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血に塗れた復讐

ケンジとアストレンの決闘が始まる。


“異界の勇者達”の間から、黒い重装防具と大きな斧を持ったケンジが出てくる。


「どうやら決闘で決着をつけたいらしい…!この、アストレンに決闘を挑むとは…!!」

アストレンもすぐにそれが決闘の様式であると理解し、鼻息荒く前に進む。


「アストレン様!!俺らはどうすれば!?」

アボクがアストレンに聞く。


「君達は決闘を見るのは初めてだったね。皆、そこで見ていなさい!!もしも私が負けたら、道を開けるように!!もしも私が勝ったら、戦闘を開始なさい!!」

「「「はい!!!!」」」



白くて薄いマントを着たアストレンがケンジと対面する。

ケンジが警戒しながらお辞儀すると、アストレンも貴族のように可憐にお辞儀をした。

見ると口角を上げてニコリと笑っており、これが決闘でなければ社交ダンスかお見合いパーティーのようだった。

そしてサラリと白銀の細剣を抜くと、左手を腰に当てて剣を構える。

鍔の無い白く清潔に研ぎ澄まされた細剣は手術のメスを連想させた。

しかし、それは希望に満ちた回復する為の手術ではなく、確実に敵の急所を貫く為の残酷な刃物なのだ。


「いくぞっ!」

アストレンが細剣をクルリと回し、素早くケンジの懐に入って鋭い突きをした。

※「うっ!?」

「ふふふっ」

ケンジの首を、アストレンの細剣が優しく叩く。

もしもここでアストレンが本気で命を取りに行っていたら、間違いなくケンジは喉元を貫かれていただろう。


※「くっ!」

萎縮していたケンジが我に返って、斧を振る!

アストレンは湖から飛び立つ白サギのようにケンジから離れると、ケンジの縦の振り下ろしを左へステップして交わし、さらに下からの振り上げを右へ交わした。


「おかしい。素人か?」

アボクがケンジを見て言う。

「なぜ?」

サクトルが聞くと、アボクが指差して

「まるで斧に振るわれちまってる。見ろよ、軸がズレて腰が浮いてるだろ?鎧や武器が一流でも、あまりにも基礎ができていない」


「鎧を着た素人?もしや、スケープゴート?」


「ハッタリだとしても、それだと決闘を申し込んだ意味がわからない。これは明らかなアイツの鍛錬不足だ。・・と言うか、よくミネラウルまで来れたな。数百年生きた歴戦のエルフと戦うにはあまりにも戦力差がありすぎる」

アストレンは、最初の一撃である水平斬りをバックステップで交わし、さらにもう一度足を払う水平斬りを華麗にジャンプしながら交わして、皆に向かって”あぶなかった”と、大袈裟に汗を拭う仕草をした。

まるでサーカスだ。

いつからか、アストレンが攻撃を交わす度に心配そうは声があがり、アストレンは皆を盛り上げるように両手を挙げて焚きつけた。

それは手拍子を伴ったコールになり生徒達の声援となった。

「「ハィッ!ハィッ!ハィッ!」」


アストレンは生徒のコールに合わせて呼吸を合わせるとケンジの振り下ろしをスルリと交わした。

「ウワーーーー!!!!!」

アストレンが交わすと大きな歓声が響き、コールが始まる。  

「「ハィッ!!ハィッ!!ハィッ!!!」」

ケンジは手に余る大きな斧を辛そうに振り上げ、アストレンは攻撃スレスレで交わしておちょくった。


遂にケンジはスタミナ切れを起こし、肩で息をしながらも必死にアストレンに斬りかかった。

しかし事態は好転せず、ケンジは焦れば焦るほどスタミナ切れを起こし、アストレンの身交わしを容易にした。

*「うわーーー!!!」

ついにケンジは両手で斧を触れなくなり、必死に右手で斧を持つとアストレンに斬りかかった。

アストレンは振り下ろされたケンジの右側面にするりと回り込むと、隠していた鋭利な棘をケンジの背中に思い切り突き刺した!


*「うぐぎゃあーーー!!!」

あまりの激痛にケンジが絶叫をあげる。

(ヒッ!)

