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ドゥープレックス ビータ ~異世界と日本の二重生活~  作者: ルーニック
第二部 第一章 夢の海外旅行
118/129

閑話 震源地

 ソフィアの方は普段は実質的な話ばかりなので、なんとなくカイとソフィアが仲がいいのは話に出ていたかもしれませんが、実際はカイとソフィアはいつも子供達のように馬鹿な事を言い合ってふざけている間柄ですw。

 今回はそれにヘルムートが巻き込まれていますw。

ソフィアの方はカイ達との漫才回でレオノーレの怖さを見る事になりますw。

日本の八田さんは本物の探偵さんですよ。物語で本物って何ですかねw。

※この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、国、地方、大学、マスコミ、博物館の名称等は全て架空のものです。


【緊急地震速報】


 ウィーン、ウィーン、ウィーン!

 はっ! 朝っぱらの早い時間に地震速報で起きた。


 揺れてるよ。これだと震度3位かな?

 スマホを手に取ると震源地はどうやら日本海側でここ東京と震源地の間に私のホテルと別荘がある。


 ホテルはもう朝の営業を始めてるだろうからスマホで大丈夫だったか電話してみた。


「夢美ちゃん、おはよう。どうしたの?」

「恵一さん、今、緊急地震速報がありましたよね」

「うん、鳴ってたみたいだね」

「揺れとか大丈夫でしたか?」

「わかんなかったよ。この辺は体感地震とかめったにないんだよ」

「そうなんですか。わかりました。じゃあお休みなさい」

「おーい、もう朝だぞー」


 プチッ。


 ネットで見ると震源地は結構な揺れで東京も震度4か3だ。でも不思議な事に中間地点だと思うけどあの辺りは震度1になってたよ。こっちは揺るてるのに、、、。


 私は珍しく二度寝しないで起きたよw。下へ降りると母が朝ごはんの支度をしてた。


「もう、また揺れたわよね。最近多くて怖いわ」

「うん、こんな朝早くから速報で起こされたよ。さっき恵一さんに電話したら『わからなかった』って言ってたけどあの辺はあんまり揺れないの?」

「うん、そうよ。体感地震なんて子供の頃から滅多にないわね」

「本当?」

「こっちに来てからよ、日本に地震が多いってわかったの。最初の頃は地震が怖くて毎回震えてたわ」

「何それ、日本には地震はどこでもよくあるよね」

「子供の頃から、殆ど経験がなかったのだからあの辺では地震は普通じゃないのよ。兄の所はこの前の大震災の時も棚に置いてあったお菓子の箱が倒れただけだって言ってたわよ」

「ふーん」


 いや、昔の大震災は私は判らないんだけど、こっちもかなり揺れたらしくて近辺の県でも棚が倒れるくらい凄かったらしいし都内でも交通が止まって大変だったと何回も両親から聞いたよ。

 お菓子の箱って震度いくつ?w


◇◇◇◇◇


【専門的見地から、、、】


 土木の専門家で防災系にも詳しい紀州さんに聞いてみた。


「あの辺りは特別に揺れない地域なんだよ。他の地域がスライムみたいだとするとあそこはそこに出来た固いオデキのようなもので、オデキの上にいれば他の揺れの伝わりが少ないよ」


 何この例えw。時々理解が難しい例えをする紀州さんw。

 この前はプリンに横から刺したポッチーだったっけなぁ。普通は刺さないから判らないんだけど、、、w。

 私は一緒に討論も仕事もしてるし仕事を頼んでもいるけど、未だに例えよりもこの人の事がよく判らないw。


「え、ええ。な、なんとなくわかるかもです」(いや正直よく判らないけど、、、)

「近くに日本有数のとても大きな川があるでしょ。そこからかなりの範囲になるけど特にあの辺りだね。人が生まれる前から何十億年も土砂が運ばれたのが堆積して地面が異常に強固になってるからだよ。昔はダムもないからね」

「震源地と東京の中間なのに揺れないんですか?」

「その通り。スライムはプルンって伝わるけどオデキの表面はそんなにプルンっていうのが伝わらないでしょ。ほら、このホームページに30年以内に震度7以上の可能性が書いてあるでしょ?」


 ちょっと紀州さん、一旦スライムから離れましょうよ。

 このページは防災のやつだね。

 

「はい。えーとあの辺は、、、0.1%?」

「まあ、こんな予測なんか当たった試しがない適当なやつだけど一応それなりに活断層とか調べて理論的には考えられてはいるよ。結構低いね」


「あの県は活断層はそこからかなり遠くに2つしかないし一番近くの活断層が震度7だった場合、、、震度3だってさ。あの辺りの地域の防災ページに書いてあるね。なんだよこれ。結構これ凄い話だよ」


 母の話は本当だったみたいだw。


 そう言えばルントシュテットも地震の記憶はないね。まあ母の田舎みたいなもんか。

 つまり震源地になる活断層さえ遠ければ大丈夫そうだね。活断層調査や防災も進めておかないとだね。

 これは紀州さんに頼ろう(相変わらず他力本願w)


「じゃああの辺りの災害は河川の氾濫ですか?」

「あの川は市民の住む場所から数十メートル位相当低いでしょ。あんなに谷底みたいな大きな川がどうやって氾濫するの。河川敷を野球のグラウンドみたいに何かに使ってれはそこの氾濫はあるだろうけど、それは市民が住んでる所じゃないよね。あそこが溢れるなら埼玉や千葉、東京は大洪水並の全部水浸しだよ」

