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ドゥープレックス ビータ ~異世界と日本の二重生活~  作者: ルーニック
第二章 夢の冒険者
122/129

仕込み

夢美もソフィアも冒険の仕込みをきっちりと始めます。

果たして上手く出来るのか?

【晴雨計】


「姫様、おはようございます」

「マルテ、おはよう。もうお休みだから起きるのはあんまり早くなくてもいいんだけど、、、」

「ヴァルター様から同じ時間に起こすように言われていますから頑張って起きましょう」

「はーい」

「あれ? 姫様、今日は赤い半ズボンの男の子がこうもり傘を持ってますよ」

「本当だね。じゃあ雨か」

「大変です。洗濯物を取り込まないとですね。ケイト達に言って来ます」


 このカラクリの晴雨計は地球では有名なもので、晴れの日にはエプロン姿の女の子が、雨の日には赤い半ズボンの男の子がこうもり傘を持って出て来るものだ。

 ラスティーネ様が髪を短くした際に貰った髪の毛で作ったやつだよ。

 長い髪の毛はカツラなんかの作成で売れるんだけど、貴族の髪の毛は色々と問題があるので私が貰いました。


 空気中の湿度が増減すると小さな家の中の毛髪が伸び縮みしてその力で家の入り口から女の子や男の子の人形が出てくるという巧妙な仕掛けだよ。

 確か日本にも京都の伝統玩具「照り降り人形」というのがあるそうだけど、私はそっちは見た事がないです。

 これとは別に気圧計をガラスで作って貰っているからそっちは船で使う予定だよ。



【ビブラート】


 私が買い取ったビルの3階には、久美子先生のピアノ教室と塾が入っている。

 塾も何人か教員免許をお持ちの方も所属してはいるけど、私には教える人には事欠かない便利さもあるw。


 久美子先生はお友達も誘ってくれて一緒にやっているんだけど、先生から聞いた話だと音大のピアノ科はピアノを専門にやるそうで、同じ鍵盤だと電子ピアノ的なのは上手くて困らないそうだけど、この植田 由美先生はヴァイオリンも弾くんだよ。そんな人もいるって知ってちょっとびっくりしてるよ。


 私は完全に大人のお付き合い的に久美子先生に習うのと同じ日で植田先生にヴァイオリンを習い始めたよ。生徒が一杯になれば時間をゆずるつもりだ。


 勿論、超初心者で上手くなる気配もないw。

 左手で一の指、二の指的な事をやって音を出しているレベルで、指をキチンと立ててしっかり押さえましょうって感じですw。

 ヘルムートとは比べられない初心者で、先日ようやくビブラートを始めて教わりました。


 ビブラートは指で押さえた位置を手前ではなく奥に転がすのだそうです。

 これ、ヴァイオリンをやってない方は転がすとか判ります?w 

 普通はしっかりと関節を立てて押さえるけどその状態から指を少し寝かせるように奥へと倒すようにするんですよ。これで押さえている位置が微妙に変わる事を先生は『転がす』って言ってるんだよねw。

 これまでの初心者練習ではこんなのやってないよw。

 コツは手首をキープしたままにする事で、今日から始めたから慣れてなくて指が全然上手く動いてくれない。いや、これ上手くなりそうな気がしないけどお付き合いとヘルムート達の事が少しでも判ればいいかなっていうので頑張ってますけど、最近少し面白いかなぁって思い始めてます。

