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ドゥープレックス ビータ ~異世界と日本の二重生活~  作者: ルーニック
第二章 夢の旅人
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アメリア

 私はラスティーネ叔母様とお父さまに模型の蒸気機関を実演して見せた。叔母様は回転速度が速くなると変な声をあげた。


 その後、シルバタリアへ行く前日でと、私はお母さまからお茶会へ誘われた。

 私はクルトとカリーナと頑張って事前準備を始める。


 本来は貴族学院へ行く年齢でなければそういった貴族同士の付き合いのような公の場に出るような事はないそうだけどシルバタリアへ行けば叔父様やお母さまと一緒にそのような場に出なければならない為、その練習を先にしましょうということだそうだ。


 私はマルテとノーラに貴族の子供が着る白いレースにヒラヒラが沢山ついたドレスに着替えさせられた。子供は成人になるまで髪は上げないそうだけど綺麗に髪の一部を編み込む。私の髪はお父さまと同じで黒髪でサラサラしているから編みづらいらしい。

 お母さまは綺麗な金髪なので、私はせっかく夢の中ならお母さまみたいのが良かったなぁ。


 胸に小さな赤いバラを幾つか糸で簡単に付けた。これ普通の生の花なんだね。そもそもこのドレスには花を付ける為の小さな差し込み口がポケットの様に最初から用意されている。


 私はマルテとノーラと一緒にお土産のチョコチップクッキーとクラッカーのセットを持ってお母さまとのお茶会へ向かった。(やっとチョコも作れたんだよ)

 早く行くのは準備が間に合わないと逆に失礼にあたるのでわざと5分くらい遅れて行く。ノーラと挨拶の仕方も沢山練習したし、言わばお母さまが教師の試験のようなものだと思えばいいのかと思う。


「失礼いたします」

 私はお部屋に入ると笑顔をお母さまへ向けた。

「お母さま、本日はお招きありがとうございます。お母さまとこうして一緒に過ごせる事を楽しみにしていました」

「ソフィア、いらしてくれて私も嬉しいわ」


 ノーラにお土産のチョコチップクッキーを取り出してお母さまの側仕えに渡してもらう。


「お口に合うと良いのですが」

「まあ、美味しそうね。ありがとうソフィア」

 お母さまが美しい笑顔でこちらを見た。

「クラッカーもありますから期待して下さい」

「色々と準備して頂いたのね。大変だったでしょう?」

「お母さまに喜んで頂ければ何でもありません」


 って、ん? んんっ?


 お、お母さまの隣に座っている小っちゃい子は!? お母さまと同じ金髪でちょっと巻き毛で目がクリクリしてる。


「ソフィア、初めてだったかしら、紹介するわ。貴方の妹のアメリアです」


 アメリアが『よいしょ』って声が聞こえそうなくらい一生懸命椅子から降りて私の方を向く。

 何この可愛い生き物。私の妹!? 私、お姉さんだよ!


「ソフィアお姉さま。初めましてアメリアです。よろしくお願いします」


 わー、可愛いよ~。


「アメリア、私がお姉さんですよ。沢山一緒に遊びましょうね」

「はい、お姉さま嬉しいです」


 アメリアが瞳を輝かせた。可愛い~!

 うんうん、私期待されてるよ。もう領の繁栄なんか後回しでアメリアと一緒に遊ぶしかないよね。


「アメリアは少し身体が弱くて皆と食事に出るのが遅れたのです。ソフィアの乳幼児の食事に変えたら本当に元気になって来たのよ」


 ここ、乳幼児の死亡率も高かったし迷信のような治療も多いからそんな状態だったならもっと早くアメリアと会いたかったよ。でも元気そうで良かった~。


「アメリア、今からお姉さんが作った美味しいクラッカーをご馳走しますね。沢山食べて下さいね」

「お姉さま、ありがとうございます。楽しみです」


 私はノーラとマルテにクラッカーの準備をお願いした。


 お母さまの側仕えのオットーさんが美味しいお茶を入れてくれた。


 大きな籠にクラッカーが沢山用意され、小さな容器に色々なクリームが次々と並べられる。チョコ、ピーナッツ、サワー、生クリーム、アイスクリーム、カスタード、それにカッテージチーズだ。

