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異世界から来たリクは本当に使えない  作者: 地底人のネコ
27/40

アリガトウ

「大丈夫か!?リク!怪我は無いか!?」

「*うん!!大丈夫!!大丈夫だから!!」


コルツはリクを触って怪我が無いか心配する。


「これは・・!?光ってないか?」

コルツがリクのレイピアを見るのでリクが抜く。


「*な・・何これ!?」

そこには青く輝く剣があり、不安と恐怖にうつるリクの顔があった。


───オォ・・マザーアカナティア(おお、伝説の勇者か)────


カーク:「攻撃陣形を!アイツの狙いはリクだ!!」

突然の声にコルツとカークが剣を抜く。

ピピカも弩を装填し、その果てしなく強大な魔物を見た。


ピピカ:「あ、あ、あれは間違いねえ!ラドンだ!!!!大地の神ミミエ・アルマと闘いの神メルル・ヴィアスが創り出したハイパードラゴンだよ!!ラドン火山の封印されしダンジョンから自分の力で出てきやがったんだ!!」


噴出する黒煙の中に火炎のようにのたうつ長い首が9本とそれを支える巨大な一本の胴がとぐろを巻いて灼熱の火口から出ていた。


テモンは神殿から出てそれを見るとハッとし、まるでこの事に觀念したように哀しそうに微笑むと神殿に戻ってキュラーテティアへの祈祷を始めた。


───オオ、アカナニナティア。シュクシャツカゲルデン オデュガキンギカ ゲア エシオパルシア (アカナの加護を受けた勇者よ。古の理を断ち、渇きの王、そして強欲なる古の勇者達の力をかりてここに蘇らん)────


「放てーーー!!」

「*うわ!!」

リクの後ろで魔導師軍団によるライトニングアローが放たれた。

幾重にも炎魔法の魔法陣が出現し、ラドンの全身を包囲する。


ラドンの身体に幾万ものライトニングアローが降り注ぎ、炎の魔法が発動して大爆発を起こす。


「放てーー!!魔力尽きるまでー!!」

魔導師達の間髪入れぬ魔法のラッシュに、こちらまで熱風と衝撃波が来る。

リクは火炎と爆風で浅い呼吸をしながら、恐怖と緊張で棒立ちのままラドンを見ていた。



カーク:「リク!下がっていろ!」

コルツ:「ピピカ、後ろを頼んだ!リクを囲んで防御陣形!」

ピピカ:「まかせとけ!」


リクの前にコルツとカークが立つ。

抜かれた剣がギラリと光り、マントが靡く。


「*ハァッ…ハァッ…」

リクは震える手でディスプレイについた砂を拭うとラドンのステータスを見た。


ラドン(ギドラ級ハイパードラゴン)

生息地:ラドン火山・深層100F


ドロップアイテム:草薙の剣・ドラゴンコア・ドラゴンリング


Lv:110

HP:08700/55000

MP:∞

攻撃力:27000

防御力・・etc


魔法

黄泉の開門

月の裁き


HPこそ凄まじいスピードで減っているものの、ヴァイターの余暇兵力でようやく減らせる程だ。

なぜこんな強力なモンスターが!?


リクは滴る汗もそのままに考え、結論に至る頃には「ヒッ!」と小さな悲鳴をあげた。


「※僕のせいだ…!!僕が最高難易度(マザーアカナ)を選んだからだ…!!アイツはもともと、ダンジョンの奥で上級プレイヤーを待ち受けるラスボスに過ぎなかったんだ!!」


スマホにはイベント情報はなく。

『ツェトリ村に帰還する』の基本ミッションがあるばかりだ。

本来なら予期されていないモンスターの出現なのも納得がいく。



「大地を穿ち、天空を駆け抜ける聖なる槍よ!!邪悪なる闇のしもべを切り裂きたまえ!!」

魔導師の隊長が叫び、一斉に魔法の詠唱が始まる。

リクのパーマを当てた髪がにわかに逆立ち、大気に電気が満ちる気配がする。


「「サンダーストーム!!!!」」

暗黒の雲にガラガラと稲妻が走ったと思いきや複数の(いかずち)が雷鳴と共にラドンに降り注いだ!!