「んじゃ台風?」

「あの辺りは平地なのに周りが山に囲まれているでしょ。過去の記録を調べればわかるけど高い山があると台風は来ないんだよ。内陸部だし」

「もしかして結構安全なんじゃ、、、」

「そうだね。言われてみて気が付いたけど災害はめったにない災害の少ない地域かもしれないね」


 後で母に聞くと困る事と言えば、風は強いし雷もあるそうだ。でもよく聞く自然災害は近隣で母の記憶にはないんだって言ってたよ。悪い所は平地だけど周りが山だから盆地みたいに気温が高くなることもあるそうだ。叔父さんの所は夏でも涼しかった記憶があるけどね。でもそれは自然災害とは言わない気がするけど。


 地震、台風、河川の氾濫、津波、、、。あそこはみんなほぼ無いんだね。

 昔から確か『地震、雷、火事、おやじ』だから、後は『おやじ』位かなぁw。


 えっ!? かかあ天下?w なんとなく母を見てると判るけどw。


◇◇◇◇◇


【ユメミン】


「ユーメミン♪」


 誰だよそれ。

 ギャルw。


 歴史研究部に片神無さんが来ると本当に調子が狂っちゃうよ。

 今日は葛城先輩と美麗もいる出席率の高い日だ。


「ユメミンさあ、田舎にかなり広い土地持ってるやろ? 登記がユメミンになってたから知ってるねんて」

 

 なんで調べてるの?


「あそこの土地使ってないとこ多いやろ。うちに売ってくれへん?」


 はい?

 何言ってるの?

 勿論売れないよ。


「夢美、まさか千里に浮気する訳じゃないわよね」


 いや、浮気って、、、w。

 別の美麗の恋人でもないからね。

 でも、あそこの事は私達だけが知ってる場所だっていう事だよね。


「いや、そんな訳ないじゃんか」



「待ちなさい、千里。それはダメよ」

「なんで美麗がそんなん言うん? 下がるわー」


「いや、えーと、以前この歴史研究部で行って知ってるのよ。あそこの土地は夢美も夢美の叔父さんも売るつもりはないわよ」

「なんや、そうかいな。ほなら近くの別の土地探すわ」

「貴方、まさか、、、」

「せやで、西園寺と同じようにあの辺りにうちも工場をいくつか移転するわ」

「えっ!!」


「西園寺の移転も、自然災害リスクやろ? うちもようやっと全国のスコアが出たんやけど、ユメミンのあの地域は全国の安全地域のほぼトップやからね」

「フッ、遅いのね、西園寺はもっと早く調べてるからもうとっくに移転してるのよ」


 さすが負けず嫌いの美麗。でも本当に美麗は努力して何でもないふりしてやってるからね。


「なんか悔しいがな。調査に時間がかかっただけで負けた気がするわ。これからガンダするわ」


 意味が判らないよギャルw。


「フフフフ」

「ヘッドクオーターはまだ移さんの?」


 !!


「そんな事を貴方に話せる訳ないでしょ。もうサプライチェーンの管制塔なら移したわよ」

「そうみたいやねw」


 いや、ここ中学の部活なんですけど。

 キミ達は何のお話をしてるのかな?


 葛城さんが歴史研究部っぽい事を話しだしてくれたよ。これ部活だよ。


「あなた方は歴史研究部なのに歴史のお勉強が足りてないようだわね」


「えっ!」

「なんでなん、高校生の元部長はん」


「歴史を詳しく理解していればそんな事は直ぐに判るでしょう?」

「うちも古文書まで調べて地震の記録とか確認してんで。何言うとるんや」

「そんな事じゃないわよ。勿論、古文書も確認すべき歴史だけど、何故あの辺りの古墳の数、縄文期からの遺跡が異常な程多いのか判るかしら?」


「部長じゃないや、葛城先輩。それはそういう古い時代から人が沢山住んでいたからですよね」

「うーん、九条さんの話は半分正解だわね。水も食料も手に入り易い沢山住むような住みやすい土地だった事もあるけど、その地域が滅びずに、災害にあわなかったからね。つまり自然災害が少なかったからよ。水害があれば住んでいた形跡も流されてしまう。津波なんてのも当然よね。古墳も跡形もなくなるわ。台風もそう。それに付随する土砂崩れも大きな地震でも同じだわ。あそこまで古墳や遺跡が多いのは万年レベルで続いた縄文期から人が生きていくのに都合の良い場所だからだわ。だから遺跡や古墳の数が多い所は当たり前に自然災害の少ない土地なのよ」


 葛城先輩は遺跡とか本当に好きだもんね。やっぱこういう理解が深いし詳しいね。


「でも、災害のあるような地域でも今は沢山人が住んでますよね」

「人は長生きじゃないから長いスパンで災害がある土地も過去の歴史では災害のあった記録があるけれど、人も多いしそういう土地に住んでしまうのよ。悪い人なら騙したり隠したりして土地が売られる事もあるわね。知らなかったで済むからこれは犯罪ではないわ。そういう時に地名に危険な名前を付けて後世に残したりしてるのよ。氾濫する川に龍の名前を付けたり、鬼の名前の地名なんかもそうだわね。それでも100年に一度とか300年に一度の災害だと『自分だけは被害に会わない』と人は思いたくなるものなのよ。貴方達もお家を買う際にはそういった自然災害のリスクを考えて購入した方がいいわね」


