エルフ軍師 アストレン
アストレン率いるセラ魔法学院の学生部隊の攻防が始まる。
(─────!!!───!!)
兵士達が撤退し、太腿に光の矢が刺さった1人の兵士が森の方へ叫んでいる。
鮮血がとめどなく流れ、ハエがたかり、出血してもなお森へ這って行こうと踠いていた。
やがて這うのを諦め、仰向けになって天を仰ぐように手を広げる。
驚いたような表情に変わり・・肩が大きく上下して新鮮な空気を求めるように呼吸を始めた。
森の向こうでは相変わらず魔法陣が空に出現し、魔法が炸裂するたびに鼓膜が締め付けられた。
大気が幾度も真空と衝撃波で揺れる中、倒れた兵士はポカンとした表情のまま空を見ていた。
そしてカラスが警戒するようにホッピングしながら兵士に近づくと、遂に肉を啄み始めた。
安心したのか他のカラスも飛来し、死んだ兵士に群がり、ぺステ流行後間のないこの時代、こうした光景は日常だった。
サクトルはその始終を望遠鏡で見ている。
「どうだね?」
アストレンがサクトルに話しかけた。
「・・死にました」
「そうか・・君も休んだ方が良い。いつまた兵士が森から出てくるかわからないからね」
「・・光の槍が止みましたね?」
「そうだね。向こうも魔力の消費を考えているのだろう。または・・こちらの動きを伺っているのか・・。とにかく、無理に動く必要もないさ」
アストレンは持ってきた黒パンとベーコンのサンドイッチを食べながら紅茶を飲んだ。
向こう側で魔法陣が炸裂している事を除けばまるでピクニックに来ているようだ。
「アストレン様」
サクトルはアストレンに聞いた。
「なんだね?」
「異界の勇者は・・どこの世界から来たのでしょうか?」
「どこから・・?ふむ。難しい質問だね」
サクトルの問いにアストレンは顎を撫でた。
「ある人は言ったよ。『鏡に囚われし者』と。彼らはこうやってスマホと呼ばれる鏡を覗きながら進むと言う。スマホに囚われ、スマホに働かされてる」
アストレンはサンドイッチをスマホに見立てて、スマホを弄る人のモノマネをしてふざけて見せた。
「・・ある意味では私達と同じだ。優しくて強くて、何より純粋なのかもしれないね」
「共存の道は・・無いのでしょうか?」
「面白いことを考えるねサクトル。鏡は彼らと切っても切り離せない物なのだ。幾度となく破棄を試みたが、不思議な魔力が働いているのか・・切っても切り離せない物らしい・・。彼らは困り事があると、鏡を見て自問自答を始める。神に祈るみたいに。もしかしたら、我々の知り得る事ができない指示が彼らには読めて、それに突き動かされているのかもしれないね・・」
「・・・・」
アストレンはサンドイッチの残りを口の中に放り込むと、紅茶で流し込んだ。
「いずれにしても悪い奴らさ。物欲に関しては貪欲で、力を得る為にはどんな法でも犯し、殺戮し、乱獲する。まるで肥沃な土地を欲しがる“渇きの王”のように。乱獲は自然の理を破壊し、知り得ぬ魔物や地の底の亡者すら呼び覚ますのだ」
「・・・」
「彼らは討伐しなければならない・・その渇きの欲が根本にある限り」
アストレンはサクトルにそう語った。
──────
※データ復旧中
※データ復旧中
※データ復旧中
※故意の は データ破損に繋がります。
『マウスロード』を使ったシムラ達は塔の壁をすり抜け、壁を
無理やりチート行動を行っ ミネラウル城の塔の下にある沼の付近に降り立
塔の下に広がる沼の冷たい水。
着水したケンジは沼の臭さと冷たさに我を取り戻し。
放置された桟橋によじ登ると、なんとか陸地に這い出たのだ。
※データ復旧中
※故意の遮断行為はデータ破損に繋がります。
森と土の匂い とととと 水のせせらぎ
「どうだ?」
「シムラさんがいないけど大丈夫?」
潜伏していたケンジが同じく逃れてきたV CHANに話しかける。
V CHANは
2人で
スマホの灯りが頼りだ
チート行為に近いバグを使用したからか、スマホには次に何をやるのか指名は無く。
※データ復旧中
森の 歩きながらなんとかシム 達と合流しようとす
V CHAN:「偵察隊の情報だと・・街道沿いに魔導師の軍団が居るみたい。ほら、マップに出てる」
V CH「・・・どう・・?」
ケンジ:「動きは 無いな」
スマホを見ながらV CHANはマップを見
潜伏した
「このまま海沿いまで行ったほうが安全みた い」
「「「でも遠回りにな
」」
───────
「敵の軍を発見!!!!」
「敵の軍を発見!!!」
「敵の軍を発見ーーー!!」
歩哨に立った先生が声を出し、アストレンが飛び起き
る。
サクトルも杖の手入れを辞めると、すぐさま音楽の指示に従って横隊になった!