カーク:「最上級魔法だ!!口を開けて耳を塞げ!!鼓膜が破れるぞ!」


コルツがリクに覆い被さり、耳を塞ぐ。


巨大な雷が空から地面に炸裂し。

凄まじい砂と蒸気の煙が立ち、ラドンは雄叫びをあげて煙の中に見えなくなった。


コルツ:「や、やったか!?」

ピピカ:「こんだけ食らったんだ!流石に無事じゃいられねぇ!」


暫くの沈黙の後に煙が風で流れ、ラドンが露出する。

ラドンは灰のように真っ白になり、溶岩ドームの中へガラガラと崩れ去ってしまった。

時を同じくしてリクの伝説のレイピアの輝きが鈍い光と共に消える。


「ウォオオオ!!やったぞぉお!!」

「戦いの神メルヴィアが、我らに微笑んだ!!」

「マザーアカナに愛されしリクが不思議な力を使ったのだ!!」

「我らは神々に愛されている!!」

「我々の勝利だ!!」


メルヴナウタイ全体から勝利の歓声が沸き、どこからともなくカンザキリクの大合唱が始まる。


カーク:「ワハハハハ!流石はギアーテ王国の軍隊!!!」

ピピカ:「渇きの王を撃退しただけのことはあるな!!」


コルツ:「リク!!俺らの勝利だ!!テモンに知らせようぜ!?リク?」

コルツやピピカが小躍りする中、リクの顔は蒼白で唇は青いままだった。


カーク:「リク、まさか妖精に心を抜かれたか?(エ ア フェリーチュリ ア パシオラルク イルエ リク?)(日本語的に※ボーッとしてどうした?になるが、これだと表現が強くなりすぎるので直訳とした)」