 私の今の弾くビブラートはゆっくりでチャルメラみたいだ。


 でも実際に自分でやってみるとヘルムートは相当な技術を当たり前に直ぐに出来るから音楽家としての才能は本当に凄いものがあると思う。


 ヘルムートとこの前約束してしまっているので、今回の曲はバッハのアヴェ・マリアにしたよ。

 ビブラートが美しくて音色の一つ一つが際立つ、これぞヴァイオリン曲っていう感じだと思う。


 ヘルムートの一つ一つの音が本当に凄く美しいんだよ。


 聞き入っちゃうね。この曲本当にいいね。

 で、伴奏は今回も殆どとばっちりに近いミスリアだw。



【第一回ミスリアのお酒w+ノーラ3回目】


 流石にミスリアに何回も申し訳ないので、ミスリアにも何かあればって聞いたら、ちょっと想像はしていたんだけど『お酒』でしたよw。

 なんとなく知ってはいたけど、どうしてもノーラのお酒好きなイメージが強くて忘れがちなんだけど、ミスリアも相当お酒が好きなんだそうだ。


 ノーラにも心待ちにされていた『ドラフトビール』w。

 ミスリアの借りは一回じゃ返せないくらいなので『もっといいよ』って言ったら結構大事になりましたw。まあいつもの事なのでもう慣れてきてる自分がいるw。


 リバーサイズ家とモルトケ家は以前から仲が良くてヘルムートがリバーサイズで鍛えて貰う事は生まれた時から決まっていたそうだ。

 この貴族家両家が力を合わせてドラフトビールのお店を出し、全国展開したいって考えているんだって聞いた時は、これまでのノーラのシュトライヒ家の活躍やマクシミリアン叔父様の大活躍にあてられたって言ってたけど、この両家でしかもミスリアとヘルムートが力を合わせてやるのなら私的に大賛成だし頑張ってみようかと思いましたよ。


 お金が足りなければ私が出してもいいって言ったけど、それはお止めくださいと断られたw。

 リバーサイズ家もモルトケ家も真面目過ぎるっていうかそういう貴族家なんだよ。

 

 これも美麗から色々と教えて貰いました。


 チェーン店展開にはお店を出すのに直営店とフランチャイズがある。

 ノーラのシュトライヒ家はお金持ちでチェーン展開しても全部が直営店だ。

 でも、リバーサイズ家もモルトケ家も真面目だけどシュトライヒよりもお金がない。

 そこで、フランチャイズ展開する為に、店舗を出す地域の貴族に誠意をもって話し合いに出向き、フランチャイズを増やして行く。

 

 お店も、ノーラのバーは綺麗で高級感があって、ワインやカクテルが主体の貴族に人気のお店だけど、ミスリアが考えているのは私の知っている居酒屋のような感じだ。


 カウンターじゃなくて、普通に木の簡単な椅子とテーブル、料理もおつまみのようなものがいいっていうから私も面白くなって沢さんに色んなおつまみの作り方を習いましたよw。

 一緒に恵一さんも習ってたから、あのホテルのレストランでも頼めば隠しメニューとして作ってくれると思うw。


 結構簡単なもので手軽に安く食べられるものばっかだね。


 メニューは概ね、

 牛すじ大根、冷奴、チーズを薄い肉に挟んだカツレツ、タコの唐揚げ、だし巻たまご、豚の角煮、枝豆、長芋のバター醤油焼き、きゅうりの胡麻あえ、唐揚げ、手羽の甘辛揚げ、焼き鳥、ミニピザ、ジャガイモのガレット、タコわさ、サラダ各種というおつまみメニューだよ。

 生で食べるお刺身系は流通の関係で今回はパス。


 お酒を居酒屋へ飲みにいらっしゃる方、こんなので合ってますか?


 どの料理も難しくなくて、安い素材ばかりなので本当に安価に提供が出来る。

 リバーサイズの副料理長をリーダーにして頑張りましたけど、クルトがどうしても一緒に教えてって言うので断る理由もないかと参加してもらいました。


 でも、また私が料理したらめっちゃ引いてましたよ。

(あの肉にフォークをザクザク刺した時以来だねw)


