ドレスは思い通りにならない
いや、あまりニッチな職人のような事を学校で教えてくれる訳ないでしょw。
犬釘はもう今はほぼ使われてませんが、釘の頭が犬の耳のように垂れてると思えば可愛い形の釘ですw。
とうとうこの章のヤバい人が登場です。
※この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、国、地方、大学、マスコミ、博物館の名称等は全て架空のものです。
【ショパンの心情】
話が違うよ、、、。
もうすぐ冬休みになるのに久美子先生は私に革命のエチュードの練習を始めさせた。
うだうだ寝れる休みがなくなるw。
うん、確かにこの前の先生の演奏が凄くて『憧れます』とか『私も先生のように弾けるようになりたいです』みたいな事は言ったよ。
でもそういうのは普通察してくれるよね。先生なんだから私が練習すれば弾けるのを選んでくれるんじゃないの?
えっ!? 弾けるのを選んでる?
マジか。
皆さんももし聞いた事がなければ誰かの演奏を聞いてみて下さい。少し聞いただけでもどれだけ難しいかが直ぐに解って貰えると思います。
右手で衝撃的なテンションコードを叩いて、左手は抜きながら数オクターブ高速に下がる。
更にテンションコードを数度叩いてまた左手を抜きながら同じく高速に下がる。更に帰結テンションコードから左右の高速ユニゾンで数オクターブ下がった後、左手の2オクターブの高速アルペジオが始まる。
テンションバリバリの衝撃が続くメロディが2オクターブの高速アルペジオの中で続いていく。
当時の時代背景もあるけど、『革命』と言う名のショパンのやりきれない怒りの心情が爆発するような気持ちが今私が弾いても凄く伝わってくる。ショパンがポーランドを離れていた時にワルシャワ陥落の知らせを受けた際に作られた曲なのだそうだ。勿論、演奏家達の解釈は人それぞれで凄く違う。表現も演奏家の自由だからね。
ショパン個人の人間としての事は、病におかされて可哀想だけど、その恋多き生活なんかは確かに褒められるものではないかもしれない。あの仔犬のワルツも愛人の所の犬がくるくると走り回る様子を見て書いているって言われているくらいだからね。ジョルジュ・サンドだったかなぁ。でもピアノについては天才だ。
本当にこの人はこの先、何千年経っても曲の素晴らしさだけでなく、こんな心情を伝える事の出来る稀な天才だと思う。
芸術家達のこんな風に気持ちを伝えるという事は他のどんなに戦争で活躍した英雄達にも出来ない事だと思う。
あっ、確かに久美子先生程上手くはないけど弾けそうだったよ。なんか先入観で無理かと思ってたよ私。何故かこの前の幻想即興曲を練習してた辺りから凄く指が思い通りに動くようになってきたんだよね。
手の大きさは結構厳しいけど。
でも練習が大変だよ。なんて事指導してくれてるの久美子先生。
【チェスとガラス、そして英語】
貴族学院の冬休みは結構長いんだけど、年末近くになってもなかなか私にお休み出来るような日が来ないよ。ちょっと忙しい。
ダムや線路で私が慌ただしく働いていたらお母様から
『ソフィアは新年の舞踏会のドレスは用意出来たのかしら?』
と言われた。
忙しいしそんなの普段も着てるような普通のでいいと思っていたんだけど、お母様曰く
『新年の舞踏会には特別に最高に飾り付けた物を用意しなきゃダメよ』
なのだそうだ。
本当にお貴族様は面倒だよね。
お母様が針子を呼び出すと言うけど線路の確認と温室の確認があったから『後でルノールに寄って注文するから大丈夫です』とそのまま館を出た。
正直、面倒なのでデパートで試着して既製品でいいと思ってますw。一応コサージュ位はつけるけど勿論、舞踏会で踊るつもりもない。
