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引きこもりの始まり

私、リーゼロッテ・アミュレット伯爵令嬢は、母親譲りの光沢のある癖の強い赤毛を大好きな赤色のリボンとルビーの装飾をされた髪飾りで綺麗にまとめ上げ、当時流行りのモスリンのピンクの大きなフリルがついたドレスを肉まんじゅうのような体を覆い隠した。


はきなれない子供用のヒール靴を、靴擦れを我慢して履いて、王国有数の音楽団の演奏と、豪奢な装飾で彩られる夜会の会場を歩く。


多くの人は当時のことをこういった。


豚に真珠。豚が着飾ってもただの豚なのは変わりない。


でも。それでも、当時の私はいつもより幾分か綺麗になったと信じて疑わなかった。これなら、あの人にも見てもらえるのではないか。初めて、アミュレット伯爵邸でお会いした、ブレベリー王国の第一王子、エリオドア様に――。


そんな勘違いから、あの公衆の面前で、初恋相手、エリオドア様に勇気を出して声をかけた。


ひとこと。なにか、この人との会話を長く続けられる方法はないものか。


私に声をかけられたエリオドア様は、きょとんと首を傾げた。


空のように澄み渡った青い瞳を煌めかせる。そして、私の人生を変える、後に一生の間で大きな後悔となる言葉をはいてしまう。


「――す、す、好きです!」


この一言で会場が凍り付いた。私の思考も感情も、雪の日の湖面のように冷たくなった。



「おい!デブ!邪魔なんだよ!道の真ん中歩いてんじゃねぇッ!」

「ちょっと、ここ汗臭くない?あ、リーゼロッテだったの?だから臭かったのねぇ~」

「ねぇ、ねぇ。その見た目で王子様に振り向いてもらえると思ったの?身の程をわきまえた方がいいんじゃない?」


あの事件は私の人生で初めての大失敗。


私が社交の場で礼儀知らずで身の程知らず。気が動転してつい発言してしまった、たった一言の言葉が王国全土に知れ渡ることとなる。


見た目と根暗な性格が仇となり、貴族各位から笑いものにされ、夜会に参加する度に王子告白事件対する話題で馬鹿にされるようになった。


元から見た目も人ウケするような容姿じゃないのも相まって、誹謗中傷の言葉が浴びせられる。


仕方ないにしろ、幼い私の心は深く傷つくことになる。


もう嫌だ。知らない人に誹謗中傷されるのは。デブな自分も、それに反論できない自分も、困った顔で愛想笑いを浮かべる王子も、私を攻撃する人間も全て。


そうして、これがきっかけで12年の引きこもり生活が開始された。

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