ピピカ:「ま、リクがポカンとしてるのは今に始まったことじゃ無いけどな」


コルツ:「リクが鏡を一生懸命見てる・・なにか書いてあるのだろうか?」



リクは震える手でスマホを見ていた。


本来、こうしたMMOゲームにはダンジョンやミッションが存在し、プレイヤーの中ではレベル上げの為に何度も周回する者も少なくはない。

それはもちろんリクの放り込まれたこの世界も例外ではなく、その証拠とばかりにスマホには不気味な文字が表示されていた。


『ラドン火山 クールダウン 60分』


「*ラドンが・・60分後に復活する・・!!コルツ君!!ラドンが復活するんだ!!」

コルツ:「は!?なんだって!?」


「*ラドンが!!ニョキって!!!わかる!?」

コルツ:「落ち着けリク!!ラドンがどうしたって??死んだだろうが!」


「*ラドンが復活するんだよ!!!!」

セイレーン島のマップにはヴァイターの本陣を示す凸マークが消え失せ。

リクは言葉が通じないながら必死にコルツにスマホを見せて身振り手振りで事の重大さを説明した。


カーク:「リクが鏡を見せてる。なにか書いてあるんじゃないか??」

ピピカ:「なんて??」

カーク:「それが分かったら苦労しないだろ」

しかし、プレイヤー以外の NPCにはスマホは無価値な物として認識され何が映し出されているか窺い知ることはできない。


「*くそっ!!どうしよう・・!僕のせいで・・!!!」

リクは魔導師の軍団に駆け寄る。

魔導師は熱を持った杖をかざして誇らしげだ。


魔導師:「リク!!やりましたね!!我々の実力をヴァイター将軍に見せたいです!連絡が無いようですが、伝令の兵を向かわせているようですよ!!」

「*魔導師さん!!ラドンが復活するんだ!!みんなに回復薬を飲ませてあげて!!」


魔導師:「んん??コルツ、リクは何て??」


リクは回復薬テフロレリアが入っている木箱に駆け寄って紐を首から下げると、疲弊して座り込んだ魔導師達に配り始めた。


女魔導師:「あ、ありがとう。リク・・手が震えているわ?」

女魔導師の心配を他所に、駆け寄るように配る。


そしてリクはこの世の終わりのような物凄い顔をした後、言葉すら通じないメルヴナウタイに号令をだした。


「*みんな!!僕を置いて逃げて!!オエッ!!」

リクはその瞬間、恐怖で嘔吐した。


コルツ:「だ、大丈夫か!!リク!!・・あっ!」

リクの携えていいるレイピアが前屈みになった際に半分抜かれ、鈍い灯りを放っているのがわかる。






絶句する一同。


コルツ:「・・・アイツが復活する・・そうなんだなリク!!!!」

ピピカは驚いた顔をしてカークを見た。

カークの鞘に収められた剣がガタガタと震え、疲弊する魔導師ではもたない事は火を見るより明らかだった。


ピピカ:「それはテモンに聞けば・・」

カーク:「リクの剣が光を取り戻し、こんだけ取り乱してるんだ・・!!それしか考えられないだろ!!」


コルツ:「じゃあどうするって・・おい!!」

「*逃げてコルツ君!!狙いは僕だ!!逃げるんだよ!!」


そのやり取りの中、ヴァイターの砦に向かった伝令部隊が戻ってきた。

彼らは火山灰を肩に積らせ、王都ベガの反対側が如何に不測な事態に陥っているかを見せつけた。


伝令隊長:「みんな聞いてくれ。ヴァイター将軍の死亡を確認した・・!!残されたのは余暇兵力の我々だけだ!!」



魔導師長:「ヴァイター将軍亡き後、指揮を取るのは??」

カーク:「伝説の勇者のリクか??」


魔導師:「つまりそれは・・」


魔導師長「撤退だぁあああ!!!!!音楽隊に知らせよ!!撤退するぞー!!!!」


音楽隊の整列ラッパが鳴り、兵士達が2列に並ぶと港の方へ逃げるように走り出した。

ヴァイター亡き今、もはや撤退に反対意見は無かったのだ。


「*コルツ君!!テモンさん達は??」

コルツ:「テモン・・!?知らない」


「*連れてってあげてよ!!」

コルツ:「ツレテッテ・・??」


リクは言語の違いに地団駄を踏むと、神殿のドアを乱暴に開けた。


「*テモンさん!!テモンさん!!!!!」

リクは神殿を駆け抜け、テモンとその巫女達を探す。


すると金の塗料を全身に塗った近衛兵ゴールデンタキアが歩いていた。


「*テモンさんは!?コルス君は!?」

「ア ダ ルマ テモン??キュラーテティアニヌ ゲデル ココナ。コルス??コルツ???(神官テモンをお探しですか??向こうの贄の間におります。コルス王子ですか?コルツ??)」


「*どこ??」


「ノーノノ キュラーテティアニヌ ゲデル。エ ア コルツ??(神聖な間であり行くことは出来ません。コルツをお探しですか??)」


ダメだ!!

リクは神殿の石畳の廊下を走った!

神殿には近衛兵の1人しかおらず、気がつけば誰もいない事にリクも気が付いていた。



コルツ:「リクーー!!!何処だ!!リク!!」

コルツとカークがリクを発見し駆け寄る。


「*コルツ君!!カークさん!!みんなを探して!!」

カーク:「テモン達を避難させたいんだな!!」

コルツ:「そう言う事か・・!よし!!避難させようぜ!!」




───────


一方、ツェトリ村。


教会前の広場では肉屋のベルトによる『勇者リク』冒険譚が語られていた。

セイレーン島の噴火とドラゴンの出現。

ベルトの危機迫る語りに村人が息を呑む。


そして・・。

アーニャが口を開いた。

「・・それで・・。それでどうなったの??」


「テモンは贄の間の円形の祭壇で自害しており、巫女とコルス王子がそれを見届けたと。

詳細はわからないが・・。

リクは言葉が通じないながらも、メルヴナウタイを邪悪なるドラゴンから逃がすためにしんがりを務めようとした。

そして、コルツに言ったそうだ・・。“アリガトウ”って」


「“アリガトウ”??ありがとう(ダイケア)って??」



───────


『ラドン火山 クールダウン 15分』



明るさを増したレイピアはリクの蒼白な顔を映し出し、ボロボロの伝説の鎧を模した服、倒壊したベガの王都も手伝って、さながら冥界アヅマの亡者のような出立ちでコルツの方を向いていた。


「リク、もう皆撤退の準備をしてる!一緒にツェトリに帰ろう?」

「*コルツ君。…きっと狙いは僕なんだ」


「え?」

「※コルツ君 今まで本当にお世話になりました…。ありがとう」


「“アリガトウ”って!?なぜ感謝するんだリク・・!?残るのか!?」


「オォエッ!!」

リクは恐怖のあまり嘔吐し、その残酷なまでの運命に両手がガタガタと震えた。


「大丈夫か!?リク!」

「※行ってよ!コルツ君!!僕はこの世界の住人じゃないんだ。プレイヤーなんだよ!奴は僕を狙って来る!行ってよ!!」


心配のあまり寄るコルツに、リクは突き飛ばすように押して出口を指差した。


「・・・リク・・」

コルツはショックを受けた様に固まり、リクは踵を返すと贄の間に戻って行った。


ラドン火山の爆発音が聞こえ、大きな地震が起きる。神殿の内部は水流を模したコリント式の支柱が天井を支えており、揺れを感じる事に柱を構成している巨大なドラムと呼ばれる積み上げられた大理石が不気味に軋んで砂埃を出した。


