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ドゥープレックス ビータ ~異世界と日本の二重生活~  作者: ルーニック
第十章 夢の聖剣
103/129

サスカッチの街の対処/ゾーン×2

 査読編集してませんから色々とご不快に思う方もいらっしゃるかと思いますがお許しを。

 ソフィアがどう対処したのか見てみましょうw。日本の話はまだ纏めてなかったので説明も多いし無駄に長くなりそうだから2回になると思いますw。正直、この話ではフーミンの弟レイにはあまり暴れて欲しくはなかったんですが彼に任せるといつもトンデモない事になって行きますw。

「ソフィア、あれは大叔父様ではないか?」

「そうですね」


 グレグリスト伯の館の前着くとに大叔父様がいた。


「大叔父様、どうしたんですか? ご報告の方は、、、」

「ああ、グレグリスト伯には先程話し終えて出て来たところだ。動揺はしていたが伯はしっかりしている。明日、わしも参加してモルキッソ卿とルーファスのマンシュタイン卿とで話合おうという事だ」

「あそこの方々は助けて貰えるのでしょうか?」

「それは難しかろうなぁ」

「間違えなく呪いのせいだと思います」

「ああ、恐らくそうだろう」

「わたくしも参加させて貰えないでしょうか?」

「そうだな、ソフィア様があの呪いを見つけたのだからな」

「見つけたのはウルリヒお兄さまですよ」

「そうだったな。しかし二人共、今日はどうする? ここの貴族にお願いするか? 車に泊まるか?」


「あのう、ゲートルード様のお屋敷に戻ればわたくしがお願いしてまいります」

「マレーネさん。ありがとうございます。ではお世話になりましょう。大叔父様、お兄さまよろしいですか?」

「判った」

「ソフィア、ゲートルード様は大丈夫なのか?」

「はい、来た時もお世話になったのですよ。またお世話になりましょう」


 私にはちょっとだけ思惑があった。

 まだグレグリストとの取引の話はお父さまに相談はしていないけど、きちんと話せばダメとは言わないと思う。

 いくら他の領だと言ってもこんなチョイナーの呪いであそこの街の人達を見捨てるなんて出来ないよ。


 ゲートルード様のいるグレグリスト伯の別宅へ着き、まず、マルテとクレーデル商会の三男のノアさんと話す。ノアさんは色々と良い商品がレヴァントで販売されている事は知っているようだったけど商業特区に参加している領地ではないので無理だと考えていたようだ。


 そこでマンスフェルト商会とクレーデル商会で業務提携してもらう。

 グレグリストから魚や建築用木材を、ルントシュテットからは有用な商品を優先して取引して自分達の領地でそれぞれ売りましょうという提携だ。双方共に商売の範囲が増えるからデメリットは少ない。

 蒸気自動車の小型トラック、フォークリフトを使って2パレット程度が積めるものだけど、これがクレーデル商会で使えるだけでもノアさんはもう破格の笑顔をしていた。

 勿論、トラックはルールを守ればグレグリスト領内を走り回って貰って構いませんよ。

 まあ、トラックと呼んでるのは実は私だけでこっちの人達は蒸気荷車って呼んでるんだけどねw。

 いや実際トラックなんですよ。


 ノアさんは三男なんだけど実家に相談するけど絶対に大丈夫ですと言ってくれた。マルテも勿論OKだったよ。


(このしばらく後に結局ノアさんは自分が独立しようと貯めていたお金を全部つぎ込んで『折角お借りしたフォークリフトがありますから』と小型トラックを後三台クラウから購入して大成功する事になるんだけどそれは少し先のお話w)


 この打ち合わせの時は新しいメイドさんのメアリさんが入れてくれた紅茶を飲んでいたんだけど、クルトにジンジャエールをお願いしていて間に合ったようだ。


 次に大叔父様とゲートルード様、エルフリーデ様を入れて事前打ち合わせをする。

 これは、プリンステレ・ルーファスの街とクラトハーンの街で姉妹街になって貰い輸出入の税を優遇してもらう為のお話だ。

 クレーデル商会とマンスフェルト商会との提携を予定している事も話す。


 冬場は道が使えなくなってしまう期間もあるけど、魚や建築用の木材が手に入る事やルントシュテットの商品がこれまでよりも安価に手に入る事などから双方から了解を貰ったよ。