「世界中の死んで行く砂漠の地と違って日本は災害も多いけど、それは火山噴火で新たな地も生まれるような生きている命の地である証拠なのよ。ハワイなんかもそうだわね」


 いや、ちょっとそれは言い過ぎかな。鳥取砂丘もあるしね。


「八百万の神では、自然のあらゆるものを畏怖して(たた)えていた訳ですよね」

「そうね。日本人は神はそこに宿っているとは信じてないし思ってもいないと思うわ。けど、自然の驚異を畏怖して共生していく精神だから神に例えるのよ。本来は土地を切り開いて農業なんてその精神に反しているのですけど」


 うわっ、ネレウス神と同じ事を言う日本人がここにいるよ。農業が自然破壊だよ。

 でもそれは狩猟が主体の縄文文化だよね。その場合、人口にもかなり少ない限界がある。

 その後、作物を作る為に切り開いていったのが西から拡がって行ってみんな主義が変わって行ったけど、その最後の生き残りが征夷大将軍が討伐しようとしてた東北地方の蝦夷(えみし)達だよね。

 北海道の蝦夷(えぞ)とよく勘違いされることもあるけど、、、。

 まあ当時は寒くて当時の品種だと稲作が出来なかったせいだけどね。


 それは確かに日本人の元の精神とは言わないのかもしれないけど、私もネレウス神に反論したけど、農業はもう止められないからね。生きていけないからね。

 それでも自然や災害そのものと共生して日本人は生きてきているのは間違えない。

 災害にあっても力を合わせて乗り越えて来たのが日本人だ。まあそんな力を合わせる時に火事場泥棒みたいなのをすれば村八分なんて言う話も理解出来なくはないよね。

 私のパンフレットにも日本人の事を色々と書いている。


「農業はなければ今は生きていけませんからね。でも古墳や遺跡はわたしもそうだと思います」

「ええ、それでも日本人は災害でも力を合わせて生き延びて来たのよ」


 そうだね。 

 その日本の中でも安全な土地かぁ。


「成程、古墳や遺跡、それに地名ね。その通りかもしれないわ」

「ほんまやね。それは知らんかったわ」

「でも夢美の所は世界一安全そうだわ」


 えっ、えーと、美麗はあそこの古代の街の事を言ってるよね。

 いや、数十万年あのままなら確かにそういう可能性もあるけど、、、ちょっとみんなの前ではやめて。


 あっ、神功先輩がめっちゃ面白そうに私達のやり取り聞いてるよ。


 実際にはもうホテルは開業して、別荘もあるし、エレベータで地下にも行けるからいつでも探険は行けるんだけどね。まだ誰も巻き込んでないや。


「そわそわワクワク」

「神功先輩、そういうのは普通口では言いませんよ」

「ユメミンに冒険期待してる」

「いや、そのユメミンは勘弁してくださいよ」


 はぁ。


 取り敢えず、成瀬博士に連絡してみようかな。

 あの博士は美麗経由だから美麗と神功先輩に話すのが先かな。


「ほーん、んじゃどうやら震源地はユメミンなんやねw」


 うぐっ。

 

 私も美麗も神功先輩も驚いてるけど、震源地が私ってこのギャルは何を察しているんだろ。

 やっぱりこの人ヤバイかも。


◇◇◇◇◇


【特殊部隊】


 こっちの震源地はもっと近くて『お母さま』のようだ。


 大きな声ではとても言えないんだけど、この前の舞踏会の時にお母さまの興奮ぶりに私はちょっと心配してたけどお母さまに『愛人がいる』って噂がたってるんだよ。つまり噂の震源地がお母さま。


 上位の貴族家だとお妾さんとか愛人は普通らしいけどお父さまはお母さま一筋だからね。

 離婚とかになったら嫌だなぁ。まあ貴族として普通の事なら離婚じゃなくて許容かなぁ。

 お父さまが毎日不機嫌そうになったら嫌だなぁ。


 一応、私はこう見えても公爵家の令嬢なんだけど、よくマンガで見るようなスパイ的なのは知らないし私にそういうのはいない。

 この前公安調査庁を国に作って貰ったけど、国王様には『影』という人達がいたそうで、お父さまにももしかしたらいるのかもしれないけどね。マクシミリアン叔父様は部下をそんな風に使っていると何回か聞いてるよ。


 相談するならこれはマクシミリアン叔父様かなぁ。いや、マクシミリアン叔父様だとお父さまの血縁だからなぁ。


 そういう特殊機関とかないからね。

 いや、そう言えばあったよ。バーミリオン部隊はここでは特殊部隊だよ。

 でも斥候って言っても機動力を生かした戦争の敵陣の斥候だからね。

 スパイ活動や工作活動はやってない。


 うーん、この際私も作った方がいいのかな。子供だからもっと大人になってからかも。


 結局、身内じゃなくて、ヘルムートとカイを呼んで相談したよ。

 まあ二人共私にとっては身内みたいなものだけどね。


「判りました。作戦を立てて調べてみます」

「任せてくださいよ。姫様! 見つからないように上手くやりますよ」

 