VCHANが小さな悲鳴をあげ、ヒキや他のアカウントも恐怖で顔を強張らせて息を呑んだ。

Writeは既に泣き出し、しゃがみ込む。


*「ああああああああっぐぁああああああ!!」

棘はチェーンメイルの間に突き刺さり、折り畳まれたそれはピンと伸び、長くて派手な赤い羽飾りを伸ばした。 

それをケンジは引っ張って抜こうと苦闘し、肩甲骨と背骨の間に深く突き刺さった羽飾りは、それを嘲笑うように空を泳いだ。 

*「あああああっあぐ!あぐ!」

「どうだね??異界の勇者君。私特製の毒の味は??」

ケンジは脂汗を滴らせながら嘲笑うアストレンを睨みつけた。

ケンジは明らかにレベルが高かった。

本来でならば、これほどの差ならアストレンなど一撃で斬り伏せる事ができるだろう。


一撃だ。

一撃喰らわせば全てが終わる。


ケンジは右腕が動かなくなるも、なんとか左手で斧を拾い上げようとする。

アストレンは斧を踏みつけると悪魔のような尖り耳を水平に立ててサディスティックに微笑んだ。


「まだもう一本あるのだよ異界の勇者君。赤は激痛。黄色は痺れだ。楽しみだろう?」

*「くそお!!!!!くそぉーー!!!」


ケンジが飛びかかってアストレンに体当たりをする。

しかし、アストレンは華麗にケンジの背中に転がると、置き土産のように黄色い羽飾りのついた棘をケンジの右肩甲骨に突き刺した。

「うぐああああああーーー!!!!!」

あまりの激痛に両腕を曲げることしかできなくなり、足を曲げて絶叫した。


アストレンは皆に礼をしてコールを楽しんでいる。

「おやおや?まるで獣脚類のドラゴンのようじゃないか。ん?。美しい羽根で察するに雄のテイタノドラゴンかな??ん??」

アストレンが笑いを誘い、アボク達が笑った。

テイタノドラゴンは大洞窟ガランを初めてとした石柱の森に住む頭の大きなドラゴンだ。

直立二足歩行であり、前足は飾りのように退化していた。

アストレンがテイタノドラゴンと称した理由は2つだろう。

見た目による滑稽さと、口ばかり大きなバランスの悪い身体。

つまり“大ホラ吹き”または“自分の力量に自惚れたビックマース”を意味した。


※「うぐぅぅうああああああ!!!」

ケンジはアストレンの冗談など耳に届かないほど絶叫する。

アストレンはうずくまるケンジに更に青と白の羽飾りを用意した。

もしもケンジが立ち上がらなければ、アストレンは更なる棘をケンジに突き刺すだろう。


「ああ。分かったぞ。アストレン様は人でサッカノをしているんだ・・」

サクトルの横で生徒が言う。

「サッカノって?」

「僕も本で読んだだけなんだけど、サッカノはオルオガーテ王国のカンコロって言う村で行われている剣闘のことだよ。剣闘と言っても相手は魔物だけど」


「アストレン様は・・自分の命を賭けて剣闘を?」

「そうさ。サッカノはオルオガーテでは娯楽であり、勇敢な行為とされているんだ。選ばれた勇者は剣闘士となって魔物の攻撃を交わす。交わせば交わすほど勇敢で、観客が湧き立ち、剣闘士が隙をついて飾りが付いた伝統的な棘を魔物に突き刺してゆく。最後に魔物を十分に弱らすと、携えている剣で心臓をひと突きしてサッカノは終わるんだ」

それを聞いたアストレンは思わず唾を呑んだ。

戦士としての決闘を、娯楽としてのサッカノに変えてしまうとは・・!


「なぜアストレン様はそれをなさるのだろう・・?」

サクトルはアストレンを見ながら言った。



「はぁ、なんでだろうね。所詮僕たちは異界の奴らに勝てない・・だったら決闘・・なら娯楽であるサッカノをしてしまおうとお考えになられたのかもしれない」

「自分の人生を賭けて・・??」


「うん。だって数100年生きてるエルフだよ?僕らとは生きてる重みがちがうんだよ」


サクトルは困惑した。

確かに王国の魔導士軍に比べたら僕らはひ弱だ。

おそらくアストレン様や先生だけでは異界の者達は止める事なんてできないだろう。

しかし、今やアストレン様は命を賭けたサッカノを楽しんでおられる。

これが長寿にのみ与えられた『心の余裕』。

または数100年において長寿の重みを錘にかけるだけの、心の退屈さからくる感情なのかと。


*「ア“ーーーーーー!!!!」

遂に青と白の羽飾りが背中に突き刺さり、ケンジは悶絶しながら地面を這い回った。

斧を破棄し、息も出来ず、恐怖と緊張から何度も足をバタつかせながら遂に逃げ出そうとする。

しかし動くたびに羽根が大きくしなり、ケンジは絶叫しながら土を舐め、葉を噛み締めた。


「どうだ!美しいだろう!!見よ!!これがメルポの民を苦しめた者達の末路だ!!”ケンジ“は死後もノーノタルタにも行けず、黄泉の狭間を永遠と彷徨うことになるだろう!!しかし、それを悲観することはない!!!!私達に刃向った全てものが同じ運命を辿るのだから!!私はここに宣言する!!もう君達は許されない!!誰にも!!そしてマザー・アカナにも!!」