 皆さんさっき炭酸に驚いていたけど、このジンジャエールも取引して貰えば飲めますよw。

 これは重曹とクエン酸のレモン汁だけどシュワシュワで甘く煮たジンジャーも効いてたよw。


 この晩は明日に備えて美味しい料理をクルトとメアリさんに作って貰い明日、エルフリーデ様に協力して貰えるようにお願いした。


 ゲートルード様はずっと私の事を見てニコニコしながら懐かしそうに子供の頃の今は亡きお兄様のお話をしてくれて夜がふけて行った。


◇◇◇◇◇


【チーム美鈴】


「もしかして、夢美さんはゾーンに入ってない?」


 ・・・。


 今日は色んな人が集まる日なんだけど、全員が参加していた。

 美鈴先生が、『そろそろかな』と、あの私がコンピュータについて教えて貰った新倉 礼先生がゲストで来ていて他の全員にも声を掛けたようだ。


 新倉先生は他の人達よりも年上なのにでなんで美鈴先生の大学の先輩なのか聞いたら、医大で6年勉強した後で美鈴先生の大学の情報工学を卒業したというちょっと変な経歴だったよ。

 お医者さんは人助けも出来るし儲かるんじゃないかなと思うけど、今は週に1度だけ片神無グループの契約で少しは働いているそうだ。

 なんでも取得した特許の利用料で不労所得があるから別にいいのだそうだ。


 恐らく成績も良かったのも知ってるし他の先生達の反応を見ても相当この人は頭いいんだと思う。本当にこんな凄い人がいるんだね。色んな話を説明してそれから新倉先生ともお話をしていた所だ。


 私達は共同で様々な理想的な事に近づくための具体的な方法を話合っている。


 でも、それらとは別に『日本では研究出来ない事が沢山ある』という話が出て、私は思わず

『何でですかっ!』

 とちょっと熱くなってみんなと討論しちゃったよ。


 これは、例えば美鈴先生と一緒に開発した蒸気自動車にもその技術を応用したのを少しだけ使っているけど、日本の石炭火力の技術はとても凄くて二酸化炭素を殆ど出さない技術がある。

 いや、内容は書けないんですけどね。

 今の世界では石炭火力発電もまだ沢山使われていて、この日本の技術を整理して各国に売れば地球環境にもいいし日本の為にもなる。


 でも、何故か日本政府は各銀行に石炭系の開発にはお金を融資しない方針とするように言っているのだそうだ。


 なんで!? 頭おかしいんじゃないの?


 中国のEVなんて石炭火力発電で物凄く二酸化炭素を出して作っているんだよ。

 日本の石炭火力の技術は世界の環境にも日本にもいい事しかないのに。


 そればかりか、様々な事が軍事に繋がる可能性があると研究させて貰えないのだそうだ。

 これは研究させて貰えないというより一応予算を貰えないと言う事らしい。

 直接の軍事でも日本を守るのならいいんじゃないかと思うけどこれは大きな声では言わない。


 皆さんには内緒でお願いしたのですけど、例えば船の先端の形状。この研究で船の速度が上がり燃料効率も上がるという研究は軍備に繋がると予算が出ないのだそうだ。

 

 温暖化の原因は二酸化炭素じゃないと言う研究もまさにそうだと言う。

 何で正しく理想的な事を求めようとする研究をさせないようにしているんですか?


 批判じゃなく科学的にやりたいだけだと思うけど、、、。


 その政府の予算の使い道を決めてる人達はどうかしてると思う(中二女子の個人的感想ですw)


 新倉先生もかなり言いづらそうに『色んな意味でお金だよ』と言う。


 私は古い話はあまり詳しくないんだけど、新倉先生によれば、

 ダイオキシンは凄く危険だと国民を煽ったのも、石油は枯渇すると国民を煽ったのも同じで、今は温暖化だと言って二酸化炭素で国民を煽っているだけだと言う。


 その際のダイオキシンはそんなに危険じゃないことが判り、石油も枯渇していない。


 彼らはずっとそうやって日本国民を間違えた方向へ導いてダメにしたいのだろうか?