 例えば、


『きゅうり(ククミス)の胡麻(セーザメ)和え』


「ソフィア様、これ麺棒です。粉は何ですか? 小麦粉でしょうか?」

「いえククミスですよ」

「えっ!」


 私はまな板にきゅうりを置いて棒で叩いた。


 バンバンバン。


 きゅうりを棒で叩くw。ガンガン叩くw。

「あわわわ、ソ、ソフィア様、なんか怖いです」


 はい、またクルトから『怖いです』頂きましたw。

 へにゃってなったキュウリを手で千切る。

「えーっ」


 水が出るから良く絞るよ。

 ここに、鳥ガラスープの素小さじ1/2、ごま油小さじ2、胡麻適量で良く和える。

 お好みで胡椒を振って出来上がりw。


「包丁とか調理器具を一切使わないなんて、、、」

「麺棒を使ったじゃない」

「いえ、麺棒は叩くものではなく粉を伸ばすものです」

「こういう調理法なんだよ。叩いて柔らかくする仕込みが大切なんだって」

「は、はい。良く覚えておきます」


 ミスリアとノーラはお酒が好きな事もあって仲が良く、ノーラが作っているワインやシャンパンもお店に提供してシルバタリアのウルリヒ兄さまの婚約者アリッサ様からは黒糖焼酎やラムも提供して貰える事になったよ。お酒を飲めない人の為に、グレグリストのエルフリーデ様から、グレッグコークやグレッグジンジャエールなんかも提供して貰う。

 勿論、逆にドラフトビールはノーラのお店にも提供するし、ノーラのお店ではジンジャエールなんかは提供済みだよ。


 一応、焼酎でもカクテルみたいなサワーがあるって言うから教えて貰ってきたらノーラも飛びついて来たよw。今やカクテルと言えばノーラw。

 レモンサワーはレモンを半分に切って果汁を絞っておいてグラス一杯に氷を入れて焼酎を注ぎ、炭酸水を加えてマドラーで軽く混ぜる。他にも、リンゴサワー、グレープフルーツサワー、柚子サワーもあって、グレープフルーツサワーはジンジャエールで作っても美味しいそうだ。

 焼酎のジンジャーエール割り、焼酎のサンライズ(オレンジジュースとシロップ)、焼酎のマリー(トマトとバジルと塩、カクテルのブラッディマリーみたいにグラスの縁に塩をつけるカッコイイやつw)、焼酎のフレッシュカクテルなんかだね。

 コツは、グラスはよく冷やす、ソーダは縁に沿って注ぐの2点だね。


 基本は聞いた通り教えたけど、シロップや砂糖、トマトなんかの素材も少し違うだろうから、もう美味しいカクテルのバランスはノーラに任せたよw。


 チェーン店の配送は飲み物の配送センターを使って綺麗に全国展開出来ましたw。


 勿論冷凍装置は使ってますよ。ビールの美味しい温度は夏なら4~6℃、冬なら6~8℃らしいですけど、どうですか? 美味しいですか?

 

「ぷはぁ、姫様、最高です♪」


 ははは、ミスリアはジョッキが小さく見えるよw。


 たった一つ、私からの要望として『お酒は楽しく飲みましょう』というのを守って貰うようにしたけど、ミスリアも大賛成で、普通の貴族はそんな事は言わないんだけど、さすがリバーサイズ、お店のルールとして『無礼講』として、貴族が飲みに行っても領民が飲みに行ってもサービスは変わらないし領民も安心して行ける居酒屋になりましたw。


 貴族が行っても話しかけられるルールなんだけど、まあ簡単に話しかける人はあまりいないけどね。

 でも、私が言ってたサブカルチャーのうち、封建社会で中々実現しづらかった居酒屋も出来ましたよw。


 でも、これ難しくなかったし、配送系もお店の展開も殆どリバーサイズ家とモルトケ家の方々が頑張っていて、ミスリアとヘルムートが力を合わせてやってるのを見てるだけでも私も嬉しかったよ。


◇◇◇◇◇


【冒険のはじまり】


 グレグリストから仕入れているお魚は前の氷で冷やす技術でなく、今では完全に冷凍して運べる。

 つまり私の所まで冷凍されてカッチンカチンだけど新鮮に届いて、しかも冷凍によって寄生虫の心配もなく美味しいお刺身が解凍すれば食べられるようになったんだよ。


 江戸前寿司だけじゃなくて普通のお寿司でもやっと行ける!