はためくのは『エスダム王国』の軍旗。
しかし、どの魔導師もトンガリ帽子からローブ、三角帽子、冠など服装がバラバラで軍団としての統一性が無さそうだった。
「エスダム王国の軍団だが、そこら辺から寄せ集めの魔導師達だ!!落ち着けみんな!!」
エスダム王国の魔導師軍は音楽に合わせて横一列で歩いて来る。
ラッパが鳴り、杖を槍のように構えた。
セラ魔法学院の軍団は杖を縦に構えたまま、アストレンの指示を待っている。
サクトルは不安そうに唾を呑み込むと、敵の動きを見ていた。
(詠唱ーー!!!)
(詠唱!!!)
(詠唱!!!)
遠くで声がした後に旗が高らかに上がり、攻撃の準備を始める。
生徒をはじめ教師や、アストレンさえもここを動かず、敵の攻撃を毅然と受けるつもりだ。
(放てーー!!!)
エスダム王国の旗がふりおろされ、ライトニングアローが閃光と共に飛んできた!
しかし敵のライトニングアローは生徒達の手前で分光、または失速し、届かなかった!
エスダム王国の魔導師は杖を槍のように構えたまま、こちらへ歩いて来る!
「射程を詰めてくるぞ!!!みんなーー!!!有向射程距離まで体力を温存し、敵を引きつけるんだ!!!決して動くんじゃないぞ!!!」
「「「はい!!!!」」」
「我々には強い団結力と100年以上生きたエルフ!!そして地の利がある!!!決して臆するな!!!」
「「「はい!!!!」」」
「ここからは度胸試しだ!!!ワクワクするだろう!!」
「「はい!!!」」
アストレンも緊張しているのか肩を大きく動かして深呼吸をしている。
仕掛けてきたのはエスダム王国だった!
(放てーーー!!!!)
しかし、ライトニングアローは分光し、こちらに届かない!
「どうした腰抜け!!来いよ!!」
アボクが挑発し、生徒達から笑いが起きた。
「どうした!!!」
「早く来い!!!」
「杖なんて捨ててかかってこい!!!」
勇敢な生徒達の挑発が始まる!
やがてエスダム王国の魔導師軍団が、死んだ兵士の近くまでやってきた!
死んだ兵士を貪っていた貪欲なカラスが飛び立ち、サクトルの横で構えていた生徒の杖がスパイクの金物と合わさってカタカタと震えた。
あそこまで来ているという事は、ここまで魔法の矢も飛ばせるという事だ。
そう考えると怖くなり、アストレンの指示を今か今かと待った・・!
早く指示してくれアストレン!!一体何をしているんだ!?
(詠唱ーーー!!!)
(詠唱!!!)
(詠唱!!!)
見よ、エスダム王国が仕掛けてくるぞ!
(放てーー!!!!)
(放て!!!)
(放てーーー!!)
サクトルが恐怖のあまり、思わず目を瞑る。
矢が大地に突き刺さる音。
恐る恐る目を開けると僅か数メートルが光の矢の花畑ができ、アストレンの爪先数センチにも突き刺さっていた。
それに動じずアストレンは細い剣を構えて、勇敢に立っている。
アストレンの白いマントが追い風で靡いた時、ついに口を開いた!
「距離!1000フィート!光属性魔法の用意!!」
「光魔法の用意!!」
「光魔法の用意ー!」
サクトルもピクンと跳ね上がり、杖を魔導師の1人に向けてライトニングアローの準備をする。
流石に1000フィートともなると人間がハッキリ見える。
「魔法詠唱!!」
「詠唱!!」
「詠唱!!」
「風の神クアラ・フフルよ!!」
「我らを差し示す大いなる光の矢よ!」
「我の祖先と光の叡智よ・・!」
「放てーー!!!!」
旗が振り下ろされ、サクトルの杖が光ってライトニングアローが発射された!!