 いや、なんか、カイにそう言われると逆にちょっと心配だよ。


◇◇◇◇◇


【途中経過報告】


「姫様、カイと手分けして調査致しましたが、途中報告です。レオノーレ様がパトロンとして出資しているものの内、疑われるのはこの8店舗です」


 私はヘルムートにリストを見せて貰った。

 お母さまは中央にいる事も多いのでルントシュテットと半々だね。


 パトロンだと一緒にいてもおかしくはないし、呼び出しても全く不思議じゃないから難しいなぁ。

 まあ調査段階だし、この中のうちで適した相手がいるのを調べて狙いをつけて確認するしかないね。


「では、調査の続きをお願いします」

「はっ!」


 なんか、秘密調査機関みたいになってきたよw。

 絞れて来たら私も探偵さんやろうかなw。なんかちょっと楽しくなってきたかも。


◇◇◇◇◇◇


【絞られる相手】

 

「調査した結果、おそらくこの2店舗の経営者と思われます」


 どれどれ。


 両方とも中央のレグリアにあるお母さまのデパート、ルノール2号店に入っているお店だ。


 ルノール2号店『ソフィーネ』店長『リオ二ー・フォン・アルデンヌ』19歳 独身 女性 ブルリアのアルデンヌ子爵家次女。ヘルムートの絵だと思うけど、短く切った髪の結構かっこいい絵が描かれている。

 

 この人は面識があるよ。結構背が高くてスラっとしてる人だね。

 貴族的な言葉使いも上手くて礼儀正しい人だ。

 商品知識も豊富で人当たりもいいからお母さまからお店を任されている。売上もかなりあって私も適任者だと思う。まあ私のお店なんだけどね。


 確かにパトロンには違いないけど、言うなれば経営を任せている感じだからね。


 なかなか私が突っ込まないのに痺れを切らしていらっしゃるかもしれないけど、勿論彼女は女性だよw。

 いや、ここだとそんなにおかしい話じゃないんだよw。


 よくこっちでも日本の文化の話をして面白がられる事がある。


 特に日本の話をみんなにして面白がられたのは、歌舞伎の女形とか宝ジェンヌやおねータレントの面白い人達で、常に日本では歴史的にも大人気ですよね。あの『武士道』の中には男色の作法が書かれた『隠葉』もあるからね。


 勿論、日本でこんな話で差別だとか言ってるのはおかしな政治家達くらいでおねータレントなんて大人気だからねw。でも性転換していないTは絶対にイヤだしダメですよw。まあ一時の誤解じゃないか一生の事なんだから後悔がないようにしっかりと確認してからご自由に転換してください。


 この話はもう10ページくらい書いてるけど、絶対カットされているから数行になってると思いますw。



 えーと、もう一人は、、、。

 ブッ!

 こ、この絵は、、、カイ巨匠の作品だねw。


 ルノール2号店『プルーディ』の店長『アイヴァン・フォン・ローゼンマイヤー』32歳 独身 男性。ローゼンマイヤー男爵家四男。カイの絵だと顔が想像しかできない。

 この人は知らないんだけど、この歳で独身だと奥さんを亡くされた可能性が高いね。

 確かプルーディは男性の貴族用の服を売ってるから、私も言われてデザインを提供した事はあるけど、この人の事は知らない。

 これはヘルムートかカイの方が知ってるんじゃないかと思って聞いてみたけど、行った事がないのだそうだ。

 なんで? って聞いたら、どうやら貴族の子供服なのだそうだ。

 確かに二人にはもう子供服じゃ無理だね。まあカイはでっかい子供みたいなもんだけど。


 これ、私の感覚だとどう考えてもアイヴァンさんの方が怪しいよね。


 話を聞くと、最近一緒に街で見かけられたり、ケーキ屋さんで楽しそうに会話している姿が良く見られたりしているそうだ。

 噂ってどっちかくらい噂にしないと全く判らないから聞いても面白くないんじゃないの?

 もう、噂の発信源の人もっと詳しくリアルに噂にして欲しいよw。


 情報集めでここまで来たけど、この後どうすればいいんだろう。



 尾行とか調査とかを進めて、証拠を掴んでお母さまにそれとなく注意をする。


 うん、これだ。お母さまに注意なんてむっちゃ怖くて勇気がいるけど私の家族の事だからね。

 