 そもそも蒸気機関の蒸気船にこの冷凍装置を積み込めば取ったその時にも冷凍出来るからこれまで以上に新鮮! もう言う事なしだね。


 今日のお昼はクルトもマルテもノーラも大好きなお寿司だ!


 わーい、私も大好きだよ!


 お父さまが今日は一緒にお昼だけど、お母さまやエバーハルトお兄さまは忙しくて外出先なのだそうだ。よく働いてますね。(←今自分だけ休暇中w)


 そう言えば、お父さまにも最近なんか呆れられてる感じがするんだよね。なんか兄弟だからか私への態度もマクシミリアン叔父様みたいになって来た気がするよw。


 お父さまは食事しながら相談してきたよ。

 今回はお説教とかじゃなくて純粋に普通のお話でしたよ。


 お父さまとお母さまが夏に結婚20周年になるそうだ。

 随分先な気がするけど、、、。


 その結婚記念日にお父さまはお母さまへ忘れられないような宝石のようなプレゼントをしたいのだそうだ。

 私的にはそうですか。頑張って購入してくださいという感じなんだけど、お父さまが買いたいような宝石がないのだそうだ。

 

 まあ、お母さまも普通に売ってるのは自由に自分で買ってるからね。

 お母さまのデパートの売り上げなんて物凄いから宝石の仕入れもやってるしそれのいいのは自分で買ったり加工して貰ったりもしている。

 当たり前かなと思うけどお父さまとしては、そのレベルのものを記念としてプレゼントしても忘れられちゃうのではないかと心配しているのだそうだ。


 私の本心の意見。『うん、それはきっと忘れるなw』


 とは言えないからね。でもお父さまは本当にお母さま一筋なのはひしひしと伝わって来るよ。


「気持ちで良いのではありませんか?」


 なんか表情が少し渋い、、、。


 正直、力になりたいけど、宝石関連はお母さまがやってて私は判らないからね。

 そう言えば、、、。


「お父さま、そう言えば以前『ゲートルード様の集めていたお宝』を買い取ったのではありませんか? 領地のお金で買ったのであれば、それをお父さまの自己資金で買い取ってお母さまに送れば良いのではありませんか?」

「ああ、あれか、、、」

「宝石はないのですか?」

「いや、ある。しかも王妃様のお持ちになったものだ。しかもそのうち一つは使われてもいなかった」

「そういうのならお母さまも大喜びだと思いますよ」

「いや、それは無理だな」

「えっ、何故です?」


 いやー、本当にそんなのあるんだね。


()()()()()()


 信じられない程の大きさのブルーダイヤモンド、パープルサファイアで、

 ブルーダイヤモンドは、健康問題、謎の失踪や死亡、失脚などが噂されていたもので、実際にご利用されていたゲートルード様は確かに失脚した。

 この宝石を付け始めてからは健康問題も始まったらしく、時々倒れるようになったそうだ。

 なんとなく普通の食事の問題な気がしないでもないけど、失脚の話は本当だからね。


 使っていなかったパープルサファイヤの方はもっと血生臭い呪いだという。

 今は厳重に倉庫に保管してあるそうだ。

 日本の神功先輩辺りが聞いたら飛び上がって喜びそうだねw。


 暇な貴族達の噂なんだろうけど、いくらトンデモない大きな宝石であっても、失脚したり、血生臭かったりする宝石をお母さまが貰って喜ぶはずはない。


 何しろ誰よりも貴族の噂話に長けているのがお母さまだw。


 あっ、そうだ。


「お父さま、わたくし一年半の優良休学を頂いたのですよ」

「判ってる。だからここにいるのだろう」

「最近、冒険者の方にお伺いしたのですが、ここから南東にズンダランドという大きな半島があって、そこは様々な鉱物、特に宝石が沢山取れるそうです」

「ほう。でも遠いのだろう?」

「わたくしが今回作った船であれば半月もあれば行ける距離です」

「そんな近くにあるのか? 聞いたことがないな」

「いえ、かなり遠いのですけど船が速いのですよ」

「・・・で?」


「はい、もうお父さまにもご理解頂いているようですけど、わたくしがそこへ行って、世界最高の宝石を買って来ますよ。まあ現地の方と取り引きして手に入れますけど、どうですか?」