流石はアストレン。
生徒達の光の矢は追い風と地の利も手伝い、エスダム王国の魔導師に降り注いだ!
(ア”ーー!!)
(ギャッ!)
(グワァー!)
魔導師数名と旗を持った魔導師が光の矢を受けて崩れ落ちる。
旗はすぐさま後続の者に拾われ、エスダム王国の軍勢は顧みる事なく進軍した!
(詠唱ーーー!!!)
(詠唱!!!)
(詠唱!!!)
(放てーー!!!!)
(放て!!!)
(放てーーー!!)
「おわっ!」
光の矢が頭上を飛び、射撃が終わって後ろに控えていたサクトルの頬に生温かい液体が飛び散った。
サクトルの右で魔法を放った生徒がドタリと倒れ、足にのし掛かる。
頬に飛んだ液体は頬を伝い、上唇に入ったそれは鉄の味がした。
サクトルの身体が、意図していないのにガタガタと震える。
しかし前を向き、自分をふるい立たせて敵の矢面に立った。
「下手くそー!!このアストレンは、まだまだ健在だぞ!!ハッハーー!!」
アストレンが白いローブに開いた風穴を見せながら必死に叫び、アボクや仲間達も挑発する。
教師達は『サルヴァダンス(錯乱の舞い)』を踊りはじめ、敵の混乱を誘った。
旗を持った女子が吹き飛び、尽かさず別の女子が拾い上げ、攻撃の指揮を伝達した。
ラッパを演奏していた男子がプワッと言う音と共に倒れ、尽かさず別の生徒がラッパを拾い上げて演奏を始めた。
皆、生きる為に必死だった。
やられてなるものかと歯を食いしばった。
魔導師は攻撃しながらズンズンと迫る。
幸か不幸か、お互いを知らぬ者同士、誰かが倒れても気にしない様子だった。
横隊による一斉射撃は寄せ集めた軍団でも戦場で即戦力になる可能性を与えたのかもしれない。
ここでエスダム王国の旗を持った魔導師達が唱える。
(キュラーテ・エスパーム!!)
相手側は体勢を立て直す為に全体回復魔法を放ち。
(シャインツタリル!!)
続け様に光属性魔法を強化した!
これから強烈なライトニングアローが来るのは目に見えていた。
「アストレン様!!!このままじゃ僕ら殺される!!」
生徒が悲痛に叫ぶ!
アストレンは短剣を掲げて生徒達を鼓舞して回った!
「臆するな!!!!私は356年生きたエルフだぞ!!!楽しくなって来たぁーー!!!!気持ちだ気持ち!!!さぁ、みんな強い信念を心に持ち、世界樹の種を胸に宿すのだ!詠唱!!!!」
「詠唱!!」
「詠唱ーー!!!!」
サクトルも頬を叩いて気合いを入れると、杖を構えた。
そして詠唱を始める。
「ヴェルク・・!!大いなるマザーアカナよ!!!!僕と共に戦ってくれ!!1人でも葬るのを手伝ってくれ!!」
光の魔法陣が出現し、矢の軌道を計算しながら魔導師の頭を合わせて狙いを定めた。
「「「「放てーーーー!!!!」」」
旗が振り下ろされ、サクトルの杖から光の矢が発射される!
敵の魔導師の頭からパッと血煙が出て、崩れ落ちるように倒れる。
光の矢を受けた魔導師達がドミノのようにワラワラと倒れ、その後ろには後続の魔導師が杖を携えながら行進し、指揮官の指示を待っていた。
(どっちだ!?)
(あっ!?)
そして遂にサルヴァダンスの効果が徐々に現れ始めた。
エスダム王国の楽隊が混乱し、撤退と攻撃の演奏を始めた。
そして不意に攻撃が止むも前進は続き、不完全な状態でセラ魔法学院の攻撃の射程にその身を晒す事となった。
アストレンはエスダム王国の混乱を見逃さず、生徒に続け様に攻撃を指示した!
「「「「放てーーーー!!!!」」」
サクトルは恐怖で歯を食いしばりながらライトニングアローを放った!
腹を射抜かれた魔導師が吹き飛ぶ。
「「「「放てーーーー!!!!」」」
三角帽子が飛んだ魔導師が、その破壊力に驚いた顔をした瞬間、次の矢で頭が吹き飛んで崩れ落ちた!
