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竜騎士は涙を流さない

作者: わさび豆腐

今回は短編ファンタジーに挑戦してみました! かなり切ないお話です……。

 もう一緒じゃないのかな……ローザ。


 大陸全土を巻き込んだ第三次レゾアニア戦争。竜騎士だった私は帝国軍と戦った。相棒の雌竜、ローザと一緒に……。ローザとは、私が物心ついた時からの親友であった。

 竜騎士になる人間は幼少の頃から、相棒となる竜と生活を共にする習慣がある。それは竜が主人になつくようにするためだ。元々、竜は人間になつきにくい生物だから、基本的に幼馴染である主人の言うことしか聞かない。

 しかし、優しいローザはどんな人にもなついていた。でも、一番は私。どんな辛い戦いでも私とローザは生き残ってきた。いつも私を守ってくれる。私の肩に矢が刺さった時も優しく傷口を舐めてくれた。ローザは竜騎士団に入っても、人見知りで友達などできやしなかった私の唯一の親友であり戦友だった。


「ローザ……大丈夫、レナよ。レナ・アーヴァン。あなたの主人。だから怯えないで」


 私がローザの頭を撫でるとローザは嬉しそうに翼を羽ばたかせた。しかし、体は鎖で繋がっていて動けない。その優しい瞳は確かに泣いていた。


「ローザ、泣かないって約束したでしょ?」

「グゥゥゥン……」


 しゅんとするローザ。私は慰めるために少し笑顔を作ってみせた。私が幼少の頃はローザによく慰められていた。最近も……。でも、今日は私がローザを慰めている。不思議ね。

 ここは帝国軍の城の中。周りには重そうな鎧を着た兵士たちが鋼色に輝く剣を持ってこちらを見つめている。石垣の壁。外から漏れてくる光は私を濡らしてくれる。もう、光を浴びれない私とローザへのせめてもの慰めなのだろうかしら?


「もう時間だぞ」


 兵士の一人がそう言った。冷たい奴……。


「もうちょっとだけローザと話をさせて。帝国軍の兵士さんはみんな冷酷無慈悲なの?」

「……分かった」


 兵士がそう言うと私はローザの顔に体を寄せた。ローザはいつもの無邪気な瞳でこちらを見つめてくる。


「大丈夫、また今度お父さんや妹と一緒に食事でもしましょ……ね?」


 もうお父さんは死んだけど……。この間の第七防衛線で竜から落ちた所を敵の兵士に首を跳ねられた。あっけない最後ね、ホント。人の命なんて軽いものよ。ローザの命の数万倍軽いわ。

 人なんて、ローザとは違って汚い生き物、だから軽いのよ。弱いくせに強く見せようとする。でも、剣で突き刺せばすぐに死ぬ。私はそんなことを何回もやってきた。ローザも一緒……。彼女には悲しい思いをさせたわ。


「グゥゥゥン……」

「安心して、私はいつもローザの傍にいるから。どんな時も。でも、今日はここまで……。少しの時間だけ離れ離れになると思うけど明日は会えるわよ。だから、心配しないで。きっと明日、会えるから。もう戦争は終わったんだって。お父さんが言ってたわ。またあの日に戻れるんだよ。一緒に虫取りに行ったり、雪遊びしたり。だから、また明日……ローザ」

「時間だ。この竜を連れて行け」

「グゥン! ……グゥゥゥン」


 兵士は私からローザを引き離した。最初は反抗していたけど私の笑顔を見た途端、彼女はおとなしくなって奥の部屋に行った。勿論、明日があるなんて思ってないわよ。ローザを安心させる為に言っただけ……。


「さ、早く。もう未練は無いわ」


 近くにいた兵士に私は言った。そう言うと兵士は無言で私の首に優しく縄かけてくれた。


「すまないな……これもこの世界の決まり事なんだ。悪く思わないでくれよ」

「気にしてないわ。あなたが悪いんじゃないもの……」


 この世界の決まり事。それは主人が使えている国が戦争に負ければ、その主人と竜は処刑されるということ。つまり私たちは戦争に負けたの。だから……。

 でも、私は涙を流さない。いつか別れると思ってたもの。


「ローザ、サヨナラ……」


 そして、竜騎士の私は処刑台で……死んだ。




――――――――ガタン―――――――――




 目覚めた所は草原だった。死んだのね……私。結局、私の命も処刑台一つで死ぬようなものだったのか。ま、そういうものね。

 でも、私は悲しくなかった。ここの草原の風が私を優しく、迎えてくれたからだ。

 目に入ってくる溢れんばかりの光が眩しい。私はそっと辺りを見回す。右側にはローザがいた。天国ここ(だと思う……)でも会えたんだ……優しい瞳に。またローザと遊べる。何しようかな……。


「おはよう、ローザ」

「グゥン! グゥゥゥン……グゥン!」

「そんなに顔を舐めないでよ……くすぐったいでしょ! で、今日は何する?」

「グゥゥゥン……」

「まだ決めてないか。ま、いいわ」


 私はローザの体をギュッと抱きしめてあげた。嬉しそうにローザは翼を羽ばたかせて、尻尾を振る。その体には鎖がついていない。私も幼い子供のように笑った。とはいっても十五歳なんだけど。

 大人なの? 大人ね。

 でも、ローザの前ではいつも子供。それでいいと思っている。


「……ローザ」


これでずっと一緒だね。これからもずっと、ずっと……私はローザと一緒。




◆………FIN………◆

短編って毎度のことながら難しいですよね……。ネタが少ないんですよ、本当に。今回のはかなり切ない少女と雌竜の物語にしてみました。中篇ぐらいにはなりそうな話を短編にしたって感じです……。もっと、書きたいことはあったのですが……。テーマを絞ったことが逆に良かった気がします。

と、いうことで感想・評価お待ちしておりますッ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] はじめまして。 スケッチ風で、竜を主題にしているところに惹かれて手にとってみました。少女のはかなさと竜にたいする一途な思いが伝わってきました。 [気になる点] 竜が汎用兵器の世界観で、言…
[良い点] 文章がとても美しいですね。 表現方法がとてもいいです。 元からいいテーマをさらにこう上手に演出出来るとは、すごいですね。 [一言] 私も龍をテーマにした小説を書いていますが…、到底及びそう…
2013/07/16 15:33 退会済み
管理
[一言] 文体としては纏まっているのですが、コンパクトにまとまり過ぎて感情移入が出来ず。 終始 文末に (キリッ という擬音が鳴っている感じがします。 女騎士レナに対してもっと深く感情移入できればそう…
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