 でもそんなのやり方も知らないし、ヘルムートもカイも経験ないよね。

 尾行とか調査とかってどうやるんだろうね。

 マクシミリアン叔父様に聞く訳にもいかないし、、、。


 そうだ、美麗の知り合いに八田さんって探偵さんがいたよ。

 詳しく聞いてみよう。


【八田探偵事務所】


「おお、久しぶりだね」

「ご無沙汰してます。実は相談があるのですけど」

「仕事かい?」

「いえ、そうではないのですけど」

「相談なら一回五千円だよ」


 五千円w。相談で中学生相手にお金取るんだねw。まあ普通は仕事だから当たり前か。

 前島さんや利佳子博士なんかが異常だっただけだよねw。ケーキで良かったからねw。

 あっちも早く会社に出来て良かったよ。


「はい、それでお願いします」

「明日でいい?」

「いいですよ」

「じゃあ学校が終わったらうちの事務所においで」

「判りました。住所を教えて下さい」

「いいかい? ○○○~の四階だよ」

「ありがとうございます。では明日伺います」

「わかった」


 私は以前美麗の誘拐事件の時に一緒に行動した八田さんって言う探偵さんに聞きに行く事にした。

 八田さんは私の記憶のイメージだとよれよれのおじさんだけどねw。

 多分、色々と専門的な事は知ってるよね。

 日本の現代の探偵方法だろうけど聞いておけば為になるかもだよね。


◇◇◇◇◇


【日本の探偵さん】


 八田探偵事務所に来てみました。

 小さな雑居ビルの4F。普通のマンションみたいな感じだよ。呼び鈴を押してみる。

 ピンポーン。


『はーい』

『すみません。お約束した九条と言います』

『少々お待ちください』


 30歳くらいのお姉さんが出て来た。


『いらっしゃいませ。どうぞ♪』


 愛想のいい人だよ。

 奥へ行って八田さんを呼んでくれるみたいだ。

 奥の方で声がした。


『所長、以前所長が助けたお嬢さんが来ました』

『おい、依頼人の秘密は探偵なら大きな声で話すなよ』

『わたしは探偵じゃありませーん』


 えっ? w。 そうだっけ? まあいいけどw。

 なんか漫才っぽいのやってるよ。


 よれよれおじさんがYシャツに緩めたネクタイで出て来た。

 無精ひげが生えてるよ。剃らないのかね。別にいいけど。


「やあ、久しぶり、こっちへどうぞ」


 小さな打合せ室みたいな所へ二人で入った。もう一部屋同じようなのがあるみたいだ。

 ここで依頼者の話を聞くんだね。


「おっ、志奈子ちゃんサンキュー」

 

 さっきのお姉さんがお茶を出してくれた。


「依頼じゃなくて相談だって言ってたよね。この頼れるおじさんに何でも相談して」


 あははは、なんかこの前の印象とガラッと変わって話すと面白い系の人だね。

 美麗の時は私も色々といっぱいいっぱいだったからな。


「えーと、探偵さんの仕事を出来るだけ教えて欲しいのですけど大丈夫ですか?」

「なんだそんなの事か。一から全部教えてあげるよ」

「いいんですか?」

「構わないけど、もしも夢美ちゃんが、あのマンガに出て来る『カナン君』とか小説の『名探偵』みたいなのを想像しているのなら、前に言ったかもしれないが、全然違うからね。普段は浮気調査ばかりだ」


 いや、今はそれが知りたいんだよ。


「大丈夫です。でもそういうのって企業秘密とかじゃないんですか?」

「別にいいさ。でも怪しい話は少し目を瞑ってな。ここに入社して3日で辞めちゃう奴にも教えてるんだからな。但しうちの事務所の事だから他は違うかもだけど俺も元々他の探偵事務所で育ってるんだよ」

「そんなに直ぐに辞めちゃう人もいるんですね」

「そりゃ普通の仕事じゃないし、一般企業で言えば完全にブラックだからね」


 そうなんだ。八田さんは完全に笑ってるよ。つまり当たり前にブラックで笑える程な訳だねw。


「探偵ってのは人の尾行をするにも朝早くから夜遅くまで、マルヒが寝てから切り上げてレポートを書く。だから睡眠時間も極端に短いし若い子でも体力が持たない事も多いからね」


 マルヒって何だろ?


「マルヒってなんですか?」

「ああ、ごめん。そういう用語からか。普通警察の用語なんだけど探偵も使ってるよ。マルヒは秘密の事じゃなくて被疑者つまり尾行するターゲットの事だよ。他にもマルサンは参考人、マルモクは目撃者、マルガイが被害者なんかだね。後、マルヒに尾行がバレる事をヌケるって言うな」

「なんか刑事ドラマなんかみたいですね。確かマルボウが暴力団でしたっけ?」

「ああ、マルボウはドラマなんかで一般化しちゃったから今はマルBだね。他にもサンズイは汚職、ニンベンは偽造、ウカンムリは窃盗だね。漢字から来てる」

「窃盗はアナカンムリではありませんか?」

「なんか以前もそう言われたのを聞いた事があるよ。昔からそう使われてるから別にいいんだよ」


 へぇ、いいのかw。


「なんでそんな言葉を使ってるんですか?」

「例えば、電話なんかで連絡している時に一般市民に聞かれて『被害者は暴力団にやられました』とかだと驚かれるじゃない。判る人もいるかもしれないけど、パッと聞いて判らなければいいんだよ」

「そうなんですね。判りました」


 他にも、会話を早くするために敬語は使わず、了解を了って省略したり名前も山さん、良さんって短くしたり、見習いの人は番号で5番とか8番って言ってる事も教えて貰った。


「まず、うちは興信所と探偵事務所をやってる。興信所は昔は会社の信用調査だけど、今はネットを使って直ぐ判るサービスなんかもあるから、興信所はお見合いや結婚相手の信用調査が多いな。聞き込みはスーツ着て近所なんかでは『おめでたいお話ですのでご内密にお願いしたいのですが、実は良いお話があそこのお嬢さんにありまして、、、』って聞くと大抵大丈夫だな。探偵の方は小説やあのマンガの『カナン君』みたいなのはほぼなくて、前に一緒にやった依頼みたいなのは年に1回から多くて3回位だよ。警察と一緒にやったのはこの前は3年前かな。前にも言ったかもしれないけど浮気調査ばっかだな」


 おじさんだからかその例え話は今日二回目だけどちょっとイメージしてたのとは違うけど私はその浮気調査が知りたいんだよw。

 でもこの八田さんの話し方はまるで色んな人格を切り替えられるみたいだね。探偵さんの特技的なのかもだね。


「変装なんかもする時はする」

「どんなのですか?」

「かつらかぶったり、伊達メガネや綿を口に含むくらいだな。髪型が変わって、顔の輪郭が違えば、余程親しくなければ判らないよ。後はリバーシブルの色の違う上着なんかだね」