クラウにもお願いがあるので今日はクラウが運転手だよw。使える人は誰でも使う私w。
線路のレールは固さ(これは重さでは1メートルについて50kgと60kgの違いがあるよ。今は60kg。これは車輪の固さとのバランスだね。一応固さの基準はブリネル硬さとショア硬さがあるよ。ちょっと面、、、話が長くなるから説明は省くけど、今回はレールの方をほんのちょっと固くするよ)と長さによって夏の気温と冬の気温差でレールが伸び縮みする。これを接合部で隙間を空けて吸収するんだけどその隙間があるから日本で電車に乗る時に聞こえるガタンゴトンと言う音がする。
枕木はコンクリートなどの色んな材質があるけど作り易さから殆どを木製にしたよ。弾性が歪みを防いでくれる。駅の所だけコンクリート製だ。敷石に対する磨耗や敷石が砕けた粉塵なんかの様々な対策があるけど今の技術だと加工しやすい事や手に入りやすい事の方を優先したよ。溶接が必要な時は特殊な機械で引っ張って歪まないようにくっつける。枕木は雨ざらしだから腐敗して傷みも激しいけど交換も楽になるからね。一応腐敗しづらくなるように加工はするけどね。
ここにレールを犬釘止めする際に伸び縮みを吸収するようにレール側は長く穴が空いてて伸びたり縮んだりしても大丈夫なようにするんだけど、マクシミリアン叔父様が心配だから見て欲しいって言うから見に行ってきた所だよ。全然大丈夫っていうか叔父様に説明して完全に理解していたからね。
まあ犬釘はもっと早く走るようになればボルトと板バネに変える予定だ。
行ったのはクラウに実際に線路を見て貰うというのもあったけどね。この後トロッコを作って貰う予定だからね。これは毎日運航する前の点検用だよ。
ここはずっと真っすぐなので本当は使えると思うけど難しくないように今回はロングレールは使ってない。
磨耗で車輪側を削っても、そのうちレールの方も交換する事になるし補修もあるだろうからもっと技術が向上してからだね。
と言うよりやれば出来るだろうけど今は設備もないし、ロングレールは重過ぎて運ぶ手段がないんだよw。次は列車で運ぶけどこれは鶏と卵だねw。
もう少しすれば、まだ中央の街の短い区間だけだけど開通出来ると思う。
そこから頑張って伸ばして行こうね。
温室の方はこの前ケイトが乾湿計を落として割っちゃったから交換に行くよ。
そういえば日本の中学でもこの前乾球・湿球の差で湿度を求めるとか理科の授業でやりました。私はとっくにこの乾湿計を自分で作ってるけどねw。でもこれ差分の表を見た求め方だけで根本的な理由は私の教科書にも書かれてなくて『求まります』としか書いてないんだよ。まあテストには出ないんだろうけどね。
でもこんな風に学んで行くんだと改めて思ったけど、せめてその根本的な理由や気温計の作り方、例えばアルコールの着色の添加材やガラスの加工方法、アルコールの封入方法、目盛りの振り方位教えないと自分では仕組みを知っててもちょっと作れないかなぁとその時思ってました。もっと高学年になれば学ぶのでしょうか?(えっ、そんなのやる訳ないって?w)
本当に中央のレグリア付近はマカダム舗装が進んで随分と蒸気自動車も走りやすくなった。馬車も通るけど片側通行のルールも徹底してるから大丈夫だよ。
なんかあっちに凄く綺麗な白い馬車があるね。
もう直ぐ温室の所に着く直前に蒸気自動車のスピードを落として温室の所に入ろうとした際にいきなり女性が蒸気自動車の前に飛び出して来た。
助手席にマルテとノーラが乗ってたけど二人が悲鳴をあげてクラウが急ブレーキをかけた。
キャー。
キキー!
うわっ!
みんなシートベルトをしてたから大丈夫だったけど飛び出して来た人は大丈夫かな?