・・贄の間にはテモンの死体があるだろう。


リクは贄の間に行くのを諦め、途方に暮れながら回廊に座り込み、救いのロープを切ったような絶望感と先ゆきの分からない不安感で何度も嘔吐し涙した。






いつしか寝てしまい、気づけば松明の灯りが回廊を照らしていた。


トンッ!

カラカラカラカラ…パラパラパラパラ…


回廊の石造りの窓から軽石が吹き込む。

そして卵が腐ったような悪臭が神殿を支配している事に気がついた。

やがてその悪臭は濃度を増し、肺と喉の痛みとなってリクを追い込む。


「ここも危ない…逃げないと…」

リクは何とか精神的に持ち直し、壁に掛けてある松明を取るとフラフラと歩き出した。


神殿のドアをあけると降り注いだ火山灰による銀世界と、倒壊した家々には火の手があがっていた。

暗雲がのしかかるように空を覆い、ラドン火山の火口は赤い炎が見えるばかりでドラゴンを窺い知る事はできなかった。

軽石から、さらに粘土の高い熱い岩石が落ちてくる。


ヒヒン!


放置されたヌオを発見し、リクは駆け寄って乗ろうとする。

「うわっ!」

しかし、ヌオはリクを振り払うように後ろ脚を出し、突き飛ばされてしまった。

『推奨レベル:10』

「はは、僕はレベルが低すぎて乗れないって事ね・・」

リクは哀しそうに笑うとヌオが走り去った火山灰の足跡を辿るように歩き出した。





───



松明の灯りは朧げで、呼吸も苦しい。


僕は肩につもった火山灰を落とした。

白くて雪のようなのに、触ると肌に広がって白く残る。

ヌオの残した足跡だけが向こうまで続き、下を向きながら辿るように歩く。

思えば僕は登校の時はいつも独りで、こうやって道の変化を見ながら歩いていたんだ。


そしてクラスではいつも誰かと連絡を取っているフリをしていた。

クラスで人間関係が作れず、僕はスマホでなろう作品を読むか、SNSの情報を漁ってばかりだった。


思えば、この異世界は。

モンスターは強いけど、たくさんの仲間ができたんだ。


(リクー!!ゴジ テルアーニ!!)

アーニャの顔が浮かぶ。


(リク! フンッ)

メメルのいつもの不貞腐れた顔。


(リクアーー!! エスペリアルティカ サルテルリア!!)

ピピカとカークの笑顔。


(エ ア ノーノタルディ リク??)

コルツの顔。



最後に『ありがとう』と言えて良かった。

多分伝わったと思うのだけど・・コルツの顔がものすごかったな。

悲しませてしまっただろうか・・。


悲しむ・・??

僕が居なくなった時、この異世界でも悲しんでくれる人なんているのだろうか。

気にかけてくれる人はいるのだろうか?




「・・ここ、なんだろう」

気がつけば火山灰が薄くなり薄暗がりの森に当たった。

松明で照らすと鬱蒼としげるマングローブ林が目の前に現れ、腕のように枝が生えていていて地面を窺い知ることはできなかった。


日本人が想像するような森と言えばきっと杉が檜の規則正しく生えた森林だろう。

しかし、暗がりと誰も踏み入った事が無いだろう不気味な森に、僕は足の先から湧き上がるようなとてつもない恐怖が襲った。

恐怖と共に森の混沌が押し寄せる。


コアコアコアコアコア・・!!!!!

ビーーーッ!ビーーーーーッ!ビーーーーッ!

ジジジジジジジジジジジ・・ビビビビビビビビ!!

コアコアコアコアコアコア!!


暗黒からは大気いっぱいの蟲の声が聴こえ、土の磯の臭いがする湿った強風が顔を撫でた。

王都には帰れないし、海岸に向かう一本道を進んだ筈なのに・・ここは一体何処だろう・・??


キューーーッア!

絶望の中で途方に暮れると、聞き覚えのある声がした。

キューーーーアッ!