 その研究者達や政治家、マスコミはお天道様に顔向け出来たのだろうか?


 国際的に合意云々もおかしいと思う。そもそも文明も予算も寒帯、温帯、熱帯の様々な条件の違う国が同じような対策なんか出来る訳がない。


 こんな調子で、あまりに熱く新倉先生と討論してあれこれやり取りしていたらいきなりさっきの『ゾーン』に入っているのでは? と言われたんだよ。


 私はちょっと意味が判らなかったけど、そう言えばここに戻って来るのに周りに誰もいなかったし時間が間に合いそうになかったので、身体強化をして走って来て、一時解除の状態にしていたんだけど、熱心に討論している内に知らず知らずのうちに再開してしまっていたようで、確かに私身体強化をしていたよ。


 ~プラチデ~


 もしかしてそのゾーンとか言うのが魔法の身体強化? なんで新倉先生にはわかるの?


「に、新倉先生。ゾーンというのは何ですか?」

「驚いたな。今、もしかしてゾーンから自分で抜けたの? ゾーンはアドレナリンの分泌の事で副腎の髄質から分泌されるホルモンで心拍数の上昇や血圧が上昇して身体のパフォーマンスがかなり上がって集中力や注意力も高まるし痛みも感じなくなるよ。よくプロスポーツ選手が大会で普段出せない力を出したり、仕事で徹夜が続いたりしてもなる事があるよ。でもアドレナリンはコリン作動性、つまり交感神経の緊張によって、副腎髄質から血中にアドレナリンが放出され、血中のカテコラミン量が増える訳だから普通は自分では自由にそれを制御出来ないよ」

「もしかして話に聞くランナーズハイみたいなものですか? 交感神経が緊張すれば出来そうな気もしますけど」

「大怪我をしたりとか絶対絶命的な極限状態に置かれたりすれば出やすいけど、自分の意思で交感神経を緊張するの? ははは、そうだね。出来たら凄いよね」

「レイさん、僕もなった事がありますよ」


 前島さんも没頭し過ぎて徹夜が続いたのだろうか?


「わたしも、、、」


 みんな小さく手を挙げたけど男性陣全員と利佳子博士、美鈴先生と殆どがゾーンを経験しているみたいだよ。

 身体だけでなく頭の回転も半端なく、痛みは感じなくなるなるけど感覚も凄く上がるそうだ。

 それは身体強化そのものだよ。


 やっぱり身体強化ってその『ゾーン』なのかと思う。私はここからもう一段強化出来るんだけどねw。

 でも、新倉先生は医学を詳しいからなのか私を見てそんな事が判るんだね。

 なんか後で新倉先生ともっと詳しく話してみたいね。

 

「まあ、みんなそれだけ凄い研究者だという証だよ。あっゴメン。研究者は小江戸先生を除いてだね」


 久美子先生は何故か私に小さく手を振ったw。


「じゃあ本題に移ろう。話はほぼ理解したと思うけど、皆さんの中でどこかで働いていて副業を禁止されている人はいますか?」


 みんな首を振ったけど、そう言えば私は美麗の所の執行役員だったよ。


「はい。わたし西園寺グループの企業の執行役員ですけど、、、」

「マジか」

「夢美ちゃん本当?」


 あっ、そうか、魔法がらみだからこっちの人達に全然話してなかったよ。

 

「後で契約を確認する必要はあるけど、普通は執行役員にそんな縛りはないと思う」

「どういうことですか?」


「うん、ここまでの話から、これらで特許が27個は取れると思うし、その内22個はかなりお金になる。私見を言わせて貰えば、会社にした方がいいんじゃないかな? という事だね」