「ああ、わたしは何でエバーハルトでなく、ソフィアに相談してしまったんだ、、、」


 何かお父さまが自己反省してるよ。

 時、既にお寿司w。いやお寿司美味しい。


 いや、わたしお休みで暇だし、エバーハルトお兄さまは忙しいのですよ。でも正直な話、行ってみたいと思ってたんだよね。


「恐らく止めてももう行くつもりなんだろ」

「判ります?⤴」

「もう慣れたからな」


「綿密な計画表、詳しい者の力を借りて保護者同伴だな。流石に行き帰りの一ヶ月私がここを開けるわけにもいかんしレオノーレに頼む訳にもいかないが、、、」

「国務省の許可ですよね。親もいない人もいますから保護者扱いでも大丈夫です。私の方で手続きしますからご心配いりません」

「ヤスミーンを付ける。危険な事はもう禁止だぞ」

「判ってますよ。もう前ので懲りてますから。では日程が決まったら計画書を提出して出航しますね」

「仕方ない。判った」


 冒険のはじまりの予感だw。


◇◇◇◇◇


【仕込み:どれだけ素早く料理が提供出来るか】


 沢さんによれば、居酒屋などで提供するおつまみは出来るだけ素早く提供する必要があるそうだ。

 じっくりと時間を掛ける料理ではなく、お酒を飲みながら注文する為に、おつまみのない時間を減らす事が必要だし、食べたい時に出さないと残される事もあるそうだ。


 まあ、そりゃそうだね。

 私がこれまでに習っていた一連の手順のように、一時間前に料理を始めて夕飯つくるとかじゃないものね。レストランもそうだけど、こういうのも全部早さ勝負か。


 準備しておけば直ぐに調理が終わるものもある。

 つまり『仕込み』が重要になる。

 何をどれくらい準備して、残りの手間を注文してから作る。

 料理によって、ここまで仕込んで、ここから仕上げと全部を対処する。


 この消費量も簡単な数学予測が可能だから各店店舗を集計して正確に予測できるようになれば、きっと無駄が減るはずだ。


 マティーカに協力して貰って店舗毎に育ってくれれば大丈夫だね。

 でも余った食材は翌朝孤児院の子達を呼んでお料理教室だ。みんな美味しい物が作れるコックさんになってね。


 日本ではもう沢さんが居酒屋のチェーン店やればいいのにw。



◇◇◇◇◇


【リズと海賊】


 航海の冒険も『仕込み』が大切だ。

 優秀な乗組員と適切な判断が可能な船長。食事、家事、護衛、これらを上手くできれば快適な冒険も出来るはずだ。


「ほらほら、最初からわたしの言った通りでしたね」

「違いますぅ、リズさんじゃなくて、アン・バニーさんを紹介して欲しいだけです」

「えー、わたしもセットですよ」


 ぐっ、この人、、、w。

 