「は・・!?アーニャ!?!?」

それは、アーニャが嬉しかった時に出す声に似ていた。

アーニャなんて居る筈無いのは分かっているのに、僕はその時冷静さを欠き、暗闇に飛び込んでいたんだ。


アーニャが探しに来てくれたんだ・・!!

きっとそうだ!!


ぬかるんだ泥と、濡れた葉が脚半を濡らす。

僕はそれも気にせず、泣きながら叫んだ。

「アーーニャ!!!僕はここだよ!!!!」


キューーーアッ!!

「アーーニャーーーー!!!!!!僕はここだよ!!!!」

キューーーアッ!!


「アーニャ!!」


アーニャが尻尾を立ててはしゃぐ姿が暗闇に浮かぶ。


それは木と木の間に・・それはマモーの像の影から。

尻尾かと思ったそれは木の枝で、さらにその先からアーニャの服の一部や身体が覗いている。


アーニャが僕を探してる・・!!

行かなきゃ!!


枝が服に引っかかり、葉っぱで肌を切って怪我をする。

それでも僕は声のする方に走り、必死にアーニャを探して叫んだ。


「アーニャ!!ここだよ!!!おーーーーい!!!」

気づけばアーニャの声も聞こえなくなり、暗黒の中に独りぼっちになる。


「アーニャ!!!うわっ!!!!」

暗黒の窪みに落ち、草を掴み損ねて草と泥の滑り台を落ちた。

「うわーーーー!!!!!」

スマホと少しのオルガ硬貨を落とす。。

“滑落死”

その3文字が脳裏に浮かび。

剣がつっかえて抜けてしまい、何処かに行ってしまった。


「うわっ!!」

フワリとした浮遊感が襲い、泥と草の滑り台から放り出された事を知る。

「うわーーーー!!!!!」

そして背中から落下すると乱暴に着水し、ぬるい水と流れに翻弄されながら必死に浮かび上がった!!


「ぶへあ!!!助けで!!ぶぶぶ!!」

僕は必死に手を上げながら浮き上がって叫んだ。

必死に上に泳ぐと息が吸え、休むとズドンと足が届かない底へ沈む。

必死に上に水を掻き、これがいわゆる

“溺れている状態なんだ”と酷く冷静に分析している自分がいた。


「ごへあっ!!」

必死に浮き上がろうと水をかいた脚が攣って水中に沈む。

ヌルヌルと浮いている蔦が指に触れ、それを必死に掴むと大きな丸太に繋がっていたので抱きしめた!

「ゴホッゴホッ!!!ぐあああ」

丸太を抱きしめて必死に水面に顔を出す。

声がくぐもり、ここが岩場の洞窟のような川である事に気がつく。



イヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!

イーーーーヒッヒッヒッヒ!!!!


暗黒から光る沢山の2つの目が僕を見つめる。

僕は流れるそれを見ながら気を失った・・。




───────




空に幾万の星々が瞬き、星々の点と点が繋がり、様々な物を司る神々を形造った。


河岸には異世界から来た伝説の勇者、神崎陸がうつ伏せで倒れている。

幸運な事に、大海に投げ出される前に小さなデルタ地帯の浅瀬に流れ着いたのだ。


神々はこの世界タルタに放り込まれたリクを興味深く観察し、好奇な目で見て話し合った。

死んでしまったのではないかと時に心配そうに覗き込み、その恐ろしい想像でハッと息をのみ。

時に意地悪く笑い、起こしてやろうと魔物を使わそうとして別の神に止められる一幕もあった。


神々が心配する最中、夜空を覆う一際大きな星座が腕を組み、リクに厳しい目を向けて睨んでいた。

その神の名は───


───全能の女神 マザーアカナ────


天の神クローリアに説明されて、マザーアカナが頷く。

アカナは風の神クアラ・フフルに指示をすると、その翼をはためかせた。


セイレーン島に強力な風が吹き、火山の分厚い雲を吹き飛ばすと、ラドンは神々に届かんばかりの火炎を吐いた。

しかし、水の神キュラー・テティアが大雨を降らせてラドンを打ちつけると、戦いの神メルル・ヴィアスが雷を叩きつけ、ラドンを地下の深層へ封じ込めてしまった。


神々の奇跡が終わり、何事も無かったかのように河岸に静寂が訪れる。


「・・う・・ううん・・アーニャ・・」

リクが寝返りをうち、仰向けに倒れる。

前髪が風に揺れ、マザーアカナは休息の邪魔をせぬように全ての物を睨みつけていた。






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