「会社に!?」

「そう、この夢美さんのお家でやる事じゃないし、簡単なコンサルで話している技術が高値で売れる。こんな多様なのは聞いた事がないけど君達は本当に凄い本物の技術者集団だね」


 なんか皆さんは改めて新倉先生に言われて驚いたような顔をしていた。

 特許は既知の誰でも知ってるような技術の応用的なことは対象外だけど先生達と話し合うイデアは私の感覚でも斬新で確かにメリット多いと驚く発想が多いし全く別の技術を持って来て応用するようなこの多様なジャンルの集団でしか発想出来ない事も多いと思う。


 うーん確かに建築の前島さんと橋の三矢さん以外はちょっと研究に偏り過ぎていて会社とかそういう話はちょっと難しいかもだけど、新倉先生は良く知っているようだ。


「君達を見方にすれば儲かるその企業とユーザは嬉しいだろうけど幾つかは厄介な事に他の資本家が儲からなくなる物も多い。これは敵も作りやすいけど対象を選べばそうは問題にならないと思う」


 そうだね。私達は別にお金儲けを目指してはいないからねw。


「但し、これらは日本の技術として日本と敵対する国からの生徒のいる研究室や企業とは一緒にはやらない事は当たり前だね」

「もうそれはかなり難しいのではないですか?」

「確かにどこも留学生だらけだから大学の研究室との協力はないかな」


「そうかもしれないね。まあ大学でも企業でもその部署が関わっていなければ大丈夫だし契約でクリア出来ると思うよ。そして、ここからは賛成して貰わなくても構わないんだけど、直接軍事はちょっとダメだけど、さっき夢美さんと討論した日本で研究出来ない事も研究してもいいというのなら、わたしがこの会社のお金を出すよ。口はそう出すつもりはないけどね。みんなどうだろう?」


「理想型を実現出来るなら僕はそんなおかしなハードルは気にしません」

「同じく」

「うん、研究を制限するなんて正しい民主主義じゃないからね。やれる人がいないなら私達がやればいいよ」


 みんなうなずく。


「いいな君たち」


 やばい、なんかいきなり新倉先生が凄くカッコよく見えて来た。


「新倉先生。大丈夫です。私がお金を全部出します」


 いや、結構お金があるんだよね。


「「えっ!!」」


 そりゃあ驚くよね。

 正直、中学生の私では使いきれない程もう持ってる。


「一応、父と母には相談しますけど、やる方向で考えて貰って大丈夫です。それとは別に後で前島さんと紀州さんにご相談があります。そして今の技術ですけど美鈴先生はそれとは別に西園寺グループと片神無グループに誘われていましたけど、つまりはその両方には技術が売れますよね」

「そんなのもう不労所得が約束されているようなものじゃないか。夢美さん、わたしにも出資させてくれない?」

「あははは、考えておきます」


「皆さんはどうですか?」

「僕は大丈夫。っていうかやらせて欲しい」

「わたしも」

「理想型を実現出来るならやらない訳ないよ」

「僕もお願いします。夢美社長!w」

「いやいやいや、私は社長はイヤですよ」

「ちょっと両親と相談しますね。でもわたしもやりたいです」

「夢ちゃん、私も暇だから週に数日でいいから会計と事務で雇ってよう。簿記持ってるんだよう」

「久美子先生。考えておきますねw」


「もう一度確認するけど、日本で研究が困難なものも手を付ける可能性があるという事に賛成という事でいいかな?」


「「はい!」」


「特許は近年、他国に漏らさない方がいいものは内容を隠せるようになったけど思う様には出来ないらしい。でも特許は概論で良くて肝心のこれが判らないと出来ないという部分はやんわりなブラックボックスでも通せるから、こういったのに詳しい特許・法律事務所に連れて行ってあげるよ。反対が無かったら後で事例をシェアするから判りやすく書いて欲しい。順番に一緒に相談に行こう」


 全く、研究費を削る算段よりそう言うのをちゃんとやって欲しいよ。

 葵さんが『どこが特許に出来るのかがわからない』と言うと新倉先生は全部を確認するように一つ一つ挙げ出した。一度しか聞いてないのにめっちゃ理解してたよ。もうなんか新倉先生は怖いね。