「あっぶねーなぁ」
「クラウ、大丈夫でしたか?」
「はい。スピードを落とした所だったので止まれましたが、いきなり女性が飛び出して来たんですよ」
いや、この女の人、車の前で両手を広げてこの車を止めてるよ。
変な人じゃないよね。って言うか普通に考えればこれは変な人でしかない。
後部座席に私と一緒に乗るヘルムートとミスリアも警戒した。
何か大声でクラウに話しかけている。
えっ!? 英語で話してる? こんなのこっちで初めて聞いたよ。
勿論クラウは全く何を言ってるのか判らないようだ。
私は蒸気自動車を出る。
「ソフィア様。危険です!」
確かにヘルムート達から見ても『変な人』だから私を止めるんだろうけど英語が判らないよね。
「大丈夫です。わたしがちょっと注意してきますね」
ヘルムートとミスリアも続いて出て来た。
えーと確か、地位が判らなければMistressだろうけど、このバッスルスタイルのドレスの恰好は恐らく貴族だよね。それだとLadyかな。
「What? What is this big box? How does it work?」
(何? この箱はなんじゃ? どうやって動いてる?)
あー、まだ蒸気自動車を知らなかったのかもしれないけどいきなり飛び出して止めるとかこの人も結構ハチャメチャだね。
「Lady. It would be dangerous if you jumped out in front of my car.」
(私の車の前に飛び出してきたら危ないですよ。)
「Oh, that was bad. but What is this ?」
(ああ、それは悪かった。 しかし、これは何じゃ?)
「aha, Well... It's a steam wagon.」
(はぁ、えーとですね、これは蒸気自動車ですよ)
「Steam! ?」
(蒸気じゃと?)
恐らくこの女性の護衛か側使えだと思うけどこっちに走って来たよ。
危なかったの見えたでしょ。一緒に注意して欲しい。
更にこの女性の子供達だろうと思うけど二人白い馬車から出て来たよ。二人共私と同じくらいかな。
「Her Majesty the Princess! It's dangerous if you suddenly jump out.」
(女王陛下! 急に飛び出すと危険です。)
「Hold back!」
(控えておれ!)
「God wills it!」
(御意!)
じょ、女王陛下!? や、やばい。この人どっかの国の王族だよ。
英語もすごい古い言い回しだよ。この人も昔のお侍さんみたいな言葉使いだ。
こ、これ関わっちゃダメなやつだ。
でも、この場で今走って逃げるのは無理だよねw。
「Is this powered by steam? ?」
(これは蒸気で動いているのかや?)
あーと、これは恐らく他国の偉い人には教えちゃいけない話だよね。
「I would really like to know more about it.」
(もっと詳しく教えてたもれ)
「Sorry. No, this is a trade secret, so I cannot tell you.」
(すみません、これは企業秘密なので教えられません)
「Princess, that is normal things here.」
(それはここでは普通の事ですよ)
「Argh! I see.」
(なんじゃ、そうかや)
ふぅ。
(※読むのも面倒でしょうから日本語にしますねw。)
「しかしこれは随分と大きな窓じゃの? この中でチェスでもやっておるのか? この格子模様はなんじゃ?」
チェス? この人の国にはあるのかな。
「これは強化ガラスです。割れづらくして中にワイヤーも入れてあります」
「ふんっ!」
ボコッ!
