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ドゥープレックス ビータ ~異世界と日本の二重生活~  作者: ルーニック
第十章 夢の聖剣
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閑話 【手記】『文明の大爆発』アーナル学派 フェルナンデス・ブロー

 ソフィア側の話:数百年後の話です。


 これだとなぜグレースフェールと言う国が長く続いたのかが判りませんが、これはソフィアが夢美の学んだ聖徳太子と同じ事を実施したからです。

 聖徳太子は目の前で天皇暗殺を目の当たりにし、権威と権力を分けました。その為不敬ではありますが、仮に天皇を討ったとしても権力を手に入れる事は出来ずその後の争いは全て権力側の奪い合いという結果になったのです。これが出来ていたのは過去にはこの政治の天才聖徳太子のいた日本だけだった為、世界で天皇家だけが長く存続しています。あなたの社会科の先生は正しくこの事実を理解出来るように教えてくれましたか? まあこの辺りの真実が気に食わない人達が聖徳太子の存在や天皇家を否定したい訳ですね。

 さて私はそこまでたどり着けるのでしょうか?


 本来は皇帝であったグレースフェールの国王ですが、ソフィアが皇妃の座についた際に、権威と権力とを完全に分け皇帝は権威だけのものとなり権力を全て放棄しました。ソフィアが政治体制を日本のように変えたと言う事です。

 その為、内戦が行われた際でも討つ対象とならず、権力の争いしか長い間起こらなかった為、歴史的に類を見ない程の長い歴史の国になっているという意味です。


 これまでの発明品などの偉人達の名を幾つか書いていますが勿論まだ足りません。そして残念ですが後半で書く予定だった書きたかった事はお蔵入りのようです。ここにある名前でおおよそこの先何を私が書こうとしていた発明品の方は推測出来るかと思いますw。科学史や産業史、歴史の好きな方は幾つ判りましたでしょうか? 一問一点w。

 

 私の名はフェルナンデス・ブロー、アーナル学派の歴史学者だ。


 生物の進化において初期の生物の『進化の大爆発』はご存知の方も多いが人類の文明においても大爆発的に発展した時代がある。


 この国グレースフェールは世界で一番の長い歴史を誇り、軍備、科学、産業、文化などあらゆる面で世界を導く発展を遂げているがこれはある時期に爆発的な発展を遂げたからだ。

 各分野の専門家達はこの時代のグレースフェールの賢者達は恐らく歴史的にに見れば500年から1000年、あるいは2000年は世界の文明を進めたと言われている。


 グレースフェールの歴史を語る上では『ルントシュテット家』の存在を外す事は出来ない。


 現在まで残る資料からある一時期にルントシュテット家の周りに数えきれない程の賢者が現れ爆発的に発展したという『文明の大爆発』があるからだ。我々が今使っている殆どのものはその時代に作られたものが多く、より正確に言えば全ての現代文明はここから生まれたのだと言っても言い過ぎではないだろう。


 ルントシュテット家の活版印刷技術は作られると同時にルントシュテット家が一切の権利を放棄し民間に開放した。当時の貴族体制を考えればあり得ない話である。


 しかしその技術の開放によって活版印刷技術による書籍が爆発的に増え世界中に書籍が出回る事になったのだ。

 仮にルントシュテット家がこの技術の権利を独占していたら一般にまで広まるには膨大な時間が掛かっただろう。ルントシュテット家は無償で公開すべき事と独占するものを的確に分け世界の発展をコントロールしていたとも考えられる。


 しかしそのおかげで当時の貴重な賢者達の見事な理論が活版印刷で現在にも数多く残っている事を考えれば書籍を独占せずに広めたと言う一点においても称賛に値する事だろう。


 そしてこれらの発展は全てのジャンルに於けるものである事は驚愕に値する。


 あらゆる工業、産業、軍備は勿論の事、服飾、ショッピング、食、音楽、ゲーム、レジャーなどサブカルチャーや通信機器、コンピューター、精密機器に至るまであらゆる現代に残る発展の恩恵を我々が受けておりこれらは数多くが現代にそのまま残るもので、現代人でこの時代の賢者達の恩恵を受けていない者は皆無だと言っていいだろう。私が普段使う枕でさえルントシュテットで考えられ実用化されたものなのだ。


 勿論、発明はどの時代にもありルントシュテットだけではない。しかしこのルントシュテットで生み出された数多くの発明品は製作方法もそれらの形状も仕組みも全てが最適化された物が最初から作られているのだ。

 ルントシュテットの方法が正しく最適化されていると言う事が後の科学解析でも判らず数百年後にその正しさや最適さが判明した物も多い。今では環境にまで配慮された現代科学者も舌を巻く物であったと判ったものまである。

 この異様さにルントシュテットの賢者達は『未来からのタイムトラベラー』だとか『宇宙人』だと言う噂まである。


 現在判っている多数の賢者はこれらの書籍にその名が残るが、不思議な事にルントシュテット家の直系以外の出自が判明しておらず、その名が当時の一般的なルントシュテットでは珍しい名も多く、これらの賢者達の実在が疑われているのも事実だがまるでそれは陰謀論のような話だろう。


