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異世界から来たリクは本当に使えない  作者: 地底人のネコ
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ちょっとした宴

コルツのちょっとした宴が始まる。

未来の見通しが立たたず不安が大きい時、明るく笑顔で楽観的でいる事はとても大切な事なのだ。

そして孤独と暗闇は厳しいアカナの世界において魔物に次ぐ天敵だった。

コルツはそれを知っていて、時にリクを慰め、宴を開くのだ・・。

日はすっかり暮れて、酒場の鎧戸から小さな風が入って唸る。

ゆっくりとした時間と、たくさんの蝋燭の中でリクとコルツの“宴”が始まった。


「さぁリク!何から食べようか!」

「*うーん」


リクがテーブルにぶちまけた食材を眺める。

コルツはどこからか拝借してきたショットグラスを取り出してラム酒を乱暴に注いだ。


「*コルツ君、それは何??」

「ルァムだよ。リクもアクアピープルに立ち向かって一人前の勇者になったんだ。なら呑めるよな?」


「*ラム!?」

「ウンウン!ガグル ビスティア エストゥルーラー!!」


「*えーー」

「ガグル アンダレイ!」


「*えーーー・・」

乗り気では無いリクを他所に、コルツはラム酒を一気に呷った。


「フゥ!」

そして是みよがしにひっくり返して無いことを見せると、次はリクの番だとばかりに勧めた。


リクは生唾を呑みながらラム酒の入ったショットグラスを眺める。

・・そして。


「*・・ゴクン!・・ぷはぁ!」

リクも一気に呷ると、喉の辺りを熱そうに摩った。

香り付けした果実のトロピカルでフルーティーな香りと熟成したキャラメルのような円やかな甘みが鼻から抜ける。

さすがに空腹の胃にラムは堪え、リクは燻製の魚を掴むと中和するように頬張った。


「エ ア テイス “オイシイ”?」

「*美味しい…ヒック!」


「そうこなくっちゃ!リク!」

「*うん!」


コルツはニコニコしながらラム酒を2人分注ぎ、塩漬け肉を掴むと腐ってないか臭いを嗅いだ。

そして口で咥えて乱暴に引きちぎるとムシャムシャやり始めた。

老いたラーマの肉は焼いても塩に漬けても獣臭く、鼻を摘まんでスパイスで誤魔化さないと到底食べられる代物ではなかった。


「*コルツ君、美味しい?」

「オイシイ?美味いかって?これが美味しそうに見えるか?」

コルツが鼻を摘みながら、肉を放り投げて臭そうに口を開けてみせる。


「※ブッ(笑)あははは!」

リクは笑うとラム酒が気管に入って咳をする。

「あー!笑ったな??」

「*あはははは!ごめんねコルツ君、僕の魚を食べなよ!」


「え?俺にくれるのか?じゃあ、これも食べちゃうか!」

コルツは笑顔になり、オリーブ漬けをパンに挟んで食べる。

「*美味しそう!じゃあ僕も!」

リクもオリーブの塩漬けを壺からパンにかけ、美味しそうに頬張った。

そしてラムを呷ると思わず顔がほころぶ。

ラムを飲むごとに身体がポカポカと温かくなり、コルツも酔って気を良くしたのか小さなモノマネを始めた。


「エ ア ノルジィルカ ベルツ??」

「*ベルツ・・ベルトさん??肉屋の??」


「ウンウン!ベルツ!!・・ウェン

シー!(ちょっと見てて)」

コルツは突然真剣な顔をして、先ほどの乾燥肉の食べかけを掴んだ。

そして、塩漬けの樽から肉を取り出して水を切る真似をすると、女性を見ながら艶かしく肉を触る肉屋のベルトを演じた。


「ヘェーーーアーーートトクリア ヴィガ〜!ヘェーーーアーーートトクリア ヴィガ〜!!」

「*あはははは!!」

コルツは大袈裟に肉を触り、異様に素早く肉を刻む真似をする。


「*あはははは!それじゃあ、お肉が千切りになっちゃうよ!!」


「ノーノノ!キキル ビガ テェイス ゴウジア!タントリノ テ ノーノ テアルーニ!!ノーノノ リク??」

コルツがベルトのモノマネをしてリクを注意すると、女性が来たのか明らかに態度が変わった。

そして何度も投げキスをしながらイヤらしく肉を見せて鮮度をアピールする。

「ダイケア!ダイケア!マドヌ!!」

そして、どうやら交渉が成立したようで何度も投げキスをする。


「ア!?アーニャ チカ!!」

「*アーニャには頭が上がらないんだね??」

しかしアーニャが来たらしくベルトが慌てる。


「アーニャ!! ステティック キル」

コルツが爪を見せてジャスチャーをする。

「*ベルトさん、アーニャの爪が怖いんだ・・知らなかった・・」

リクが爪を立てるジェスチャーをするとコルツは頷いた。





ホワワン!

ワン!ワン!