「アン達は今暇だと思うから、私が言えば大丈夫だと思いますけど、どうしますか?」


 どうしても自分も連れて行けって事だね。まあ仕方ないか。


「お願いします」

「但し条件があります。・・・」

 ・・・。

「えー、、、うーん、まあ、ついでと言えばついでかな」


 ・・・。


【ラヴェンナ】


 国務省へ外国の渡航手続きに行くと、クルツバッハ伯爵が出て来て呼ばれました。

 いや、普通の手続きなのに国務長官は出てこないでしょ、普通。


「ソフィア様、こちらは海外ですが、親代わりの騎士団副団長ヤスミーン・フォン・クラトハーン様は義理の叔父にあたり血縁関係にございませんね」

「ちょっと皆忙しくて時期が合わないのですよ。良く存じていますし問題はないと思いますが難しいですか?」

「いえ、規則的には両親のいない子供達もおりますので責任の持てる方でしたら大丈夫です」

「良かった」

「でも、ソフィア様の安全の為に、今回は当家のラヴェンナをお連れください。それで許可させて頂きます」


 これ、国務長官の横暴だよねw。まあ許可が貰えるなら一人くらいならいいか。


「判りました。それでお願いします」

「はい、では手続きを進めますので少しお待ちください」

「はい」


 ヤスミーン様じゃダメだったよ。



◇◇◇◇◇


【冷凍野菜】


 ビタミン飴は用意するけど、野菜も『仕込んで』おけば使えるよね。


 安定電源待ちな状況で、強い真空ポンプも必要なのでまだ『フリーズドライ』は作れないんだよ。

 結構な装置を作らないとならないからね。


 生パスタじゃなくて乾燥させたパスタや米も全然大丈夫だし、パンも作ればいいだけだね。

 まあ、もう普通に売ってるけどねw。粉から生でも作れる。


 だけど、野菜でも冷凍出来るものがあって、適したものであれば冷凍すれば1か月位なら充分に保存可能だ。

 ブロッコリーとかネギなんかは簡単に冷凍出来るし使う時も楽だね。

 他にも枝豆とかも美味しいw。


 一般には出してないけど、この為に厚手のビニールまで作ったからね。


 肉や魚の切り身も冷凍状態なら充分に食料は持つだろうから冷凍庫でも行けそうだね。

 自然解凍すれば肉も魚も大丈夫で、可能なものは調理した状態の冷凍でも美味しい。

 カレーでも一杯作って持って行こうかなw。


 焼き鳥も串に刺した状態でビニールで挟み真空ポンプで空気を抜きビニールを熱で圧着する。

 この状態で全部冷凍するよ。

 10回位パーティが出来そうだ。

 

 野菜はプランターで育てているものを持って行くのもありかなw。

 多分もう出ないってこの前言ったから意地でももやしは使わないよw。


 薬がまだ用意出来ないから出来るだけ現地のものは食べないで食料は持って行って、こっちが現地の人にご馳走するくらいでいいよね。


 私の計算では、ここからアエジープトスまで2日程度、紅海に入ってアエジープトスからズンダランドまでは7日程度で行ける計算になる。

 勿論、全速力ではなく、昼間40ノットで8時間、夜間20ノットで16時間の計算でだよ。


 料理人は別途クルトとカリーナと他のお手伝いさんにお願いして、部屋の清掃なんかもメイドのケイトとハイデマリーがバッチリ出来る。後輩も一緒に働いているからその子達も手伝える。

 このサービス部門が10名。船の機関室、状態維持要員が6名で船体とエンジンの軽微な問題は治せるけど、ちょっと複雑なのは無理なのでクラウと船を作って貰ったハシェルさんを入れて8名。

 一応船員の方は操船や帆の作業も出来るそうだけど、あの船には帆はない。

 

 私の側使えと護衛が10名だ。

 今回の目的は宝石なので、宝石に詳しく金細工にも詳しい宝石職人のカスパーさんを一人連れて行くつもりだ。


 海賊が説得出来たとしても半分の45名位にしかならないと思ってます。

 90人まで泊まれるクルーザーにとって半分にも満たない人数だけど、それにしてもやっぱ多いよねw。


 その1か月強の食事だから結構な分量ですよ。

 仕込みは大切です。


 まあ、女海賊さん達を説得してからだね。

 

◇◇◇◇◇


【バイキングの説得】


「はい、入浴設備にレストランもあります。食事や部屋の清掃などの生活はこちらで保証します」

 

「な、、、」

「お、おい、姉御、絶対に胡散臭い話だぞ」


 この海賊の一人はターオン生まれのメアリー・ルード。アンの部下で操船をやっている人だ。

 まあ海賊じゃなくてこの人達は自分達の事をバイキングって言ってるんだけどね。


「いや、それくらいならありそうな船だったんだ」

「あの貴族のホテルみてーだぞ。それにしてもアエジープトスまで二日なんて、ありえねースピードは信じられねーな」

(※ターオンにあるロイヤリストホテルの事)