 歴史の教科書に並ぶ各界の偉人、賢人達はその殆どがこの時代のルントシュテットの者達だ。

 私がこれまで詳しく調べただけでも、

 トーマス・エジソン、ニコラ・テスラ、イソップ、フレデリック・ショパン、ジョン・ラウドン・マカダム、ジェームズ・ワット、エドワード・リーダー・ウィリアムズ、ジョン・ハリソン、サミュエル・クロンプトン、マシュー・マレー、リチャード・トレビシック、キュニョー、ライト兄弟、アルフレッド・ノーベル、ピーター・デュラン、イーライ・ホイットニー、デイビッド・オルター、グラハム・ベル、チャールズ・グッドイヤー、サイラス・ホール・マコーミック、アレクサンダー・パーク、ヘンリー・フォード、ジャン・ダニエル・コラドン、アルバート・アインシュタイン、ジェームス・チャドウィック、アレクサンドル・エドモン・ベクレル、ヴェルナー・フォン・ブラウン、セオドア・H・メイマン、フランチェスコ・ランパゼット、ジョセフ・スワン、ギデオン・サンドバック、ジェイコブ・パーキンス、ビーロー・ラースロー、フランク・マクナマラ、アンリ・ジファール、ジョセフ・ニセフォール・ニエプス、フランシス・バラウド、サムエル・モールス、リュミエール兄弟、ラーシュ・マグヌス・エリクソン、シャルル・フレデリック・ジェラール、エドワード・ジェンナー、アレクサンダー・フレミング、トーマス・H・モーガン、グレゴリー・ピンカス、ウイルソン・グレートバッチ、アラン・チューリング、ノーラン・ブッシュネル、などで、とてもここには書き切れない程に多い。


 同時期のルントシュテットの発展を数学で支えた数学の巨匠マティーカ・フォン・マテマティカや自動車や航空機の開発にも寄与した宇宙物理学とロケット工学の父ユリアーナ・フォン・ビッセルドルフ、酒の神と崇められるノーラ・フォン・アーデルハイド、ショッピングの楽しさを世に広め美しさとファッション界を導いたレオノーレ・フォン・ルントシュテット、巨万の富を築いた大商人マルテ・フォン・イグナシオン、様々な医薬品を作り出し死亡率を激減させ世界を一変させた天才マクシミリアン・フォン・シュタインドルフもこの時代を語る上では欠かせない。


 中でもミスズ・カワバタ、リカコ・クラシキ、ユミ・ウエダ、チカゲ・サワ、クミコ・コエド、アキラ・マエジマ、タイシ・ミツヤ、トオル・キシュウ、レイ・ニイクラ、コハル・サトウ、アオイ・サンジョウ、ミュール・サイオンジと言う聞きなれない名の賢者達の功績は歴史上類を見ないレベルだと評されているが実在が最も怪しいイマジナリー賢者と呼ばれている者達で他の者がその名を使っていただけだと言われている。

  

 恐らくこれらの賢者達をまとめていたと思われるのがルントシュテット公爵家から皇妃となったソフィアという人物で、彼女が多くの鍵を握っていたと私は推測しているが表立った書籍にソフィアの名が残るものは少ない。


 彼女は数多の戦で必ず前線に立ち全ての敵を退けたという。当時このソフィアという人物は女神様と言われていたそうだが恐らく戦争に勝ち続ける『勝利の女神様』だったのだろう。

 数多くの巨匠達が描くソフィアの絵画は戦争で先頭に立つ姿で中でもドラクロワの作品『民衆を救う勝利の女神』は有名だ。


 彼女に人望があったであろう事は想像に難くないがそれらは一切判ってはいない。



 そして全ての歴史家達が待ち望んでいたルントシュテット家の書庫が今日公開される事になった。


 これは活版印刷がルントシュテット家によって始められる前の言わば手書きの古書の中でも特に価値の高いものだと思う。今まで公開されていない本当に貴重なものだ。仮に一冊でもオークションに掛ければ大きな屋敷が簡単に買えるだろう。

 アーナル学派から私が選ばれ幸運にも目にする事が出来るのだ。当時の言語も私は完全にマスターしている。私は誰よりもこの時を待ち望んでいた一人だ。


 私は期待に胸を膨らませ書庫に入った。

 

 ルントシュテット家の方が当時のまま改装していないと言うが当時の発明品である電気が既に使われている。本を読むのに優しい光が最適に考えられた反射を軽減し目に直接光の当たりずらいカバーの付いた蛍光灯だが現代の図書館でも全てこの灯りが使われている。


 これを見て私は思わず笑みがこぼれた。


 かなりの書籍の量だ。

 ルントシュテットの分類法で分類されているが年代の古そうな書籍を見てみよう。


 な、なんだ、この文字は? 見た事がない文字だ。

 そんなはずはない。この時期の恐らく交流のあった国のあらゆる文字をマスターしているつもりだったが、この見たことのない文字はどういう事なのか!?


 中には複雑な図と完璧な設計図でこのような技法もこの時代にはなかったはずだがこの技法もルントシュテット家発祥のものだったのか!