この人いきなりガラスをぐうで殴ったよ。中でノーラとマルテが目を丸くしてる。
「な、何をするんですか!?」
「いや、其方が割れづらいと言ったから試してみたのじゃ。確かに割れんな。おー痛っ」
そりゃあ硬くなるようにしてるからね。
でも何、このハチャメチャな人。蒸気自動車から気を逸らして出来るだけ早く逃げよう。
これ絶対に国王様のお客様だよね。
「そ、そちらの国にもチェスがあるのですか?」
「勿論あるぞ。この国にはないと思っておったがこの格子模様を見てそう思うたのじゃ」
「この国にもありますよ。国王様は結構お強いですから是非対戦してみてくださいませ」
「ほう」
何かを考えている顔だ。格子模様の意味が判らなかったけどもうマジで逃げたい。
「しかしガラスの大きさなら負けんぞ。こーんなに大きく膨らませて底を平らにしたのが城にもあるんじゃ」
あー、この人負けず嫌いだね。すごく手を大きく広げてるw。
吹きガラスでふくらまして底を平らな所で真っすぐにするやつだね。あれは形が丸くなるから普通は小さな丸いガラスをいくつも木枠にはめて窓が作られるんだけど、歪んでて外は良く見れないよね。それが凄く大きいって自慢したいんだね。
でもそれならグレースフェールの前の吹きガラスを開いて伸ばしたものの方が歪んでても見やすいと思うけど、、、。
と、私はガラスの話をされたので、無意識に温室の方を見てしまった。
「ひゃっ!」
やばい。これ温室の巨大な板ガラスを見て驚いてるよ。この人の負けず嫌いのプライドが崩れちゃうよ。
さっきの側使えの人と何か話し出した。
「そ、それでは失礼しますねー、、、」
私は聞こえないくらいの小さな声で言ってミスリア達とクラウの車へそそくさと後ずさりして戻り、こっそりとバックして手前の道を曲がって遠回りして温室の反対側へ向かった。
こ、これ、お父さまに話さなきゃだろうけど、大丈夫だろうか?
◇◇◇◇◇
【王城応接室】
今日、いきなりターオンの女王陛下がお忍びで尋ねて来る事になり、公爵家として同席させて頂く為に宰相のファルク・フォン・ツェレウスキーと私ヴァルター・フォン・ルントシュテットが国王様とエリザベス女王陛下をお待ちしている所だ。
まあ言いようはあるが、国王様から助け船を求められたという訳だ。
今は女王陛下が到着し、国王様がおもてなしをしてからこの部屋へ話し合いに来る。
ターオンは強国であり様々な植民地を持っている。グレースフェールなど攻められればひとたまりもないだろう。今の所両国間の国交は正常で外国商人もグレースフェールに来ている。
ターオンはグレートブルーテンという大きな島が中心に4つの地域から成り立っている。
主体はエルグランドで、北のスコッチランド地方、西側のホエールズ地方と小さな島北ノエルランドから成り立っている。
ターオンでは教化による統治が進み、宗教の宗派による争いが激化していてた。
宗派は、教皇を頂点とする『キャゼリック』と神以外の人は皆同じとする『パラリスタンス』が二大派閥で、スコッチランド出身の前女王陛下のメリーはパラリスタンスを弾圧し『ブラッディメリー』と恐れられていた。
今の女王陛下は『パラリスタンス』の後ろ盾を得た際に『ブラッディメリー』に14歳の頃、叔父の家に幽閉されていた事もある。
今も様々な地域での紛争の絶えない状況で、謀略と暗殺で簡単に権威と権力が移り変る。変死も多く、有力な貴族家も取り潰しや成り上がりがとても激しい。そしていつ国交が悪化してグレースフェールが侵略されてもおかしくはない。
グレースフェールの発展ぶりを隠す為に慌てて中央を走る蒸気巡回車の営業を休ませ、中央の貴族達にも蒸気自動車を使わないようにおふれを出したが、それだけでは様々な事を隠すのは難しい。
上下水道、農業、街の振るわいなども目に入るだろうが、出来るだけ気に障るような事は避けたい。
発展を見られれば攻められ植民地とされかねないのだ。
そして、三人の共通認識として『ソフィアに会わせてはいけない』と意見が一致した所だ。
言葉が違うのだ。そう簡単に話せる訳ではないからそうは心配をしていない。
通訳を介す為、この会談もそうは話は進まないだろうと思う。
女王陛下がいらっしゃった。
国王様が先に部屋へ入り、ドアの前で待ち、女王陛下が入って来た。
かなり若い感じだ。
独身の為、各国はこの女王陛下の婚約話を政治として使おうと一生懸命になっているが今のグレースフェールにその気はない。
当たり障りのないように早めに戻って頂くのが最善だと考えている。
挨拶を済ませ、宰相と私は末席に座った。
女王陛下は騎士が立っているが通訳を用意しているだろうに女王陛下がグレースフェールの言葉を話し出した。少したどたどしいが普通に話せるようだ。思惑が少し違ったな。
「しかし、この国にチェスがあったとは初めて聞いたぞ」
!!