 まあ、と言う事になって色々と話が大掛かりに進む事になったよ。


 三矢さんが『女子高校生社長っていうのはいたけど、女子中学生社長っていうのは聞いたことがないね』と言っていた。


「いや、出資だけで勘弁してください。でも会社って最初は何十億位必要なんですか?」

「いや、毎日出社して何かやるって訳じゃないから全然そんなにいらないよ。資本金の額毎に税制があるからもっと凄く小さい額から行こうよ」

「そうなんですね。じゃあ全然大丈夫です」

「大富豪かっ!」(三矢さん)


 いや、西園寺グループの収入はまだこっちが驚いている状態だけど、だとしたらこのまま田舎の伯父さんの所に手を付けられそうだね。


 どうやら美鈴先生が色々と次に進めようと新倉先生をアテンドしてくれたみたいだ。

 美鈴先生は世の中の役に立つと考え新倉先生にアドバイスを求めて進めたかったらしい。

 その思惑は凄く上手く行きそうですよ。美鈴先生も色々考えてるよね。本を書くのもそうだし世の中の為に未来を切り開ける凄い人だよ。陰キャだけど。


 でも『チーム美鈴』恐るべし。


 そう言えば沢さん達ともこの後お話して色々と整理してみんなと相談して考えてみよう。

 なんか、向こうで私は『聖剣』という宝を偶然手に入れたけど、日本ではこの先生達が私の『宝物』だよ。


「よし、じゃあ前祝いに飲みに行こうよ! レイさんのおごりで。いや、夢ちゃんのおごりかな」(久美子先生)


 おい!


◇◇◇◇◇


【グレグリスト伯の館】


「サスカッチのヴィッツレーベンはわたしが処分する。ウルリヒ殿に見つけて頂いた呪いは全て撤去し無力化する。ソフィア嬢、当家の尖塔師に解呪の白魔法を教えて頂きたい。それで良いな」

「「はっ!」」


「グレグリスト伯、解呪の呪文は一般的なものなので御存じだと思いますが確認します。しかしお待ちください」

「何ですか、ソフィア嬢」

「サスカッチの街の人熊(じんゆう)達の事です。恐らく白魔法によって解呪が終われば普通の生活に戻れると思います」

「ソフィア嬢はやさしいお心をお持ちのようだ。しかし人狼と同じ人熊は火刑です。この領地に保護して回復を待つだけの余裕はありません」


「それではダメなのではありませんか? 何故ならまだ侵略された訳ではありませんが、名君と謳われたグレグリスト伯ともあろうお方があの方々を見捨てれば他国のサイレントインベージョンの思惑に屈し負けた事になるのだと思いますよ」

「ぐっ!」

「ソフィア嬢。伯に対して言い過ぎではありませぬか」

「ヴィッツレーベンの尻拭いのための財政も余裕があるわけではありませぬ」

「いや、二人共待て、ソフィア嬢の仰る通りだ。正直手詰まりではあるが、、、」


「そこで将来の為にご相談をお持ちしました。サスカッチの街の道はあのパネルのせいで土砂崩れも酷く道もかなり通り辛かったです」

「ヴィッツレーベンの仕事が出来ていなかったと言う事ですな」

「はい、あのように山間部の山肌を皆伐(かいばつ)してパネルを並べれば崩れてしまうのは当然です。これからその道を直すのも山を回復させるのも多くの人手が必要です。彼らがいなければ出来ません」


「道だけでもよいのではありませんか? 山は自然に回復もします」

「この地のお水は美味しいからお酒も美味しいのですよね。それは山が見事に水を作っているからですよ。木々が無ければ付近の水も減りグレグリスト特産の穀物も収穫が減りますよ」