 更にベリーやナッツ類が並べられ、チーズ、サラミ、コッドロエ、サッラなど甘くない物も用意した。私はお母さまの感想を聞きたくてこれでもかと頑張ったよ。


「ソフィア、随分と沢山の物が並べられましたね。これはどうやって頂くのでしょう」

「はい、お母さま。今私がやってみますからご覧になっていて下さい」


「じゃあアメリアはどれが食べてみたいですか?」

「この黒いクリームとイグランディウムがいいです」

「判りました。こうやってこのクラッカーを手にとって好きなクリーム塗ったり好きな物を乗せたりして食べるのですよ。はい、アメリア、チョコクリームにイグランディウムですよ。召し上がれ♪」

「お姉さま、頂きます」

 パクっ。


「美味しい~♪」


「ソフィア、これはとても面白そうですし色々な味も楽しめそうですが、自分でやってはいけません」


 えっ! こういうのダメだったの?


「側仕えがいるのですから側仕えにどれがいいか伝えて作って頂きなさい」


 おお、お貴族様面倒だね。でもそういうのなら仕方ないや。マルテがお寿司屋さんの大将だと思えばいいね。(妄想:へい、らっしゃい)


「判りました。では、マルテ、私はアイスクリームにクラーシクでお願いします」

「姫様、『お願いします』ではなく『お願い』です」

「はーい。アイスクリームとクラーシクでお願い」


 ササッ。


 マルテが直ぐに作り小皿に乗せて私の前に出してくれた。


「ソフィア、良くできました。素晴らしいですよ」

「お母さま。ありがとうございます。お母さまもお好きなものをどうぞ」

「ありがとう。ではわたくしはチーズにコッドロエを」


 ササッ。


 お母さまの側仕えのマチルダさんめっちゃ速っ! なんか凄い器用だ。

 マルテも驚いて瞳が燃えてるよ。何か競争っぽくなって来た。ふふふ。数量限定品だから早い者勝ちだよ。


 アメリアの側仕えも負けないで。


 アメリアもお母さまも甘い物がやっぱり好きだったようだ。三人で色々と食べてたら楽しくて止まらなくなってあれだけ用意したクラッカーが本当にあっという間になくなっちゃった。


「ソフィア、このクラッカーは楽しくて大変美味しかったわ。楽しすぎて手が止まらなくてお話が出来ませんでしたね。こんなに美味しいとお茶会になりませんからお茶とお菓子を変えて少しお話しましょう」

「はい、お母さま」


 しまった、余りの勢いにお母さまにそれぞれの味の感想を聞きそびれたよ。でも二人の消費量はノーラが把握してるから次の参考にはなるね。みんな好評だったみたいだからいいか。

 オットーさんがお茶を入れ替えてくれてお母さまにお土産に持って来たチョコチップクッキーを出してくれた。アメリアはこれも好きそうだ。パクパク行ってるよ。あんまり食べるとご飯が食べられなくなっちゃうぞ。



 お母さまがシルバタリアの食について詳しく話してくれた。聞いていた通りやはりスパイシーで辛いものも多いらしい。


「ソフィアもウルリヒも大丈夫かしら?」


 ん? ウルリヒお兄さま?