旗が掲げられ、生徒達が前に出る。

もはや勝利は目前だ。


アストレンは剣の刃の部分を持つと、サクトルに来るように指示した。

あの宣言の後にもかかわらず、アストレンの口調は優しかった。

「さぁ、サクトル。ヴェルクの仇を・・!!」


「あ・・・はい!!」

生徒達の殺気が空気を満たす中、サクトルは緊張と興奮で眩暈を起こし、歪む大地を歩いた。

強烈な眩暈のなかで唯一向けられた細剣の柄を、サクトルは辿るように掴んだ。

細剣は恐ろしく軽く、重いと身構えた為にヒョイと上に上がった。


*「ウーーーーーーウーーーーー」

ケンジは口から血の混じった唾を滴らせながら跪く。

目は虚で、もはや彼には助かろうと言う本能的な気持ちすらなく、早く死んで楽になりたいという懇願があった。

「さぁ、喉元から一思いに狙うのだサクトル。君ならできる」

「はい」


*「ウーーーー」

ケンジの鎧とチェーンメイルとの間に、生身の喉笛がある。

サクトルは細剣の剣先を当てると、両手でゆっくり細剣を刺し入れた。

*「ぐ、、ぐぇえぇっ!!」


まるで抱きしめるように、細剣は簡単に身体に呑み込まれてサクトルとケンジの距離が近づく。

まるで旧友と再会したアストレンとアルルゴのように身体が触れ、細剣に血が滴り、サクトルの右手を汚した。


サクトルは思った。

もしも、時空や時代が違ければ2人は友達になれただろうか?


───否────


「お前らに渇きの心がある限り、僕はどんな時空や時代においても君達を軽蔑し、戦うだろう…!!」

サクトルは突き刺した細剣を上に持ち上げると傷口を広げ、ケンジを睨みつけた。


*「ガッ・・・がはっ!!ぐぇえええっー!」

ケンジがカッと苦しそうな顔をしながら顔を高揚させる。

まるで枯れかけのマントラップが、断末魔の代わりに花を咲かせるように。


異世界のアカウントからは啜り泣きが聞こえ、これにたいして異議を唱えるものも居なかった。

ケンジの顔はみるみるうちに血の気が失せて土気色に変化し、力なく倒れて細剣がスルリと抜ける頃には、大の字になって地面に倒れ込んだ。


「ディア キルキリア ケンジニシカーーー!!!!!(ケンジは死んだーー!!!)」

アストレンがケンジの死亡を確認して叫んだ!!


*「ひっ!!」

その殺気だった声に、他のアカウント達が悲鳴をあげる。


太鼓が鳴らされ、サクトルはアストレンに短剣を返すと素早く横隊に戻った!

それは幾度となく訓練した成果。そしてこれから待ち受けるであろう惨劇を意味していた・・!


「距離目前!光属性魔法の用意!!!!」

アストレンが叫び、旗持ちと楽器で指示が出る!

「光魔法の用意!!」

「光魔法の用意ーー!!!」



アストレン:「魔法詠唱ーーーー!!!」

「詠唱!!」

「詠唱!!!!」


セラ魔法学院の生徒達が槍のように杖を構える。


jnon:「う・・ウワーーー!!!」

jnonが叫び、重い防具を脱ぎ捨てて森へ走り出す。

それを皮切りにアカウント達がパニックになり、jnonの後を追うように森へ走りだした!

見よ。

向こうの草に隠れるのは先ほど倒された兵士達の骸。

それはセラ魔法学院の生徒達のライトニングアローの完全な射程圏内であり、確実なキルゾーンに侵入している事を意味していた。

この場合、魔導士や魔法生物などの魔法射程圏内に入った場合、遮蔽物に隠れるか強靭な防具やアイテム。

パーティーメンバーの魔法使いに防御魔法を施して貰う必要がある。


アカウント:「たいへんだ!!冗談じゃない!!ふざけんな!!」

アカウントB:「は!!は!!はひっ!ふざけんなふざけんなふざけんな・・!!」


しかし、異世界の勇者達は戦い方の基本も忘れ、目の前に起きる恐怖からいち早く逃れる為に散らばった。


「放てーーーー!!!!!」

閃光と共に放たれた無数のライトニングアローが彼らを追うように飛び、士気の上昇と共に攻撃力の増したそれは、容赦なくアカウントの頭を射抜き、胸を貫通し、脚を砕き、叫び声を上げるアカウントの右頬から左頬を貫いて、光の矢の花畑を瞬く間に形成した。