「そ、それでサスカッチの収穫が激減していたのか!」

「・・・」

「ど、どうしろと言うのです」


「はい。まず大叔父様のクラトハーンからも兵を出し彼らを保護します。その後彼らを治すのはわたくしとウルリヒお兄さまで食料や保護人員を用意いたします。グレグリスト伯にはあのパネルの全撤去をお願いします。運ぶのはトラックを出します。あのようにパネルを置く為に皆伐してしまってハゲ山になった部分は簡単には回復しません。他の地域は密集している木々も多く、逆に間伐も必要です。その為の技術指導やショベルカーや移動用のトラックも用意して他から移植しましょう」


「成る程、、、それでは移植するのは建築資材に最適なシェードロスが良いですな」

「さすがグレグリスト伯ですな。良く先の事をお考えだ」


「いえ、それはダメです」

「何っ!」

「ソフィア嬢、それはどういう事ですか?」


「自然界に対して人の欲を優先すれば天罰が訪れます。シェードロス(杉)は花粉が花粉症という病を発症させることがあります。自然に生えていた木と同じものを同じ割合で植樹した方が良いのです」

「そ、そうですか。ソフィア嬢がそう仰るのでしたらそういたしましょう。しかし私共はそれで色々と助かりますが、そちらのメリットは何ですか?」


「ルントシュテットの大叔父様のクラトハーンの街に魚とその間伐で余った建材を安く販売して欲しいので、こちらのクレーデル商会とルントシュテットのマンスフェルト商会に提携して頂き、氷の技術を提供致します。マンシュタイン卿のルーファスの街と大叔父様のクラトハーンの街で姉妹街として提携し税を優遇して欲しいのです」

「うちの街の税を下げてくれるのはありがたいですな。しかし我々はルントシュテットの商品の価値を存じ上げていない」


「はい。まずルントシュテットの商人の使うコンテナトラックですが、今回、クレーデル商会のノアさんと行動を共にしましたが、蒸気自動車でルーファスの街からアルフビートの街のアルベルタまで行きは2日で帰りは1日でした」

「なんと! それは商会が使えば確かに便利ですな」

「その為にもサスカッチの街の道の整備は欠かせないのです」

「確かに領内をそこまで速く物資が運べるのは領の為になりますが、マンシュタイン卿の言うようにルントシュテットの商品の価値が判りませんと何とも、、、」


 モルキッソ卿の意見にグレグリスト伯も頷く。

 うん、確かに叔父様のやってたパン屋さんぐらいしか知らなければしょうがないよね。


「ノーラ、エルフリーデ様をこちらへ」

「はい」


「エルフリーデが来ているのか!」

「グレグリスト伯。確かにゲートルード様のご子息達はお金欲しさにグレースフェールに麻薬をはびこらせるという大罪を犯しました。しかし、エルフリーデ様の預かり知らぬ所で行われそれを止める事など不可能な状態だったのです。エルフリーデ様はご本人がどうする事も出来ないにも関わらず貴族籍を失いました。そこの所をグレグリスト伯がお間違えでしたら再考して頂くように進言致します」


 市民達には殺人未遂とされてるけど貴族達は麻薬の件を知っている。


「そ、それは、、、」


 パタン。


「お、おじいさま、、、」


「エ、エルフリーデ!」

「な、なんとお美しいのか」

「おお、これは素晴らしい」

「本当にエルフリーデなのだな」


 グレグリスト伯がエルフリーデ様に駆け寄り抱きしめた。


 ゴクリ(わたしw)

 はい、目一杯着飾ってお化粧も気合いれてやってみましたw。

 そもそも孫が可愛くないおじいちゃんはいないよね。


「皆さま。ルントシュテットからの商品はグレグリストの商品の売り上げを脅かすような物はこちらには販売致しません。ルントシュテットには先程ご説明しました移動の為の蒸気自動車や工作機械も沢山ございます。更にルントシュテットでは女性も社会で活躍し服装もこのように動きやすいものですし女性達に人気のこのようなお化粧も沢山取り扱っていますよ。奥様方に喜ばれますよ」