「ウルリヒお兄さまもシルバタリアへ行かれるのですか?」

「ええ、今日貴族学院から戻る予定ね。護衛や騎士団と一緒に私とソフィアの護衛を頑張りますと張り切っているらしいわ。勿論ウルリヒの護衛も一緒だけど。シルバタリアの姫様がウルリヒの許嫁なのよ」


 何ですと! ウルリヒお兄さまはまだ11歳だと思うんだけど日本で言えば小学五年で今六年生の日本の私より下なのに許嫁だって、、、。うーちょっと信じられないけどそう言うものなのか。


「三人ではなかったのですね。全部で何人位行くのですか?」


 とんでもない人数だった。私とお母さまと叔父様の三人だと思ってたのに、お兄さま、其々の側近総勢9名、洗濯や裁縫のメイド2名、護衛9名、下働き4名、騎士団8名、兵士6名、尖塔師1名、料理人2名、馬車の御者が6名で総勢51名で行くのだそうだ。私の日本の学校のクラスよりも断然多かったよ。

 食事を作るにしても給食2クラスレベルだね。


(私が割烹着を着て給食のおばちゃんになった妄想w)


 日本なら普通に三人で車か新幹線予約して簡単なのにこっちは思ってたよりずっと大事(おおごと)だったよ。

 でも料理人はクルトとカリーナだって言うから良かった。

 

 他にもルントシュテットの食材や氷、蒸気機関以外の作った物も持って行くそうで、騎馬が8頭に馬車が6台で行くってもうこれ完全に御一行様だったよ。


 お母さまによるとシルバタリアはこちらよりも暑いのだそうだ。でも呼ばれた席ではこのような正装で出席する必要があるらしい。

 何となくお母さまのご実家なら私の感覚だともっと寛いでもいいような気がするけどそうは行かないらしい。また、お兄さまの許嫁は病み上がりだそうで、花をドレスに飾ることには「病気や悪い魂を追い払う」「将来の安全や健康を守る」などの意味合いがあって是非とも必要で、そういう席で貴族の間で流行っているそうだ。


 日本での意味は知らないけど家庭教師の美鈴先生が一度ドレスと『コサージュ』を持って家に来た事があって綺麗だったから覚えてたよ。こちらでは似ているけど花を飾る事を『コルサージュ』と言うようだ。


 お母さまは薔薇ローゼが好きで病気の治りを祝うのにぴったりな庭に咲いている『薔薇』を沢山持って行くのだそうだ。 

 荷物や準備はみんながやってくれるから余り心配はしていない。私なんか出来ればベッドやマットレスも持っていきたい位だよ。


 シルバタリアまで3泊4日の旅程だそうでノーラとミスリアの実家に一泊ずつと領境の前で野営で一泊だそうだ。わーい、何か日本で最近キャンプとか流行ってたからそういうのやってみたかったんだよね。こっちで出来るとかラッキー!


「それではソフィア、準備をして夕食の後は早くお休みなさい。明日の朝は寝過ぎて遅れないようにして頂戴ね」

 ギクギクギク。確かに私の場合それが一番怪しいね。

「はい、お母さま」



「お母さまもお姉さまもお出かけでしばらく会えないのですね」

 アメリアが寂しそうな顔をする。

「アメリアにはお土産を沢山買って来ますから良い子で待っていて下さいね」

 お母さまのお話では油や砂糖、薄い布が特産品なのだそうだ。綺麗なのを買って来てあげるからね。

「はい、お姉さま」


 なんて素直でいい妹なの。私と大違いだよ。



 夕食時、ウルリヒお兄さまが満面の笑みで席に着きとても美味しそうに夕食を食べた。

 そして嬉しそうに貴族学院の事やシルバタリアへ行くわくわくする気持ちをお父さま、お母さま、私に語り、叔父様や大叔父様にも自分が「護衛するから任せて欲しい」と雄弁に語っていた。なんかとても楽しそうで私も聞いててお兄さまの楽しさが伝わって来て面白かったよ。

 お兄さまがとても美味しいって言ってたからチーズハンバーグにして正解だったね。


 明日は朝早く起きてお城を出発し、ノーラの実家のあるシュトライヒまで向かうんだけど朝、ゆっくりと寝ていられないのがちょっと心配だから今日は出来るだけ早く寝るようにしよう。


 次回、初めて外に出るソフィア。最初の日はノーラの実家へと向かう。

 お楽しみに。

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