「「「「放てーーーー!!!!」」」
サクトルは魔力の減少で頭痛を我慢しながら、杖にしがみつくように魔法を放った。
近接となれば数と魔力量の暴力だ。
セラ魔法学院の軍勢の嵐のような攻撃により、エスダム王国の魔導士達は耐え忍ぶのに精一杯だった。
「ヘイヘイヘイヘイーー!!!」
アストレンも熱くなりサルヴァダンスを踊りだす。
先生も腰を撃たれた激痛に跳ねるも、必死に腰を振ってダンスした。
(なにをやってる?!)
遂に敵の魔導師が後退と前進に分かれてぶつかり、後続の魔導師が味方を誤射した。
(どっちだ!!撤退するのか!?ハッキリしろ!)
(攻撃だ!攻撃!)
(指揮者は!?)
サルヴァダンスを見た旗持ちが発狂し、突然指揮を放棄して笑い出した。
楽団は『進軍』と『後退』を演奏し、混乱に拍車がかかる。
指揮者は必死に魔導師に呼びかけながら『進軍』を指揮し、ここで踏みとどまって攻撃せよと叫んだ。
しかし旗持ちが戦闘不能になった今、攻撃のタイミングが大きくズレ、魔導師の個々の能力に頼らざる得なかった。
アストレンは地の利と生徒達の団結力を頼りに必死に踊った。
サクトルも待機をやめ、必死に矢面に立ってライトニングアローを放ち続けた!
(ひぃい!ジェアリーーーーム!!!)
(エクトゥーーーム!エクトゥーム!お助けー!)
遂に魔導師が杖を破棄し、、天蓋の回し人ジェアリムと、天蓋の使いエクトゥムの名を叫んで敵前逃亡を始めた!
逃亡は逃亡を生み、逃げ出した魔導師を味方の魔導師が撃つ悪循環が生まれる。
「今が好機!!!セラ魔法院!!!!前進!!!」
「前進ーーー!!!!」
アストレンは楽団に『進軍』の演奏をさせる。
さあ、一気に畳み掛けるぞ!
魔導師達は恐怖に顔が歪み、遂に魔法が出せなくなった。
距離にして僅か80フィートまで迫り、セラ魔法学院の光の矢が思い切り降り注いで魔導師達を完膚なきまでに叩きのめした。
(撤退だ!!撤退しろーーー!!!もう無理だ!!)
遂にバスケア王国の指揮官が撤退の合図をはじめ、旗持ちと共に敗走を始めた。
指揮官の撤退と共に魔導師達も敗走を始め、遂に部隊は壊滅した!
そこに残ったのは惨たらしい魔導士の死体と呻き声、墓標のように立つ光の矢。
「敵が敗走を始めたぞーーー!!ヒヤッホーー!!!」
「アストレン様万歳!!メルポ王国万歳!!!!」
アストレンは喜びの舞を踊り、手から金粉を出した。
生徒達も杖を高らかに挙げ、勝利の雄叫びを挙げた「俺らは勝ったんだ!!!ウオーーー!!!やったなサクトル!!俺らの勝利だぞ!!」
アボクは笑いながらサクトルに駆け寄る。
「勝利のVサインを・・!みんなで・・!」
サクトルも呆けたようにポカンとしていたものの、皆の喜びようを見てようやく勝利を実感した。
「大丈夫かい?テフロレリアを!」
「ありがとう。僕ら勝ったんだね!」
サクトルが隣で倒れていた生徒を介抱し、回復薬を飲ませる。
「サクトル、君も顔色が悪い。ピリタスを飲んだ方が良い」
「うん・・さぁ、今は皆と勝利の喜びを分かち合おう」
「・・ヴェルクに・・」
生徒はテフロレリアを掲げ、一気に飲み干した。
サクトルもそれに続く。
魔法の薬の効果は素晴らしく、あっと言う間に傷口が治癒し、何事も無かったかのように頭痛も無くなった。
死んだ魔導師の袋からヒビの入った『フレア』が発熱する。
それが緩やかに発火し、魔導師達の死体から白煙が出た。
ヌオに乗ったバスケア王国の騎士が死に損ないを処刑する為に、煙の中を歩いて回る。
「セラ魔法学院の軍団160人のうち、誤射25名。死者10名を出したもののバスケア王国の魔導師の損害を比べたら大戦果だ!諸君!!!我々の勝利は近い!!」
アストレンは望遠鏡を杖のように持つと満足そうに言った。
「“我々の勝利は近い”だって。ガイゼルダの真似かよ」
サクトルの横の生徒が呆れたように言った。
「ガイゼルダって?」
サクトルが聞く。
「昔の将軍だよ。サストテールの国境に番犬村って言う巨大な岩壁の関所があるだろ?