「わ、判った。ルントシュテットの商品はグレグリストに益をもたらす素晴らしいもののようだ。エルフリーデの貴族籍の事も再考してみよう」

「ありがとうございます。グレグリスト伯」


「エルフリーデ様、家の息子の嫁にどうだね」

「おい、マンシュタイン。まずわたしに話を通せ」

「そうですな。はははは。しかしソフィア様は凄いですな。グレグリストを救って頂いた恩は忘れませぬ」

「まだこれからですよ。それに呪いを見つけたのはウルリヒお兄さまです」

「ああ、そうでしたな。ウルリヒ様、ありがとうございます」

「い、いえ」

「マンシュタイン卿はエルフリーデ様の取引書のお話もお願いしますね」

「喜んで引き受けさせて頂こう」


「しかしソフィア様はまるで我々の意見がどうなるのかを全てお見通しでご準備されていたかのようですね」

「そんなことはありませんけど少しでもグレグリスト伯が前向きに考えて頂けるお力になれたのでしたら光栄です。では、クラトハーンの兵士も呼びますから様々な被害が拡がらないように直ぐに手を打ちましょう。その後グレグリスト伯にはあの者達を裁判で裁いて頂いた後に、何事もなかったかのように過ごして頂ければ良いのかと思います。グレグリストには伯がいらっしゃるから彼らの企みなど効かないと言う事を見せてやりましょう」


「成る程、、、判りました。ソフィア様、貴方様に無限の感謝を! よし、直ぐに対処を開始しよう!」

「「はっ!」」


『大叔父様。我々の出番はありませんでしたね』

『そうじゃな。まあソフィア様じゃからな。ウルリヒ、負けずにクラトハーンの兵士達を使ってみせよ』

『はいっ!』


 この後、色んな事を勝手に進めたけど、何故か尖塔師のウイルソンさんは物凄い笑顔でルントシュテットへ通話してたよ。いや多分説明が面倒だしお父さまの許可や動いて貰う事が多くて大変だろうけどお願いしますね。