今国王様とチェスをして来たのか。
国王様と宰相様と目を合わせ、その原因に思い当たるが勿論これもソフィアが作っている。
普通ならあり得ないことだが何故かソフィアの仕業であればもう納得してしまう。
頼む国王様、誤魔化して欲しい!
「言葉を話し驚いているようじゃの? 教師のロージー・カスタムに習ったのじゃ。してチェスをどこで知ったのじゃな?」
「が、外国商人がたまたまどこかで見てそれを真似でもしたのでしょう」
「貴族の遊びじゃから奴らには目には出来ないと思うがの。取引もさせてないものじゃ」
「た、たまたまでしょう」
「しかし、面白いものを見たぞ。我が国のチェスでは『象』がここでは『ビショップ』(司教)に変わっておった。そればかりか王の隣に並んでいたのは、『将軍』ではなく『女王』だと言うではないか。最も強いコマが将軍でなく女王じゃぞ。いたく気に入ったから国に戻ったら同じように変えようかと思う」
「さ、左様ですか」
「しかし、グレースフェールの道も随分と綺麗になったものじゃの」
『『ソフィアの仕事だ!』』
「排水を考えた傾斜も馬車の走りやすさも申し分がないものであったぞ」
「最近整備したものですが、馬車が走りやすいとお褒め頂きありがとうございます」
「うむ、きっと戦時には相当早く駆けつけるのじゃろうな」
『『ギクッ!』』
女王陛下が我々を見てニヤリと笑った。
「時に、ここへ来る前に、おかしなものを見たのじゃ」
「何をご覧になったのでしょうか?」
「街並も栄えて凄かったが、なんと馬もないのに馬車が動いておったのじゃよ」
くっ、不味い。時間がなかったから中央の貴族にしか蒸気自動車の今日の運転は禁止にしていない。
他領の貴族を見たのか!
「思わず止めて色々と聞いてみたが面白い者がおったぞ」
だ、誰だ。ま、まさかソフィアではないだろうな。
また国王様と宰相様と目を合わせ、みんなでソフィアでない事を心から祈った。
「さっきは興奮して慌てておったので思わずターオンの言葉で話してしまったのじゃよ。通訳もなしにの。しかしその者は見事にターオンの言葉を話し質問に答えたのじゃ」
「お、恐らく言葉の得意な外国商人だったのでしょう」
「いや、蒸気で動いていると説明してくれたのは貴族の幼い子供であろうな。側使えと巨大な板ガラスについて話している際に色々と聞く前に逃げられてしもうた」
『『ソフィアだ!』』
国王様も宰相様も私もうなだれた。ここではターオンの言葉を教える人材はいない。このあり得ない事もこの三人には何故かソフィアならと納得してしまえるのが普通になってしまったようだ。
しかしソフィアも気が付いて逃げおうせてくれたのか。助かったぞーソフィア。
「まあ、それは良い。今回はお忍びで来ているが一つ聞きたいのが『バラエーナ戦争』についてじゃが、ヒーシュナッセの国ではグレースフェールに攻め込み神罰でやられたと言っておるがどうやってあの国の精鋭達を退けたのじゃ? 知略も戦力もヒーシュナッセは数をこなし強いはずじゃがの?」
こ、これは答えられない。完全にソフィアの力であれを暴き退けたがヒーシュナッセでは神罰になっていたのか。
「このヴァルターが勲章を受けております」
はい!? 国王様!? なんでこっちに振るんだ。詳しく知っているだろう。くそっ。
「はい。わたくしの兵達が食い止めている間に、国一番の中央の騎士団が到着し何とか追い返す事が出来ました」