メイルマーナ王国の将軍ガイゼルダは、ラムベルツドットの関所を破壊せず、サストテール山脈の横断と言う無謀な進軍を始めたんだ。
彼らは巨大な石灰岩の岩石に酢(煮詰めたビネガー)を掛けて火で炙り、破壊して道を拓いたのさ。サストテールを踏破してメルポ王国を見下ろした時に勝利を確信して言ったんだ。
“諸君!我々の勝利は近い”って」
「それで結果はどうなったの??」
「メイルマーナの軍団が見たのは、個別に独立したメルポ王国の堅牢な城壁だった・・!そしてメルポ王国の軍勢はラムベルツドットを解放し、主力部隊の居ないメイルマーナに攻め入ったのさ・・!!」
「負けてるじゃん!!」
「救われない話だよ。アストレン様はメイルマーナ出身なのかもしれないね」
サクトルは杖を拭きながら、森の方を見た。
この戦いは無事に終わるだろうか?
メイルマーナの兵士も、ガイゼルダの言葉に救われ、故郷を想った者もいただろう。
しかし、彼らが待ち受けていたのはメルポが誇る堅牢な城塞都市群だった。
その絶望と、メルポの進撃の一報。
敗者の見る空は、この曇天模様の雲より重く、暗いものだったのかもしれない。
「・・・む!?」
アストレンが望遠鏡を覗く。
そして森の方を何度も見ると、小さく言った。
「諸君!!喜べ・・!!大きなガチョウだ!!」
「横隊!!」
「横たーーい!!配置につけーー!!」
サクトル達も弾かれたように立ち上がり、旗を持つ生徒を基準に横に広がる。
サクトルも首を長くしながら、森の方を見た。
“大きなガチョウ”とは何なのか。
サクトルは疑問より先に、全身に鳥肌が立つのを感じた。
そこには洗練された武具を纏った様々な兵士が居た。
どれも伝説級の代物や武器の数々。
自身の能力の高さを頼んで、メルポまで駆け上った選りすぐりの異界の勇者達であった・・!!
その異様さに生徒達はお互いを不安そうに見て、サクトルは震える。
「アイツ・・!!アイツだ!!!!ヴェルクを殺した奴だ!!」
そして先頭を歩くケンジを見つけた時、サクトルは指を指してアストレンに叫んだ。
「“シムラ”は居ないみたいだな・・それにしても凄い」
アストレンは顎に手をやりながら考えた。
これほどの整った装備を持った兵士たちが揃っているのだ。
魔力、攻撃力共に余程の実力者に違いない。
アストレンや教師と戦ったとしても、こちらに地の利があったとしても、到底太刀打ちはできないだろう。
────
ケンジはケンジ達でスマホでアストレン達を見た。
経験値はそこそこあるが、中堅アカウントなら突破できる程の体力差だ。
他の魔導士達(セラ魔法学院の生徒達)の経験値はあまりにも低く、魔法の一斉射撃を突破して攻撃すれば容易に薙ぎ払うことが可能だろう。
しかし、彼らは安全を確保するためにはここで体力を使うのは得策では無かった。
ここから先、ファストトラベルの使えなくなった異世界の勇者達は、渇きの王の側であるバスケア王国の居るタントリノの丘(現ツェトリ村)まで撤退しなければならない。
その為には、一度陥落した番犬村を潜り、メイルマーナやギアーテの軍勢を相手にする事になるだろう。
スマホで見たマップではすでに敵を示す赤いマップが包囲を固めようとしていて、海岸線で待つ渇きの王側のタキア王国の船団が撤退を始めていた。
中堅アカウント:「ケンジさん、どうするんですか?」
ケンジは巨大な斧を持ちながら向こうを見ていた。
そして、ケンジとアストレンの意見は一致を見せる事になる。
「アストレンに決闘を申し込む。これだけのレベル差だ。俺なら勝てる」
ケンジが斧を持ち上げながら、アストレンの所に歩いてゆく。
アストレンもそれを察し、細剣を持って前へ歩きだした。