 こうして、人熊達を捉えてルーファスへ運び、教会に軟禁して解呪をかけ、食事を与えると直ぐに彼らは復活していった。


 お兄さまはクラトハーンの兵士達にテキパキと指示をしてとてもうまく統率してくれた。

 なんか才能あるよ。やっぱりお兄さまはこういうの頼りになるね。


 グレグリスト伯の指示で外して行ったパネルは相当な数で、クラウ達が大き目のトラックを持って来たけど運ぶのに何日も掛かったそうだ。


 サスカッチの街の貴族はグレグリスト伯に処分され貴族家もお取り潰しだった。

 サスカッチの街は時間が掛かるだろうけど、復活しそうだしこれはどうにかなりそうだね。


 パネルを外したら、恐らく綺麗だったであろう山肌がまるで病気にでも罹ったかのようにそこら中ハゲていた。

 私達は歴史に学び同じ過ちを繰り返してはいけない。こんな愚かな事はこれっきりになるように祈ろう。


 パネルを撤去して木々が戻れば木の実も増えて時間はかかるだろうけど野生のクマも平常に戻って行くと思う。パネルのせいでクマさん達も大変だったね。


 いや、何か忘れてる気がするんだけど、、、。


 し、しまった! 取引にメープルシロップを入れるの忘れてたよ。マルテ~。


◇◇◇◇◇


【別荘?】


 私は母の実家付近を詳しく調べる為に伯父様から土地を分けて貰うようにした。

 勿論伯父さんの子供達の税金対策もあるけど、かなりの価格で購入するようにした。支払いは伯父さんの税金が少なくなるように上手く分けるよ。

 契約は伯父さんの意向を最大限入れて、私が他に売る際には伯父さんの所の許可を貰わないと売れないという事にした。

 いや、売りませんよ。

 私が子供の頃落ちた穴の付近から廃病院を含めておそらくあの地下の範囲全部とその周りだ。

 伯父さんは凄く喜んでいて、私だけじゃなく母にまで凄く何度も『ありがとう』と言ってたよ。

 伯父さんは家宝の一つの刀と鎧を一組私にくれたよ。まあ九条家の方は兄が守るだろうけどこっちも長く続いているのだから私も少しでも力になれれば嬉しいね。


 私はあの地域を調べるのに前島さんと紀州さんを巻き込む事にしたよ。


 紀州さんには、まず伯父さんに許可を貰って伯父さんの土地を含めて全てで地下空洞の範囲はどれくらいか? シンクホールの危険のある場所がないか? を調べて貰う。

 これは地下に音波などを当てる事で地下の状態が判るそうだ。


 前島さんには廃病院の場所に私の別荘を設計してもらい、かなり簡単に地下に降りられるように色々と考えて貰う。結構大きめのリゾート別荘的なので考えて貰う。田舎だし土地だけはあるからねw。

 今の時点で、地下に大きな空間があってそこへ私が何度も行きたいという事までは二人に伝え、建設時にもそれらを知られないようにしたい事まで理解して頂いた。


 前島さんと紀州さんにお任せするつもりだけど、出来れば地下に行きやすいと嬉しいな。



【夢ビル】


 私は、近くに大きな新しめのビルを購入して前島さん経由で信頼出来る業者に頼み最新に改装したよ。

 7F建てのビルなんだけど、土地も含めて全部購入した。地下二階は駐車場になってる。


 一階は待合部分と沢さんのレストランとコーヒーショップが入る。

 二階は母の日本舞踊の教室と半分は貸せる場所にして三階は久美子先生のお友達も誘った音楽教室と塾、四階~六階は貸しフロアで七階を私達の設立した会社『イデア プロキシマ』にした。管理会社にお願いして警備や管理をやって貰う。これは会社ではなく私個人の部分だよ。

 騒音は上下に響かず大丈夫な造りなのだそうだ。でも運動が出来る場所として地下を体育館のように改装したよ。ここでも剣道は練習できるよ。


 会社の出資者は私で前島さんが社長、私も美鈴先生達も取締役。まあそう心配はしていないけど新倉先生にも相談役として執行役員になって貰ったよ。一応労基法があるから基準には従ってる。出入りも全部自動で記録しているよ。一応新倉先生にも少し出資して貰った。


 特に以前とは変わらなくて集まっての討論が主体だけどね。以前と同じで時間の縛りとかはないよ。

 勿論、機器も色々揃えたのでテレワークのリモート参加でも構わない。

 時々誰か来て資料を纏めたり論文を書いたりしているようだ。

 私は学校が終わるとここへ来て三階の塾の空いた部屋で美鈴先生の家庭教師や早い時間には沢さんの所へ行って料理を教わってるよ。

 いや、日本舞踊は勘弁して。


 特許の方はまだやり取りはあるだろうけど新倉先生のお陰で申請は全部終わったよ。

 幾つかは何ヵ国か指定しての国際特許にして貰った。一つの特許申請でも項目は幾つもあって、特許用の文章の言葉も特殊で結構大変だったよ。家庭教師の先生達ですら戸惑っていたからね。

 長いと3年位はかかるそうだけど、技術の説明資料に特許出願中と書いておけば大丈夫なのだそうだ。でも今は特に宣伝も何もしてないよw。


 美麗に少しだけ話したら『すぐにうちのグループ企業に入りなさい』と言ってたけど恐らく次の打ち合わせで美麗の所とは契約できそうだよ。


 美麗は自社でやりたいけど技術がないので囲い込みたかったようだけど、理念も理解して貰って取引に応じてくれるようだ。インクルーシブルの独占契約ではなくてエクスクルーシブルだよ。そして他の幾つかの技術もかなり興味がありそうだ。

 色々とお金も出して貰ってるから口約束だけどビジネスの礼儀として先に美麗に話したんだからね。


 問題は片神無グループの方だね。

 どうやって神功先輩に話そうかな。引き抜きの話も神功先輩が絡んでいるんだろうか? まさかギャルは関わってないよね、、、w。

次回:夢美の考察回

 コラムなので読まなくて大丈夫です。ソフィアの開発状況とその他状況、夢美の会社と別荘の状況を考察して、貴族学院は今度二年生、日本は夏休みが終わって二学期が始まるという所までになる予定です。

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