「そうなんですね。でもその浮気調査を教えてください」

「マジか。あははは、ちょっとJCには刺激が強いかもしれないけどね」

「多分時々耳を塞げば大丈夫ですw」


「普通の依頼は例えば旦那の浮気を調査してくれっていうのは、奥さんか奥さんの親族からの依頼になる。結構お金がかかるんだよ」

「それは何でですか?」

「まあ、大変だからね。普通に尾行するにしても一人で尾行する場合は相当な技術がいるから、ここでは所長の俺くらいしか出来ないねw。普通は2人、大がかりだと3人だ。それだけ時間も長いし普通に人件費を考えてもかなりになるだろう?」


 確かに朝出かけてから寝るまで尾行するとかだと15時間とか尾行して最低でも2人だから、普通が一人一日2万円としても、一日で8万円か。


「それでも一日で浮気が判るとは限らない。何日もやれば数十万にはなっちゃうんだよ」

「そうですね」

「たちの悪い探偵事務所では、浮気の証拠を掴んでも、未だ証拠が見つかりませんって依頼者に言って引き延ばす事もある」

「それは酷いですね」

「ああ、でもうちはそんな事はしないぞ」

「信じてますw」


「まず、詳しく依頼者から話を聞いて、行動パターンを確認するんだ。例えば浮気の気配が感じられるのが木曜の朝、旦那の洗濯物から口紅が見つかったとするだろ?」

「そんなベタなのがあるんですか?」

「あるんだよw。そうすると水曜の夜にデートしてるから調査するのは会社を退社した後の帰りを尾行すれば見つかりやすい。相手は水曜がお休みのサービス業の可能性が高いなんてのを考えていくんだ」

「成程」

「これはかなりグレーだけど、今はスマホになったから電話の盗聴とかそういうのはなしだけど、家の中にマイクを仕掛けて情報を聞く事もある」

「そんなの盗聴とか違法ではないのですか?」

「依頼者の奥さんの家でもあるから仕掛けられるけど、かなりグレーであることは間違えないね」

「そっか、奥さんが自分の家につけてもおかしくはないですからそれを手伝うっていう事ですね」

「うん、そんな感じ」


「今は、結構便利になって来たから尾行も楽になったんだよ。昔は尾行していても駅の方へ行ったら乗るかどうか咄嗟に判断して切符を買わなきゃいけない。小銭も必ず用意して便利なのをベルトに付けてたな。でも乗らないで通り過ぎる事もあるし、急行に乗ることもあるから行動を見て判断して予測しないと見失っちゃうんだよ。でも今は鉄道カードがあるからそういう尾行は楽だ」


「今はどんな尾行なんですか?」

「そうだね。気が付かれないように尾行する。曲がり角とかで曲がれば見失わないように足音を殺して角まで走るから靴は静かなものを使う。マルヒよりも前を歩いて尾行するなんていうのも高等テクだよ。どこかにマルヒが立ち寄れば、入った時間と出た時間、場所をメモする。トイレなんかも全てでだね。14:08 ○○駅東口トイレに入る って感じ。誰か相手と会ったらまず相手の写真を撮る」

「なんか盗撮とかになりませんか?」

「これもグレーだね。内緒にしてもらいたいけど、条例なんかでは、迷惑禁止条例に引っかかることもあるけど、一般的には「性的姿態撮影等処罰法」というエッチなやつの撮影の事だ。車の中でやってるのとかだよ」


 はい、ちょっと最後の方は耳を塞いでましたw。


「相手が判れば別れたら相手を尾行して相手を特定する。こういう時に二人だと別々に尾行する事もある。まあ二人いないと飯も食えないしトイレもいけないからな」

「成程ですね」

「そんなタイミングを繰り返せば、何回かでエッチなホテルに入ってくれる事も多いんだよ」

「そこのホテルに入るところか出てきたところの写真をとって証拠にするんですね」

「その通り。証拠を押さえレポートにして終わりだ。普通に証拠が見つからなくても人件費を貰う訳だから空振りの時もさっきのメモでレポートは書くよ。まあ、そんなとこかな」