外からツジギツネの鳴き声がしてリクが驚く。

どうやら群れのようで、外を走り回り木材を引っ掻く音がする。

リクは思わず短剣の柄を掴んだ。


「大丈夫だよリク!下等の魔物がいるって事はそれより強い奴はいないって事だ。奴らは俺らより鼻が効く。奴らが警戒の鳴き声をあげない限り大丈夫だ。“ダイジョウブ”」

「*大丈夫??」


「ウンウン!俺も居るしな!」

コルツは得意げに胸をポンと叩く。

「*コルツ君!!」


「・・さぁ、呑もうぜ!」

「*うん!」

ルァムを飲むごとに多幸感が溢れ、あれほど臭いと思っていた肉も美味しく感じる。


「*あーにゃちか!!!!」

リクはツジギツネに負けるとも劣らない甲高い声をあけだ。

そして椅子から立ち上がってピョンピョンと跳ねる。


「おー!!それは…メメルだな?」

「※アーニャチカ!!エ ア ぐにゃぐにゃ!クリクリエ!!!!」

リクは自分でメメルのモノマネをして可笑しくなり、床に寝転んで笑った。

「*あはははは!!」

そしてラムを注ぐと、おもいきり呷る。

「リク!少し呑みすぎだ!!」


「*あー、、ダメだ頭がクラクラする」

リクは身体が熱くなり、夜風を浴びたくてドアを開けた。


ホワワン!

ワーー!ヒャン!!


真っ暗な村には沢山のツジギツネが居て一斉にこちらを見た。

ツジギツネが無害と知るとリクも強い。


大小様々な大きさの瞳が輝き、暗闇で瞬きする様は星々のようだった。

それは空と繋がっていて夜空は満天の星空だ。

「そうだリク!!ベッドを運び込もうぜ??」

「*え??」


「スリピ!!ライツァ、、」

コルツが手を枕にして眠るジェスチャーをする。

「*寝る準備ね??」


「ウンウン!それを・・こう!」

コルツが長方形を描いて重そうに運ぶジェスチャーをする。

「*そうだね!え!?ベッドを運ぶの!?」


「来いよリク!!」

「*えーーめんどくさい!」



若さにおいて、不可能は無かった。

「*うおりゃーー!!」

「城門を破壊せよーー!!突撃ー!!」

リクとコルツはどこかの民家からベッドを持ってきて、ツジキツネが散り散りに逃げ出した。


「*お酒のんでそんまま寝られるって贅沢だね!!」

「酒場ホテルじゃい!!」




───────


夜も更け、いよいよ寝る時間になる。


「さぁ、寝る準備だリク!身体を拭いて清めるんだ!」

「*うん」

「リクから先にいいよ!」

「*ありがとう!」

ベッドで服を脱ぐと布に水を染み込ませて身体を拭く。


リクは修学旅行を知らないのでコルツと寝ると言うだけで楽しくて仕方がなかった。

蝋燭の火に照らされて2人の裸が照らされる。


「背中流してやるよリク。リクの肌はキメが細かいというか・・やっぱり皆と違うな」

リクの日焼けや伝染病、虫刺され痕の無い白い肌をコルツが不思議そうに眺める。


「リクと会話できたら、もっと沢山の事を話したいな。きっとリクは高貴な身分なんだ。どうして転生する時にマザーアカナを選んだんだリク??」

「*えっと・・何??」


「ごめん。なんでも無いよ。会話できたらなって」

「*いたた!!」

「痛かったか!ゴメン!」

コルツの布で拭く力が強いのでリクが何度も身体をよじる。

「*か、下半身は自分で拭くよ!」



リクが身体を拭き終わるとコルツの番だ。

コルツは布で拭くと日焼け後のカスのような垢がボロボロと布についた。


「*きたな(笑)!!」

「ちょ!わらうなよー!」

「*すごい!やらせて、やらせて?」


リクが楽しそうにコルツの身体を布でこすり垢を擦り取ってゆく。

よく見ると腕にはヤギに付けられた怪我があり、肩も重い天秤棒や木材を担いだ際にできる色素沈着があった・・。


「*これは・・」

「アクアピープルにやられた痕だな」


腕には治癒しかけの打撲の痕があり、青痣が残っていた。

リクは黙り、蝋燭の火がジジジッと音を立てる。


「僕がもっと強かったら・・」

「*いいんだリク。君が無事でいられたんだから・・」


コルツの手の平を触ると、人差し指と薬指の付け根がマメで固くなっている事に気付いた。


リクはそれをなぞると、無意識に自分の手と比べる。

それは幾日も剣を素振って握り込み、時に麦を育てる為にすきで耕し、時にツェトリに発生するスライムを倒してきた鍛錬の手だった。

それはきっとリクがこのゲームをログインする前から続いていた事であり、リクは自分の手の平の柔らかさを心の内で責めた。


コルツはそれを悟ったのか小さく笑い

「ずっと使ってる手だからな・・固くもなるよ」

と言った。

「*・・・」

リクはコルツを労うように強めにゴシゴシと背中を拭いた。



ホワワワワン!

キャン!

キャン!


ホーーーー…

ホーーーー

ツジギツネの声とフクロウの聞こえる。


「ふぁ・・寝ようかリク」

「*うん」

コルツがあくびをしながら蝋燭の火を消し、完全に暗黒になる。

目を瞑ると焼きついたアクアピープルの顔が浮かび、リクは小さく震えた・・。


「リク大丈夫だ。俺がついてる。剣もある」

「*うん」


「よく弟達もスライムに会った夜に怯えてな・・こうやって抱きしめて寝たんだ」

コルツがリクを後ろから抱きしめて剣を持つ。

背中にはコルツの温もり、リクの前には剣がありリクも願うように剣を握った。



















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