 まあ見た事もない船だし乗ってもいなければ判らないよね。


 ここでメアリーさんが『胡散臭い』って言ったのはやはり慣用句で『ピスコーゾス』って言ったんだけど、これは英語の『fishy』と同じで直訳の意味は『魚臭い』だねw。


『ありえねースピードは信じられねー』の方も慣用句で、『クムテルノムサーリス』って言ってるんだけど、これは英語にすれば『with a pinch of salt』で、日本語直訳なら『塩をひとつまみ加えて』だね。

 慣用句で、英語で言えば『You have to take her “groundbreaking” speed with a pinch of salt』って言ってるよ。『彼女の「画期的な」スピードを疑ってかかる必要がある』って言う意味だね。


 えっ? 言葉の説明はいらない? そうですか。それでなくても毎回長いのにカットしろですかw。


「いや、この姫さんの言う事は本当だ。メアリーもあれに乗れば直ぐに判る」

「姉御、そいつは本当かい」

「ああ。本当だ。あれは帆船なんかじゃねーんだよ」


 今回は船の漕ぎ手はいらないから人数は少なくて済む。あれは普通は奴隷労働なんだけど帆もないよ。


「姫さん、こっちは全部で10人だが金銭で雇いたいって事で、さらに怪我をしたり死んだ時も補償する死亡時補償金に保険金なんてのはいらねーぞ」

「それはこの契約に含まれるのでご承知おき下されば大丈夫です。死亡時の受取人だけ決めてください」

「しかし、バイキングに対して海賊行為は禁止ってのはどういう事だよ」

「現地の方を傷つけたり、脅して金品を奪う事を禁止するだけです。正当な取り引きで儲ける分にはご自由にかまいません。グレースフェールの品物を購入する初期費用が必要であればわたくしの方で貸付させて頂きます」

「なる程、結構、美味い話だとは思う。しかしあたいらは人に強要されるのが嫌いなんだ。何が禁止なんて言うなら他を当たって貰おうか」


 ・・・。

 まあ、簡単に海賊を説得できるとは思わなかったけどね。


「今回の報酬とは別に、終了したらこれを差し上げます」

「なんだい?」


 ピラッ。


「こ、これは、、、」

「なんだこの詳細な世界地図は!? リズ! 話が違うじゃねーか」

「本当よ、この前見せたばかりなのよ」

「おめーの地図よりよっぽど細かく書かれてるし海流も詳しく書いてある」

「姫さん、こいつは本物なのか?」

「えーと、細かな部分は違う事もあるでしょうけど、多分あってると思います」

「良し! 判った、羅針盤もあるんだな?」


 まあ、六分儀もあるんだけどね。説明は後でもいいね。

 