「大体判りました。ありがとうございます」


「うん。じゃあ、卒業試験だ。一緒に街に出て尾行をやってみよう」

「えっ」

「実践練習だよ」

「はい」


 八田さんに通信機、探偵手帳w、筆記具、四角い肩掛け鞄を渡された。

 この鞄にカメラが仕込まれていて、底のボタンを押すと脇のほぼ判らない窓から写真が撮影できるのだそうだ。

 やばいんだね。探偵。私は外に出る前にお姉さんに八田さんと約束した5千円を払おうとすると、八田さんに財布を出すのを止められた。


 お姉さんが『相談じゃないんですか?』って言ってたけど、八田さんは『名捕り物の想い出話だよ。ちょっと出て来るな』と言い、一緒に外に出た。


 そのまま一緒に3つ隣の駅まで行き、商店街を抜けて小さな会社のビルの近くにいる。


「あまり目立つ服装だと、マルヒに覚えられちゃうから溶け込めるものにして持ち物も出来るだけ目立つものは持たない。この鞄も撮影できると判断した時だけだ」

「そうなんですね」

「何回かマルヒに見られても特徴的じゃなけりゃ、そうは覚えられないさ」


 もう夕方5時半を過ぎた。


 斜め前の会社の小さなビルからちょっと太めのおばさんが出て来た。

「2番、あの、黄色いカーディガンを着たのがマルヒだ。ほらこの写真がマルヒでこれを見て出てくる人を確認する」


 まさか、これ本物の仕事じゃないよね。

 この前2番さんが辞めたから私が今は2番なのだそうだ。


「2番、じゃあ、尾行するから、後はこの無線で話そう」

「了」


 人混みを追いかけて行く、駅の方だ。


『2番、もっと近くだ。見失うぞ』

『ジッジッ』


 私はマルヒの3m位後ろだけど、人も多いから全く気が付かれてない。

 他の人は歩く速さも違うけど、気付かれないように気を付ける。


 なんか九条流に通じるとこもあるみたいだ。


 駅で電車かと思ったら、駅のタクシー乗り場でタクシーを拾った。

 八田さんが駆けて来る。

 別のタクシーの窓をバンバンと叩いてドアが開き私も乗った。


「あの前のタクシーを気付かれないように追いかけてくれ」

「わ、判りました」


 やばいね、こんなの刑事ドラマじゃんかw。

 そこに私がいるw。


「車で尾行する時は信号で後ろで止まってもライトは着けたままの方がこっちの顔が判らない」

「了」


 タクシーが街角で止まる。


「離れた所で止めてくれ。2番先に行け。俺は支払いを済ませる」

「了」

「領収書頂戴~♪」


 私はさっきより距離を置いて後をつける。

 目的はきっとこの近くだよね。


 あっ!

 男の人と合流した。


『よし、やったぞ。2番、前を通り過ぎて気付かれないように二人の写真を撮って来い』

『ジッジッ』


 緊張するー!


 私は二人が仲良く並んで石垣に腰かけて話している姿の写真を何気なく身体だけそっちを向いて鞄のカメラで撮影した。

 

『所長、2枚撮影しました』

『ジッジッ』


 私は八田さんの反対側にいる。


 でも怪しい所には行かないで今日は少し話しただけでここで別れるようだ。なんか助かった気がするw。


 私は八田さんの所へ向かった。


「夢美ちゃん、合格だよ。タクシーに乗った場所とか時間とか、あの男と会った時間とかを全部メモ出来たかい?」

「はい」

「普通はそれをレポートにすればいい」

「良く判りました」

「じゃあ今日はここまでだな。マルヒの方は今日はもういい。その鞄と通信機を貰おう。俺はあの男を尾行するからこれでおしまいな。帰れるだろ?」

「大丈夫です。この手帳は?」

「記念にあげるよ。夢美ちゃんも探偵事務所の一員だな」

「あははは、嬉しいです」

「じゃあ2番、あがっていいぞ」

「了」


 八田さんは男の人の尾行を続けて暗くなる街へ消えて行った。


 いや、これ練習とか言って本番じゃないかな。

 八田さんも良く判らない人だけど、探偵さんの事は少しは判ったよ。

 写真、上手く撮れてるといいな。


◇◇◇◇◇


【”僕ら”はソフィアン探偵団】


 ソフィア探偵団を結成したw。


 カイにコニーの所へ探偵手帳を取りに行って貰う。コニーに手帳にソフィア探偵団って書いて貰う本格的なやつだよ。そう、まず形からだよねw。


 ヘルムートと待ってると、カイが鉛筆と手帳を3人分持って帰って来た。


『ソフィア()探偵団』


 えー、何これ、、、。

 スペル間違えたな。まあカイだから仕方ないか。全部だよ。org.


 お母さまの行動パターンを確認したから今日は恐らくルノールへ出掛ける日だ。

 カイとヘルムートと共に馬車を廻す正面玄関の脇の草むらに隠れる。


 さっきメイドのハイデマリーが洗濯物を持って後ろを通った時『ひゃっ』って言ってこの3人に気が付いたけど、私がいたから見ないふりをしてくれたみたいだw。


 カイとヘルムートは変装していて、カツラと口に綿を含んでほっぺが膨らんでる。

 さっきから私は何回かカイの顔を見る度に、吹き出すのを我慢してるんだよw。


 お母さまが側仕え一人と出て来た。


 白いとても小さな馬車が廻されてお母さまが乗る。


 ここで他の馬車を出して『気が付かれないように追いかけて』っていうとお母さまにバレちゃう(探偵さん的に言うとヌケちゃう)から、それは出来ない。

 でもあの馬車軽いから結構早いんだよね。


「3番、4番、尾行しますよ」

「了」

「りょ、ぶふー」


 カイが笑って吹き出して綿が出ちゃったよ。もう台無しだよ。面白いけど。


 私は試作品のガソリン三輪バイクで追いかけた。

 二人共頑張って走ってねw。


「ソ、ソフィ、所長~!」


 カイが文句言ってるけどここは聞こえないふりw。

 あの馬車は後ろに窓はついてないから結構尾行は楽だね。バックミラーもない。

 予想通り行先はルノールだったよ。

 おおよその時間とルノールへ入るとメモする。


 カイとヘルムートが来た。まだはぁはぁ言ってるけど二人共頑張れ。

 丁度、お母さまが降りる。


「3番は『プルーディ』、4番は『ソフィーネ』に先回りして後は遠隔通話で」

「「了」」


 よしどっちに行くのかな。

 ヘルムートはおかしくない貴族の恰好だけど隠れればお母さまには見つからない。

 ヘルムートが持ってる鞄には、お試しで作ったポラロイドカメラが仕込まれているから上手く証拠を掴めればこっちのものだ。

 オレアンジェスの鞄職人さん、鞄に穴開けてごめん!