「ア”ーーー!!!」


アストレン:「命中!」

「命中!!」

「命中ーー!!」


アストレン:「む?!」


しかし、VCHANは生存本能の中で光防御魔法を思い出し、数名のアカウントを攻撃から守った。


サクトル:「アストレン様!!」

アストレンはサクトルを見ると強く頷いた。


「距離目前!火属性魔法の用意!!!!」

アストレンが叫び、旗持ちと楽器で指示が出る。

「火魔法の用意!!」

「火魔法の用意ーー!!!」



jnon:*「いつまで固まってるんだよ!!早く来いよ!!」

jnonはなんとか降り注ぐ光の矢を交わした後、V CHANに向かって叫んだ。

そして恐怖に硬直するV CHANの腕を無理やり掴むと森の中に走って逃げ出した。


アストレン:「放てーーー!!」

「放て!!」

「放てー!!!」

ファイヤーアローが放物線を描きながら飛び、V CHANが守ったアカウント達に降り注いだ。


アカウント:「ウワーーー!!ギャーーー!!」

炎の矢はアカウントに突き刺さる前に周囲に燃え広がり、矢を受けなかったアカウントにも飛び火した。

「あっ!!あーーっ!!ぎゃぁあああ!!」

マントや腰布に燃え移ってアカウントが絶叫する。

しかしお互いに燃え移った炎を気にかける余裕すら無く。

数回悲鳴を上げたのち、瞬く間に火炎に呑み込まれて倒れ込み、次の絶叫で火炎ごと吸い込んだあたりで仰向けになって胸を掻きむしり、その形のまま動かなくなるのだった。


アストレン:「全軍突撃!!好きに進みなさい!!動くものに死を!!マザーアカナが私達の戦いを見ておられるぞ!!」

「動くものに死を!!!」

「動くものに死をーー!!!!!」


「「はい!!!!」」


サクトルも杖を槍のように構えて、他の生徒達と競うように突撃した。


途中で足にライトニングアローが刺さったアカウントを見つける。

アカウントは生徒を見ると剣を捨てて、両手を広げた。

アボクは構わず杖を向ける。

中堅アカウント:「た!!助けて!助けて!!たすけっ!」

アボクが中堅アカウントの頭をライトニングアローで吹き飛ばした。

血飛沫が顔にかかるも気にせず、反動で跳ねた杖を掴んでサクトルを見た。

サクトルは頷くと戦場をかける。


アカウント:「助けて!!」

アカウントの2人が敗走する。

アーシアは、戦いの基本を忘れずに射撃姿勢をとると、二股に分かれるライトニングアローを放った。


アカウント:「ア”ーーー!!」

アカウントB:「ギャ・・・!」

アカウントは火の棒が突き刺さったような激痛を背中に感じて反り返り、苦悶の表情のまま地面に突っ伏した。

もう1人は後ろから中枢を貫かれて、両手両足をピンと硬直させたまま前に倒れ込んだ。

アーシアがサクトルを見る。

眼鏡の奥には、沸る血潮で火照った顔があった。


サクトルは頷き、矢のように戦場を駆けた。

もう誰も逃しやしない!

その全ての命をマザーアカナに捧げて、ノーノタルタに居るヴェルクの魂の手土産とするのだ。



いたぞ・・!


森の中、こちらを振り返りながら走る2人の男女が居た。


シムラのパーティーメンバーのjnonとV CHANだ。

(こう言う時こそ冷静に・・!深追いせず・・!)

