お貴族様は相変わらず面倒くさいみたいだね。

 

 私は腸詰を歯で千切った。ブチッ。美味しい~♪

 

「ソフィア、ナイフで切ってからになさいませ」

「は、はい、すみませんお母さま」


 ぐっ。


 でも、みんなでわいわいしながら外で食べると美味しいね。キャンプ最高~!

 マルテ達も代わりばんこで食事を終え、ノーラはもうワインを飲んでる。


 ヘルムートがビオリーニナを持って来て弾き出した。


 さっきのフォークダンスの曲だ。凄いよもう弾けるの?


「姫様、それではわたくしに踊り方を教えてくださいませ」

「マルテ、それではあちらの焚火の周りでやりましょう」


 私達は焚火の周りに移動してヘルムートの演奏に合わせて二人で踊り出した。


 ターララララ、タララーラ、タラーラーララ、ラッタッタ~


 簡単なダンスだからマルテも直ぐに覚えた。なんか少し跳ねてる。

 メイドさん達や兵士も踊り、とても楽しそうに掛け声を掛けたり拍手を合わせたりして来るよ。

 とうとうお兄さまとお母さまも笑顔で踊り出した。

 これは是非叔父様の踊るところを見なければと私は叔父様を誘い出し一緒に踊った。最初は嫌そうにしてたけど結構踊るの上手かったよ。


 スマホがあれば誰かに写真に撮ってもらいたかったけど、とても印象的な場面だった。


 しばらくみんなで踊ってたけど流石にヘルムートも疲れたようで、曲の最後にもう終わりですよーっていう感じの終わり方でフォークダンス大会は終わった。


 いつもはあまり目に出来ない下働きの人達まで楽しそうに踊ってたから私は嬉しかった。

 

 明日の朝の食事用の場所を残して後片付けを始め騎士団と兵士達は夜間の警備の準備を始め、私達は用意されたテントみたいな天幕で寝る準備を始めた。


 次回:騎士団の護衛がいるのに襲うような間抜けな野盗はいないと言ってたのに騙されたよ。夜間に襲われる一行に兵士や騎士達は対処出来るだろうか?

 お楽しみに。



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