 他の書籍を手に取る。発電機に関するものだった。今では当たり前の電磁誘導が丁寧に説明されているがこれ以前の世界は電気など存在しない時代にここまで完璧な資料を作っている。


 この異様さが理解して頂けるだろうか? 電気がない時代に電磁誘導が説明されているのだ!


 変圧器も送電技術も現代に引けを取らない完璧なものだ。安定化や様々な問題に対する処置も現代と遜色のないレベルだ。

 こんなものが活版印刷よりも前に出来ているという事実が未だに信じられないがこれはここにあるのだからその通りなのだろう。


 他の技術書や料理本、服飾に関する手書きの書籍も驚く程の発展が本当にここから生まれた事が判る。


 何かひっかかる気がするがこの違和感が何なのか今の私には判らないが、こんなに面白い資料を目にする機会など私の人生においても稀だろう。もっと読み進めよう。


 これはニコラウス・アウグスト・オットーの4サイクルエンジンの技術に関する書籍だ。これも見事なもので何もなかった時代にこれを作るのはほぼ不可能ではないかと思われるようなものだ。


 こちらはド・ ヌーのローラーで平らにする板ガラスの技術だ。ここには現代も使っているフロート法の板ガラスの製法も書かれている。吹きガラスを開いていた時代から一挙に現代にもそのまま使っている技術が生み出されているのは何故なのかは本当に不思議だ。


 いや、やはり何かがひっかかるぞ。何かおかしい。


 これは、、、。


 ソフィア皇后の日記だ! これは凄いものを見つけたかもしれない。

 年代を見ると幼年期のもののようだ。


 うん!? 半分程は先程見た理解出来ない文字だ。 あ、あれはソフィア皇后が書いていたのか。


 この文字。えっ、ソフィアの筆跡がこれなのか?


 待て、他の手書きの書籍は殆どがこの筆跡ではないか!!

 違和感はこれかっ!


 まさか当時公爵令嬢であったソフィア自身がこの技術書や料理本を書いていたとでも言うのか!?


 〇月×日 今日はようやく蒸気機関についての資料とレポートをまとめ終わったので明日以降にお父さま達に説明する予定だ。石炭も準備万端♪ 私と美鈴先生でまとめて最善の改善は出来たと思う。全部私が描いておいてなんだけど誰が作ったのかの名前だけど元々この世界には美鈴先生もいないから相談も出来ないし、私の気持ち的に一応これも存在しないけどジェームス・ワットの名前にしておこう。

 マクシミリアン叔父様もユリアーナ先生にも気に入って貰えると思う。これで暫くはぐっすりと眠れそうだよ。


 な、なんだと!? 蒸気機関はソフィアとミスズが作ったと本人が書いているがジェームス・ワットはソフィアとミスズのペンネームだったのか!? 気持ちで名前を決めている?

 いや、待て、この年のソフィアは幼女ではないか? それに元々ミスズはこの世界に存在しないだと!?

 私はこの短い文章を二度見、三度見した。

 

 あ、あ、、、


 ソフィア皇后の日記を読み進めると殆どの発明はソフィア皇后とおかしな名前の賢者達によるもので、そこに別人のペンネームが書かれているというものだった。

 そしてそこにはソフィア以外には誰も存在していない、、、。

 全ての発明品がそうだった。


 私はソフィアという人物に底知れない恐ろしさを感じて日記を人目につかない場所に戻した。


 これはソフィア皇后一人が全てをやっていた? まさか、そんな事があるのだろうか?


 数多くのルントシュテットの書物が私の視界に映り、それら全てが恐ろしい物に思えた。

 いや、そうだ。ここにある書籍は全てがソフィア皇后の筆跡だ!


 何十人、何百人の賢者達と思われていたこれまでの発明や文化の発展がたった一人のソフィアという人物によって産み出された物だったのか。どう考えてもどれも人の一生では不可能だと思えるような物ばかりだがそれが出来ている記録がある。

 数々の特許は全てがルントシュテット家のものだがパトロンとして持っていたのではなくソフィアが作ったからなのか!


 他の歴史学者達は自分の専門の書籍を読みふけっていてまだ気が付いていないようだ。


 こ、これは、、、!


 こんな真実を私は発表出来るだろうか?

 いやな汗が出て来た。

 何という事だ! これは全ての歴史の教科書を書き換えなければならなくなる。


 き、今日はここまでにしよう。


 私は青い顔をしたままルントシュテット家の書庫を後にした。

 ルントシュテット家の方々と話し合わなければならないだろう。


 ~

 その後、彼は人生で最も充実し且つ驚愕の日々を過ごす事になる。



 数年後、アーナル学派の歴史学者フェルナンデス・ブローは『叡智の女神ソミア(夢)』という書籍を出版し、歴史の本としては珍しくベストセラーとなりその後歴史の教科書が全て書き換えられた。

 

 色々とあって慌てて書きましたので内容が適当なのはご容赦ください。夢美側はいつもの如く内容がアレでしたので公開は難しいです。お許しください。

 

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