そうサクトルは自分に言い聞かせると、呪文を唱えて杖に魔力を集中させた。

「戦いの女神 メルル・ヴィアスよ。我が復讐の矢の刃先となれ」


サクトルの真横のトウヒの木に、V CHANが放ったフローズンアローが炸裂する。

サクトルは深呼吸すると、凍てつく氷が頬を冷やす中、それに動じず冷静に火属性魔法を放った。


「ファイヤーアロー!」


火の矢が木々を駆け抜け、次に呼吸をする頃にはV CHANの左肩を射抜いていた。


「ぎゃーー!!」

貫通した火の矢はそのままトウヒに突き刺さり、V CHANを文字通りに釘付けにしてしまった!

jnonが慌てて火の矢を抜こうとするも、あまりの高熱に手を焦がして叫んだ!

jnon:「クソ!!クソ!!」

jnonが剣を抜くと、トウヒとV CHANとに刺さった火の矢を切り落とす。


「ひぃいっ!!」

V CHANが左肩を抑えると辛そうに倒れ込む。

顔面は蒼白で、その顔には恐怖があった。

サクトルは2人に駆け寄ると、ライトニングアローを放つ。


jnon:「ウワーーー!!!」

jnonがサクトルの杖に飛びかかると、思わず放ったライトニングアローがV CHANの近くに突きささった!

死を目の前にするとネズミだって飛びかかる。

jnonは剣を持つと、必死にサクトルに斬りかかった。

jnon:「ふざけんなクソが!!」


サクトルは振り下ろされる剣をトウヒを中心に交わすと、何とか隙を見て魔法を放とうとする。

杖の先には魔法陣が残っていて、短距離であれば放てる状態であった。

サクトルが顔を引っ込めた瞬間、剣が振り下ろされ、

jnonが引いた瞬間、サクトルの魔法が飛ぶ。

攻防一体の中、2人の必死の息遣いが森に響いた。



jnon:「きぇえっ!!」

jnonが悲鳴に近い雄叫びをあげて不意にサクトルの前に立ちはだかる。

───とらえた!!────

jnonが不気味な笑いと共に剣を持ち上げている。


サクトルが最期を悟った瞬間、一筋のライトニングアローがjnonの胴体に突き刺さって吹き飛ばした。

(※放った魔法の主は不明。アストレン?)


jnon:「あーっ!!」

jnonが吹き飛び、トウヒの木にぶつかる。

尽かさずアボクが倒れるjnonにライトニングアローを放った!


至近距離かつ木を背にして撃たれた為、バチン!と鎧が弾けて壊れる。

肩の留め具が外れて露になるも致命傷にならず、jnonは必死に逃れようと駆け出した。


アーシアの放ったライトニングアローがjnonの左肩に直接して吹き飛ぶ、jnonはライトニングアローを肩に受けて出血しながら横になり、駆けつけた生徒達に囲まれて光の魔法の餌食となった。


サクトルは生徒達の間から溢れる魔法の光を呆然としながら見ていた。


しかし、突然の邪悪な空気にサクトルは我にかえると杖を構えた。

「な、なんだ!?」

サクトルの杖が震える。


すると森の向こうで何か巨大な物がこちらに向かって来ているのが見えた。

巨大な物から溢れる”混沌”。

それは木々の暗闇の中に大きく存在し、サクトルが警戒する以前からそこに存在していたかようだった。


木々を這うように進むそれは、タコの足をウネウネと動かした巨大な大男の白い造形であり。

大男の胸には人間の顔が埋まっていて、ギラギラと瞳を輝かせていた。

V CHAN:「ひぃ!!キャァアアアア!!!」

倒れていたV CHANが最後の悲鳴を上げたままタコの触手に絡まる。

悲鳴は一瞬のうちに消えて、何事もなかったかのようにV CHANを消し去ってしまった・・。


「バ・・バケモノ!!!!」

サクトルは思わず叫び、他の生徒達も余りの邪悪さに振り向き、立ち尽くした。

“巨大な男”はサクトルの言葉に深く動揺し、どうして良いか迷う。


「大マルリン!!!!みなさん!!マルリン大司教ですよ!!!偉い人です!!みなさん!こうべを垂れなさい!!」

アストレンが跪き、他の生徒達もそれに習う。

マルリン大司教がマザーアカナの生誕祭に来るのは知っていたが、普通の人間だった筈だ。

しかし見るからに面影は無く、ダンジョンに巣食うモンスターのそれだった。

サクトルの震えは収まらず、たとえそれが味方であっても恐怖は禁じ得なかった。


「アストレンよ・・。異界の者達は全て排除した。彼らに組みする連合軍も壊滅しよう。セラの子らを従え、良くやったぞアストレン」

「はっ!!大マルリンの意向のままに!!」


「アストレン。・・私は・・醜いか?」

マルリンの言葉にサクトルがピクンと反応する。


「いいえ!醜いなんてありませんとも!!さぁ、皆さん立ち上がって!!ここは大マルリンが守ってくれますから!行きましょう!!」

アストレンに促されて生徒が立ち上がる。

終始サクトルは自分の言葉を後悔し、罪悪感でいっぱいになった・・。










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