「ええ、勿論用意してあります。気圧計も大丈夫です」

「何だいその気圧計ってのは?」


 これもないのか。


「大気圧の測定器で、低気圧、つまり嵐が予測出来ます」

「おう、すげーもんだな。ズンダランドの取り引きなら先にサフランドへ行けば、メアリーの知り合いが通訳が出来る」

「では先にそちらへ寄りましょう。それで大丈夫そうですが、いかがですか?」

「但し、姫さんの欲しいようなデカイ宝石はなかなか手に入らねーと思うぞ。デカイのもあるにはあるがみんな汚れてんだよ」

「綺麗にすれば大丈夫なのではありませんか?」

「いや宝石の中が汚れてるんだよ。見りゃあ判るさ」

「では見るまでのお楽しみですね」


「姉御、これならあそこに行けるんじゃねーか?」

「ああ、そうだな。姫さん、一つだけ頼みがある」

「なんですか?」

「この地図のここにあるマダガスカルに寄りてーんだ」

「うーん、恐らく余分に一週間位ですかね。10日間余裕を見れば行けると思います」

「帰りでいいが、寄ってもいいかい?」

「何故寄りたいんですか?」

「昔馴染みがいるかもしれねーんだよ。海賊の仲間ってのはまあ家族みたいなもんさ」

「そうなんですね。いいですよ。私も行ってみたかったです。マダガスカル。生物がとても楽しみです」


 南米ならガラパゴスだけどね。


「知ってんのかよ?」

「いえ、行った事ないですよ」

「リズ、何なんだよこの姫さんは」

「こっちが聞きたいくらいよ」

「そ、そうかい。判った、じゃあ頼むぜ」

「判りました。では予定を作り次第連絡しますね」


◇◇◇◇◇


【不労所得の公平な配分】


 東京の会社『イデア プロキシマ』が儲かっていて税金はかなり多くなる予定だ。人材に投資もしてるから調整が必要なのだそうだ。他に使い道はないんだけどね。税金はまあそう言う制度だから仕方ないけど凄い制度だよね。


 特許の登録はうちの会社の連絡先だけど発明者はコアな個人名になるよ。


 これらはみんなで話し合ってその案の貢献度合いをパーセンテージに分配してみんなにサインして貰ってる。


 随分と前の話もあるんだけど前島さんの記憶力が凄くて、私も結構記憶には自信があったけど前島さんは発言内容をかなり正確に覚えていてみんな「そうだったよ」って自分の発言を前島さんに言われて思い出すことも多かったよ。


 最近は議事録を録画、録音してAIでまとめて内容を残してるから新しい物は簡単に貢献度合いが判る。と言うかそれもAIで試しているところだ。


 何か商売になって契約により技術が売れるとそのコアな人と貢献度合いによってボーナスな報酬が加算される。


 美鈴先生がトップで葵さん、紀州さん、利佳子博士、小春さん、前島さん、三矢さんの順で稼いでいて、既にみんな大きな声では言えないような高額納税者なんだよ。私ももう訳がわからないレベルだけどそう言うのは会計士に任せてます。儲かってるから執行役員の新倉先生の報酬も結構あります。


 葵さんや小春さんは目が回りそうって言ってるけど利佳子博士や紀州さんは報酬とかどうでもいいって口に出して言っちゃうような人達なんだよ。美麗が聞いたらマジで怒りそうだよ。まあ美鈴先生も利佳子博士達に近いけどね。


 一応久美子先生の意見が割り振られてるのもあるから少しだけど久美子先生にも所得はあるw。少し事務でも働いて貰ってるしお給料は高いよ。


 西園寺、片神無の順に今は六社と契約を結んでる。


 なんか働いてる気が全くしないけど頭が良くて本当に勉強を頑張った人達は上手く出来ればこんなに稼げるんだってわかったよ。その『上手く出来れば』が難しいんだろうけど、私達には新倉先生がいるからね。


 私も勉強とか余り好きじゃないけど頑張ってみようと改めて思ったよ。


 勉強する機会なんて大人になるまでの人生で言えばスタート地点だと思うから勉強は嫌がらないでやろうと本気で思ったよ。今は子供だからずっと勉強してるよって感じてるだけなんじゃないかと思う。


 まあ大人になっても勉強は一生だろうけどね。

 だからこそ出来るだけ嫌いにならないようにしようと思う。


 こんな子供の頃のチャンスの時期に勉強が嫌いで判らなくてやりたくないとか本気で勿体ないと思う。


 いや、マジで以前勉強が嫌いだった私の言葉だと思えないよねw。


 でもそう言うのがわかっただけでも私はすごく幸せなのだと思う。



◇◇◇◇◇


 

ソフィアはズンダランドへ向かいアエジープトスに立ち寄り、サフランドで現地の厄介な事にも対応します。そしてズンダランドで見た物は!

夢美の超古代遺跡は西園寺 VS 片神無のロボット大戦に!w

次回:ズンダランドへ

お楽しみに♪


 えーと、人気がなく打ち切りと言ってもキチンと章の最後までは公開しますのでもう何回かはある予定です。

 この知識チート路線は正攻法では難しい事が判りましたが、ジャンル的に皆さんの好きなジャンルなどがあれば教えてください。よろしくお願いします。

 

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