 お母さまは『ソフィーネ』の前で店の方に挨拶するようにコクリと頷いたそうだ。

 でも、そのまま通り過ぎて『プルーディ』に入って行ったようだ。

 こっちか!


 カイとヘルムートを『プルーディ』の脇の観葉植物の影に集合させた。

 ここからだと店の中の様子が判らない。


 貴族の男子の子供服だよね。

 もうこうなったら様子を見るためにカイに子供のふりをして行って貰うかw。


『所長』


 ポフッ。

 カイが私に自分がかぶっていたカツラを被せた。来てた上着も脱ぐ。


『所長がこのカツラをかぶってこの短めの上着を着れば貴族のお坊ちゃまですよ』


 ぐっ、カイ。私に行けって事だね。

 髪をカツラの中に入れて上着を着たら確かになんとなく男の子っぽいか。


『所長、『わたし』じゃなくて『僕』ですよw』


 うー、カイ、後で覚えてとけよーw。


「ヘルムートお兄ちゃん、行くよ」

「は、はいw」


「ぶはぁ、お兄ちゃんw」


 私達はお客様を装い展示してある服を見るフリをしてお店に近づく。

 うん、そんなにおかしくはないよね。


 店長さんっぽい人が中の試着室の方へ向かいカーテンを開ける。


 シャッ。

 中に入った。


 えっ!


『ヘルムート!いや3番!』

『所長、ポラロイドカメラで撮影出来ました。一旦はけましょう』

『了』


 私達はカイのいる観葉植物の影まで戻る。


 ヘルムートが鞄を開けポラロイド写真を取り出す。


 男性のアイヴァンが試着室を開けて中の人が見えている。

 男性の子供服のはずなのに、裸でブラをしている女性だ。

 しかもアイヴァンはこの後、あの試着室へ入ってる。


 こ、こんな所で浮気! 決定的な写真じゃんか?

 カイ、鼻血が出てるよw。うちのお母さまで鼻血出すなよ。


 あー困った。証拠掴んじゃったよ。でも、お父さまに言う前に、この証拠をお母さまに見せて、それとなく、、、。


 私はカツラを外しヘルムートも終わったとカツラを外した所で、後ろに人の気配がした。

 ビクッ!


「ソフィアっ! それにヘルムートにカイまで。こんな所で一体何をやっているのかしら?」


 わきゃー! バレた。っていうか探偵さん的に言うとヌケたー。

 私達は全力疾走でルノールの出口へ向かった。

 

「待ちなさい! ソフィア!」

 

 三人共慌てて走り、私も乗って来たガソリン三輪バイクに飛び乗り発進させた。

 ブーン。

 やばい。お母さまが両手でスカートを持ち上げて追いかけて来る。

 バックミラーにお母さまが映る。うわーめっちゃ怖い!

 

 ガシッ!


 バイクに追いつかれたよw。うそん!


 ダメだ、これフルスロットルでもお母さまに止められて動かない。

 バ、バイク遅く弱くし過ぎたかな。org。



 あー、終わったよ。言い訳が思いつかないよ。



 はい、この後、カイ、ヘルムート、私でプルーディの中で正座してお説教ですw。


 ・・・。


「話は判ったわ。この写真を良く見なさい」


 お母さまにさっき取り上げられた写真を見せてもらう。


「残念ながら私の胸はこんなに小さくないのよ」

「どういう事ですか?」

「前にソフィアが言ってたでしょ。宝ジェンヌだったかしら。私も虜になってしまって、ソフィーネのリオ二ー推しであの子の男装の服をアイヴァンに作って貰ってたのよ」

「でも、あの試着室に一緒に入ってませんでしたか?」

「リオ二ーの試着と仮縫いね。アイヴァン、ちょっといらっしゃって」


「あっらぁ、この子がソフィアちゃんなのね。惜しいわね、もうなんで男の子じゃないのかしら、、、」


 あっ、この人あっちの人だ。しかも男の子好きのG。女性に興味なくて気にならない人なんだね。

 男装したリオニーさんが来たけどめっちゃカッコイイ。写真はこの人か。


 これをお母さまが頑張ってて何度も会ううちに浮気と思われてたのか。


「ソフィア、どう言い訳するおつもりなのかしら?」

「あ、あのですね。ちょっとだけお母さまの事を心配していただけです」

「わたくしの事を信じていなかったという事かしらね?」

「そ、そんな訳ないじゃないですか。私もリオニーさんみたいにカッコイイ人が大好きですから、こんな事をやっていたら応援しようかなーって思ってました」

「そうなの。で、どう応援してくれるのかしら?」

「こういうジェンヌ達の歌劇の舞台があるのですよ。例えばですね、、、、」


 もう必死で頑張りましたよ。

 覚えてない事もここで即興で作って次回のサーラ達の公演の際に一緒にルノール歌劇団の公演が決まりましたw。


 題して『ルントシュテットの薔薇』w。


 めっちゃ大変だったよw。

 なんか途中は面白くて、八田さんには笑われちゃうかもしれないけど、完全に探偵ごっこになっちゃってたね。私も子供だから面白かったけどね。


 はぁ、でも探偵ごっこはもう、こりごりだよw。


 

クラウの所で起きた自動車の出荷試験不正の話とランハートとレイモンドをソフィアがコテンパンにやっつけてしまう話です。次で適当な閑話は終了の予定。


 第二部第二章は冒険者の話になります。

 

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