「それは普通の戦争であろう。それではあの者達が神罰などと言うはずもない」
「たまたま先方に落雷でもあったのではございませんか?」
「そうなのか? まあいいだろう」
な、なんとか誤魔化せたか。
「間もなくここの貴族が集まる新年の舞踏会があるであろう? あれに出るぞ」
「えっ! 女王陛下もターオンの新年会にお出にならなければならないのではありませんか?」
「ここの船ごときと同じに考えるな。ターオンの高性能の船で行けば数日も掛からぬ距離じゃから大丈夫じゃ。楽しみにしておるぞ」
「か、畏まりました」
「では、栄えておる街中を適当に見せて貰うとするか」
「「はっ!」」
女王陛下がお出かけになった。
国王様直営の店は国王様が休暇にする事が出来たそうだが他の貴族や市民の為の店は休ませてはいない。
レオノーレのデパートやソフトクリーム屋、パン屋など殆どが営業しているだろうがこれはもう隠せないだろう。そして他の店もずっと休ませる訳にはいかない。
昨日でクリスマスセールが終わったのがせめてもの救いだ。
国王様と宰相様は私と共に大きく溜息をついた。
◇◇◇◇◇
【全く安心できないいつもの美麗】
ようやく明日から冬休みだよ。ピアノの練習も厳しいし田舎もいかなきゃだからこのお休みはちょっと忙しいかもだね。もう、少し寝る時間が欲しいよ。
早めに帰って、、、。
美麗がやって来た。なんか悪い予感しかしない。
「夢美。直ぐに美鈴に連絡してパスポートとドレスを用意させなさい」
「美鈴先生?」
「そうよ。うちの技術に美鈴の技術を足して契約が取れそうなのよ。直ぐにイギリスへ行くわ」
「わ、判った、直ぐに連絡するよ。やっぱ美麗は凄いね!」
「何を呑気に言ってるのよ。あなたも行くのよ。パスポートはあるでしょ。ドレスを用意して貴方の家に迎えに行くから待ってなさい」
「えっ、ちょっと待って。なんで私も?」
「夢美も美鈴がTV出演した時の事を覚えているでしょう。あんなのじゃ取れる契約も取れないわ。夢美も理解しているのでしょう? 美鈴が話せなくなったら代りに説明して頂戴」
あっ、確かに、、、w。そうだったよ。あの時は生中継中に魔法通話でアドバイスしたんだった。
陰キャだから人前は得意じゃないからね。
「判ったけど、わたしドレスとかないよ。普段着じゃダメ?」
「ダメよ。先方と食事へ行くのよ。ピアノの発表会のがあるでしょ」
いや、そうだけど美麗は私の事を私より詳しいねw。
でもあれ、まだ買い換えてなくてセクシーでピチピチなままなんだけど、、、。
「小学生の頃のを直してるからちょっときついんだよ」
「着れればいいわよ。じゃあ直ぐに迎えに行くから待ってなさい」
あー。この強引さはやっぱり美麗だねw。
この後、美鈴先生に連絡して慌てて用意して私のお家で美麗を待つと程なく美麗の長い車が来たよ。
かなりのスピードで空港まで行く。
あの探偵さんの運転はめっちゃ速くて怖かったけど、これは怖い感じはしなくてそして殆ど揺れなかった。
多分、これドリンクホルダーなくても飲み物がこぼれないんじゃないかと思う。
本当に地球の技術は凄いね。私もまだまだだねw。
美鈴先生と私は結構戸惑っていたまま、あれよあれよという間にプライベートジェットでイギリスへ向かった。
様変わりしていくヨーロッパ諸国の今。
美麗のロンドンでの仕事が進む一方でエリザベスの暗躍が始まった。
次回:ゆかいなロンドン、楽しいロンドン
お楽しみに♪




